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【自主避難者から住まいを奪うな】早く転居したら家賃補助対象外? 急かされ動いた避難者。救済に消極的な福島県~「支援策」の盲点

住宅支援打ち切りに向けて自主避難者が新たな住まいを今から確保すると、福島県による家賃補助(2年間で最大60万円)を受けられない可能性があることが分かった。2017年3月の無償提供打ち切りまで8カ月。落ち着かない避難者の中には自力で不動産業者を巡り、避難先の公営住宅からの退去準備を進めている人もいるが、福島県は家賃補助の対象とする契約時期を現段階でも決めておらず「検討中」。場合によっては早めに動いた避難者が救済されない事態が生じる。一方で退去を促しながら、一方で早めに準備した避難者を救済しない矛盾。住宅支援打ち切りの盲点が改めて浮き彫りとなった。


【早く決めた避難者が悪いのか】
 「家賃補助は来年1月以降の賃貸契約が対象ですので、あなたは対象外です」
 福島県中通りから西日本に避難した女性は、戸別訪問に訪れた受け入れ自治体職員の言葉に驚いた。現在、公営住宅に子どもと入居中。来年3月の住宅支援打ち切りに向けて、家賃補助も想定に入れながら不動産業者を巡ってきた。下見をした物件は50を超え、ようやく条件に会う物件が見つかった。家賃は決して安くは無いが、2年間の家賃補助があれば何とかなりそうだと考えた。契約を済ませ、今夏にも転居する段取りになっている。
 福島県から送られてきた資料には、夏に転居した避難者は家賃補助の対象にならないなど、どこにも書いていない。「少し早いけど、打ち切り時期が決まっているから落ち着かなくて」。新たな住まいが決まり、ようやく明るさを取り戻したが、新居での生活が土台から揺らぎ始めてしまった。「家賃補助無しでは、とても家賃は払えない。今からキャンセルすることなんて出来ません。違約金も発生するし…」。福島県が用意した「被災者のくらし再建相談ダイヤル」に電話で問い合わせたが、やはり答えは同じだった。
 「結局、早めに動いた私が馬鹿だったということなんですね」。女性は肩を落とす。しかし、福島県は昨年6月の住宅支援打ち切り発表以降、説明会や戸別訪問を通して避難者に退去に向けた準備を促している。まだ避難者団体が打ち切りの撤回を求めて交渉を続けているにも関わらず、戸別訪問の場でも、福島県職員は「来年3月には出て行っていただきます」などと口にする。打ち切り直前になって物件が見つからないことにならないよう、避難者が早めに動こうと考えるのは当然だ。たまたま早めに新居が決まった事を理由に家賃補助の対象から外すのでは、真の「支援策」とは言えない。


福島県が公表している「総合的な支援策」。①の(4)に家賃補助が記されているが、対象となる契約日までは書かれていない。県職員は「現在、検討中」と話す

【避難者の心情理解していない県職員】
 福島県生活拠点課の担当者は、電話取材に対し「該当する避難者の方が家賃補助の対象とならない可能性はあります」と認めた。
 福島県は当初、避難を継続するため公営住宅から民間アパートに転居する場合、2017年4月から家賃を補助する「支援策」を公表。1年目は月に3万円。2年目は同2万円。最大で60万円。避難者からの求めもあり、それを「円滑な住宅確保のため」と2017年1月まで前倒しすることを決定した。今年2月に公表したが、申請受け付けの開始時期は「10月から11月頃」とするだけで、避難者が不動産業者と契約する時期まで明示していなかった。しかし、家賃補助の申請には契約書の提出が必要。10月に申請するにはその前から物件探しをするのは当たり前で、今になって「契約時期が早すぎる」と切り捨てられて納得できる避難者はいるまい。
 生活拠点課の担当者は「自己都合の住み替えとの兼ね合いがある」と話すが、説明になっていないのは明らかだ。退去を求められた避難者が新たな住まいを探すのがなぜ「自己都合の住み替え」なのか。夏に転居したら「避難継続」に該当しないと何をもって判断するのか。家賃補助の申請受け付け業務は外部に委託されるが、自己都合か否かを判断するようなマニュアルなど作れるのか。担当者は明快に答えられない。
 「家賃補助の対象となる契約日をいつにするのか、現在検討している。同じような相談は既にあり、どうするべきか結論が出るまで1カ月ほど時間が欲しい」と担当者。しかし、一方で「何で、そんなに早く動いてしまったのか」、「来年3月に打ち切りなのでこの時期は想定していなかった」とも。福島県は日頃、避難者との話し合いの席上で「避難者に寄り添う」、「ていねいに対応する」と話しているが、これが本音か。急かしておいて早く動いた避難者は救済しない。そんなことが許されるのか。あまりにも想定が甘い。避難者の心情を理解していない。担当者は苦し紛れに契約書の日付改ざんをほのめかしたが、そんな手段を避難者に強いる「支援策」など認められるのか。


住宅支援打ち切り撤回を求める抗議運動が続いている。福島県は「新たな支援策に移行する」と繰り返すが、その支援策も穴だらけだ

【避難者を等しく救済せよ】
 福島県や受け入れ自治体との交渉を続けている避難者支援団体の関係者は「早く動いた避難者が救済されないのは大問題だ」と憤る。そもそも住宅の無償提供打ち切りは、避難者の「今の住まいに住み続けたい」という意向に反して福島県が一方的に決定。しかも結論を先に決めてしまい、抗議行動や戸別訪問などで出た避難者の声を受けて、少しずつ制度変更を重ねていく有様。避難者から「順番が逆だ」との批判が根強い。
 打ち切りに法的根拠は無く、福島県職員は「これ以上の延長を国に求めるのは限界と判断した」と繰り返し説明するが、何がどう「限界」なのか不透明のまま。今まで通り、1年ごとの延長を続けていくことに何の問題があるのか。
 住宅の費用は受け入れ自治体が福島県に請求し、最終的には国が税金から支払う。国側は「福島県が打ち切りを撤回して延長を求めてきたら意向を尊重する」と避難者に対して答えており、住宅の無償提供に反対はしていない。内堀雅雄県知事が避難者の意向を受け入れていったん白紙に戻し、改めて話し合って無償提供を終了させるべきなのだ。結局は、2020年東京五輪で「復興」を世界にアピールするため避難者をゼロにしたい国と福島県の思惑が一致した愚策。「避難者の自立」に名を借りた「避難者切り捨て」なのだ。
 原発事故がなければ、避難する必要が無かった。放射線防護に政府の線引きは関係ない。避難者は等しく救済されるべきだ。


(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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