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【モニタリングポスト撤去】意見書で〝待った〟かけた西郷村議会。規制庁「村からの要望だったのに」、村「要望などしていない」。村民は「知らなかった」

「リアルタイム線量測定システム」と呼ばれるモニタリングポスト(MP)の撤去計画問題で、今月中にも27台の撤去が完了する予定だった福島県西白河郡西郷村の村議会が撤去中止を求める意見書を可決し提出。〝待った〟をかけた。撤去業者への発注まで済ませていた原子力規制庁は計画を白紙にしつつも「撤去はそもそも村からの要望だった」と戸惑うが、西郷村役場は「要望などしていない。国の方針に賛意を示しただけ」と反論する。一方で、子どもを小学校に通わせる母親たちは撤去計画そのものを「知らなかった」と首を傾げている。寸前で回避された〝住民不在の撤去〟。「ていねい」という言葉とは裏腹な「結論ありき」の国の姿勢が透けて見える。


【〝撤去第1号〟に出来るはずだった国】
 「そもそも村から『撤去して欲しい』と要望があって動いていたのですが…。でも、村議会で『撤去中止を求める』との意見書が可決されたので、意向を尊重しました」
 原子力規制庁監視情報課の担当者は戸惑った様子ながら、努めて冷静に語った。
 国としては、今年3月20日の原子力規制委員会で2400台のMP撤去方針が正式決定する以前から、西郷村側から撤去要請があったとの認識でいる。住民説明会を開き、地元の理解を得た上でMPを撤去するという他の自治体とは、ある意味〝別枠〟のような存在だった。「意向調査の段階でもそうでしたし、4月に開かれた行政区長会も『説明してくれれば良いから』と村役場から頼まれたほどです。説明に行った担当者からは、行政区長会では異論が出なかったどころか『早く撤去してくれ』とハッパをかけられたと聞いています。だから、われわれとしては村の推薦する業者に撤去作業を発注して準備を進めていたわけです」。
 今月18日に福島県庁の県政記者クラブで開かれた記者会見でも、原子力規制事務所(南相馬市)の南山力生地域原子力規制総括調整官が「具体的に撤去計画が進んでいるのは西郷村」、「村から同意いただいており、4月の行政区長会で直接、私が広報資料を使って説明した」、「出席者は50人くらいはいたと思うが、地区の代表の皆さんからは特段、御意見等は無かった。われわれの基本的な考え方に対して異論は無かった」、「こういう御時世なので、執行部が変わるとか当局の方が変わるとかなどで『ちょっと待ってくれ』という事になれば、別途協議したい」、「西郷村で住民説明会を開かないのは、村役場からの要望が無いから」などと話していた。この時点では、西郷村が「撤去第1号」になるはずだった。
 今月4日には、村内に設置されている27台のMPに「リアルタイム線量測定システムの撤去について」という紙が貼られた。「6月中旬から6月末までを予定し、撤去することとしております」、「今後、原子力規制庁から委託された工事業者が、各箇所のリアモニの撤去作業を行います」と予告されていた。西郷村議会が〝待った〟をかけたのは撤去作業の2日前のことだった。議会事務局から電話連絡を受けた原子力規制庁は急きょ、工事業者にキャンセルを伝えるなど対応に追われた。




西郷村立小田倉小学校に設置されているモニタリングポスト(リアルタイム線量測定システム)。撤去を予告の紙が貼られているが、寸前で中止された。保護者は一様に「撤去計画など知らなかった」と話し「廃炉作業で何がある分からないし、再び大きな地震が起きないとも限らないから撤去しなくて良い」、「数値の上昇を確認出来たところで県外に逃げられるわけでも無い」などと口にする。村民に計画がきちんと知らされないままの撤去は回避された格好だ

【村「国の方針に賛意示しただけ」】
 一方の西郷村。放射能対策課の担当者の言い分は国と微妙に異なる。
 「MPを設置した主体は村ではなく国。こちらから撤去を要望する、しないというものではありません。あくまで国の方針に賛意を示しただけ。村民からは〝ゆるやかな合意〟を得たと認識しています。確かに異論はありませんし、決まった以上は速く進めてくれという話はしましたが…。何も『どかせどかせ』という話ではありません」
 撤去業者の選定に関しても「原子力規制庁から紹介して欲しいと依頼されたが、特定の業者を紹介するとあっせんのようになってしまうので、建設業組合に相談するよう言いました」。MPに掲示された〝撤去予告〟も、本来は国がやるべきところを委託された業者が代行した。「こちらから行政区長や地権者に送付した通知を利用したようです」と村役場。髙橋廣志村長も「村議会の意思を尊重する」と語っており、住民説明会を開くか否かも含めて、今後については未定だという。
 議会事務局によると、撤去中止を求める意見書案は上田秀人村議(日本共産党)が20日の本会議に提出。その時点で既に議長を除く他の14人の村議が賛成者になっており、全会一致で原案通りに可決された。
 21日付で内閣総理大臣、経産大臣、環境大臣、原子力規制委員長あてに提出された意見書は「村内においても今なお、一部の山菜や川魚などに制限がかかっています。山林のほとんどがいまだに除染が行われていません」、「村民が、一日も早く安心して、慣れ親しんだ地域で生活するためにも、放射線監視装置(モニタリングポスト)が必要であり、モニタリングポストの数値を見ることにより安全性が確認できます」、「村内には多くの除染土壌廃棄物が仮置きされている現状からも、放射線監視装置(モニタリングポスト)の測定持続が必要と考えます」などとして「住民に対し充分な説明も無いままに撤去するのは中止すべきです」と結んでいる。
 福島県内では他に、福島市や三春町、須賀川市の議会からも撤去中止を求める意見書が原子力規制委員会などに提出されている。今後も意見書提出の動きは広まりそうだ。


西郷村が2017年12月、文書で原子力規制庁に寄せた意見の一部。確かに撤去計画そのものには村は賛意を示しているが、一方で小学校や公園など子どもたちが集まる場所での継続配置や保護者への説明を求める意見も記している。だが、実際には子育て世代にきちんと撤去計画が浸透しているとは決して言えない状態で撤去されようとしていた

【「大きな地震、起きない保証無い」】
 西郷村が国の撤去方針に反対してはいなかったとはいえ、全国の原発避難者訴訟などで原発事故に対する国の責任が相次いで認められている中で、今回の原子力規制庁の進め方には違和感が残る。西郷村役場の中には「MPの問題を地元市町村に押し付けるつもりか。そもそも事故を起こし、MPを設置したのは誰なのか。話が逆だ」と怒りをあらわにする職員もいる。さらに問題なのは、村で子育てをしている母親たちに、MP撤去計画が必ずしも十分に浸透していない事だ。
 村内の小学校に子どもを通わせている母親たちに取材をすると「そうなんですか?撤去するなんて話は知らなかった」と一様に話した。母親の1人は「初めの頃(原発事故直後)は数値を頻繁に確認していたけれど、最近はほとんど見ない。撤去するとかしないとかの話すら知らなかった」と苦笑した。「今後、廃炉作業で何もアクシデントが無いという保証も無いし、大阪のような大きな地震が再び起きないとも限らない。校庭の一角に設置されていても邪魔になるものでもなく、そういう意味では撤去せずに残しておいた方が良いかもしれない」と何人かの母親は継続配置を求めた。
 中には「何かがあって急に数値がはね上がった事がMPで確認出来たとして遠く福島県外に転居出来るわけでも無い。結局は今の小学校に子どもを通わせるしか無い…」と複雑な想いを口にする母親もいた。やはり、原子力規制庁は自治体の求めにかかわらず住民説明会を開き、住民の想いに耳を傾けるべきではないか。
 福島県議会でも、継続配置を求める意見書の提出が模索されている。原発政策を進めてきた側が「もはや空間線量が低く安定している」として撤去を進めるのが本当に「ていねい」、「寄り添う」という事なのか。今夜、福島県南会津郡只見町で最初の住民説明会が開かれる。


(了)
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鈴木博喜

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