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【モニタリングポスト撤去】これも忖度?「継続配置」に反対続出。「存在が風評被害招く」「事故当時を思い出させる」と大きく後退した福島市議会の意見書

「リアルタイム線量測定システム」と呼ばれるモニタリングポスト(MP)の撤去計画問題で、福島県内の市町村議会から「継続配置」や「撤去計画中止」を求める意見書の提出が相次いでいる中、福島市議会は6月18日の本会議で「一方的に撤去しないことを求める意見書」を採択。国に提出した。「継続配置を求める意見書」の提出を求める請願も出されていたが、自民党系市議を中心に「MPの存在が風評被害を招く」などと反対意見が続出。大幅に後退した文言での意見書提出となった。県庁所在地の福島市では、2020年東京五輪で野球・ソフトボールの一部開催が決まっている。市議会の忖度相手は〝風評払拭〟に取り組む木幡浩市長か内堀雅雄知事か。はたまた国なのだろうか。


【「撤去求める市民の声もある」】
 まるで、復興庁の福島復興局長を経て市長に就任した木幡浩市長の想いに呼応するかのような福島市議会の意思表示だった。
 6月4日付で福島市議会に提出されたMP関連の請願は2通。1つは「平和・人権・環境フォーラム福島地方会議」が提出した「リアルタイム線量測定システムの継続配置を求める意見書の提出を求める請願」。もう1つは、「新日本婦人の会福島支部」が提出した「リアルタイム線量測定システムを一方的に撤去しないことを求める意見書について」。
 表現は異なるものの、どちらも「撤去は時期尚早」、「継続を望む意見が数多く寄せられている」と基本的にはMPの撤去に反対している。しかし、与党系議員たちはストレートな反対表明に対して明確に「NO」を突きつけた。請願審査が付託された「経済民生常任委員会」に所属する佐々木優市議(日本共産党福島市議会議員団)は振り返る。
 「どの委員も『一方的に撤去しない』というのは当然だ、という事で全会一致で請願を採択すべきものと決定されました。しかし『継続配置を求める』請願に対しては、『今のまま、そっくりそのまま残すという事に対しては疑問がある』、『MPが存在する事によって福島県外から訪れた人たちへの風評被害を招く』、『もう撤去して欲しい、という市民の声もある』などと反対意見が出て、不採択とすべきと決まりました」
 経済民政常任委員会は9人で構成されるが、石原洋三郎委員長(ふくしま市民21)を除く8人のうち、3人が自民党系で最大与党会派の「真政会」。他に旧民主党系の「ふくしま市民21」、「公明党福島市議団」、「日本共産党福島市議会議員団」、やはり自民党系の「創政クラブ結」、「無所属」が1人ずつ。「社民党・護憲連合」の市議は、この委員会には所属していない。結局、「継続配置を求める意見書の提出」に賛成したのは佐々木市議と山岸清市議(ふくしま市民21)の2人だけだった。
 国政の勢力図がそのまま投影された形の意見書の陰にも〝風評払拭〟あり。福島県内の市町村議会からはこれまでに9通(三春町、新地町、石川町、福島市、西郷村、いわき市、須賀川市、二本松市、会津若松市)の意見書が原子力規制委員長などに宛てて提出されているが、「継続配置」を明確に求めていないのは福島市議会だけだ。






(上)福島市議会6月定例会に出された2つの請願。市議会は「継続配置」を賛成少数で不採択とし、「一方的に撤去しない」を採択。撤去計画そのものには反対しないという大幅に後退した形で意見書を提出した。
(中)新幹線の改札口に近い福島駅西口のモニタリングポスト。意見書提出を巡っては「MPの存在が風評被害を招く」などの反対意見が続出した。新幹線を降りてすぐの場所に放射線量を示すような機器が存在するのは〝復興〟の妨げになるということか
(下)福島市と同じ中通りの二本松市議会が衆参議長や総理大臣、復興大臣、原子力規制委員長などに提出した意見書。福島市議会と違い、ストレートに撤去に反対している

【市長「汚染土壌搬出までは継続を」】
 福島市議会6月定例会では、やはり日本共産党福島市議会議員団の小熊省三市議が一般質問の中で「福島市では372台のうち370台を撤去するという計画がある。市民からは『原発の廃炉まで30年~40年かかるのに撤去するのはおかしい』、『MPは空間線量の正確な情報を自分の目で確認出来る唯一のものだから撤去しないで欲しい』との声が多く出されている。撤去を中止するよう国に要望するべきだ」と質している。
 これに対し、木幡市長は「MP配置の見直しにあたっては、子どもたちや保護者をはじめ地域住民の心情に寄り添い対応する事が必要であって、現場保管されている除染に伴う除去土壌が搬出されるまでは線量測定を継続する事などを国に強く要望しているところであります。今後も国と十分に協議しながら対応してまいります」と答弁。廃炉作業完了まで配置の継続を求める市民の声とは異なるものの、少なくとも汚染土壌の搬出作業が終わるまでは撤去しないよう国に求めて行く考えを示した。
 しかし、木幡市長の本音もまた〝風評被害〟に重点が置かれている事は本紙4月19日号で報じた通りだ。廃炉作業が完了するまでMP配置を継続するよう国に求めて欲しいと要請書を提出した市民に対し、「モニタリングポストが存在することによる風評は存在するか?ありますね」、「福島第一原発が廃炉になるまで(継続配置して欲しい)と言うが、その影響はピンポイントではそんなに(福島市には)来ませんから。確かに原発事故で放射性物質は福島市にも降った。だから『要らない』と言っているわけでは無い。どの程度の密度にするかは別の議論でしょということ。市民の皆さんも今は現状維持を希望しているけれども、これから(考えが)変わるかもしれないし…」などと語り、市民を落胆させた。
 今年3月22日には、参議院の東日本大震災復興特別委員会で日本共産党の岩渕友参院議員が「住民の声を聞く場を設けて意見をよく聞いて、一方的な撤去は行わないということ、そして観測体制を住民の声に基づいて維持をするということを大臣に確認したい」と質問した。
 吉野正芳復興大臣は「復興庁としても、原子力規制庁に対し住民の方々に対する丁寧な説明を求めているところでございます。過日、私のところに規制庁やってまいりました。モニタリングポストを順次無くしていくというお話でしたけど、特に学校等々にはかなりのモニタリングポストがございます。まず、校長先生の意見を聞いたのかというところを指摘をさせていただきました。私のところに来た時には、まだ校長先生の意見等々は聞いておりません。そういう意味の、丁寧な説明、丁寧な対応、これを求めたところでございます」と答えたが、撤去そのものには反対していない。






(上)直近1年間の空間線量が0・23μSv/hを上回っている、として撤去計画から除外されている「福島看護専門学校」のMP。福島市内では他にも「信夫山子供の森公園」が同様の理由で撤去計画から除外されている。福島市内ではこの2台を除く370台が撤去されようとしている
(中)(下)福島市内の学校や公園に設置されているMP。木幡市長は「除染で取り除いた汚染土壌の搬出が終わるまでは継続配置を国に求めて行く」と語っている

【市職員に広まる「撤去無理だ」の声】
 福島市議会の佐々木優市議は「もちろん様々な意見があるのも事実で、『もうMPは必要無い』と言う人もいるでしょう。でも、MPが存在する事によって果たしてどのくらいの風評が生じているのか。具体的に表せる人なんていません。実際に風評につながっているという事は私自身は無いと思います。もう要らないという声ばかりに耳を傾けるのでは無く、まだ必要だという声も聞くべきです」と語る。
 MP撤去問題では2年前の市議会でも取り上げた村山国子市議(日本共産党福島市議会議員団)も「福島に住んでいる人が不安に思うのであれば継続して設置するべきです。他から来てどうこうでは無いですよね。そもそも、放射性物質って目に見えないですし、匂いも無い。唯一、数値として市民の目に触れられるというのがMPなんです。そこで安心を得て何とか福島で生活してきたというのもあるんです。『原発事故から7年経ったから』では無いと思います。全く関心が無くなっているのならまだしも、MPで数値を確認したいと言う人がいる限りは、配置を継続するべきだと思います」と継続配置を求めている。今月26日には日本共産党の地方議員による国との交渉が予定されており、その場でも議題にするという。
 「何と言っても廃炉作業がまだ終わっていないんですよね。これから廃炉作業が進む中で、放射性物質が飛散しているのに市民が知らないという状況もあり得るわけで、今回の撤去計画はそういった事を隠したいのではないかと勘繰りたくもなります」(村山市議)。
 佐々木市議は「『MPが存在する事によって原発事故の嫌な記憶を思い出してしまうと話す住民もいる』と口にした市議もいました。確かにそういう市民もいるのかも知れませんし、無視する事は出来ないとは思います。でも、放射線による被害を無かった事には出来ません」とも話す。しかし、それらの声は〝風評払拭〟の大合唱の中でかき消されようとしている。
 福島市環境放射線モニタリングセンターの担当者によると、市内に設置されている372台のうち「信夫山子供の森公園」と「福島看護専門学校」のMPは直近1年間の平均空間線量が0・23μSv/hを上回っているため、現時点では撤去対象から除外されているという。現在、住民説明会の開催について原子力規制庁と最終調整中で「早ければ『市政だより8月号』でお知らせできるのではないか」と担当者。市民会館やアオウゼを会場に9月にも開催される事が想定されている。市職員の間では「これだけ反対の声があがっている状況では、計画通り2021年3月末までに撤去するなんて無理だ」との見方が広まっているという。



(了)
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鈴木博喜

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