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【自主避難者から住まいを奪うな】支援策〝完全終了〟まで8カ月。「避難者ゼロ」へまい進する福島県~「復興の妨げ」と福島県議に暴言浴びた避難者の怒り

県民救済に消極的な福島県に、県外避難者の怒りが改めて爆発した。今月10日午後、福島県庁内で行われた避難者・支援者と福島県議会議員との意見交換会で浮き彫りになったのは、棄民政策に加担する与党系会派の壁の厚さ。同日午前にはひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)による福島県職員との12回目の交渉が行われたが、県側は家賃補助の延長も避難者実態調査も改めて拒否。8カ月後には、〝自主避難者〟も避難指示解除区域からの避難者も、いずれも住宅支援策が終了する。「避難の権利」を認めないのは国か、東電か、はたまた「2020年までに避難者をゼロにする」と掲げてきた地元の福島県か。東京五輪の陰で、避難者は〝復興〟の妨げ、と切り捨てられていく。


【「なぜ県議は動いてくれない?」】
 「議員さんがいらっしゃっているので…」
 福島県郡山市から神奈川県への避難を継続している松本徳子さん(「避難の協同センター」代表世話人)は静かに、しかし一言一言に想いをこめて語り始めた。
 「福島県にもかなりの責任があると思う。そもそも原発を誘致したのは福島県であって、今、避難先で困っているのは福島県民。私は神奈川県に避難しているが、神奈川県や神奈川県内の市町村が『福島からの避難者をこのままにしておくわけにはいかないだろう』ということで、議員の人たちもかなり動いてくれている。なんで福島の議員さんがもうちょっと動いてくれないのかな、と思う。これだけの被害を受けたにもかかわらず、なぜ福島県はもっと国に強く働きかけが出来ないのか。まして、国から訴えられるような、被告になるような、そういうシステムを作ってしまっている原因は福島にあると私は思っています」
 福島県庁内で行われた県議会議員との意見交換会。被曝リスクを避けるために県外避難をした福島県民の支援に消極的なのは、実は地元ではないのか─。わずか5分ほどだったが、立憲民主党や日本共産党の県議の前でも松本さんは遠慮しなかった。
 「本当にこの7年、県外避難者も、避難先から福島に戻って来た人も、避難出来ずに福島で生活している人もかなり苦しんでいる。それはやはり、ただの震災では無くて原発事故被害だからです。放射性物質は目に見えないし、今でも測れば高い。(避難元の)郡山市もホットスポットと呼ばれる場所はある。確かに除染をして空間線量は下がったが、地表面はまだ高い。放射線管理区域に相当するほどの土壌汚染が確認されている学校もたくさんある。そういうことを考えたら、じゃあどうするかという事をもっと県議会で話し合って頂ければと思う」
 母子避難した末に自死した友人を救えなかった無念は忘れない。
 「確かに国は悪い。言いたい事はもうたくさんある。でも、福島県があの当時、国任せではなく、もう少し独自の施策を打ち出していたら…。こんなに避難先で困って、自害しなければいけない人たちは出なかったと思う。いまだに原子力緊急事態宣言下であるにもかかわらず帰還ありきで、東京五輪を目前にして、とにかく福島からの避難者を帰還させようとしている。やっている事がまるっきりあべこべだ。もう少し福島県が本気になって取り組んでいただけないものか。大地がこれだけ汚染させられたにもかかわらず、〝風評被害〟だと言って福島県の中で避難者を差別化する。避難している人たちが福島を差別しているんだというような、県民同士を分断するようなやり方は、やっぱり福島県に問題があると思う」






(上)避難先の石川県から福島県福島市に戻って来たばかりの押山靖子さん。「放射能と共存する事は受け入れられないでいるが、家族が家族であるために戻る事を決めた」と涙ながらに語った。発言後はハンカチで顔を覆った
(中)雇用促進住宅からの退去を求められた訴訟の被告になっている武田徹さん(福島県福島市から山形県米沢市への避難を継続中)は「山形県に出来て、なぜ福島県に出来ないのか」と、〝自主避難者〟の実態調査を福島県職員に求めた
(下)ひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)による福島県職員との12回目の交渉が行われたが、県側は家賃補助の延長も避難者実態調査も改めて拒否した

【「みんな帰ってハッピーエンド」】
 松本さんが怒りをぶつけるのには理由がある。「思い出したくないけど」と前置きして、かつて自身が浴びた酷い言葉を口にした。
 「避難しているあなたたちが福島の復興を妨げているんだ」
 暴言の主は、福島県議会最大会派「自由民主党福島県議会議員会」の斎藤健治県議(須賀川市)だ。
 斎藤県議はさらに、神奈川県横浜市で起きた〝避難児童いじめ〟にも言及し「あんな所に避難したからいじめられるんだ。避難したあなたたちが悪い」という趣旨の発言をしたという。「あゝ福島の中ではこういう考え方なんだなと感じた」と松本さんは振り返る。
 立憲民主党の古市三久県議(県民連合、いわき市)は松本さんの言葉を受けて、「極めて端的な表現で、そういう事ですよ。納得いかないと思うけど。住宅支援とか様々な事についていろいろ発言している人は復興の妨げですと。そんな事を言わないでくださいというのが基本的なスタンスですね。だから、それを変えようとするのはなかなか難しい問題だと思う。原点に立ち返って市民運動を盛り上げないと」と、福島県議会も含めた福島県全体の現状を語った。
 「福島県はなぜ(避難者支援を)やらないかというと〝復興〟という事しか頭に無いんだよ。つまり福島県に避難者を帰還させて、何も無かったかのような状態をいかに早くつくるかと。それを国を挙げてやっている。予算も含めて。棄民ですよ、棄民。歴史に残る棄民政策なんです。だから区域外避難者の住宅もきちんと面倒を見ない。すべて無かったことにして、みんな福島に帰ってハッピーエンドという事を考えているんだよ」
 古市県議の言う通り、福島県は〝自主避難者〟向け住宅無償提供打ち切り後に行っている家賃補助(1年目月額3万円、2年目月額2万円)を来年3月末で終了させる。「延長の予定は無い」と県生活拠点課。避難指示が解除された区域からの避難者に対する住宅の無償提供も、現時点では来年3月で終了予定だ。
 「避難の協同センター」世話人の瀬戸大作さんが「原発事故避難者を公営住宅の特定入居に加えて欲しい」と迫ったが、県側は拒んだ。国交省住宅局は「公営住宅は、そもそも住宅に困窮する低所得者のためのもので、公募の原則がある。特定入居は公営住宅法の第22条で『災害によって住宅を失った場合』などに限って認めている。区域外避難者は支援対象地域内(避難元)に住宅がある人もいるので、一律に特定入居に加える事は出来ない」との考え方を変えておらず、福島県もこれに追随している形だ。






(上)福島県が2017年8月に公表した「お知らせ」。今もこの方針に変わりは無く、来年3月末で避難指示解除区域からの避難者に対する住宅の無償提供は打ち切られる。〝自主避難者〟も同様で、帰還困難区域以外の強制避難者と自主避難者が同じ立場になる
(中)厳しい表情で県庁交渉、県議との意見交換会に臨んだ瀬戸大作さん。「避難者の実態調査を」、「公営住宅の特定入居に原発事故避難者を加えて欲しい」、「内堀知事との話し合いをさせて欲しい」と迫ったが、福島県職員はいずれも拒んだ
(下)2012年12月、福島県が発表した『福島県総合計画「ふくしま新生プラン」』では、2020年度までに避難者をゼロにするという目標が掲げられている。東京五輪で世界に「福島の復興」をアピールするべく、〝避難者切り捨て〟は最終段階に入ったと言える

【「放射能との共存受け入れられぬ」】
 県議との意見交換には、母子避難先の石川県から今年6月、福島県福島市の自宅に戻った押山靖子さんも出席。「福島市に戻って来ましたが、今も放射能と共存する事は受け入れられないでいます」と涙ながらに語った。
 「2011年7月、放射能への不安を抱き、未就学児だった一番下の4歳の子どもを連れて山形県米沢市に母子避難。米沢と福島を行き来する生活になりました。その後2012年2月、父親の入院を機に帰還しました。上の子どもたち(14歳、15歳)の高校・大学受験や夫の考え方、両親の事があり、放射能は気になるものの、福島から離れる事が出来ない数年間がありました。夫が県外避難へ柔軟な考えを示した事をきっかけに2016年3月、再び一番下の子どもと2人で石川県に母子避難しました。4歳から9歳までさせなかった外遊びの時間を取り戻させたい、そんな想いが大きかったです」
 「先月、石川県から福島市に戻って来ましたが、今も放射能と共存する事は受け入れられないでいます。家族が家族であるために戻る事を決めました。家族が離れて暮らす難しさ。福島に居ても放射能から逃れられない苦悩…。あの日原発事故さえ無ければ、こんな苦しみは無かったはずなのに、なぜ東京の電気をつくる原発が福島にあって、自分たちだけが7年もこんなに苦悩しなければならないのでしょうか」
 再来年の東京五輪では、聖火リレーの出発地が福島県に決まった。国道6号を若者が走り、〝原発事故から立ち直った福島〟が世界に向けて発信される。その陰で「まだ自立出来ていないのか」と避難者は追い詰められる。それは世界には発信されない。イエスマンばかりが揃った福島県議会も避難者切り捨てに加担していると言わざるを得ない。避難者から「選挙で変えなければ」との声があがったが、原発事故避難者に選挙での変革を待つ時間的余裕は無い。
 意見交換会には福島県選出の岩渕友参院議員も出席したほか、金子恵美衆院議員、玄葉光一郎衆院議員、増子輝彦参院議員らの秘書も代理出席した。原発事故避難者救済に消極的なのは国会も同じだ。「とにかく動けば後は国が何とかしてくれる」という淡い期待は泡と消え、ついには切り捨てられようとしている避難者たち。放射性物質による汚染も津波や豪雨で自宅を失う事と同じだ。そこから始めないと救済は進まない。もちろん、避難出来なかった人々も含めて。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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