【モニタリングポスト撤去】郡山市で住民説明会。「撤去賛成」ゼロ。規制庁は「撤去強行しない」繰り返すも、撤去方針は撤回せず。市町村への移譲に含みも
- 2018/08/06
- 08:11
「リアルタイム線量測定システム」と呼ばれるモニタリングポスト(MP)の撤去計画問題で、原子力規制庁は5日午後、福島県郡山市の郡山市役所で住民説明会を開いた。6月25日に福島県南会津郡只見町で始まった住民説明会は郡山市で5カ所目。事前申し込みをした市民は約60人だったが、最終的には97人が参加。撤去に賛意を示した市民は無く、意見を述べた市民全員が継続配置を求めた。これまでに開かれた説明会でも撤去に前向きな意見は無くMP撤去は事実上とん挫している状態だが、規制庁は撤去方針は撤回しなかった。一方で維持管理費も含めたMPの市町村への移譲に対する不安も広がっている。
【「原子力規制庁を福島に置け」】
「福島県内の市町村議会が継続配置を求める意見書を提出しているんですよ。それは当然、原子力規制庁の方もご存知だと思います。そういう状況なんです。今日も『残して欲しい』、『継続して欲しい』、『増やして欲しい』という意見がほとんど。住民の意見を100%吸い上げて、規制委員長に『こういう結果でした』ときちんと報告するべきだと思います。その上で、継続配置に必要な予算を取ってください」
郡山市議の蛇石郁子さん(虹とみどりの会)は今年3月に撤去問題が浮上して以来、郡山市長や原子力規制庁への継続配置要請などを続けてきた。「空間線量が低く安定している」、「〝復興予算〟が平成33年(2021年)3月末をもって終わってしまう」などと繰り返す原子力規制庁に、蛇石さんは途中から叫びに近い声で怒りをぶつけた。
「規制委員会は六本木の一等地(「六本木ファーストビル」内)にあるじゃないですか。年間、どれだけの維持費がかかっているんですか?何だったら原子力規制委員会を福島に持ってきて欲しいですよ。維持管理に必要なお金(賃料など)を福島県内の自治体に落としてくださいよ。そのくらい考えていますか?福島県が原発事故の影響でどんな目に遭ったか。子どもたちをどう育てたら良いか悩んでいるお母さんたちが必死な想いで東京に行ったじゃないですか。今日、この場に来たくても来られないお母さんたちがまだまだいるんです。そういう背景を知って欲しいです。何だったら、ずっとここに住んで欲しいですよ。空間線量が低くなったから大丈夫だなんて言って欲しくないです。原発事故前の空間線量(0・04~0・06μSv/h)に戻るのに何年かかるんですか。原子力非常事態宣言も解除されていないのに、目に見えるMPを頼りにして来たのに…。しっかりと予算を獲得してください。それがあなたたちの仕事です」
これに対し、原子力規制庁監視情報課の武山松次課長は「当然、原子力規制委員会に報告して検討してもらう事になる。今の更田豊志委員長は『撤去を強行する事は無い』と記者会見でも言っているのでご理解いただきたい」と答えるにとどまった。



発言を求めて手を挙げる郡山市民。「撤去」への賛意はゼロ。継続配置を求める意見が相次いだ。住民説明会は予定を大幅に超え、18時近くまで続いた。原子力規制庁からの「説明」は30分ほど。開催時間の大半が質疑応答に割かれた=郡山市役所
【「説明会をガス抜きで終わらせるな」】
13時半に始まった説明会では、原子力規制庁側の「説明」は30分程度。開催時間の大半が、参加した郡山市民からの意見・質問に割かれ、武山課長が答える形で進められた。
「私たちは常に不安を抱えながら子育てしているのが実情です。『空間線量が低く安定しているからもう大丈夫』なんていう気持ちでなんて生活していません。MPの数値を見ながら自分を落ち着かせているんです。そのところをきちんと把握して欲しいです。堂々と撤去の説明をしているのに驚きます。今日の説明を聴いてますます不信感が募ってしまいました」(女性)
「〝撤去ありき〟でなく、住民の立場に立って欲しい。絶対にMPを減らすべきでは無い。逆に電柱ごとに設置しても良いくらいだ。貸し出し用の線量計を市役所に310台用意していると言うが、何か起きた時に市役所まで借りに行けと言うのか」(男性)
「あなたたちは福島に住んでいないから危機感が無いんだ。私たちはここで生きていかなければならないし、その一つのバロメーターがMPなんです」(女性)
「放射性物質は見えない、匂わない、味が無い。(存在を可視化出来るのは)MPしか無い。予算の問題では無いだろう」(男性)
これまでに開催された住民説明会同様、原子力規制庁の撤去方針に賛同する市民はいなかった。住民説明会そのものへの疑念や不信感を口にする住民もいた。
「住民説明会の趣旨がどうも良く分からないんです。原子力規制庁としては、2021年3月末までに2400台のMPを撤去するという方針を決めているんですか?決めているんですか?確認をしたいです。先ほどから『地元への説明は終わったという既成事実をつくるためにやっているのでは無い』と何度も答えているが、それが良く分からないんです」(男性)
「これまで何度も公聴会や住民説明会に参加してきたが、もうウンザリだ。ここはガス抜きの場では無いんです」(女性)
「なぜ福島市は住民説明会が2回開かれるのに、郡山市は今日だけなのか」(女性)
これに対し、武山課長は何度も「〝撤去ありき〟では無い」、「既成事実化のための住民説明会では無い」と繰り返した。その上で「3月20日の原子力規制委員会で撤去方針が出ているが、強行に撤去する事はしないと更田委員長も言っている。われわれの方針についてどうなのかという事を皆さんに聴いている」と説明した。


(上)郡山市内に設置されている「リアルタイム線量測定システム」。2021年3月末までの撤去を目指す原子力規制委員会に対し、市民からは継続配置を求める声が相次いでいる
(下)住民説明会では「ホットスポットが点在している中で撤去は不適切」という意見も出された。郡山市の「酒蓋公園」では、手元の線量計は0・3μSv/hを上回った
【「撤去を求める市町村もある」】
原子力規制庁側は「あくまで方針はたたき台。11月まで住民説明会を続け、原子力規制委員会に結果を報告して検討してもらう」と繰り返すが、一方で「確かに原子力緊急事態宣言下にまだあるが、避難指示区域は縮小されてきているし、状況に応じてモニタリングの方法を変える事も必要」(武山課長)、「『もう撤去してください』と言っている市町村もある。数値が低く安定しているMPについては行政目的は終えているし、〝復興予算〟も無くなるので、維持していくにしても新たな予算を取って来なければならない」(滝田敏宏課長補佐)とも。MPが存在する事による〝風評被害〟〝イメージダウン〟も念頭に置きながら、少しずつでも撤去を進めたいのが本音だ。
福島県議会の神山悦子県議(日本共産党福島県議団、郡山市)が「2月県議会が終わるのを待っていたかのように撤去方針が示された。本当は黙って撤去したかったのではないか。そもそも『配置見直し』ではなく『撤去』と表現するべきだ」と述べたが、御意見として受け止めるだけ。
年間維持費に関する質問には、武山課長が「約6億円」と答えたが、これに関して住民の間には「『そんなに配置を継続して欲しいのなら、市町村に移譲するから自分たちで維持しろ』と原子力規制委員会が言い出すのではないか」との不安がある。実際、説明会で武山課長は「残すにしても、どういう形でやるのがベストなのかは今後の話」、「原発事故には国にも一定の責任があるが、全て国の責任でやれと言われても無理がある。自治体の協力が不可欠」と発言。閉会後の取材でも「維持費も含めて市町村へ移譲する事も選択肢の1つにはある。ただ、何も決まっていない。いずれにしても予算は国民の税金なのだから、合理性が求められる」と語り、継続配置を求める自治体への移譲に含みを持たせた。
「周知が不足していて住民説明会の開催を知らない市民も多い」という意見も出されたが、郡山市原子力災害総合対策課は「会議室のキャパは200席だが参加者があふれなかった」として再度の開催には消極的。受付で参加者に身分証の提示を求めたのは「郡山市民である事、本人である事の確認のため」という。
次の住民説明会は今月22日、福島県田村郡三春町で開かれる。
(了)
【「原子力規制庁を福島に置け」】
「福島県内の市町村議会が継続配置を求める意見書を提出しているんですよ。それは当然、原子力規制庁の方もご存知だと思います。そういう状況なんです。今日も『残して欲しい』、『継続して欲しい』、『増やして欲しい』という意見がほとんど。住民の意見を100%吸い上げて、規制委員長に『こういう結果でした』ときちんと報告するべきだと思います。その上で、継続配置に必要な予算を取ってください」
郡山市議の蛇石郁子さん(虹とみどりの会)は今年3月に撤去問題が浮上して以来、郡山市長や原子力規制庁への継続配置要請などを続けてきた。「空間線量が低く安定している」、「〝復興予算〟が平成33年(2021年)3月末をもって終わってしまう」などと繰り返す原子力規制庁に、蛇石さんは途中から叫びに近い声で怒りをぶつけた。
「規制委員会は六本木の一等地(「六本木ファーストビル」内)にあるじゃないですか。年間、どれだけの維持費がかかっているんですか?何だったら原子力規制委員会を福島に持ってきて欲しいですよ。維持管理に必要なお金(賃料など)を福島県内の自治体に落としてくださいよ。そのくらい考えていますか?福島県が原発事故の影響でどんな目に遭ったか。子どもたちをどう育てたら良いか悩んでいるお母さんたちが必死な想いで東京に行ったじゃないですか。今日、この場に来たくても来られないお母さんたちがまだまだいるんです。そういう背景を知って欲しいです。何だったら、ずっとここに住んで欲しいですよ。空間線量が低くなったから大丈夫だなんて言って欲しくないです。原発事故前の空間線量(0・04~0・06μSv/h)に戻るのに何年かかるんですか。原子力非常事態宣言も解除されていないのに、目に見えるMPを頼りにして来たのに…。しっかりと予算を獲得してください。それがあなたたちの仕事です」
これに対し、原子力規制庁監視情報課の武山松次課長は「当然、原子力規制委員会に報告して検討してもらう事になる。今の更田豊志委員長は『撤去を強行する事は無い』と記者会見でも言っているのでご理解いただきたい」と答えるにとどまった。



発言を求めて手を挙げる郡山市民。「撤去」への賛意はゼロ。継続配置を求める意見が相次いだ。住民説明会は予定を大幅に超え、18時近くまで続いた。原子力規制庁からの「説明」は30分ほど。開催時間の大半が質疑応答に割かれた=郡山市役所
【「説明会をガス抜きで終わらせるな」】
13時半に始まった説明会では、原子力規制庁側の「説明」は30分程度。開催時間の大半が、参加した郡山市民からの意見・質問に割かれ、武山課長が答える形で進められた。
「私たちは常に不安を抱えながら子育てしているのが実情です。『空間線量が低く安定しているからもう大丈夫』なんていう気持ちでなんて生活していません。MPの数値を見ながら自分を落ち着かせているんです。そのところをきちんと把握して欲しいです。堂々と撤去の説明をしているのに驚きます。今日の説明を聴いてますます不信感が募ってしまいました」(女性)
「〝撤去ありき〟でなく、住民の立場に立って欲しい。絶対にMPを減らすべきでは無い。逆に電柱ごとに設置しても良いくらいだ。貸し出し用の線量計を市役所に310台用意していると言うが、何か起きた時に市役所まで借りに行けと言うのか」(男性)
「あなたたちは福島に住んでいないから危機感が無いんだ。私たちはここで生きていかなければならないし、その一つのバロメーターがMPなんです」(女性)
「放射性物質は見えない、匂わない、味が無い。(存在を可視化出来るのは)MPしか無い。予算の問題では無いだろう」(男性)
これまでに開催された住民説明会同様、原子力規制庁の撤去方針に賛同する市民はいなかった。住民説明会そのものへの疑念や不信感を口にする住民もいた。
「住民説明会の趣旨がどうも良く分からないんです。原子力規制庁としては、2021年3月末までに2400台のMPを撤去するという方針を決めているんですか?決めているんですか?確認をしたいです。先ほどから『地元への説明は終わったという既成事実をつくるためにやっているのでは無い』と何度も答えているが、それが良く分からないんです」(男性)
「これまで何度も公聴会や住民説明会に参加してきたが、もうウンザリだ。ここはガス抜きの場では無いんです」(女性)
「なぜ福島市は住民説明会が2回開かれるのに、郡山市は今日だけなのか」(女性)
これに対し、武山課長は何度も「〝撤去ありき〟では無い」、「既成事実化のための住民説明会では無い」と繰り返した。その上で「3月20日の原子力規制委員会で撤去方針が出ているが、強行に撤去する事はしないと更田委員長も言っている。われわれの方針についてどうなのかという事を皆さんに聴いている」と説明した。


(上)郡山市内に設置されている「リアルタイム線量測定システム」。2021年3月末までの撤去を目指す原子力規制委員会に対し、市民からは継続配置を求める声が相次いでいる
(下)住民説明会では「ホットスポットが点在している中で撤去は不適切」という意見も出された。郡山市の「酒蓋公園」では、手元の線量計は0・3μSv/hを上回った
【「撤去を求める市町村もある」】
原子力規制庁側は「あくまで方針はたたき台。11月まで住民説明会を続け、原子力規制委員会に結果を報告して検討してもらう」と繰り返すが、一方で「確かに原子力緊急事態宣言下にまだあるが、避難指示区域は縮小されてきているし、状況に応じてモニタリングの方法を変える事も必要」(武山課長)、「『もう撤去してください』と言っている市町村もある。数値が低く安定しているMPについては行政目的は終えているし、〝復興予算〟も無くなるので、維持していくにしても新たな予算を取って来なければならない」(滝田敏宏課長補佐)とも。MPが存在する事による〝風評被害〟〝イメージダウン〟も念頭に置きながら、少しずつでも撤去を進めたいのが本音だ。
福島県議会の神山悦子県議(日本共産党福島県議団、郡山市)が「2月県議会が終わるのを待っていたかのように撤去方針が示された。本当は黙って撤去したかったのではないか。そもそも『配置見直し』ではなく『撤去』と表現するべきだ」と述べたが、御意見として受け止めるだけ。
年間維持費に関する質問には、武山課長が「約6億円」と答えたが、これに関して住民の間には「『そんなに配置を継続して欲しいのなら、市町村に移譲するから自分たちで維持しろ』と原子力規制委員会が言い出すのではないか」との不安がある。実際、説明会で武山課長は「残すにしても、どういう形でやるのがベストなのかは今後の話」、「原発事故には国にも一定の責任があるが、全て国の責任でやれと言われても無理がある。自治体の協力が不可欠」と発言。閉会後の取材でも「維持費も含めて市町村へ移譲する事も選択肢の1つにはある。ただ、何も決まっていない。いずれにしても予算は国民の税金なのだから、合理性が求められる」と語り、継続配置を求める自治体への移譲に含みを持たせた。
「周知が不足していて住民説明会の開催を知らない市民も多い」という意見も出されたが、郡山市原子力災害総合対策課は「会議室のキャパは200席だが参加者があふれなかった」として再度の開催には消極的。受付で参加者に身分証の提示を求めたのは「郡山市民である事、本人である事の確認のため」という。
次の住民説明会は今月22日、福島県田村郡三春町で開かれる。
(了)
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