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【サン・チャイルド】唐突な巨大モニュメントに賛否両論。ていねいさ欠いた木幡市長。市議会へ事前報告無く、対応後手後手。共産党は撤去求め要望書、作者は謝罪

福島県福島市に今月3日から設置されている6・2メートルの巨大モニュメント「サン・チャイルド」を巡って、市民から賛否両論噴出している。作者のヤノベケンジ氏が自身のホームページ上で謝罪。寄贈を受けた福島市の木幡浩市長も「今後、市民の意見を聴いて再検討する」とのコメントを市ホームページで発表する事態になった。木幡市長は「市民の皆様にも受け入れていただけ、子どもたちやまちづくりにプラスになるものと判断した」としているが、市議会への事前報告も無く、批判への具体的な言葉も無し。結局のところ、7年間、被曝リスクと向き合ってきた市民へのていねいな説明もなされなかった事が〝炎上〟を拡大させた原因のようだ。


【市長「原発事故を風化させない」】
 何の説明にもなっていなかった。
 木幡市長は、今月13日15時に公表されたコメントの中で「私は、現代アートの愛好家ではありませんが、空を見上げ立ち上がるその姿には、困難に立ち向かう力強さと希望を感じます。また、右手に持つ小さな太陽は次世代のエネルギー問題が解決される『希望』を象徴しており、これらは福島復興の姿と重なり、私たちを励ましてくれるものと思いました」、「『防護服』のようなものを着ていたり、『カウンター』のデザインがゼロであることは、あくまで『原子力災害からの安全』の象徴であって、風評等に与える影響は限定的にとどまり、福島空港等での実績や近年の現代アートの集客力等を考慮すれば、市民の皆様にも受け入れていただけ、子どもたちやまちづくりにプラスになるものと判断しました」と作品への〝想い〟を改めて綴るにとどまった。市民のどのような意見を「真摯に受け止めるのか」。具体的な言及は無かった。
 実は、ヤノベ氏の「サン・チャイルド」が福島県内で披露されるのはこれが初めてでは無い。2012年夏に福島空港をメイン会場に行われた「福島現代美術ビエンナーレ2012」では、「福島にサン・チャイルドを運ぼう!ヤノベケンジ『サン・チャイルド』光臨プロジェクト」が発足。同プロジェクトは、作品について「震災後、ヤノベケンジが最初に制作した作品で、ヤノベ自身がかつてチェルノブイリに探訪した際に着用した放射能防護服を模した服を着た傷だらけの子どもが、ヘルメットを脱いで左手に持ち、右手には希望の太陽を持っている、という復興・再生のための象徴的な作品」と評価していた。同ビエンナーレ終了後も撤去されることなく、翌2013年3月まで福島空港内で延長展示された経緯がある。
 しかし今回は、福島駅近くで屋外での恒久設置だ。原発事故以降、汚染や被曝リスクと向き合ってきた市民がどう受け止めるか。なぜ福島市なのか。なぜこの作品なのか。福島市の木幡市長は時間がかかってでも、ていねいに説明するべきだった。
 7月6日、ヤノベ氏も同席して開かれた臨時記者会見では、「(原子力災害を)もう一切消し去りたいという気持ちの方もいらっしゃると思います。我々はこれからどんどん希望を持って前に前に進んでいかなければいけないですけれども、でもやっぱり原子力災害を受けたというこの事実、あるいはその我々のつらい思いを風化させてはいけないと思うんです。本当に私は福島のシンボルになる作品だと思う」、「福島県で本当に設置していいかという議論もあるかと思うのですが、そこは福島という名前が付いたわが街で展示をするのが、私は一番良いのではないかと思って、今回ぜひ福島市に寄贈いただきたいということでお願いいたしました」と取材陣に語っている。今回のコメントはこの域を出ていない。
 今回の寄贈・設置に市民の想いは置き去りにされていた。それどころか市議会への説明・報告すら無かったのだ。




(上)今年3月、木幡市長(写真右)が自身のツイッター上に掲載した写真。この時、福島市への寄贈構想が大枠でまとまった事を秘書課も認めている。真ん中がヤノベ氏。左端は「ふくしま自然エネルギー基金」代表理事の佐藤弥右衛門氏
(下)木幡浩市長が今月13日付で福島市のホームページに公表した「コメント」の一部。市職員は今後、どのような方法で市民から意見を聴くか検討するという

【約200万円の費用負担も独断?】
 日本共産党福島市議会議員団は10日、木幡市長宛てに「さまざまな問題を孕む巨大モニュメント『サン・チャイルド』の早急な撤去」を求める要望書を提出した。
 要望書は「モニュメントに異論が寄せられるのは、福島の現実とは大きく乖離しているからです」、「7年4カ月放射能被害に心身共に苦しめられた市民の感情に寄り添わない、まさに福島市の姿勢が問われる問題でもあるからです」として、①なぜ放射線量が「000」の表示なのか②なぜ防護服とヘルメットなのか③事実に則しない巨大モニュメントを復興のシンボルとして設置することは教育的にも不適切─と撤去を求めている。
 同党の市議は「議会に事前の説明も報告も何もありませんでした。議会を通し、時間をかけて市民にていねいに説明をしていたら、ここまで大きな騒ぎにはなっていなかったと思います。木幡市長の立ち位置は、市民側では無く国・東電側です」と話す。福島市で子育て中の母親は「木幡さんはあの頃、福島市で子育てをしていないから、私たちの想いなど理解出来ないのではないでしょうか」と厳しい。
 「サン・チャイルド」が設置されている「こむこむ館」の担当者によると、モニュメントの寄贈にあたっては作者のヤノベ氏と福島市の間に入る形で「一般財団法人ふくしま自然エネルギー基金」、「一般財団法人ふくしま未来研究会」の2つの団体がかかわっているが、福島市の費用負担はゼロでは無く、設置に際しての基礎設計や除幕式の委託費用などは市の負担が生じているという。
 「現時点では200万円かからないくらいの負担です。『こむこむ館』は年間数億円の予算があり、今回は費用負担が高額にならないので市議会へは報告しませんでした。もちろん、金額が小さいからどうでも良いという事ではありませんが…。設置費用についてはヤノベさんも一部負担しています」と担当者。今年2月頃、木幡市長やヤノベ氏、両団体とは別の第三者から設置に関する打診を受けたという。「他にも候補地が複数あったようだが、具体的には聞いていません」。
 1枚の写真がある。作者のヤノベ氏を囲むように木幡市長、「一般財団法人ふくしま自然エネルギー基金」代表理事の佐藤弥右衛門氏(大和川酒造会長)が笑顔を見せている。今年3月2日朝、木幡市長のツイッターに次の文章とともに掲載された。この〝軽さ〟に、市民感情との乖離が伺える。
 「現代美術家ヤノベケンジさん佐藤弥右衛門さんと。以前倉敷の大原美術館で、ヤノベさんのサンチャイルドを鑑賞。再生・復興を目指す人々の心に、夢と勇気を与える希望のモニュメントに大きな感銘を受けました❤ 福島でも何か起きるかも!? We❤ふくしま❗」
 福島市秘書課は「寄贈の話が具体化したのはこの頃です」と認める。「確かに、議会に事前の説明や報告はしていません。市長としては市民アンケートなどで意見を聴き、改めて今後どうするか検討したいということです」と秘書課。「撤去も選択肢のひとつになるだろう。お盆明けの来週にも、どのような形で市民の意見を聴くか早急に検討を始める」と説明している。




福島駅東口近くの「こむこむ館」に設置された巨大モニュメント「サン・チャイルド」。「こむこむ館」にも否定的な意見が電話で寄せられているが、今のところ撤去せずに設置を継続する方針だという=福島県福島市早稲町

【作者「直接、福島市民と対話したい」】
 A4判3枚にわたる「声明文」はもはや、「謝罪文」だった。
 「今回、木幡市長からのご厚意を受け、《サン・チャイルド》を設置させていただきましたが、突然、設置されて驚かれた方、不快に思われた方がいましたら改めてお詫び申し上げます。もとより市民の皆様を傷付ける意図は全くありませんので心を痛めております」
 インターネット上には、賛否どちらの意見も書き込まれた。「こむこむ館」によるとこれまでに30件ほどの電話があり、賛否ともにあるが否定的な意見が多いという。それらを受ける形で今月10日、「《サン・チャイルド》設置について」と題する声明文が作者・ヤノベケンジ氏のホームページに掲載された。
 「私の作品が一部の方々に不愉快な想いをさせてしまったことについて、大変申し訳なく思っています」で始まる声明文では、「1991年の美浜原発事故をきっかけに『放射能』をモチーフにした作品の制作をはじめ、1997年には原発事故後のチェルノブイリに、ガイガー=ミュラー計数管を付けた自作のスーツを着て訪問しました」、「日本で原発事故が起きたとき、長年、『放射能』をモチーフにした作品を作り続けてきた私は、ご縁もあった福島の方々に対してどのような行動をすべきか悩みました。今度は創作によって、人々を勇気づけるような作品を作りたいと思いました」と「サン・チャイルド」制作に至った想いを綴っている。
 その上で、「大気が奇麗になったことを表すようにヘルメットを脱いで深く息をし、胸のカウンターは安全を示すゼロになっています。もちろん、自然放射線があるので、空間線量がゼロになることはありませんが、『原子力災害がない世界』という象徴的な意味を込めました。そして、右手の小さな太陽は、新たなエネルギーや未来の希望を表しています」、「また、衣装は『防護服』のようではありますが、巨大な問題に立ち向かう甲冑であり、宇宙服のような未来的なイメージも込めていました」と作品のコンセプトを改めて説明している。
 「作品解説の際、『防護服』や『ガイガー・カウンター』と簡略化して説明してしまったことも誤解を受けてしまった点だと反省しています。『放射能』に対する知識の正確さが、震災前と比較にならないくらい求められていることに配慮すべきでした」とも書いたヤノベ氏は、「しかるべき時に、直接、市民の方々にお会いしてご意見をお聞きし、お話しする機会を持つために、お伺いしたいと思っています。その中で皆様の御理解が得られたら嬉しいですが、今後の取扱いは福島市や関係者と話し合っていきたいと思います」として、福島市民と直接、対話する機会を設けて理解を得たい考えを示している。
 だが、「こむこむ館」の担当者は「ヤノベさんが福島市に来るのか、市民とどのような形で対話をするのかも含めて、具体的には何も決まっていない」と話している。
 なお、ふくしま未来研究会にもメールで作品寄贈との関わりなどを問い合わせているが、14日19時までに返事は無い。



(了)
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鈴木博喜

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