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【自主避難者から住まいを奪うな】「避難継続への支援は復興の妨げ」。驚くべき理屈で意見書提出に反対した自公の「避難の権利」軽視~東京・港区議会

東京・港区議会本会議が22日午後開かれ、区内への避難者から提出されていた「原発事故避難者への住宅支援継続の意見書を求める請願」は採択されず、継続審査となった。政府の避難指示の無い〝自主避難者〟に関し、福島県は2017年3月末での住宅の無償提供打ち切りを決めているが、議席の過半数を占める自公の区議が「復興に向けて戻ってきて欲しいという福島県の意向に水を差す」と、驚くべき理屈で住宅支援継続に反対した。そこには「避難の権利」も「弱者救済」も子ども被災者支援法の理念も無い。帰還こそが復興という発想で、戻らない避難者が切り捨てられていく。避難継続はわがままか。復興の妨げか。打ち切りまで8カ月。


【「戻ってきてと言ってる…」】
 あっという間だった。
 港区議会本会議。総務常任委員長が「継続審査」でまとまったと早口で報告。議員の動議で、委員長報告通りに処理されることが決まった。国への意見書提出は、早くても9月、もしくは12月の区議会に持ち越されることになった。
 請願の審査を付託された総務常任委員会で請願の「不採択」を主張したのは、いわゆる与党にあたる「自民党議員団」と「公明党議員団」。両会派の所属議員は計18人で、全議員の過半数に達する。委員会は9人の区議で構成されるが、委員長を除く8人のうち自公は逆に3人。委員会で「採択」の結論を出すことも可能だったが、本会議で「不採択」にされてしまうと請願そのものが潰されてしまう。第二会派「みなと政策会議」の区議は「あえて継続審査にすることで今後の意見書提出の余地を残した」と語る。
 「福島県は除染を進め新たな支援策を用意して、復興に向けて少しでも県民に戻って来て欲しいという想いが強いのでしょう。福島県が住宅提供を延長しないと決めた。それなのに、われわれが避難先に残りやすいように国に意見書を出すなんて差し出がましいですよね」
 自民党議員団の男性区議は「個々の事情は分かりますが」と前置きしながら、そう語った。「放射線量に対する考え方は千差万別ですが、国や福島県が出している数値は科学的根拠に基づいたものですからね」とも。取材に同席した女性区議も「お話を伺うと心が揺らぎます。心情は理解できますが、しかし…」と話した。気持ちは分かるが避難の継続は復興に逆行するので応援出来ない、というのが自民党区議団の言い分だった。反対は会派の総意だという。
 男性区議は、出来得る支援の方法として「長寿の集いで歌謡ショーなどがありますから、避難者を招待して少しでも気の紛れになれば…」と挙げた。しかし、避難者が求めているのはストレス解消ではない。避難生活の根幹である住まいの安定だ。そもそも原発事故が無ければ避難などする必要がなかった。女性区議はこうも言った。
 「何も、冷たく不採択を主張したわけでは無いんです」
 であれば、笑顔で避難者にこう言えばいい。
 「いつまでも避難していないで帰りましょう。復興の足を引っ張っていますよ」と。


国への意見書提出を求める請願を「継続審査」とした東京・港区議会。最大会派「自民党議員団」は「帰還して欲しいと願う福島県の意向に反することは、復興を妨げることになる」と不採択を主張した

【怒る区議「それでも子の親か」】
 「原発事故避難者への住宅支援継続の意見書を求める請願」は、港区内で避難生活を送る避難者が今月15日に提出。避難者向け住宅の無償提供の延長や来年3月末で退去を迫らないことなどを意見書に盛り込むよう求めていた。添えられた賛同署名は970筆超。港区在住で、避難者支援を続けている宮口高枝さん(68)が総務常任委員会で請願の趣旨説明をした。A3判で3枚の資料を用意し、学校敷地内の土壌汚染や福島県内での保養相談会の様子などを交えながら、避難を継続する必要性を訴えた。「避難者自身の話には、目に涙を浮かべる委員もいた」と振り返る宮口さん。結果として採択には至らなかったが、逆に不採択とならなかったことで、意見書提出の可能性は残った。「今後も署名を集め、先ごろ発足した『避難の協同センター』とも連携しながら頑張っていきたい」と話す。
 港区も福島県も、個人情報の保護を理由に避難者が区内のどこで生活をしているか明かさない。都営住宅に700枚近くのチラシを配って、避難者交流会を告知した。地道な取り組みを通して、福島県に戻りたくない、避難生活を続けたいと考える人の支援に少しでもつながって欲しいと願う。「この春、いわゆる孤独死の方が見つかりました。亡くなって一週間後の発見でした」(宮口さん)。もう、そんな悲劇は繰り返したくない。その一心で活動を続けている。
 自身も小学生の娘の母親である「みなと政策会議」所属の女性区議(社民党)は「自公の区議にとっては他人事なのでしょう。弱い立場の人々を助けてあげるのが政治なのに…」と怒りを露わにした。この区議は総務常任委員会を傍聴した際、意見書提出に反対した自民党区議団の女性区議に「あなたにも子どもがいるでしょう。自分が避難者の立場だったら、この状況で福島に帰れるの?」と問い質したという。「彼女は黙って何も答えられなかった。自分さえ良ければ避難者の事などどうでも良いのでしょうね。戻るも戻らないも、どちらの選択も尊重されるべきです」。避難者は委員会で「自分ら年寄りは良い。せめて子どもたちを守って欲しい。汚染地に戻させないで欲しい」という趣旨の発言をした。しかし、そんな願いも「復興推進」の名の下にかき消されてしまった。


避難者らは新しい都知事への期待も大きい。鳥越俊太郎候補の集会では、避難者自ら住宅問題を知ってもらおうと参加者にビラを配った=7月18日、東京都千代田区

【都知事候補者への期待】
 一方で避難者支援の動きも加速している。
 「避難の協同センター」は今月18日夜、千代田区内で開かれた都知事選候補者・鳥越俊太郎氏の市民応援団決起集会で急きょ、参加者に住宅打ち切り問題を知ってもらおうとビラを配った。センターの関係者は「立候補を取りやめた宇都宮健児さんが、記者会見で『都内にもたくさんの避難者がいる。ところがこうした避難者に対して、来年3月住宅支援を打ち切ろうとする動きがある。こういう被災者・避難者の方を私は放置はできない』とはっきり言っていた。宇都宮さんの政策を鳥越さんにも引き継いで欲しい。そのために行動を起こしました。東京が替われば全国にも波及します」と語った。
 都は、都営住宅への優先入居枠を200世帯分用意したが、それでも実際の避難世帯の3分の1にすぎない。「残りの400世帯は切り捨てられてしまう」とセンター関係者は危機感を募らせる。
 地方議会による国への意見書は、静岡市議会、京都府議会からも提出された。「原発事故被害者の救済を求める全国運動」の集計では、北海道から京都府まで16自治体から意見書が提出されている。神奈川県内では今年6月、茅ケ崎市議会が「原発事故避難者への住宅支援の継続を求める意見書」を全会一致で可決しているが、9月の神奈川県議会でも同様の意見書を国に提出してもらおうと、同県への避難者が県議会の会派を巡る予定だ。
 「避難継続への支援は復興の足を引っ張る」と驚くべき理屈を展開する自民党の港区議。これもまた、アベノミクスなのだろうか。そこには、原発事故による被曝リスクや「子ども被災者支援法」の理念など存在しない。住宅支援打ち切りまで8カ月。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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