【福島県知事選2018】福島市で立候補予定者4人が公開討論会。現職「復興着実に進んでいる」。対立候補は「避難者切り捨てるな」、「進まぬ復興伝わっていない」
- 2018/10/09
- 09:17
福島県知事選挙(11日告示、28日投開票)を前に立候補予定者による公開討論会が8日夜、福島県福島市で開かれ、現職を含む4人が参加。7つのテーマについての考えを語った。公共事業重点型の〝復興〟をさらに進める現職か。風評被害では無く実害ととらえ、県外避難者も含めた被害者救済や若者活躍の場創出を訴える新顔か。空席ばかりが目立った公開討論会で、4人は何を語ったのか。次の県知事には誰がふさわしいのか。4人の発言を紹介し、投票の一助としたい。公益社団法人日本青年会議所東北地区福島ブロック協議会の主催。
【現職「風評払拭進める」、3氏「実害だ」】
公開討論会に参加したのは、自己紹介順に高橋翔氏(30)=会社社長、葛尾村=、町田和史氏(41)=日本共産党福島県委員長、福島市=、金山屯氏(78)=白河市=、内堀雅雄氏(54)=現職=の4人。3分間で自己紹介をした後、「震災・復興」、「風評被害対策」、「防災・安全」、「人口流出・暮らし」、「子育て・教育」、「地方創成・産業」、「医療・介護・福祉」の7つのテーマについての考えを順番に述べた。
現職・内堀知事の姿勢が鮮明になったのは、やはり「震災・復興」と「風評被害対策」での各氏の発言だった。
内堀氏は「避難指示が解除された地域では、住民の帰還が一歩一歩進んでいる。しかし、まだまだこれからというのが現状。生活の利便性を支える交通インフラの整備、医療・介護サービスの確保、商業施設や教育環境の整備、鳥獣被害対策など帰還の促進に向けた広域的な課題に取り組む必要がある。福島イノベーションコースト構想に基づいた新技術や新産業の創出を通じて雇用を生み出しながら、避難地域の復興をさらに前へと進めていく必要がある」、「風評払拭に特効薬は無いが、ここ数年は着実に風評払拭が前に進んでいる。米、桃、梨、牛肉など福島の農産物の輸出量は昨年、震災前の水準を超え、過去最高となった。市長村長も世界各地で一生懸命にトップセールスをし、確実に成果を上げている。一方で風評が根強く残っているのも現実。農産物の価格差解消は進んでいない。福島産農産物の輸入規制をかけている国や地域がいまだに残っている。マイナスの評価が続いている現実もある。福島県産農産物の品質の高さ、美味しさ、安全性が伝わるよう国内外に発信する攻めの姿勢で販路拡大に取り組む」と語った。
これに対し、町田氏は「インフラは大事だが、県民のためになっている事が必要。また、福島第一原発の廃炉作業を本気で進める事が大事。廃炉を東電任せにするのでは無く、国がもっと責任を持つべきだ。新潟県のように福島県でも原発事故の検証委員会を立ち上げる事も出来るだろう」、「風評被害と言うが、誰によってどんな被害になっているのか。実害だと思う。もちろん勘違いをしている人もいるが、政治や行政が信頼されていない。米の全量全袋検査は継続するべきだと思う。汚染水の海洋放出は、トリチウム以外の放射性物質も8割が基準値を超えている。国も東電も原発事故前と全く体質が変わっていない中で、信頼しろ、風評を無くそうなどというのは虫の良い話だ。県政は明確に海洋放出に反対するべきだ」と語った。
高橋氏は「前に進みながらも7年前と何ら変わっていない面もあるが、東京や西日本には知られていない。風化してしまっているし、興味を持たれていない。いくらPRしても情報が全然伝わっていない。福島県民は自分たちで何とかしなければいけない。次世代の人材育成が全てだ。また、浜通りを世界最大の観光地にしたい」、「応援という意味で福島県産を買ってあげようという人もいるが、福島から離れるほど、可能であれば避けたいというのが特に子育て世代の本音だ。わざわざ福島県産を買わない。選びたくないというのが僕らの世代の本音であり現実。PRはもちろん必要だが、原発事故を忘れるのを待つしか無い。お金をかけても頭打ちになる」。
金山氏は「県庁を福島市から郡山市に移転させて新都心をつくる」、「風評では無く間違いなく実害だ。原発事故後、NHKや学校は被曝防護に消極的だったため、放射線から避ける方が風評を広めているかのような事を言われた。万が一健康被害が生じた場合、NHKや学校は責任を取ってくれるのか」と語った。



(上)県知事選挙の立候補予定者がそれぞれの考えを語った公開討論会。周知不足のせいか関心が低いのか、客席は関係者とメディアばかりでガラガラだった=福島県福島市の「とうほう・みんなの文化センター」大ホール
(中)83%を超える高い支持率を誇る現職の内堀知事。これまで通り、避難者の帰還促進や農産物の風評払拭を掲げる。地元記者クラブには「今から当選確実」の声も
(下)11日に告示される福島県知事選挙。原発事故後の内堀県政への審判でもあるが、県民の関心は決して高まっているとは言えない。高橋氏は「若者が投票に行くよう呼びかけたい」と語った
【現職は被曝リスク、避難者支援に触れず】
原発事故後、2回目の福島県知事選挙。前回2014年の知事選挙では、副知事だった内堀氏が49万票を得て圧勝した(投票率は45・85%)。
再選を目指す内堀氏は、地元紙の世論調査で過去最高の83・6%の支持率を誇る。公開討論会でも4年間の〝実績〟を今後もさらに進めると語ったが、公共事業型の施策ばかり。放射能汚染や被曝リスクへの言及は一切無く、自身が当事者の願いを無視して打ち切った〝自主避難者〟向け住宅の無償提供など、原発事故被害者救済に触れる事は無かった。公開討論会は、1人ずつステージの中央で〝最後の訴え〟をして閉会したが、そこでも「危機意識は必要だが、悲観的になってはいけない。福島県の復興は間違いなく前に進んでいる。希望を持つ事が原動力になる。大胆・積極的、きめ細やかな挑戦が未来を切り開くと確信している。子どもたちのために危機を希望に変えていく」と支持を求めた。
これに対して、町田氏は「安倍政権が原発事故の被害を終わった事にしようとしている。福島県民の苦しみの背景には、安倍政権の悪政がある。内堀県政は県民の方を向いているのか、安倍政権の方を向いているのか。国や東電にはっきりとものを言える、そういう福島県政をつくっていく。イノベーションコースト構想には昨年も今年も数百億円もの公費が注ぎ込まれている一方で、原発事故避難者への住宅提供を打ち切る。本当にこれで良いのか。トップダウンの政治では無く、ボトムアップの県政。県民の声が生かされる県政へと転換させていきたい。一緒に新しい県政をつくろう」と語った。
高橋氏は「人財育成、産業育成が要となる。こうやって僕のような若い世代が立候補する事も、もっと市町村レベルで起きていい。25歳から被選挙権が生じるのだから、立候補出来ない雰囲気をまず無くしていかなければならない。そうしないと若い人のための街づくり、地域づくりは出来ない。世代間抗争はもうやめましょう。目先の事ばかりを考えず、50年先を見据えたい」と訴えた。
金山氏は「天皇制を中心とした平和な日本が大好きです。日本人に生まれて本当に良かった。『天皇陛下万歳』と言って多くの人が死んでいった先の戦争が非難されがちだが、78歳になった今、『天皇陛下万歳』と言って死んでいける幸せをしみじみを感じている」と涙ながらに語った。




(上)「国や東電にはっきりとものを言える、そういう福島県政をつくっていく」と訴えた町田和史氏
(中)高橋翔氏は「こうやって僕のような若い世代が立候補する事も、もっと市町村レベルで起きていい。25歳から被選挙権が生じるのだから、立候補出来ない雰囲気をまず無くしていかなければならない」と若者に呼びかけた
(下)突然「天皇陛下万歳」と叫び、「『天皇陛下万歳』と言って死んでいける幸せをしみじみを感じている」と語って聴衆を驚かせた金山屯氏
【「新興産業を支える気があるのか」】
原発事故が起き、最も大きな被害を受けた県での2回目の知事選挙。しかし、周知不足がたたったか、客席はガラガラ。青年会議所関係者と取材者ばかりが目立った。国政同様に〝内堀一強〟の中で、投票率は大幅に下がるとみられている。県議会で唯一、野党の共産党が独自候補擁立に難航したことも、関心の低下に拍車をかけた。
福島県内の政財界、自公から圧倒的な支持を受ける内堀知事に、新顔3人が挑む福島県知事選挙は11日に告示される。吉野正芳前復興大臣は在任中、内堀知事を「余人をもって代えがたい」と最大級の賛辞で持ち上げてみせた。
2020年の東京五輪に向けて、公共事業重点型の〝復興〟を進める現職がどれだけの信任を得られるかに注目が集まる。従来型の見方では、盤石の現職と共産党系候補の町田氏との一騎打ちだが、30歳の高橋氏はこの日も「起業の障害となっているのは県庁。若手職員は非常に頑張っているが、課長クラス、部長クラスとの温度差が大きい。県庁は新興産業を支える気があるのか」と語るなど、歯に衣着せぬ発言で若者の支持を集める可能性はある。
これからの福島をどうするのか。3人の候補者それぞれの訴えに耳を傾けて選択される事を願う。
(了)
【現職「風評払拭進める」、3氏「実害だ」】
公開討論会に参加したのは、自己紹介順に高橋翔氏(30)=会社社長、葛尾村=、町田和史氏(41)=日本共産党福島県委員長、福島市=、金山屯氏(78)=白河市=、内堀雅雄氏(54)=現職=の4人。3分間で自己紹介をした後、「震災・復興」、「風評被害対策」、「防災・安全」、「人口流出・暮らし」、「子育て・教育」、「地方創成・産業」、「医療・介護・福祉」の7つのテーマについての考えを順番に述べた。
現職・内堀知事の姿勢が鮮明になったのは、やはり「震災・復興」と「風評被害対策」での各氏の発言だった。
内堀氏は「避難指示が解除された地域では、住民の帰還が一歩一歩進んでいる。しかし、まだまだこれからというのが現状。生活の利便性を支える交通インフラの整備、医療・介護サービスの確保、商業施設や教育環境の整備、鳥獣被害対策など帰還の促進に向けた広域的な課題に取り組む必要がある。福島イノベーションコースト構想に基づいた新技術や新産業の創出を通じて雇用を生み出しながら、避難地域の復興をさらに前へと進めていく必要がある」、「風評払拭に特効薬は無いが、ここ数年は着実に風評払拭が前に進んでいる。米、桃、梨、牛肉など福島の農産物の輸出量は昨年、震災前の水準を超え、過去最高となった。市長村長も世界各地で一生懸命にトップセールスをし、確実に成果を上げている。一方で風評が根強く残っているのも現実。農産物の価格差解消は進んでいない。福島産農産物の輸入規制をかけている国や地域がいまだに残っている。マイナスの評価が続いている現実もある。福島県産農産物の品質の高さ、美味しさ、安全性が伝わるよう国内外に発信する攻めの姿勢で販路拡大に取り組む」と語った。
これに対し、町田氏は「インフラは大事だが、県民のためになっている事が必要。また、福島第一原発の廃炉作業を本気で進める事が大事。廃炉を東電任せにするのでは無く、国がもっと責任を持つべきだ。新潟県のように福島県でも原発事故の検証委員会を立ち上げる事も出来るだろう」、「風評被害と言うが、誰によってどんな被害になっているのか。実害だと思う。もちろん勘違いをしている人もいるが、政治や行政が信頼されていない。米の全量全袋検査は継続するべきだと思う。汚染水の海洋放出は、トリチウム以外の放射性物質も8割が基準値を超えている。国も東電も原発事故前と全く体質が変わっていない中で、信頼しろ、風評を無くそうなどというのは虫の良い話だ。県政は明確に海洋放出に反対するべきだ」と語った。
高橋氏は「前に進みながらも7年前と何ら変わっていない面もあるが、東京や西日本には知られていない。風化してしまっているし、興味を持たれていない。いくらPRしても情報が全然伝わっていない。福島県民は自分たちで何とかしなければいけない。次世代の人材育成が全てだ。また、浜通りを世界最大の観光地にしたい」、「応援という意味で福島県産を買ってあげようという人もいるが、福島から離れるほど、可能であれば避けたいというのが特に子育て世代の本音だ。わざわざ福島県産を買わない。選びたくないというのが僕らの世代の本音であり現実。PRはもちろん必要だが、原発事故を忘れるのを待つしか無い。お金をかけても頭打ちになる」。
金山氏は「県庁を福島市から郡山市に移転させて新都心をつくる」、「風評では無く間違いなく実害だ。原発事故後、NHKや学校は被曝防護に消極的だったため、放射線から避ける方が風評を広めているかのような事を言われた。万が一健康被害が生じた場合、NHKや学校は責任を取ってくれるのか」と語った。



(上)県知事選挙の立候補予定者がそれぞれの考えを語った公開討論会。周知不足のせいか関心が低いのか、客席は関係者とメディアばかりでガラガラだった=福島県福島市の「とうほう・みんなの文化センター」大ホール
(中)83%を超える高い支持率を誇る現職の内堀知事。これまで通り、避難者の帰還促進や農産物の風評払拭を掲げる。地元記者クラブには「今から当選確実」の声も
(下)11日に告示される福島県知事選挙。原発事故後の内堀県政への審判でもあるが、県民の関心は決して高まっているとは言えない。高橋氏は「若者が投票に行くよう呼びかけたい」と語った
【現職は被曝リスク、避難者支援に触れず】
原発事故後、2回目の福島県知事選挙。前回2014年の知事選挙では、副知事だった内堀氏が49万票を得て圧勝した(投票率は45・85%)。
再選を目指す内堀氏は、地元紙の世論調査で過去最高の83・6%の支持率を誇る。公開討論会でも4年間の〝実績〟を今後もさらに進めると語ったが、公共事業型の施策ばかり。放射能汚染や被曝リスクへの言及は一切無く、自身が当事者の願いを無視して打ち切った〝自主避難者〟向け住宅の無償提供など、原発事故被害者救済に触れる事は無かった。公開討論会は、1人ずつステージの中央で〝最後の訴え〟をして閉会したが、そこでも「危機意識は必要だが、悲観的になってはいけない。福島県の復興は間違いなく前に進んでいる。希望を持つ事が原動力になる。大胆・積極的、きめ細やかな挑戦が未来を切り開くと確信している。子どもたちのために危機を希望に変えていく」と支持を求めた。
これに対して、町田氏は「安倍政権が原発事故の被害を終わった事にしようとしている。福島県民の苦しみの背景には、安倍政権の悪政がある。内堀県政は県民の方を向いているのか、安倍政権の方を向いているのか。国や東電にはっきりとものを言える、そういう福島県政をつくっていく。イノベーションコースト構想には昨年も今年も数百億円もの公費が注ぎ込まれている一方で、原発事故避難者への住宅提供を打ち切る。本当にこれで良いのか。トップダウンの政治では無く、ボトムアップの県政。県民の声が生かされる県政へと転換させていきたい。一緒に新しい県政をつくろう」と語った。
高橋氏は「人財育成、産業育成が要となる。こうやって僕のような若い世代が立候補する事も、もっと市町村レベルで起きていい。25歳から被選挙権が生じるのだから、立候補出来ない雰囲気をまず無くしていかなければならない。そうしないと若い人のための街づくり、地域づくりは出来ない。世代間抗争はもうやめましょう。目先の事ばかりを考えず、50年先を見据えたい」と訴えた。
金山氏は「天皇制を中心とした平和な日本が大好きです。日本人に生まれて本当に良かった。『天皇陛下万歳』と言って多くの人が死んでいった先の戦争が非難されがちだが、78歳になった今、『天皇陛下万歳』と言って死んでいける幸せをしみじみを感じている」と涙ながらに語った。




(上)「国や東電にはっきりとものを言える、そういう福島県政をつくっていく」と訴えた町田和史氏
(中)高橋翔氏は「こうやって僕のような若い世代が立候補する事も、もっと市町村レベルで起きていい。25歳から被選挙権が生じるのだから、立候補出来ない雰囲気をまず無くしていかなければならない」と若者に呼びかけた
(下)突然「天皇陛下万歳」と叫び、「『天皇陛下万歳』と言って死んでいける幸せをしみじみを感じている」と語って聴衆を驚かせた金山屯氏
【「新興産業を支える気があるのか」】
原発事故が起き、最も大きな被害を受けた県での2回目の知事選挙。しかし、周知不足がたたったか、客席はガラガラ。青年会議所関係者と取材者ばかりが目立った。国政同様に〝内堀一強〟の中で、投票率は大幅に下がるとみられている。県議会で唯一、野党の共産党が独自候補擁立に難航したことも、関心の低下に拍車をかけた。
福島県内の政財界、自公から圧倒的な支持を受ける内堀知事に、新顔3人が挑む福島県知事選挙は11日に告示される。吉野正芳前復興大臣は在任中、内堀知事を「余人をもって代えがたい」と最大級の賛辞で持ち上げてみせた。
2020年の東京五輪に向けて、公共事業重点型の〝復興〟を進める現職がどれだけの信任を得られるかに注目が集まる。従来型の見方では、盤石の現職と共産党系候補の町田氏との一騎打ちだが、30歳の高橋氏はこの日も「起業の障害となっているのは県庁。若手職員は非常に頑張っているが、課長クラス、部長クラスとの温度差が大きい。県庁は新興産業を支える気があるのか」と語るなど、歯に衣着せぬ発言で若者の支持を集める可能性はある。
これからの福島をどうするのか。3人の候補者それぞれの訴えに耳を傾けて選択される事を願う。
(了)
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