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【福島県知事選2018】雨中の月命日に現職ら4人が立候補。「内堀一強」で進んだ公共事業型〝復興〟と避難者切り捨て。擁立遅れた共産、どこまで批判票取り込めるか

原発事故後2回目の福島県知事選挙が11日、告示された。立候補したのは、届け出順に現職の内堀雅雄氏(54)、金山屯氏(78)=白河市、自営業=、高橋翔氏(30)=IT会社社長、葛尾村=、町田和史氏(42)=福島市、日本共産党福島県委員長=の4人。地元紙・福島民報の世論調査で83%を上回る高い支持率を誇る〝内堀一強〟。さらに共産党が候補者擁立に難航するなど現職の盤石ぶりは揺るがないが、少しでも批判票を取り込もうと動く。自公政権と県内市町村長が支持し、公共事業重点型復興と避難者切り捨てを進める内堀県政か。弱者に寄り添った県政へ転換するか。投開票は28日。


【内堀候補「浜通りは複合災害の原点」】
 「ポスター等の掲示順番、くじ引き1番! 4年前も1番でした!」
 午前8時半すぎ。福島稲荷神社(福島県福島市)での必勝祈願を終えた現職の内堀候補は、叫ぶように人差し指を高らかに掲げた。国会議員や県議会議員、県内市町村長などの支持者から、どよめきのような歓声と拍手が起き、小雨降る境内を包んだ。〝内堀一強〟の陰で、どれだけの原発事故被害者が切り捨てられようとしているか、考えている者などこの場にいるはずもない。既に勝利を確信した為政者は、恍惚にも似た挨拶を続けた。
 「これから第一声に向かいますが、この4年間、皆さんから本当にたくさんの応援を頂き、おかげさまで県政に全力で取り組む事が出来ました。しかし、まだ、福島の復興・創生は道半ばであります。これからも自分自身、全身全霊で取り組んで参ります。引き続きの応援をよろしくお願いします」
 午前9時。福島駅近くの「まちなか広場」で雨中の第一声が始まった。内堀候補は「ミッション、パッション、そしてアクション。この3つに全身全霊をかけて取り組んで参ります」と語り始めた。
 「福島県は2011年以降、地震、津波、原発事故、風評被害という複合災害に直面している。震災以前から続いている人口減少との闘いも厳しくなっている。福島県の復興、地方創生こそ、福島県知事が抱えているミッション(使命)だ」
 「複合災害や人口減少との闘いは、残念ながら長い闘い。『ふくしまプライド』という熱いパッション(情熱)が無ければ、長く闘う事は出来ない」
 「私のアクション(行動)とはチャレンジ(挑戦)を継続する事。複合災害や人口減少は前例が無い。日々、新しい施策に挑戦していく事になる。大胆で思い切った挑戦、きめ細かい、温かい挑戦、協同する挑戦。この挑戦を続ける事で初めて、福島県の本物の未来が開けてくる」
 第一声を終えた内堀候補は、強くなった雨の中、選挙カーに乗り込んだ。記者クラブメディアが求める前に自ら身を乗り出して手を振ってみせた。初日の遊説ルートに選んだのは浜通り。南相馬市や浪江町、富岡町、いわき市などを巡った。内堀候補は、浜通りから遊説を始める理由を筆者に「僕は必ず浜通りから始める。やはり複合災害の原点は浜通りなので」と語った。しかし、「県外避難者(への支援策)も是非」と続けると、それには「いつもありがとう」と笑顔で答えただけだった。










地元紙の世論調査で83・6%の支持率を記録した、現職の内堀雅雄氏。既に当選確実と言われる余裕からか、筆者に笑顔を見せる場面も。第一声では、厚労相に就任したばかりの根本匠代議士や玄葉光一郎元外相もマイクを握り、内堀氏を絶賛してみせた。

【根本大臣「4年間で復興大きく前進」】
 第一声で、総合選挙対策本部長の大橋信夫氏(JA福島中央会長)が「4年前は政治家になれるかという問題点があったが、風評払拭に向けてトップセールスを展開してきた。今ではすっかり政治家になり切りました」と絶賛。元復興大臣で、厚生労働大臣に就任したばかりの根本匠代議士(自民党、郡山市)も「内堀県政、この4年間で復興が大きく前に進んだ。いかに有能か、私が一番分かっている」と持ち上げた。
 野田内閣で外相を務めた玄葉光一郎代議士(無所属、田村市)も「4年前、何が何でも知事になってもらう事が福島県のためになるとお願いをしたが、見事な4年間だった」。若松謙維参院議員(公明党、石川町)は「内堀知事を得たという事は、福島にとって本当に大きい。再選のために共に戦う」とマイクを握った。鏡石町長の遠藤栄作氏(福島県町村会長)も「全国の知事の中でも大変厳しい状況に置かれているが、復興は確実に進んでいる。県内59市町村全てを歩き、話を聴き、行動に移している。二期目を託すのは当然だ」と手腕を称えた。
 自公政権や県内市町村長が「復興」と「風評払拭」への評価を高める一方で、内堀候補は原発事故被害者には一貫して冷淡な対応を取り続けた。
 福島県産農水産物への〝風評〟を払拭するような個人や団体とは積極的に面会し、県外や海外でのトップセールスにも頻繁に出向いた。〝復興五輪〟と銘打たれた2020年東京五輪での野球・ソフトボール一部試合招致に動き、福島市内での開催にこぎつけた。浜通りの産業を復活させようと「福島イノベーション・コースト構想」を打ち出し、震災や原発事故からの〝復興〟を進めようとしている。
 しかし、福島市や郡山市、いわき市、会津若松市など政府の避難指示が出されなかった区域からの〝自主避難者〟とは決して面会しようとしなかった。昨年3月末には、避難当事者からの再三にわたる延長要請を無視する形で住宅の無償提供を打ち切り。収入要件を満たした避難者への家賃補助(1年目月額3万円、2年目月額2万円)も、延長する事無く2年間で終了する。今年8月には、いまだ帰還困難区域に指定されている区域からの避難者に対する住宅提供も2020年3月末で打ち切ると発表した。
 「福島県内の原発全基廃炉」以外は明確に発言する事は少ない。
 浄化処理してもなお基準値を上回る汚染水の海洋放出計画や避難指示区域外でのモニタリングポスト(リアルタイム線量測定システム)の撤去計画について、「排水を前提にした話は別にして、私どもは、国、東京電力に対しては、処理水にトリチウム以外の放射性物質が残留していることも含め、環境・風評への影響などを国民や県民に丁寧に説明をしながら、慎重に議論を進めるべきだとお伝えしているところ」(今月1日の定例記者会見)、「国においては一方的に進めるのではなく、まずは市町村や住民の意見を丁寧に聞いて、理解を得ながら進めていただきたい」(7月2日の定例記者会見)と述べるにとどまっている。










4年前の知事選挙では、原発事故避難者に関する公開質問に「どのような選択であっても尊重する」と答えていた内堀知事。しかし、実際にこの4年間で行われてきた事は公共事業重点型の〝復興〟と避難者切り捨て。仮設住宅は集約・取り壊しが進み、今回選挙での「政策集」でも〝復興〟の二文字が躍る。候補者の擁立が告示10日前と大幅に遅れた共産党の町田候補(選挙では無所属)は「福島県民の苦しみの背景には、安倍政権の悪政がある。内堀県政は県民の方を向いているのか安倍政権の方を向いているのか」と批判票の取り込みを図る

【町田候補「県民が声をあげれば変わる」】
 日本共産党福島県委員長の町田候補は、中合福島店前での第一声で「国や東電にはっきりものが言えない県政のままで良いのか。それとも沖縄県知事選と同じように、ここ福島でも県民の立場ではっきりとものを言える県政をつくるのか。それが争点だ」と訴えた。
 「立候補表明からわずか10日だが、現状がきちんと県民に伝われば勝利出来る。安倍政権は原発事故被害を終わった事にしようとしている。福島の切り捨てを進めている。福島県民の苦しみの背景には、安倍政権の悪政がある。内堀県政は県民の方を向いているのか安倍政権の方を向いているのか」
 「『汚染水を海に流すな』は県民の共通の願いだが、内堀知事は反対を明言しない。全国の原発再稼働に対しても同じだ。国や東電にものが言えない。それが今の福島県政の実態だ。原発事故避難者への住宅提供も打ち切った。そんな県政で果たして良いのか。しかし、県民が声をあげている事で、汚染水の海洋放出もモニタリングポストの撤去もさせずにいる。県民が声をあげれば変える事が出来る」
 第一声では、「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟の鈴木雅貴弁護士がマイクを握り「国の決めた賠償基準は明らかに低すぎる。福島地裁は判決で国や東電の責任を断罪したが、県は『賠償は国が決める』と他人事のような態度。県としてリーダーシップを発揮するべきだ」と語った。
 原発事故当時、原発から15kmの楢葉町に住んでいたという女性は「福島の未来は私たち若者がつくる。一部の権力者や金持ちのための社会はもう終わりだ。自分たちの社会は自分たちでつくるんだ」と訴えた。 
 金山候補は、自らポスターを掲示版に貼った後に福島駅東口で第一声。高橋候補は福島県庁前で第一声をした後、youtubeで広報動画を葛尾村の事務所で撮影、配信した。ポスターの完成が一週間ほど遅れているが、SNSや動画配信を中心に、若者へ投票を促していくという。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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