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【92カ月目の福島市はいま】共産市議の測定で1μSv/h超えも。渡利地区でも「大雨降るとあふれる」と住民らが側溝「土砂上げ」。市議「12月市議会で質す」

福島県福島市が、原発事故以来となる住民自身による側溝「土砂上げ」を再開した問題で、福島市渡利地区でも4日朝、複数の町内会で住民が側溝の汚泥を取り除いた。福島市議会議員の小熊省三市議(日本共産党福島市議会議員団)が「住民の安全が、ないがしろにされている」として、自ら線量計を手に麻袋に入れられた汚泥の空間線量を測定。本紙も同行した。作業に参加した住民たちは、口々に「これをやらないと排水があふれてしまう」と作業の必要性を強調したが、小熊市議の測定では1μSv/hを上回る汚泥もあった。小熊市議は測定結果を基に、12月市議会で市の姿勢を質す。


【「土砂上げ前に行政が測るべきだった」】
 「え?」
 小熊市議は線量計に表示された数値に言葉を失った。数値は1・4μSv/hから1・5μSv/hを示していた。線量計は市役所から貸与され、ボタンを押すと35秒間のカウントダウンが始まり、空間線量が表示されるタイプ。筆者の持参した線量計でも1・5μSv/hを超えた。場所は、花見山ふもとの茶屋が見える閑静な住宅街。計測している間にも、幼い子どもの歓声が聞こえてきた。並べられた麻袋は5つ。土砂上げを行った男性も「1μSv/h超えた?1・5μSv/h?」と驚きの表情で線量計に示された数値をスマホで撮影した。「原発事故直後はもっと高かったけど、まだまだ高いんだね」。
 測定は4日午前8時すぎ、市営住宅のある渡利平ケ森から始まった。国道114号線と弁天山に挟まれた辺り。小熊市議が、ごみ集積所近くに並べられた麻袋から10センチの距離に線量計を近付けると、0・366μSv/hを示した。
 車で渡利馬場町に移動。ローソンのある車道に麻袋が2カ所、並べられていたが、どちらも0・3μSv/hを上回った。昼まで車で渡利地区内を巡り、麻袋の線量を測った。渡利小舟原では、車道沿いの林の空間線量が0・6μSv/hに達する事も確認された。
 「『安全だ』、『住民が土砂上げをしても大丈夫』って市は言っているけれども、測っていないですからね。そこは確かめなければいけないじゃないですか。本来ならば、土砂上げを住民がやる前に市職員が測って確認しなければいけないわけです。そこをないがしろにしているのが一番の問題だと思います。行政は、何かと『風評被害を招く』と言って細かい数値を出したがらないけれど、原発事故直後と比べて下がったという事をきちんと公表すれば、むしろ風評払拭にもつながると思います。情報を積極的に出さない行政の姿勢は問題です」
 車で移動しながら、小熊市議は語った。原発事故さえ無ければ、地域の年中行事だった側溝の土砂上げ。だが、不幸にして福島市にも放射性物質は降り注いだ。7年8カ月が経過した。確かに公表されている空間線量は大幅に下がった。一方で、小熊市議の手にした線量計が示した数値もまた、福島市の現実だった。








「花見山公園」近くの側溝から取り除かれた汚泥に小熊市議が線量計を近付けると1・4μSv/hを超えた。筆者の線量計でも1・5μSv/hを上回った。他の場所の汚泥でも0・7μSv/hに達したものも。軒並み高い数値が計測され、小熊市議は「住民にとって側溝の土砂上げは必要な作業だが、それと安全性の検証は別問題。本来は行政が計測するべきで、12月の市議会できちんと質したい」と話した

【「どしゃ降りになったらあふれちゃう」】
 一方で、住民側にも深刻な事情はある。福島市渡利の舘町会住民は言う。
 「今年土砂上げをやらない駄目なんだ。詰まっちゃって水が流れなくなっちゃうよ。台風なんかでどしゃ降りになったら、砂が側溝に流れちゃって、あふれてしまうんだ。最終的にはくるみ川に流れて行くんだけれど、その前にあふれちゃう。今までは市役所が『危ないから駄目』と言っていたから出来なかった。何年か前に業者が汚泥をさらってくれたけど、自分たちでやるのは2010年以来。行政がやるなって言うから。今年の夏もあふれたよ。だからようやく、という感じだね」
 「大丈夫なんじゃないの?全部が高いわけじゃ無いしね」と苦笑いしながら作業を続ける住民も。水分を含んだ重たい麻袋が次々と並べられていく。深い側溝では、中に入って汚泥をすくい上げた。舘町会では、午前8時半から作業を始めた。「一応気になるから、土砂上げ作業終了後に麻袋の空間線量を測ります」と町会の役員。被曝リスクへの認識はある。しかし、土砂上げをやらなければ生活への影響も出るのも現実。放射性物質の存在を理由に何もしないわけにもいかない、というのが住民たちの本音なのだ。
 ここでは、小熊市議が麻袋に線量計を近付けると、激しい電子音とととに0・6μSv/hを上回った。「うわぁ高いな」と驚く住民、「山からの砂が入るから高い所はあるさ」とうなずく住民。反応は様々だった。
 岩崎町の住民も「原発事故前は0・04μSv/hだったから…。どのくらいあります?町会では測らないからね」と小熊市議の測定を見守った。「でも、これだけの汚泥が側溝から出たわけだからね。土砂上げをやらないわけにもいかないし…。住んでる人たちも線量への関心は下がっているんじゃないかな」。町会の役員は話した。
 「土砂上げをやる、やらないは各町内会の判断。あくまでお願いであって強制では無い」と福島市職員は言う。しかし、地域には地域の事情がある。だからこそ、行政が大げさすぎるくらいの対策を講じる必要があるのだが、それは無い。「もはや安全」、「もう大丈夫」という言葉ばかりが飛び交っている。








側溝から取り除かれた汚泥に線量計を近付けて放射線量を測定する小熊市議。住民の中には「原発事故前の空間線量は0・04μSv/hだったから確かにまだまだ高い。でもこの作業をやらないと大雨で水があふれてしまうから…」と苦しい胸の内も明かす人も。小熊市議が測定結果をまとめた表には、年間被曝線量も付記された。(測定値×16時間×0・4+測定値×8時間)×365日÷1000-0・35で推計している

【「今のところ8000Bq/kg超の汚泥無い」】
 「測った数値は、12月に開かれる市議会で使います」と小熊市議。「市側は『安全だ』と言うが、本当に大丈夫なのかという点は確認しておかないといけません」。
 筆者は、改めて福島市役所の環境部清掃管理課ごみ減量推進係を訪ねた。「一週間ごとに集計しているので10月26日現在になりますが、17の町内会から出た側溝の汚泥が産廃業者の『クリーンテック』(同市飯坂町)に搬入されました。10月末までにどれだけの汚泥を搬入したか、収集運搬を委託している業者から間もなく総重量があがってきます」と担当者は話す。
 8000Bq/kgを上回る汚泥は「指定廃棄物」となり、一般廃棄物として処分する事は出来ない。ごみ減量推進係の担当者によると、既に持ち込まれた汚泥からは8000Bq/kgを超えるものは出ていないという。
 「『クリーンテック』から特に報告が無いので、今のところ8000Bq/kgを超える汚泥は無いというのが市の認識です。8000Bq/kgに達しなくても比較的高い数値が計測された場合には連絡があるはずですが、それもありません。ですから、高い値は出ていないと思われます」。
 側溝に溜まった汚泥を巡っては、2016年9月8日の市議会で渡辺千賀良環境部長(当時)が「空間線量率が低い未除染地区において、その実態状況を把握する目的で試験的に計測いたしましたところ、1キログラム当たり8000ベクレルを超える側溝土砂を確認した箇所もございます」と答弁。これに対し、羽田房男市議(社民党・護憲連合)は「聞くところによりますと、ある地区では4万9000ベクレルくらいの線量があったということが言われております」と発言する場面があった。
 しかし、側溝「土砂上げ」再開にあたり、市側は「市放射能対策アドバイザーの石井慶造先生(東北大学教授)からは『健康に影響無いですよ』という話を電話でいただいています」として測定はしていない。実際の作業現場に立ち会う事も無い。住民の「安全」はないがしろにされたまま。今月下旬には、東京五輪で野球・ソフトボールの試合が開催される福島市の県営あづま球場を、安倍晋三首相と国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が揃って視察するという。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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