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【モニタリングポスト撤去】怒りの声続出、二本松市で住民説明会。「一目で確認出来る機器残して」「撤去で無くむしろ増設を」。事前申し込み制への苦言も

「リアルタイム線量測定システム」と呼ばれるモニタリングポスト(MP)の撤去計画問題で、原子力規制庁は8日夜、福島県二本松市内で住民説明会を開いた。6月25日に福島県南会津郡只見町で始まった住民説明会は、今回で14市町村目。参加した市民は35人にとどまったが、これまでの市町村と同様に、福島第一原発の廃炉作業が完全に完了するまでの設置継続を求める意見が相次いだほか、逆に増設を求める声も。事前申し込み制への苦言も噴出した。次回の住民説明会は今月29日に予定されている伊達郡国見町。原子力規制庁はそれを最後に出された意見を集約。来年3月にも原子力規制委員会で結論が出される見込みだ。


【「事故の加害者が撤去決めるな」】
 〝子育て世代〟の訴えは切実だった。
 「私たちは面倒くさいからリアルタイム線量測定システムを残せと言っているのではなくて、誰もがパッと見て一目で分かるように、子どもでも分かるように残してください、と言っているんです。私の子どもたちは幼稚園と小学校に通っていますが、帰宅すると決まって、学校や幼稚園の数値を教えてくれます。子どもたちにそれが根付いてきているんです。そういう癖がせっかくついてきたところにMPが無くなってしまう、一目で誰が見ても分かるものが無くなってしまう。こんなに哀しい事はありません」
 東和地区の母親は、一言一言ゆっくりと、落ち着いた口調で原子力規制庁の担当者たちに意見をぶつけた。子どもの通う東和小学校の敷地内には依然として、地表真上の空間線量が4μSv/hに達する箇所があるという。
 「測ったのは昨春ですが、土の汚染密度を測ると7万8000Bq/kgを超えていました。そういう場所はいまだにたくさんあるという事を分かってください。先ほど撤去計画は東京五輪とは関係ないとおっしゃいましたが、関係ないのであれば、世界の方々に『MPがきちんと設置されていて誰でも見られるようになっているから福島は安全なんだよ』という事をむしろ逆にアピールするべきでは無いんですか?原子力規制委員会というのは原子力の危険性を規制する組織であって、住民側を規制するものでは無いと私は思います。溶融核燃料(デブリ)の取り出しなど福島第一原発の廃炉作業はこれからなんです。MPは増やして欲しいと強く願っております」
 東和地区の別の母親も「黙っていられない」とばかりにマイクを握った。
 「晩御飯を食べさせて息子一人置いてここに来たんですけど、出来ればこんな事はしたくないんです。皆の前でしゃべりたくも無いし、原発事故が無ければこんな事をしなくたって良かったんですよ。本当にストレスなんですよ」
 そして怒りをぶつけた。
 「原子力発電を進めて来た国や東電側の方々から、何で私たち被害者が上から目線で言われなくてはいけないんですか?そもそも何で、私たちは放射能に苦しんでいるんですか?原発事故が起きたからなんですよね。国が進めて来たもののせいで、私たちは苦しんでいるんですよ。それなのに何で、私たち住民に寄り添ってくれないんですか?全然寄り添っていないと思います。回答に誠意が感じられないです。本来であれば二本松市民全員にアンケートを行って、一人でも設置を希望する人がいたら撤去するべきでは無いと思うんです。原発事故の加害者が勝手に決められるんですか?」






二本松市での住民説明会でも、全員がMP撤去に反対、継続設置を求めた。説明会に参加するには事前の申し込みが必要で、勤務先まで明かさなければならず、市民からは「圧力を感じた。わざと住民が参加しないようにしているのではないか」と疑問の声もあがった=福島県二本松市三保内の「岳下住民センター」

【「現場に来て、現場を歩いて欲しい」】
 世代や年齢を問わず、住民説明会に参加した二本松市民の総意は「撤去にNO」だった。
 郭内地区の男性は「私たちが『どうぞ撤去してください』と言ってから進めるべきで、順番が逆。逆立ちしている」と発言。別の男性は「あなた方もここで生活してみてくださいよ。もう、他の市町村でも反対ばかりで結論が出ているのだから、こんな説明会なんかやめてください。どうしても撤去するのであれば、賛成する市町村のMPだけ取り外せば良い」と迫った。「空間線量が低く安定していると言うが、今後も安定すると保証できるのか」と質した。これに対し、原子力規制庁監視情報課の武山松次課長は「今後、空間線量が大幅に変動する事はまず、ほとんど無いと考えている」と答えた。
 原セ地区の男性は「MPは私たちの生活の一部になっている」と継続設置を求めた。
 「私はMPの設置されている場所では必ず数値を確認するようにしています。テレビでは、夕方や夜のニュースでその日の空間線量が放送されます。それも必ず確認しています。つまり、MPは私たちの日々の生活の一部として役に立っているという事なんです。明日の天気はどうか、気温はどうかというのと同じように、空間線量も日々、意識して暮らしているんです。そもそも原発事故直後にMPが設置されていなかったために、どのくらいの空間線量だったか全く情報が無かったんですよ」
 そして、こうも述べた。
 「日本全国を見渡して、我々の受けている被害は忘れ去られているのではないのかなあとショックを受ける事があります。安全だとアピールするだけではなくて、(放射線というのは)いかに危険なものであるか、今なおどれだけ深刻に住民を苦しめているかという事もきちんと国民に説明して欲しいなと思います」
 東和地区で原発事故前から有機農業を続けている男性は、除染で生じた放射性廃棄物の仮設焼却炉建設問題を挙げながら、撤去に反対する意見を述べた。
 「環境省が東和地区に焼却炉を建設して、来春から稼働するという予定になっています。東和小学校、こども園までは直線距離で2kmなんです。環境省は、99%排煙は安全です(放射性セシウムは大気中に放出されない)という説明でした。100%では無い。しかも、安達地方の8000Bq/kg以下の可燃性放射性廃棄物を全部、東和地区に運び込むんです。かなりのダンプカーが通ります。撤去では無くて、むしろMPを増やす。それが住民の健康と生活環境を守るという事ではないのか。東和地区だけでは無く、二本松市全域に影響が出ないとは限りません。私の娘も農業をやっていますが、山際に行くと今でも0・3~0・5μSv/hあるんです。若いお母さんや我々農業者の立場に立って、現場に来て、現場を歩いて、確認しながら進めていただきたい」






二本松市内の高校や小学校に設置されているリアルタイム線量測定システムは97台。原子力規制庁監視情報課の武山松次課長は「空間線量の可視化は大事だと思っている。全てのMPを撤去するわけでは無く、可搬型や水準ポスト18台は残す」と説明したが、住民を納得させるまでには至らなかった

【「事前申し込みに勤務先名必要?」】
 二本松市民からは、住民説明会の周知や事前申し込みの方法に対する疑問の声もあがった。
 原セ地区の女性は「なぜ説明会への参加人数を100人にし、しかも事前申し込み制という面倒くさい方法をとっている理由を伺いたいです。二本松市民は約6万人いるのに100人にしか説明しないという姿勢に、疑問を抱きながら申し込みました。不信感を抱かざるを得ないです」と質した。
 これに対し、武山課長は「会場のキャパ(収容可能人数)を考えて100人に設定した。会場に入りきれないほどたくさん市民が来た場合には、別の会場でもう一回開催するという事も考えられる。事前申し込み制にしたのも会場の制約があるから」と答えた。会場や日時は二本松市職員の意向という。
 東和地区の女性は「友人から言われるまで説明会が開かれる事を知らなかった」と述べた。
 「FAXやメールで事前に申し込むというのも、全員が出来るわけではありません。『なるべく来ないでくれ』という圧力を感じました。面倒くさい方法にしておいて出来れば説明会に来ないで欲しい、そういう感じを受けたんです。しかも、名前には振り仮名が必要で、勤務先や学校名まで書かなくてはいけない。個人情報を明かしてでも説明会にあなたは参加しますか?と言われているような気がして、ここに来るのに勇気が要るような申し込み方法でした」
 武山課長は「二本松市に在住在勤の方である事を確認するためだった」と答えた。
 会場には二本松市役所職員の姿もあったが、取材に対し「MP撤去は時期尚早であるとの考えは既に原子力規制庁に伝えてある」と反対の意向を改めて示した。二本松市議会は今年6月、「リアルタイム線量測定システムを撤去しないことを求める意見書」を国に提出している。意見書提出を求める請願を巡っては「原発事故を体験した私たちにとって、放射線量を目で確認できるリアルタイム線量測定システムは、特別の存在」(日本共産党二本松市議団)、「二本松市の安全、安心な農産物に危惧が生じ、風評が拡大するおそれが懸念される」(あぶくま会)と賛否どちらの意見も出されたが、採決では賛成議員が反対議員を上回った。
 説明会で、「ご自身の生活圏で同じ状況になっても『はいどうぞ撤去してください』と言えますか?」と問われた武山課長は「私が済んでいる所がもし0・23μSv/hを下回ったら、私はそれでも(MPを撤去しても)構わないです」と答え、会場の住民から失笑を買った。福島県民と霞が関との深くて大きい溝は埋まらないまま、住民説明会は今月末で終了する事になりそうだ。



(了)
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鈴木博喜

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