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【原発避難者から住まいを奪うな】家賃補助打ち切りまで4カ月。「方針変えぬ」切り捨て貫く福島県。「自死繰り返させるのか」怒る避難者。「寄り添う」言葉ばかりの内堀知事

福島県の答えは、またしても「NO」だった─。原発事故被害者らでつくる「ひだんれん」(福島原発事故被害者団体連絡会)と「『避難の権利』を求める全国避難者の会」は27日午前、福島県福島市内で福島県庁職員と13回目の交渉の場を持ち、避難指示区域外避難者(いわゆる〝自主避難者〟)への家賃補助制度の継続や、帰還困難区域を含む避難指示区域からの避難者への住宅提供打ち切り方針撤回などを改めて求めた。しかし、福島県側は今回も拒否。内堀雅雄知事は一度も交渉の場に姿を現さないまま、知事選挙での圧勝を味方に避難者から住まいを取り上げる。避難者たちは午後に開いた緊急集会と福島駅前でのアピール行動で「一人も路頭に迷わせない!」と声をあげた。


【「避難者の声を聴かずに決めるな」】
 テーブルを叩いて怒る避難者、しどろもどろになる県職員。これまで何度も目にしてきた場面が、この日の交渉でも繰り返された。「生活再建に向けて、今後も必要な支援を継続していく」。交渉に先立って事前に提出していた質問への回答も、もはや見慣れてしまった。村田弘さん(福島原発かながわ訴訟原告団長)が「毎回、判で押したような回答。紋切型とすら言えない」と半ば呆れながら再回答を求めたが、肝心の内堀知事が〝奥の間〟に引っ込んだままでは埒が開かない。
 「知事の回答と受け止めていただいて結構」と生活拠点課や避難者支援課、避難地域復興課の担当者は口を揃えたが、「避難者に寄り添う」という言葉ばかりで行動が伴わない内堀県政は、避難者の首を真綿で絞めるかのように追い詰めていく。全国26カ所に設けられた〝よろず相談拠点〟に寄せられた悲痛な声も無視されたまま、4カ月後の3月末には〝自主避難者〟向け家賃補助制度(初年度月額3万円、2年目月額2万円)が打ち切られる。迫るデッドライン。時間が無い。県職員は「個別に対応する」と繰り返すが、住まいが確保出来ない避難者、生活再建の見通しが立たない避難者に対して具体的にどのように対応するのか、具体策は語られない。
 2020年3月末には、避難指示解除の見通しすら立っていない帰還困難区域からの避難者に対する住宅提供も打ち切られる。
 「当事者の声を聴かずに、なぜ一方的に決めて発表したのか。避難者を見捨てるのか。棄民政策じゃないか。知事は避難者に会って欲しい」。双葉郡浪江町から福島市内に避難中の今野寿美雄さん(子ども脱被ばく裁判原告団長)が津島地区など帰還困難区域からの避難者の声を代弁したが、県職員は聞き流すばかりだ。
 避難者がどれだけ怒鳴っても泣いても、福島県の答えは「政策は見直さない」。しかも、打ち切り期限を先に発表しておいて後から意向調査をするという本末転倒ぶり。「意向調査の結果がどのような内容でも打ち切り方針は見直さない」。その時だけは、県職員の答えははっきりしていた。自ら被告とされ〝追い出し訴訟〟で闘っている武田徹さん(福島市から山形県米沢市の雇用促進住宅に避難継続中)が「農水産物の輸出問題では、内堀知事は外国の担当者に実際に福島に来て見てもらいたいと語っているのに、避難者の住宅問題では避難者の声を聴いたりしない。矛盾している」と怒ったが、虚しく響くばかりだった。
 村田さんは、怒りに震えて涙ながらにテーブルを叩いた。昨年5月に神奈川県内で自死した避難者のような悲劇を繰り返したくない。ただそれだけだった。「結果が見えている事になぜ手を打たないのか。もう自死は繰り返したくない。もしそのような事が起きたら責任を取ってもらう。それだけは覚悟しておいて欲しい」










①緊急集会で「一人も路頭に迷わせない!」、「生存権を守れ」と怒りの声をあげた原発避難者や支援者たち=福島市市民会館
②福島県職員との交渉、緊急集会を終えた避難者、支援者たちは福島駅前に立ったが、ほとんどの人が足早に通り過ぎて行った
③妻子を新潟県に母子避難させている郡山市の佐藤直樹さんも参加。「福島県の回答は、まるで〝子どもの使い〟だ」と怒った
④緊急集会では、改めて住宅支援策の継続を求める声が相次いだ。地元メディアの記者もカメラマンも居なかった
⑤午前中に行われた福島県職員との交渉。県側は改めて「打ち切り方針は見直さない」と言い切った=ふくしま中町会館

【「よもや住まいを取り上げるとは…」】
 14時から福島市市民会館で行われた緊急集会では、帰還困難区域に指定されている双葉郡浪江町津島地区から避難中の今野秀則さん(ふるさとを返せ津島原発訴訟原告団長)が「いつになったら故郷に帰れるかも分からないまま、もうすぐ8年。故郷の一切を奪われて放浪の旅を強いられている」と涙ながらにスピーチ。「よもや福島県が自分たちの居住の場所を取り上げる事は無いだろうと考えていた」と語った。しかし、残念ながら内堀知事はわずか5分間の幹部会議で了承を取り付け、自立のためという名の下に帰還困難区域からの避難者までも切り捨てる。
 「内堀知事は、まるで二人羽織の人形のよう。国の手先になっている。われわれ避難者には何の落ち度も無いのに…」。そう語ったのは村田弘さん。自身は郡山市に残り妻子を新潟県に避難させている佐藤直樹さんは「福島県の回答はまるで〝子どもの使い〟。今は新潟県から1万円の家賃補助をもらっているが、福島県が打ち切ると言っているので来年度は無いと思う。安全に健康的に生きる権利は守って行きたい」とマイクを握った。武田徹さんは「避難者は非服従・非暴力を貫くべきだ.。憲法などありとあらゆものを動員して闘う決意が必要なところまで残念ながら追い込まれている」と語った。
 「避難の協同センター」事務局長の瀬戸大作さんは「原発事故後の施策は『ハウジングファースト』になっていない」と問題点を指摘した。
 「『子ども被災者支援法』の議員連盟と連携して政府交渉を続けている。その中で明確になっているのは、福島県自らが避難者支援を終わらせているという事。福島県の決定を政府が追認するという構図になっている。しかも、支援の打ち切りが、国会も福島県議会も含めて議会の審議を経ずに決められている。国家公務員宿舎については、財務省が『福島県からの要請があれば対応を検討する』と言っているのに、福島県には居住延長を要請する意思が無い。『福島県内に多くの人が住んでいる中で、県民感情を考えると区域外避難者だけを支援するわけにはいかない』と何度も〝公平性〟を強調している。さらに『そろそろ自立してください』と期限を決めた自立強制をしている。ここに至ってまだ、避難者の実態調査すら行っていない」
 瀬戸さんはさらに「国連人権委員会でのトゥンジャク特別報告者の先日の日本政府への声明(年20ミリシーベルトではなく年1ミリシーベルトで住民を帰還させるべき)に対して福島県はどう考えるのかと交渉で質したが、県の回答は『様々なご意見、考え方があると受け止めています』。福島県はすごいですね。国連人権理事会の勧告を『様々なご意見』で一蹴してしまう」と呆れ顔で話した。










①「ふるさとを返せ 津島原発訴訟」原告団長の今野秀則さん。「よもや福島県が自分たちの居住の場所を取り上げる事は無いだろうと考えていた」と語った
②武田徹さんは「避難者は非服従・非暴力を貫くべきだ.。憲法などありとあらゆものを動員して闘う決意が必要なところまで残念ながら追い込まれている」と訴えた
③「反貧困ネットワーク」代表世話人の宇都宮健児弁護士はクレジット・サラ金問題に携わった経験から「世論を変えていったのは当事者の運動。運動が盛り上がれば追い込める」と呼びかけた
④今回の交渉に先立って出された質問に対する福島県の回答。一番下に「政策の見直しはありません」と明記されている
⑤あらゆる原発避難者への住宅提供継続を求めている「共同アピール」

【「世論変えるのは当事者の運動」】
 緊急集会に参加した「反貧困ネットワーク」代表世話人の宇都宮健児弁護士は、自身が関わったクレジット・サラ金問題(多重債務者支援)の経験から次のように呼びかけた。
 「全国に散らばった避難者には家庭もあり、仕事も子育てもあるだろう。その中で、あなた方がいないと誰も今の状況は分からない。誰も伝える人がいない。多重債務者問題では単に支援活動をやるだけでは駄目で、被害者団体と連携して高利や過酷な取り立てをやめさせるなどの立法運動を展開した。当事者の運動は大きな力を発揮した。世論を変えていったのは当事者の運動だった。その結果、2006年に画期的な法改正につながったんです」
 16時すぎからは、その当事者たちが福島駅前に立ち、道行く人々に避難者支援の必要性を訴えた。その中に、双葉郡浪江町から兵庫県に避難中の菅野みずえさんの姿もあった。
 「いまビラを配っていましたら『受け取りたくない』と言われました。『被害はあるんだけんじょも見たくないんだ。今さら言って何になる。俺は受け取れねえ』と。逃げる事も叶わない、どこに逃げてどんな暮らしをするんだ、だから貝のように黙っていたい。それは皆さんのお気持ちでしょう。でも、現実に原発事故は起こってしまいました。無かった事には出来ない、と声をあげていきませんか?逃げた人がうらやましかったり帰ってきた人が疎ましかったり、いろいろな想いがあるのが福島です。だからこそ、気持ちを出してみませんか?皆さんもどうか、今一度気持ちを声に出してみてください。ここ立っている私たちの訴えにどうか耳を貸してください。ビラを受け取って読んでみてください」
 日が暮れて暗くなっても、避難者たちの訴えは続いた。道行く人々は足早に通り過ぎるばかり。しかし、闘う避難者たちは〝一部の活動家〟だろうか。「私たち抜きで私たちの事を決めないで」という当然の訴えをしているだけだ。そしてそれは、避難の有無にかかわらず、誰にでも共通する問題だ。原発避難者が避難先で自死を選ぶような事態を無視して良いのか。東京五輪を軸にした〝復興〟ばかりが注目されて良いのか。年の瀬に改めて考えたい。時間は無い。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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