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【原発避難者から住まいを奪うな】定例会見で福島県の内堀知事が事実上の「避難者切り捨て最終宣言」。今回も質問に正面から答えず〝のらりくらり〟の内堀話法で「避難者の実態調査」を拒否

政府の避難指示が出されなかった区域からのいわゆる〝自主避難者〟への住宅支援(収入要件を満たした約2000世帯への家賃補助など)が来年3月末で完全に打ち切られる問題で、福島県の内堀雅雄知事は17日の定例会見で、方針通りに住宅支援を打ち切る姿勢を改めて示した。避難者たちはこれまで、再三にわたって実態調査の実施や住宅支援の継続を求めて来たが、全て無視した格好。都合の悪い質問には正面から答えない〝のらりくらり回答〟〝内堀話法〟での「切り捨て最終宣言」に、避難者や支援者からは怒りの声があがっている。


【質問に正面から答えない内堀知事】
 わずか16分で終了した県政記者クラブとの定例記者会見。原発避難者に関する問題を質したのは朝日新聞の男性記者だった。
 「自主避難者について伺います。去年の3月ですね、自主避難者への住宅の無償提供が終わり、来年の4月にはですね、民間賃貸住宅の家賃補助が終わったり国家公務員住宅の貸与が終わったりと、来年の春に節目を迎えると思います。そうした中で、避難者の団体からは自主避難者が例えばどこへ避難しているのか、または福島に戻ったのか。生活の実態がどうなのか、実態調査をするというのを福島県は求められていると思います。これまでそうした調査を行っていなかったと思いますが、今後どういう風にお考えなのか。もしその必要が無いというのであればその理由を教えてください」
 これに対し、内堀雅雄知事は用意した文書を淡々と読み上げた。いつものように、肝心の質問には答えなかった。都合の悪い質問に正面から答えないのは〝得意〟だ。
 「今後の住まいを確保されていない世帯に対しては、避難元あるいは避難先自治体等と連携を図りながら、速やかに住まいを確保出来るよう引き続き支援を行って参ります。また、住まいを確保された世帯に対して家賃補助はじめ必要に応じ戸別訪問あるいは全国各地の生活再建拠点における相談対応を行うなど支援を継続しているところであります。今それぞれの御世帯それぞれの状況もあろうかと思います。そういった方々に対し引き続き個別に事情を伺いながら県として出来る限りの対応を続けて参ります」
 朝日新聞の記者が再び質す。
 「全体を俯瞰するような調査というのは特に必要は無いとお考えでしょうか」
 相変わらず質問には全く答えない内堀知事。
 「現時点では、今、ご相談がある方々に対してお話をしていく。また、現在の制度等についてていねいにお話をしていく中で進めて行きたいと考えております」
 しびれを切らした朝日新聞の記者が三度問うた。
 「重ねてなんですが、個別に相談に来る方というのは自分自身から足を運ばれたりとかで団体と連携すると思うんですけど、全体の調査をする事で、より多くの人から課題とか問題とかをキャッチアップ出来るような気もするんですけど、その辺りはいかがですか」
 しかし、内堀知事は最後まであいまいな答えに終始した。
 「特に担当部局においては、各種の団体の方々あるいは避難先の自治体の方々から様々なお話を伺っております。また、個別に避難者の方からもお話しをいただく。そういう中でていねいに対応していくという事で取り組んでいきたいと思います」




(上)2017年最後の定例会見で1年を表す漢字は「共」だと発表した内堀知事。「来年も県民の皆さんの思い、あるいは福島に心を寄せてくださる全ての方々と共に、復興への思いを共有して、一丸となって福島の未来を切り拓いていきたい」と語ったが、そこに「原発避難者」は含まれていなかった=2017年12月25日、福島県庁で撮影
(下)東北中央自動車道・相馬福島道路の「霊山インターチェンジ」で安倍晋三首相とともに開通式に出席した内堀知事(左)。まともに答弁せず、当事者を無視して弱者を切り捨てて行く手法はそっくりだ=2018年3月10日、福島県伊達市で撮影

【「ぬるっとした冷血動物のようだ」】
 時間にして3分ほどのやり取り。内堀知事はほとんど答えていないに等しい。会見では地元テレビ局の記者から「税制改革と地方分権」についても問われたが、それに対して身振り手振りを交えて熱く答えたのとは対照的な冷淡さ。
 会見を動画で見たという村田弘さん(福島県南相馬市小高区から神奈川県横浜市に避難継続中。福島原発かながわ訴訟原告団長)は「朝日新聞の記者は良い所を突いたのに爬虫類に逃げられてしまったような感じだ。内堀知事は、ぬるっとした冷血動物のようだ」と話した。「命がかかっているんだ。人間の血が通っているのなら真面目に向き合えよ、と思います」。
 村田さんがそこまで怒るのも当然だ。
 今月9日、東京国際フォーラムで行われた「ふくしま大交流フェスタ2018 –ALL FUKUSHIMA FESTA-」で、今年も原発避難者への住宅支援策打ち切り撤回を直訴。別室で開かれた「ふくしま避難者交流会」では内堀知事に直接、「僕のように神奈川県内に避難している人は、ほとんどが民間賃貸住宅に入居している。福島県の家賃補助制度(月額2万円)と神奈川県独自の支援策(月額1万円)によって辛うじて生活している人が多いんです。それらが来年3月でバッサリと無くなってしまうと一気に毎月の支出が3万円増えてしまう。本当にしんどいんです。そこはぜひ考えていただきたい。それをお願いしたいです」と訴えている。
 ここに至るまでにも、「ひだんれん」「避難の協同センター」などと連携し、何度も福島県職員と交渉。就任以来、一度も避難者と会おうとしない内堀知事との直接対話を求めてきた。生活の基盤である住まいの問題を、なぜ当事者抜きに決めるのか。極めて当然の想いはしかし、常に無視されてきた。そして、今回もまた、避難者の詳細な実態調査も意見聴取もしないまま、住宅支援策が打ち切られようとしている。 
 福島県生活拠点課の担当者に改めて電話取材をすると、「知事会見の内容は把握していますが、〝自主避難者〟の実態調査は行いません。そう思っていただいて結構です。3月末での家賃補助打ち切りも予定通りです。変更はありません」と、これまでと同様の答えだった。「事前に質問の予告があって答弁を用意した?いえ、そんな事はありません。会見であのような質問があって、知事が答えたという事です」。




避難者の〝直訴〟は全て無視されて来た。あと3カ月で住宅支援は打ち切られるが、詳細な実態調査も内堀知事との直接対話も実現していない=2018年12月9日、東京国際フォーラムで撮影

【「自死する避難者が出てしまう」】
 本紙は福島県の情報公開制度を活用し、「一般社団法人ふくしま連携復興センター」(れんぷく、福島県福島市)がまとめた「福島県県外避難者への相談・交流・説明会事業報告書」を入手。全国に26ある「生活再建支援拠点」での相談業務には限界がある事や寄せられた相談内容が県知事の政策決定に反映されていない事を10月23日号で報じた。
 報告書について「全国26か所の『生活再建支援拠点』からの事業報告では、避難者の所在情報さえ把握できずに〝連絡待ち〟の状態で、アウトリーチが不十分な状況である事が分かる。仮に避難者が相談しても『相談支援』だけでは解決できない事が大半だ」と分析した「避難の協同センター」事務局長の瀬戸大作さんは、まさに「避難者への寄り添い」を体現してきた。今回の知事会見を受けて「現段階で、国家公務員住宅に入居している避難者の80%が転居先を決められていない。驚く事に、うつ病などを患っている避難者にまで、3月末が入居期限であるとの前提で話が進められている。この前提は変えられないと避難者に伝えられているという。これでは路頭に迷ったり自死する避難者が出てしまうのではないかと危惧している」とのコメントを寄せた。
 「福島県は、(家賃補助制度を利用して民間賃貸住宅に入居している避難者)2000世帯への戸別訪問を行っていると説明している。しかし、『個別の事情に応じた』面談件数は、今年4月から11月末まででわずか80件にも満たない。全国に26ある『相談拠点』への相談件数が何故、少ないのか。福島県が避難者宅への個別訪問を行っても何故、大半の世帯が会おうとしないのか。その理由は、福島県からの説明は常に支援終了や縮小ありきで、避難者の事情を考慮できない一方的な説明だからだ」
 9日の「ふくしま避難者交流会」で内堀知事に直筆の手紙を手渡した上野寛さん(福島県南相馬市小高区から山形県米沢市への避難を継続中)は、定例会見での内堀知事の発言に怒りを押し殺しながら「記者会見と手紙への返事は別物だと考えます。まずは先方からの返事を待ちたいです」と話した。
 上野さんは「まずは山形へ避難した人々と会って話をする時間を作って欲しい」と手紙につづった。内堀知事は胸ポケットに収めたが、まだ返事は無い。福島県職員は「知事が手紙を受け取ったという話は聞いているが、どう受け取ったのか、どうするのかは分からない」と話す。前向きな返事が届く可能性は限りなく低いが、上野さんは待つという。
 間もなく新年。住まいの不安を抱えながら、新しい年を笑顔で迎えられるだろうか。「避難の権利」の根幹である「住まい」が奪われるまで、あと3カ月余しか無い。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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