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【北塩原村長選】再び立ち上がった〝コンビニのおばちゃん〟公約の柱は「防災」~金銭不祥事抱える現職に反旗

2014年10月の福島県知事選挙から約2年。〝コンビニのおばちゃん〟が再び立ち上がった。現職・小椋敏一村長(68)の無投票三選が濃厚だった福島県北塩原村長選挙(23日告示、28日投開票)に、裏磐梯でコンビニを経営する伊関明子さん(61)が立候補することを決め3日午後、会津若松市役所で出馬会見を開いた。「防災」を公約の柱に据え、安心して観光客を呼べる村づくりを目指す。村長の金銭不祥事を追及することすら出来ない旧態依然とした村や村議会の体質に失望した伊関さん。「村内にそびえる〝ベルリンの壁〟を壊したい」と意気込みを語った。


【「村を変えるには首長にならないと」】
 「村の税収は95%が観光客が使ってくださるお金です。もっと多くの方に村に遊びに来ていただきたいのに、観光客の方々を守れる体制が整っていない。まずはそこから取り組みたいです」
 会津若松市役所内の記者クラブで、伊関さんは語った。村役場には「防災課」が無い。防災マップは住民課、空間線量などの原発事故関連は総務企画課が担当している。「村に来てくださいと言うからには、何かあったらすぐに対応できるようにしておかないとういけません。安全ですと胸を張って言える村にしたいのです」。
 秋元行政区長として6年間、村役場には様々な提言をしてきたが、その度に「予算がない」などと門前払いをされてきた。そもそも防災マニュアルが村には無い。2011年の大地震では、村役場と丸一日、連絡が取れなくなった。猪苗代町までの道路は通行不能になり、喜多方市まで迂回せざるを得なかった。原発が爆発するまでは、村は箱根駅伝に出場するチームなどの合宿地としてにぎわっていた。万が一、磐梯山が噴火したらどうするのか。「磐梯セブン」と呼ばれる7つのスキー場で万一の事故が起きた際、いかに迅速に救急搬送するか。区長会として防災マニュアルづくりを役場に申し入れたが、いまだに「検討中」のままになっている。
 「決定権のある首長にならないと村を変えられない」
 小椋村長が春に出馬を表明し、「無投票当選が濃厚だった」と地元記者は言う。前回2012年の村長選も無投票だった。人口2937人は郡山市やいわき市の約100分の1。小さな村での〝反乱〟にはいくつもの壁が立ちはだかるが、伊関さんは「ベルリンの壁を壊したい」と語る。観光客が増えて店が書き入れ時になるお盆休みが終わったら、本格的な選挙戦に入る。

北塩原村長選挙への出馬を表明した伊関さん。「税収の95%を観光に頼っているのに、観光客を守る体制が整っていない」と「防災」を公約の柱に据えた=会津若松市役所

【うやむやの百条委員会】
 自浄作用を失っている議会にも失望した。
 小椋村長を巡っては今年6月、天然温泉や室内プール「ラビスパ裏磐梯」を経営する村の第3セクターの経理担当男性職員が2004年頃から約600万円を着服していたことが発覚。村は着服を公表せずに職員を雇い続け、職員は全額を弁済した後に退職金を受け取って依願退職。その際、小椋村長から2階にわたって計300万円を借りていたという。
 村の不祥事隠しに村長自ら加担したと当然、受け止められる事態。村議会は地方自治法100条に基づく調査特別委員会(百条委員会)を6月10日に設置したが、村議会は委員長報告を「責任追及が不十分」として否決しながら、村長に対する不信任決議案も否決。膿を出すことも出来ずに終わった。「うやむや」を絵に描いたような体たらく。百条委員会を傍聴した伊関さんは「どうしてこんな委員会になってしまったのか。役場も議会も、村民のために動かなければ」と語る。
 アメリカで初の女性大統領が誕生する可能性がある。東京では初の都知事が誕生した。「こんな小さな村の選挙のあり方も変わって良いのではないか」。議会での〝追及〟が終わった先月末には、8年ぶりの選挙戦に向けて小椋村長陣営の決起大会が開かれたという。無風選挙で得をするのは誰か。村民でない事は間違いない。

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裏磐梯を代表する観光スポットの「五色沼」。青緑色に染まる毘沙門湖は人気が高い

【「変えるのはよそ者と馬鹿者」】
 村の古い体質は、福島県庁ですら「50年遅れている」と指摘するほど。行政区長も、20人の中で女性は伊関さんただ1人だった。原発事故後、村民も観光客も利用できるホールボディカウンター(WBC)を裏磐梯に設置するよう提案したが、村議から「ここは観光地だぞ」と一蹴された。「風評被害ではなく現実の原発被害。数値を全て見せる事が必要なのに」。福島第一原発から90km離れているとはいえ、原発事故は他人事ではない。しかし、モニタリングポストの数も裏磐梯は圧倒的に少ない。村政が喜多方市に近い北山・大塩地区を中心に回っているからだ。
 2014年の県知事選挙では、公約に「生涯医療費無料」を掲げた。結果は2万4669票で5位。惨敗だったが、北塩原村に限れば当選した内堀雅雄知事(992票)に次ぐ374票。得票率は23.7%だった。今回も厳しい選挙戦となるが「村民が子や孫のために勇気を出してくれるかにかかっていますね」と期待を寄せる。
 「小さな村で私を応援するのは本当に勇気が要ることなんです。選挙期間中は街頭演説を聴いたり、手を振ったりなさらなくて良いです。家の中で聴いていてください」。禍根だけは残したくないと語る。
 生まれも育ちも東京。酒屋の3代目の夫のもとに嫁いで約30年になる。「物事を変えるのはよそ者と馬鹿者と言いますよね」と伊関さん。村内にそびえる「ベルリンの壁」を壊すことが出来れば、いよいよ女性村長が誕生する。
 145cmの小さな身体で、旧態依然とした〝おじさん〟達に立ち向かう。


(了)
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鈴木博喜

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