【福島原発かながわ訴訟】横浜地裁は低線量被曝のリスクと区域外避難の合理性を認めるか。提訴から5年半、20日に判決言い渡し~弁護団が解説する訴訟のポイント
- 2019/02/09
- 19:53
原発事故の原因と責任の所在を明らかにし、完全賠償を求めて神奈川県内に避難した人々が国と東電を相手取って起こしている「福島原発かながわ訴訟」(村田弘原告団長)の判決が間もなく、横浜地裁の中平健裁判長から言い渡される。弁護団がこのほど、横浜地裁の司法記者クラブ加盟社などを集めて行ったレクチャーを中心に裁判の争点を改めて振り返りたい。横浜地裁は、原発事故に対する国の責任を認めるか。そして、低線量被曝のリスクや区域外避難の合理性を認めるのか。注目の判決言い渡しは今月20日午前10時。
【予見出来た大津波、防げた電源喪失】
原告や弁護団が判決に期待している点は2つ。
1つは「原発事故に対する国の法的責任の明確化」(責任論)。これまで前橋地裁、福島地裁、京都地裁、東京地裁が国の責任を認めているが、5例目を目指す。2つ目は「現状の賠償の不合理さを明らかにし、賠償額の大幅な上積み」(損害論)。その上で、原発避難者を追い詰める現状の政策の見直しにつなげたい考え。
「かながわ訴訟」の後は3月14日に千葉地裁で、3月26日には松山地裁で判決が言い渡される予定になっており、弁護団事務局長の黒澤知弘弁護士は「全国では横浜、千葉、松山を『三連続判決』と位置付け、各判決の成果をもって、さらに現状の賠償の見直しを求めて行く方針を打ち出しています」と語る。
原発事故に対する国の責任が認められるか否かについて、弁護団副団長の栗山博史弁護士は「原発に関する津波対策の規制措置を講じなかったという『国の不作為』が国の裁量の範囲内にあるのか、それとも裁量の範囲を超えて違法と言えるのかどうか。そこが最大のポイントです」と語る。「違法だという判断の前提として、そもそも原発事故が予見出来たのかどうか。予見出来たとして、予見の内容に基づいて結果回避措置を講じれば事故を回避出来たのかどうか。それらを考慮した上で、国の規制権限不行使が違法と言えるかどうかが判断されることになります」。
福島第一原発事故は、地震や津波で外部電源も非常用電源も機能を失い、炉心の冷却が出来なくなった事で発生した。弁護団は、原発敷地高を超える津波の発生は予見出来、それに基づいて非常用電源設備を高台に設置したり建屋の水密化を講じたりすれば過酷事故は防げた─と主張してきた。
「2002年に文科省・地震調査研究推進本部が『三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価』(いわゆる長期評価)を公表しており、巨大津波を発生させるような巨大地震が、福島県沖を含む日本海溝付近のどこでも発生し得る事が明らかにされました。これに基づいて東電は2008年、福島第一原発における津波の高さを試算しています。その結果、福島第一原発1~4号機の敷地が約1~3メートル浸水する事も分かりました。東電は少なくとも2002年の時点で、福島第一原発の敷地高を超える津波の到来を予見できたのです」(栗山弁護士)
原発が浸水する事が想定できたのならば当然、東電は対策を講じる必要がある。それは、地上階や地下階に置かれていた電源設備の高台設置であり、建屋や電源設備の水密化であり、防潮堤の設置だ。そしてそれは、規制権限を有する国にも及ぶ。栗山弁護士は「原発事故はひとたび発生したら広範囲に重大な被害をもたらします。国(経産大臣)は津波対策を講じるよう、遅くとも2006年の時点で東電に対し規制権限を行使するべきでした。不行使は違法と考えます」と解説する。



(上)「福島原発かながわ訴訟」は2013年9月11日に提訴。2018年7月19日に結審した。今月20日の判決日には、結審時と同様に多くの支援者の歌と音楽で横浜地裁に入廷する予定だ=2018年7月19日撮影
(中)(下)原告団長として先頭で走って来た村田弘さん。結審した後も、横浜駅西口に毎週立ち、アピールと署名集めを続けてきた。「原発事故被害者に笑顔が戻るような判決」が言い渡されるよう望んでいる=2018年10月4日撮影
【「国の指示無くても避難の合理性はある」】
判決で大きな注目点となるのは、低線量被曝や避難の合理性についてどのように判断されるか。そして、国の原子力損害賠償紛争審査会が定めた中間指針などにとらわれない賠償が命じられるか、だ。
低線量被曝について担当し、同僚弁護士から「エキスパート」と称される小賀坂徹弁護士は「今回の横浜地裁での判決は、これまでの賠償水準にとどまってしまうのか、それを抜本的に大幅に引き上げる事が出来るのかというところが最大の課題だと思っています。そのために、低線量被曝の健康影響をどのように考えるのかという事をかなりしつこく主張立証して来ました」と語る。
「避難をやめて戻り滞在するという事は、被曝し続けるという事を意味するわけです。長期間、被曝し続ける事の意味をどう考えるのかという事を相当詳しく、空間線量や土壌汚染など具体的な数値を提示しました。原爆被爆者研究の蓄積の中で、同じ放射線量であれば短期被曝も長期被曝も影響はほとんど変わらないと考えて良いという知見もあります。つまり低線量であっても、長期間滞在する事での被曝影響を見ないといけないという事を強調して来ました。その意味では、他の地裁での訴訟よりも踏み込んだ主張をして来ました。そこを裁判所に十分に分かっていただければ、今までの判決の水準を大きく超えるんじゃないかと思っています。それは区域外避難に限らず、避難指示区域であっても基本的にはどの地域での同等の扱いをされるべきだと考えています。それについてどう判断されるのかについても非常に大きな問題です。低線量被曝の健康影響について裁判所が科学的に決着をつけるという問題では無くて、科学的知見を前提にして避難をする事、避難を継続する事が法的に見て原発事故と因果関係があると言えるかどうかを見極めてもらいたい」
「今回の原発事故は『未曽有の大災害』などという言葉で表し切れるかさえ分からないほどの大きな災害でした。昨年2月には、裁判官を連れて〝現地進行協議〟ということで浜通りに行ってきましたが、今も日本の国土の中に、立ち入るのに許可証や線量計、防護服が必要な場所があるんです。10年前を思い返してみてください。10年後に、こういう場所が国内に存在する事になるなど、誰も考えていなかったと思います。それほどの大事故なんです。国土の一部が失われてしまった。それほどのレベルであるという事を、心に留めておいてください」。そう語るのは山野健一郎弁護士。
「損害論から見た訴訟の争点は①賠償額の不十分さ②避難指示区域割りの不合理さ③区域外避難の問題─です。避難指示区域の設定と賠償額が見事にリンクしていますが、そもそも線引きをしたのは誰か。国です。では、国から避難指示が出されなかった区域は全て安全なのか。われわれはそんな事は無いと考えています。避難指示が出されなかった区域でも避難の合理性はありました。避難のつらさは、避難指示の有無とは関係ありません。避難の合理性があるものについては避難慰謝料というのは避難指示の有無にかかわらず一定であるべきと考えます。ですので、私たちは〝自主避難〟とは言いません。避難の必要が無いのに勝手に逃げたというニュアンスが出てしまいますから『区域外避難』と呼んでいます。区域外避難、避難指示解除区域からの避難継続の合理性が認められる判決を求めています」



(上)浜通りで〝現地進行協議〟として実施された現地検証。被告国や東電の代理人だけ防護服を着用しない場面もあった=2018年2月8日撮影
(中)低線量被曝の専門家として尋問に応じた、内科医で生協きたはま診療所長の聞間元(ききま・はじめ)さん(ビキニ水爆被災事件静岡県調査研究会代表)。法廷で「年20mSvを下回る低線量であっても、放射線のリスクは決して消えないという事を強調したい」、「被曝リスクを避けるには放射線から遠ざかるしか無い」などと強調した=2017年7月12日撮影
(下)弁護団事務局長の黒澤知弘弁護士らが開いたレク。主に異動で新たに訴訟を担当する事になった大手メディアの記者を対象に、訴訟の意義とポイントを理解してもらおうと行われた
【「被害の大きさ、賠償額を加害者が決めるな」】
「福島原発かながわ訴訟」は2013年9月11日に横浜地方裁判所に一次提訴。提訴は四次にわたり、結審(2018年7月19日)時点の原告数は60世帯175人(うち自主的避難等対象区域からの避難者は16世帯50人)。提訴後、6人の原告が亡くなっている。結審後にも1人の訃報が原告団に伝えられ、7人に増えた。
これまでに29回の口頭弁論が開かれ、原告に対する本人尋問や専門家に対する証人尋問(国の責任、低線量被曝)、現地進行協議という形での事実上の現地検証も行われてきた。被告は国と東京電力。避難慰謝料(月額35万円)やふるさと喪失・生活破壊慰謝料(2000万円)が主な請求だが、金額は原告によって異なる。請求額は計約53億9000万円。
判決が言い渡される20日は、午前9時すぎから支援者たちが入廷行動を展開し、結審時と同様に歌や音楽で原告団、弁護団を見送る。報告集会を経て、正午過ぎから記者会見。判決に対する想いを原告たちが語る予定という。会見では、原告団と弁護団連名の声明文も発表される予定になっている。
原告団長として走り続けてきた村田弘さん(福島県南相馬市小高区から神奈川県横浜市に避難継続中)は、「放射線の被害に関しても賠償に関しても、加害者が決めてそれに被害者が従わなければいけない。それはおかしな事ではないか。これが私たち原告に共通する気持ちです」と語る。結審後も横浜駅前に毎週立ち、裁判への理解と署名を呼び掛けてきた。「被害者に笑顔の戻る判決を」と横浜地裁に要請する署名は2万8000筆を超えた。
1月30日に付で発行された「訴訟団資料集Ⅱ」(税込1620円で頒布中。希望者は村田団長09027425572へ)にも掲載されている弁護団の最終準備書面(2018年7月19日付)。その中で弁護団は、次のような言葉を綴っている。私たちはこの言葉を胸に刻んだ上で、20日の判決言い渡しに臨みたい。
「原告ら被害者以外の者にとっては、7年以上の時の経過の中で、福島第一原発事故はすっかり過去の出来事、既に終わった問題として整理しているのではないか。
そして被害者に対し、もう7年以上も経っているのにまだ騒いでいるのか、放射線などという目に見えないものは気にしなければ良いのだ、等と考えているのではないか。
被害者にとっての7年は正反対である。ふるさとと、ふるさとでの生活基盤を奪われ、長期にわたる避難生活の中、必死の思いで生活再建を進めなければならないという焦燥感はあるが、思う通りにはならず、7年の歳月の中、苦しみは時を追う中で深まる一方である」
(了)
【予見出来た大津波、防げた電源喪失】
原告や弁護団が判決に期待している点は2つ。
1つは「原発事故に対する国の法的責任の明確化」(責任論)。これまで前橋地裁、福島地裁、京都地裁、東京地裁が国の責任を認めているが、5例目を目指す。2つ目は「現状の賠償の不合理さを明らかにし、賠償額の大幅な上積み」(損害論)。その上で、原発避難者を追い詰める現状の政策の見直しにつなげたい考え。
「かながわ訴訟」の後は3月14日に千葉地裁で、3月26日には松山地裁で判決が言い渡される予定になっており、弁護団事務局長の黒澤知弘弁護士は「全国では横浜、千葉、松山を『三連続判決』と位置付け、各判決の成果をもって、さらに現状の賠償の見直しを求めて行く方針を打ち出しています」と語る。
原発事故に対する国の責任が認められるか否かについて、弁護団副団長の栗山博史弁護士は「原発に関する津波対策の規制措置を講じなかったという『国の不作為』が国の裁量の範囲内にあるのか、それとも裁量の範囲を超えて違法と言えるのかどうか。そこが最大のポイントです」と語る。「違法だという判断の前提として、そもそも原発事故が予見出来たのかどうか。予見出来たとして、予見の内容に基づいて結果回避措置を講じれば事故を回避出来たのかどうか。それらを考慮した上で、国の規制権限不行使が違法と言えるかどうかが判断されることになります」。
福島第一原発事故は、地震や津波で外部電源も非常用電源も機能を失い、炉心の冷却が出来なくなった事で発生した。弁護団は、原発敷地高を超える津波の発生は予見出来、それに基づいて非常用電源設備を高台に設置したり建屋の水密化を講じたりすれば過酷事故は防げた─と主張してきた。
「2002年に文科省・地震調査研究推進本部が『三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価』(いわゆる長期評価)を公表しており、巨大津波を発生させるような巨大地震が、福島県沖を含む日本海溝付近のどこでも発生し得る事が明らかにされました。これに基づいて東電は2008年、福島第一原発における津波の高さを試算しています。その結果、福島第一原発1~4号機の敷地が約1~3メートル浸水する事も分かりました。東電は少なくとも2002年の時点で、福島第一原発の敷地高を超える津波の到来を予見できたのです」(栗山弁護士)
原発が浸水する事が想定できたのならば当然、東電は対策を講じる必要がある。それは、地上階や地下階に置かれていた電源設備の高台設置であり、建屋や電源設備の水密化であり、防潮堤の設置だ。そしてそれは、規制権限を有する国にも及ぶ。栗山弁護士は「原発事故はひとたび発生したら広範囲に重大な被害をもたらします。国(経産大臣)は津波対策を講じるよう、遅くとも2006年の時点で東電に対し規制権限を行使するべきでした。不行使は違法と考えます」と解説する。



(上)「福島原発かながわ訴訟」は2013年9月11日に提訴。2018年7月19日に結審した。今月20日の判決日には、結審時と同様に多くの支援者の歌と音楽で横浜地裁に入廷する予定だ=2018年7月19日撮影
(中)(下)原告団長として先頭で走って来た村田弘さん。結審した後も、横浜駅西口に毎週立ち、アピールと署名集めを続けてきた。「原発事故被害者に笑顔が戻るような判決」が言い渡されるよう望んでいる=2018年10月4日撮影
【「国の指示無くても避難の合理性はある」】
判決で大きな注目点となるのは、低線量被曝や避難の合理性についてどのように判断されるか。そして、国の原子力損害賠償紛争審査会が定めた中間指針などにとらわれない賠償が命じられるか、だ。
低線量被曝について担当し、同僚弁護士から「エキスパート」と称される小賀坂徹弁護士は「今回の横浜地裁での判決は、これまでの賠償水準にとどまってしまうのか、それを抜本的に大幅に引き上げる事が出来るのかというところが最大の課題だと思っています。そのために、低線量被曝の健康影響をどのように考えるのかという事をかなりしつこく主張立証して来ました」と語る。
「避難をやめて戻り滞在するという事は、被曝し続けるという事を意味するわけです。長期間、被曝し続ける事の意味をどう考えるのかという事を相当詳しく、空間線量や土壌汚染など具体的な数値を提示しました。原爆被爆者研究の蓄積の中で、同じ放射線量であれば短期被曝も長期被曝も影響はほとんど変わらないと考えて良いという知見もあります。つまり低線量であっても、長期間滞在する事での被曝影響を見ないといけないという事を強調して来ました。その意味では、他の地裁での訴訟よりも踏み込んだ主張をして来ました。そこを裁判所に十分に分かっていただければ、今までの判決の水準を大きく超えるんじゃないかと思っています。それは区域外避難に限らず、避難指示区域であっても基本的にはどの地域での同等の扱いをされるべきだと考えています。それについてどう判断されるのかについても非常に大きな問題です。低線量被曝の健康影響について裁判所が科学的に決着をつけるという問題では無くて、科学的知見を前提にして避難をする事、避難を継続する事が法的に見て原発事故と因果関係があると言えるかどうかを見極めてもらいたい」
「今回の原発事故は『未曽有の大災害』などという言葉で表し切れるかさえ分からないほどの大きな災害でした。昨年2月には、裁判官を連れて〝現地進行協議〟ということで浜通りに行ってきましたが、今も日本の国土の中に、立ち入るのに許可証や線量計、防護服が必要な場所があるんです。10年前を思い返してみてください。10年後に、こういう場所が国内に存在する事になるなど、誰も考えていなかったと思います。それほどの大事故なんです。国土の一部が失われてしまった。それほどのレベルであるという事を、心に留めておいてください」。そう語るのは山野健一郎弁護士。
「損害論から見た訴訟の争点は①賠償額の不十分さ②避難指示区域割りの不合理さ③区域外避難の問題─です。避難指示区域の設定と賠償額が見事にリンクしていますが、そもそも線引きをしたのは誰か。国です。では、国から避難指示が出されなかった区域は全て安全なのか。われわれはそんな事は無いと考えています。避難指示が出されなかった区域でも避難の合理性はありました。避難のつらさは、避難指示の有無とは関係ありません。避難の合理性があるものについては避難慰謝料というのは避難指示の有無にかかわらず一定であるべきと考えます。ですので、私たちは〝自主避難〟とは言いません。避難の必要が無いのに勝手に逃げたというニュアンスが出てしまいますから『区域外避難』と呼んでいます。区域外避難、避難指示解除区域からの避難継続の合理性が認められる判決を求めています」



(上)浜通りで〝現地進行協議〟として実施された現地検証。被告国や東電の代理人だけ防護服を着用しない場面もあった=2018年2月8日撮影
(中)低線量被曝の専門家として尋問に応じた、内科医で生協きたはま診療所長の聞間元(ききま・はじめ)さん(ビキニ水爆被災事件静岡県調査研究会代表)。法廷で「年20mSvを下回る低線量であっても、放射線のリスクは決して消えないという事を強調したい」、「被曝リスクを避けるには放射線から遠ざかるしか無い」などと強調した=2017年7月12日撮影
(下)弁護団事務局長の黒澤知弘弁護士らが開いたレク。主に異動で新たに訴訟を担当する事になった大手メディアの記者を対象に、訴訟の意義とポイントを理解してもらおうと行われた
【「被害の大きさ、賠償額を加害者が決めるな」】
「福島原発かながわ訴訟」は2013年9月11日に横浜地方裁判所に一次提訴。提訴は四次にわたり、結審(2018年7月19日)時点の原告数は60世帯175人(うち自主的避難等対象区域からの避難者は16世帯50人)。提訴後、6人の原告が亡くなっている。結審後にも1人の訃報が原告団に伝えられ、7人に増えた。
これまでに29回の口頭弁論が開かれ、原告に対する本人尋問や専門家に対する証人尋問(国の責任、低線量被曝)、現地進行協議という形での事実上の現地検証も行われてきた。被告は国と東京電力。避難慰謝料(月額35万円)やふるさと喪失・生活破壊慰謝料(2000万円)が主な請求だが、金額は原告によって異なる。請求額は計約53億9000万円。
判決が言い渡される20日は、午前9時すぎから支援者たちが入廷行動を展開し、結審時と同様に歌や音楽で原告団、弁護団を見送る。報告集会を経て、正午過ぎから記者会見。判決に対する想いを原告たちが語る予定という。会見では、原告団と弁護団連名の声明文も発表される予定になっている。
原告団長として走り続けてきた村田弘さん(福島県南相馬市小高区から神奈川県横浜市に避難継続中)は、「放射線の被害に関しても賠償に関しても、加害者が決めてそれに被害者が従わなければいけない。それはおかしな事ではないか。これが私たち原告に共通する気持ちです」と語る。結審後も横浜駅前に毎週立ち、裁判への理解と署名を呼び掛けてきた。「被害者に笑顔の戻る判決を」と横浜地裁に要請する署名は2万8000筆を超えた。
1月30日に付で発行された「訴訟団資料集Ⅱ」(税込1620円で頒布中。希望者は村田団長09027425572へ)にも掲載されている弁護団の最終準備書面(2018年7月19日付)。その中で弁護団は、次のような言葉を綴っている。私たちはこの言葉を胸に刻んだ上で、20日の判決言い渡しに臨みたい。
「原告ら被害者以外の者にとっては、7年以上の時の経過の中で、福島第一原発事故はすっかり過去の出来事、既に終わった問題として整理しているのではないか。
そして被害者に対し、もう7年以上も経っているのにまだ騒いでいるのか、放射線などという目に見えないものは気にしなければ良いのだ、等と考えているのではないか。
被害者にとっての7年は正反対である。ふるさとと、ふるさとでの生活基盤を奪われ、長期にわたる避難生活の中、必死の思いで生活再建を進めなければならないという焦燥感はあるが、思う通りにはならず、7年の歳月の中、苦しみは時を追う中で深まる一方である」
(了)
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