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【原発避難者から住まいを奪うな】「避難は間違っていなかった」「避難の権利認める判決を」。被告男性が意見陳述。次回、土壌汚染データ提出へ~〝米沢追い出し訴訟〟第7回口頭弁論

原発事故による〝自主避難者〟が被告となった異例の〝米沢追い出し訴訟〟(雇用促進住宅明け渡し訴訟)の第7回口頭弁論が12日午後、山形県山形市の山形地裁3号法廷(貝原信之裁判長)で開かれた。被告の男性が、米沢市に避難しようと決意するに至った想いや帰還への葛藤、今なお拭えぬ被曝リスクへの不安について陳述。「避難は間違っていなかったとの判断、避難する権利を認める判決を期待している」と述べた。次回口頭弁論は10連休明けの5月7日15時。全被告の避難元で実施した土壌汚染密度の測定結果を証拠提出するという。


【「避難は子どもたちの健康のため」】
 「福島に戻ったにもかかわらず、この裁判に通い続ける理由を裁判官の皆様にはぜひ分かっていただきたい。それは、米沢に残って避難を続ける雇用促進住宅の仲間が安心して避難生活を続けられるようにして欲しいからです。そして、私たち夫婦が子どもたちの健康のために年老いた両親を福島に残し、2011年から2018年まで米沢で避難生活を続けた事は間違っていなかったと公に判断して欲しいからです。子どもたちの健康を気遣って避難する権利を認める判決を期待しています」
 男性の力強い言葉が法廷に響いた。男性は2018年4月、両親の介護などを理由に家族とともに避難元の福島県福島市に戻ったが、災害救助法に基づく住宅無償提供が打ち切られた後の2017年4月1日から退去するまでの期間分の家賃支払いを求められている。
 米沢市で過ごした7年間は、当然ながらレジャーや転勤では無い。「避難する事を決めた最大の理由は、子どもたちの健康被害が心配だったからです」。原発事故が無ければ、被曝による3人の幼い子どもたちへの悪影響を心配する必要も無かった。食べ物の産地を意識する事も、子どもと同じ幼稚園に通わせる保護者から「マスクするの?馬鹿みたい」などと言われる事も無かった。
 2011年当時、一番下の子どもはまだ1歳。外出すればあらゆるものに手を伸ばし、石を口に入れようとする。放射性物質は目に見えない。食べ物による内部被曝も心配だった。両親や周囲の人々との温度差を実感するようになった。知人が既に避難していた山形県米沢市を避難先に選び、妻と子どもたちは2011年5月、雇用促進住宅に入居した。男性は仕事があり、福島市に残った。「避難するまでの間、幼い子どもたちを被曝させてしまったという後悔の念があります」。
 勤務先から偶然、米沢への転勤をを命じられていったんは家族での避難生活を送れたが、今度は福島県伊達市に異動。深夜に米沢に帰宅し、明け方には自宅を出る事もあった。二重生活で貯金は底をつき、体力も限界だった。休日のドライブなどする余裕など無くなっていた。そこに両親の病と介護。決して被曝リスクへの不安が解消されたわけでは無かったが昨春、福島市に戻った。小学校高学年になった娘は、今でも自然豊かな米沢に戻りたいと口にしているという。
 福島市では宅地除染は完了した事になっているが、自宅周辺で23万Bq/㎡を超える土壌汚染が確認された。学校給食では「地産地消」の名の下に、地場産の食材が使われている。家計への負担は大きいが、子どもたちのために産地を吟味して野菜などを購入している。
 男性は言う。「福島では山は除染されていません。昔から渓流釣りが趣味でしたが、禁漁が続いています。解禁されたとしても、もう渓流釣りに行く気がしません。とても難しい事なのかもしれませんが、山頂からの除染をして欲しいです」






(上)(中)寒風が吹き、小雪が舞う中、被告や支援者らは山形地裁までデモ行進。「原発事故被災者を追い出しするな!いじめるな!」と訴えた
(下)判決言い渡しが近づく「福島原発かながわ訴訟」原告団長の村田弘さん(写真手前)も駆け付け、武田徹さんたちを激励した=山形市の「大手門パルズ」

【「陳述は簡潔に」繰り返す裁判長】
 開廷に先立ち、被告や支援者たちは「国と東京電力は原発事故の責任をとれ!」、「原発事故被災者を追い出しするな!いじめるな!」などと書かれた横断幕を手にデモ行進した。小雪が舞い、寒風が肌を刺す。歩行者やドライバーが不思議そうな表情で見つめる中、市街地で声をあげた。
 先頭で歩いた武田徹さん(福島県福島市から山形県米沢市への避難を継続中)は、閉廷後の報告集会で「福島では、原発事故を知らない小学生がいると聞く。そのくらいの年数が経ちました。この裁判も提訴されてから1年半になりますが、避難者1人ではとても闘えません」と弁護団や支援者らに語りかけた。「今日の意見陳述はとても良かった。『避難を続けている仲間のために』という、雇用促進住宅から退去した人の言葉は重い。避難を続けている人、福島に戻った人、それぞれに事情があります。法廷で陳述するには勇気が要ったと思う。感謝しています。非常に意味があった」。
  男性の意見陳述に関しては、事前に代理人弁護士の陳述も含めて20分という時間が認められていた。それにもかかわらず、貝原信之裁判長が「簡潔にお願いします」と2回も念押しした事から、男性は用意した原稿を早口で読み上げざるを得なかった。しかも、貝原裁判長は陳述している男性の顔を見ようともせず、手元の書面などに目を通すばかり。これには、被告の代理人弁護士らから批判の声があがった。
 報告集会で男性は「ごみ(放射性物質)をばら撒いたという意識があるのであれば、全部持ち帰ってもらいたい。山のてっぺんから除染してもらいたい」と改めて口にした。「自分で福島に戻って短命になったとしても自己責任でも良いが、そういう〝負〟を子や孫には引き継がせたくない。避難生活で貯金はすっからかん、夫婦げんかも日常茶飯事だった。原発事故はまだ終わっていないんですよ。最後まできっちり面倒見て欲しいです」。
 この日の口頭弁論期日には、「福島原発かながわ訴訟」原告団長の村田弘さん(福島県南相馬市から神奈川県横浜市への避難を継続中)や、「原発事故被害者団体連絡会」(ひだんれん)の武藤類子さも駆け付けた。
 村田さんは「武田さんたちが闘っているのと同じように、来月末で住宅支援が打ち切られ、住まいを追い出される。そういう問題に避難者は直面しています。われわれ避難者が追い詰められている。何としても理不尽な追い出しをさせまいと、福島県の内堀雅雄知事に15日に申し入れる予定です。間違った施策は変えさせなければならない。お互いに頑張りましょう」とエールを送った。
 武藤さんも「住宅問題はもう2年以上、国や福島県と交渉しているが、全て打ち切られてしまいます。福島県が避難者を救わなくて誰が救うのか。これからも一緒に闘いましょう」とマイクを握った。






原発事故に伴う放射性物質から逃れようと動いた避難者が「被告」として訴えられる異例の事態。その背景には避難の権利を認めない国や福島県の姿勢がある

【「国や行政の〝今の責任〟問う裁判」】
 開廷前に講演した弁護団の福田健治弁護士は、この訴訟について「住まいを避難者に貸していた側が立ち退きを求めている裁判です。2017年3月末で住宅の供与を打ち切ると福島県と国が決めたからです。他の訴訟では避難者の方々は『原告』(訴える側)ですが、この裁判では何と『被告』(訴えられる側)になってしまっています」と解説した。
 「そもそも、どういう法律関係で雇用促進住宅が貸し出されていたかが良く分からない。貸し出していたのは独立行政法人だったのか福島県だったのか。そこがあいまいなままになっている。貸主が誰で、どんな契約になっていたのか。その上で貸与打ち切りは違法だと主張しています。この裁判は、なぜ原発事故が起きたのかという〝過去の責任〟ではなく、避難者の方々のために国や福島県が何をするべきかという〝今の責任〟を問う訴訟。この点が、他の損害賠償請求訴訟と大きく異なります。これまでの裁判で事故の法的責任を問われている国が避難者にどのような支援をするべきなのかという事が正面から争われています。何とか勝ち抜いて獲得していきたい」
 海渡雄一弁護士は報告集会で「閉廷直前、貝原裁判長が次回期日で主張を完結させるようにとこちらに言った。その後は証拠調べに入るのか分からないが、いずれにしても裁判所としては主張のやり取りはそろそろこのくらいにしてくれという意思を表明したんだと思う。原告側の論理にはまやかしの部分が多いが、しっかりと反論出来ると考えている。次回期日が非常に重要になる」と語った。井戸謙一弁護士も「次回までに主張を尽くせと裁判所が言って来たので、今の(避難元の)被曝環境の問題や、帰れないという判断に十分な合理性があるんだという主張を今後、していく事になるだろう」と話した。
 この日の弁論では、被告代理人弁護士が避難先で自死した実例を挙げながら〝自主避難者〟(区域外避難者)が追い詰められている事、被曝リスクに対する不安には合理性がある事についても陳述した。被告全8世帯の避難元住宅の土壌測定を行っており、結果を次回期日で証拠として提出するという。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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