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【中通りに生きる会・損害賠償請求訴訟】次回7月の期日で結審。提訴から3年「一審で終わらせたい」。原告側は地裁に和解勧告求める~原告本人尋問終了

「中通りに生きる会」(平井ふみ子代表)の男女52人(福島県福島市や郡山市、田村市などに在住)が、福島第一原発の事故で精神的損害を被ったとして東電を相手に起こした損害賠償請求訴訟の第15回口頭弁論が22日、福島地方裁判所206号法廷(遠藤東路裁判長)で終日、行われた。前回期日に引き続き、6人の女性原告に対する本人尋問。これで、本人尋問は終了した。次回7月17日15時の最終弁論で結審するが、原告側は「精根尽き果てるまでに力を尽くした」として裁判所による和解勧告を求めた。


【「精根尽き果てるまで全力を尽くした」】
 「ひと言意見があります」
 閉廷直前、野村吉太郎弁護士が発言を求めた。
 「進行協議でも述べましたが、本件訴訟というのは、実は陳述書を書き上げてから提訴(2016年4月22日)に臨みました。陳述書を引用するという訴状の形態は日本の民事訴訟の中では非常にまれ、特殊な事件だと考えています。
 野村弁護士の目には涙が浮かんでいた。
 「陳述書を書くのに2年の歳月をかけました。当初、陳述書にトライしてもらった人は100人いました。その中で残ったのが今回の原告(52人)です。それだけ強い想いと時間をかけてこの訴訟に臨んでおります。この訴訟を提起してから既に2年以上が経過しております。平均年齢は70歳。高齢の原告たちです。ほぼ全員(46人)が法廷で一人一人の想いを述べました。原告本人尋問にあたっても、毎回毎回3回以上リハーサルをして本番に臨んでおります。原告は全力をかけています。本当に精根尽き果てるまでに力を尽くして、もうこれで終わりだというつもりで裁判に臨んでおります」
 「出来れば和解という形で、この一審で終わらせたいというのが原告本人、代理人である私の願いでもあります。他の原発損害賠償の事件とは違って一律の損害賠償を求めるものではありません。法廷で聴いていただいて分かるように、一人一人が全部違うんです。一人一人が自分の『精神的損害』に向き合っております。本当にこの一審で終わらせたいんです。そういう気持ちを理解して、出来れば裁判所による和解勧告をしていただきたい。そう切に願っております。以上です」
 原告席や傍聴席の原告たちも涙を拭っていた。もう5年にわたって原発事故被害と向き合ってきた。なぜ被害者がこんな想いをして闘わなければ救済されないのか。なぜ法廷で東電の代理人弁護士に被曝リスクによる精神的損害を全否定されなければならないのか。閉廷後、原告の1人が代表して口にした。
 「陳述書を書き上げるのに要した2年間が、もう涙と汗の結晶というか、これ以上書けないというところまで野村先生に見ていただいて提訴したんです。もうこれ以上は出来ない。野村先生が法廷で言ってくれた事は、私たちの本意です。本当は拍手したかったんですけど法廷では出来ないでしょ」
 陳述書を完成させるまでに10回以上も書き直させられた原告もいた。本人尋問のリハーサルでは厳しく〝ダメ出し〟され、夢に見るほど追い込まれた原告もいた。野村弁護士もそれだけ、原告の受けた損害を裁判所に伝えようと全力で取り組んだ。もはや、原告たちに余力など残っていないのだ。




原発事故が無ければ、放射性物質が降り注がなければ被曝リスクも除染も自宅敷地内での仮置きも法廷闘争も必要無かった。平穏な日常を続けられた。提訴から間もなく3年。ようやく本人尋問も終わった。原告たちは和解による終結を願っている=福島市市民会館

【奪われた「自然保育」、あっけなく消えた「身土不二」】
 最後となった本人尋問では、この日も原告たちが涙を流しながら原発事故への怒りや悔しさを口にした。
 50代の女性原告は、福島県福島市内で経営していた保育園を失った。15年かけて築き上げた「自然保育」。容赦なく降り注いだ放射性物質を少しでも取り除こうと〝自主除染〟に取り組んだ。出来る事は何でもやった。子どもたちをより安全な環境に置こうと空間線量の低い地域に移転もしたが、避難などで子どもたちは激減。閉園を余儀なくされた。「保育は人生そのもの。生きがいでした。保育を続けたかったが、子どもたちがいなくなって成り立たなくなった。人生の目的を失いました。子どもを愛で包みたいと考えていました。子どもたちを愛していました。でも、愛では放射性物質には勝てませんでした」。
 放射能への考え方の違いから、夫と一緒に暮らす事も難しくなった。本来なら得られるはずの東電からの賠償金も受け取れていない。「原発事故が無ければ、今も家族で暮らせていたかもしれません。原発事故前のような環境を早く取り戻したいです」。本人尋問が終わっても、女性の目からは大粒の涙があふれていた。
 70代女性(福島市在住)には、長年あたためてきた夢があった。「身土不二」の精神に沿った自然の中での暮らしだった。田村市船引町に3000平方メートルを超える農地を確保していた。「自然の中で畑を耕し、小鳥の声を聴いたり、そよ風を感じたり、雨の音を聴きながら読書。そういう暮らしです。それが、原発事故で放射能が降って来て、あっけなく消えてしまいました」。農地は原発事故から6年以上が経っても3800Bq/kgあったという。
 孫を被曝リスクから守りたい一心が、つい大きな声となって口をついてしまった。「『花を摘んじゃ駄目!』、『小石に触れちゃ駄目!』と金切り声をあげてしまいました。駄目駄目駄目の連発でした。孫を痛めつけてしまいました。本当に孫には申し訳なく、いつも心の中で泣いていました」。心の余裕など無く、おおらかさを失った。原発事故さえ無ければ、と何度考えたことか。
 「放射性物質は目に見えませんが、精神的損害も目に見えません。そういうないがしろにされがちな事がきちんと補償されて、初めて人権は守られると思います。東電は私の精神的損害を4万円と値踏みしました。私は虫けらでは無いんだ。人権を持った1人の人間なんだ、と叫びたいような屈辱感を覚えました。こんな想いを払拭できるような裁判所の判断を望んでいます」
 女性は静かに、しかし毅然とした口調で裁判官に訴えた。




福島地裁に和解勧告を求めた野村弁護士。2017年9月に提出した準備書面では、「原告らの精神的損害は既払い金では絶対に足りない」と綴った。一方で、5年に及ぶ法廷闘争により原告たちは激しく疲弊していると訴えた

【「福島で暮らさなければ精神的損害分からぬ」】
 東電の代理人弁護士の論調は毎回、同じだ。
 「国や自治体が『問題無い』と情報発信していたのを知らないのか」、「専門家は『健康に影響無い数値』と言っていた」、「市政だよりや政府のパンフレットなどを読まなかったのか」、「東京とニューヨークを飛行機で往復すると200μSv/h被曝する」
 主張は平行線を辿るばかり。それでも、原告たちは与えられた時間の中で想いをぶつけた。
 福島市の60代女性は、孫のために避難したかったが経済的な理由で叶わなかった。「貯金も転居費用も無く、孫には本当に申し訳ない」。街中には除染で生じた汚染土が仮置きされている。忘れたくても忘れられない原発事故。低線量被曝の健康被害は晩発性。いつ、どのような形で現れるのか分からない。「孫は甲状腺検査でB判定でした。いつかガン化するんじゃないかと心配です」。
 震災前から子どもたちへの読み聞かせ活動を続けていた80代女性は、子どもたちの「早く避難して」という声に悩んだが福島市内にとどまった。「私にはやるべき事がありました。原発事故直後、保育園からは『今年も読み聞かせ、お願いしますね』と言われていました。現実問題として避難しない子どもたちがいる以上、私だけ逃げる事は出来ませんでした」。自宅周辺には5μSv/hを上回る箇所もあったが、決心は揺るがなかった。
 「あさになったので まどをあけますよ」という絵本を子どもたちに読み聞かせた。「でもさ、窓を開けちゃいけないんでしょ?」という幼い声が返ってきた。「子どもたちは健気。原発事故は何て残酷なんだと思いました。私は『もう少し待てば窓を開けられるようになるよ』とは言えませんでした」。ポーランドを旅した時、解放感に包まれている事に気付いた。「日頃は気づきませんでしたが、福島に暮らす事で緊張していたのでしょうね。向こうに行ってホッとした事を覚えています」。女性は今も、読み聞かせを続けている。
 「何でこんな想いをしなければいけないのか」。か細い声で話したのは福島市の40代女性。714グラムという超未熟児で生まれてきた娘。生きていく事が難しいとさえ考えた娘はようやく小学生になった。そこに起きた原発事故。「避難したかたっが経済的に余裕が無かった。せっかくここまで成長してくれたのに被曝してしまったらどうしようと心配ばかりしています。私のこういう精神的損害は政府には決められません。福島に住んでいなければ理解出来ないと思います」。
 別の40代女性は、2人の娘を連れて県外の親類宅に身を寄せた。福島市では子どもの命を守れないと考えた。しかし、いくら身内でも気を遣う。「2週間ほど経ち、これ以上一緒に住むのは難しいと言われてしまった。布団の中で声を殺して泣きました」。ありがたさ申し訳なさとが交錯した避難生活は、こうして終わりを告げた。なぜ目に見えない放射能との闘いを強いられなければいけないのか。ストレスは蕁麻疹となって現れた。洗濯物は今でも室内に干しているという。
 本人尋問は16時すぎに終わった。寒の戻りの冷たい強風が原告たちに吹き付けた。あと何回、涙を流せば、被害者は救われるのか。春が待ち遠しい。



(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)
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