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【96カ月目の飯舘村はいま】ふるさと納税で買う3000万円の「ブロンズ製ベンチ」が復興の象徴か?増え続ける重岡作品に村民から疑問の声。村議会は予算案否決も一転、可決

飯舘村の復興に本当に必要な物が「ブロンズ製ベンチ」なのか。ふるさと納税で寄せられた〝浄財〟を芸術作品の購入に充てるのが適切なのか。村民から疑問の声があがっている。村議会は、ブロンズ製ベンチの購入費用3000万円を含む2019年度予算を一度は否決したものの、本会議で一転、可決。そのプロセスに首を傾げる村民は少なくない。賛成に回った村議は「後世の人が評価するもの」と話すが、村の復興に本当に必要なものは3000万円のブロンズ製ベンチなのだろうか。大いに疑問が残る。飯舘村に増え続ける彫刻家・重岡建治氏の作品。「復興」とは何なのか。改めて問われている。


【「誰のためのブロンズ製ベンチか?」】
 「3月議会で、3000万円ものブロンズ製ベンチを道の駅の後ろの公園に作りたいという予算が認められました。しかも、予算審査特別委員会で『ブロンズ製ベンチの購入費用は削除』と決定したことが、どうして本会議で『ブロンズ製ベンチを作る』に変わるのか。村議会はどうなっているのか、私には分かりません」
 3月23日に福島県福島市内で開かれた「飯舘村放射能エコロジー研究会(IISORA) 」の第10回シンポジウム。一般社団法人いいたてネットワーク代表理事の横山秀人さんが口火を切るように「ブロンズ製ベンチ」に疑問を呈した。
 「そもそも、ふるさと納税3000万円を使って購入する事自体が村民を馬鹿にしていないか。ブロンズ製ベンチでは無く、もっと村民に必要な事業があるのではないか。すごく憤っています。どうしたら村や村議会に村民の想いを伝えられるのでしょうか。村民も行財政について学ばなけらばならないと感じました。自分たちの子や孫に、迷惑をかけないような予算の使い方をしないといけないですから」 
 横山さんだけでは無い。長谷川健一さんも「村役場は湯水のように金を使う。われわれの目指す復興にブロンズ製ベンチが必要なのか?委員会で予算案を否決したのに本会議で原案通りに可決ってどういう事だ。機能しない委員会なんていらないじゃないか」と強い口調で批判した。伊藤延由さんも「議会は何してる!」と怒りを示した。
 シンポジウムには村議会でブロンズ製ベンチに反対した議員も出席した。
 「ブロンズ製ベンチについては私も議会で厳しく指摘をしました。1人の作者からしか買っていないので随意契約ですから。随契で何千万という金を投じる事自体がそもそもおかしい。これを認めて良いのかという苦しい想いで反対しましたが、こういう結果(原案通り可決)になって申し訳ない」
 そう指摘したのは佐藤健太村議。
 「作るためのプロセスが明らかに足りないんです。阪神大震災と同じ事が起きています。莫大な復興予算がついて、大きな業者が入って来て村を作り変えてしまう。本当はじっくり村づくりをしたい。今ブロンズ製ベンチが必要なんですか?ふるさと納税で寄せられたお金は基金に入れられます。そのお金は今使わなくても良いんです。これから先、必要なタイミングで出していける大切な財源です。その大切な財源を、今使わなければいけない理由は何なのか。復興予算の使い方に大いに疑問があります。既に道の駅にブロンズ製ベンチはあるじゃないですか。誰のためのブロンズ製ベンチですか?誰が欲しいと言ったんですか?ブロンズ製ベンチが欲しいと言った村民はいませんでした。村民が欲しいものに予算を充てられるようにしたいです」






(上)(中)道の駅「までい館」や交流センター「ふれ愛館」に設置されているブロンズ像やブロンズ製ベンチ。村は新たに道の駅裏に整備する「深谷地区多目的交流広場」にも設置する予算案を村議会に提出。委員会では退けられたものの本会議では一転、原案通りに認められた
(下)村役場が村議に示したブロンズ製ベンチのイメージ写真。これを〝復興の象徴〟として3000万円で設置する事を本当に村民が求めているのか。大いに疑問が残る

【「重岡さんの作品が村の復興に沿っている」】
 飯舘村役場総務課企画係によると、購入が予定されているブロンズ製ベンチは2体。新たに整備された校舎や交流センター「ふれ愛館」、道の駅「までい館」と同様に、彫刻家・重岡建治氏(静岡県伊東市)の作品を購入予定。2019年度予算に計上された3000万円には設置費用も含まれているという。道の駅「までい館」裏に整備される「深谷地区多目的交流広場」に設置される事になる。「工事は4月に発注する予定で、工事期間は2020年3月末までを見込んでいます。供用開始時期は来年の夏ごろを予定しています」。
 なぜ飯舘村にブロンズ製ベンチが必要なのか。村職員はこう続けた。
 「全村避難で家族も地域のつながりもバラバラになってしまいました。そういった村が復興していく場合、村に帰って来てもらうというのも重要ですが、地域コミュニティや地域のつながりを新たに組み立てていかなければならなくなります。家族のつながりも復興の重要なポイントになってきます。重岡さんの作品が家族や未来を見つめている作品が多く、今後、多世代の帰村、特に子育て世代、子どもたちの帰村を目指す時に、そういったものを象徴できる物という事で決めました。他の作品と違うところは触れても大丈夫というところです。ベンチや噴水のオブジェなど多くの自治体でも使われているという事も鑑みて計上した次第です。復興を進めるにあたって、重岡さんのベンチや像がテーマに沿っていたというのが一番大きかったところですね」
 先のシンポジウムに参加した佐藤八郎議員は、壇上で「議会で重岡氏のブロンズ像を選んだ理由を質したら、村長が大変気に入ったからだということだった。これで3年続けて同じ作者の作品を購入する事になる。私は反対したが、委員会で反対して本会議で賛成したという不思議な事が起きましたので予算案は通りました」と皮肉った。それでも、村議会は予算案を認めた。
 議会事務局によると、今月14日の予算審査特別委員会でブロンズ製ベンチ購入に関する疑問が噴出。購入費3000万円を削除した修正案が賛成4、反対3(議長、委員長は採決に加わらないため7人で採択)で可決された。しかし、19日の本会議で一部の議員が態度を一変させたため、賛成3、反対4で修正案が否決。原案通りの予算案が起立多数で可決された。佐藤八郎村議が言う「不思議な事」とはこれの事だ。長谷川健一さんは怒りが収まらない。
 「ブロンズ製ベンチなんて全く無意味だと俺は思う。今の村は医療も買い物も不便。なんでそういうものにお金を使わないんだ」






(上)飯舘村のふるさと納税「復興までい寄付金」でも、使い道の1つに「復興の象徴となる『触れ合う彫刻』の建立・設置」が挙げられている。原発事故による避難指示が解除された自治体で芸術作品の購入を使途に挙げているのは飯舘村だけだ
(中)2018年4月、村内学校の開校式に出席した彫刻家・重岡建治氏(左)。学校敷地内にも村が約1700万円で購入した重岡氏の作品が複数、置かれているが、重岡氏は「通常の取引の3分の1の価格。実費しか頂いていない」と話していた
(下)2019年度の飯舘村一般会計当初予算は143億2000万円。原発事故後、2番目の規模に膨らんだ。村議会はいったんはブロンズ製ベンチの購入費用3000万円を認めなかったが一転、本会議では原案通りに可決。「飯舘村には民主主義が無い」と話す村民もいる

【賛成に回った村議「後世が評価する事」】
 高橋和幸村議は、14日の予算審査特別委員会ではブロンズ製ベンチの購入を認めない修正案に賛成した。ところが19日の本会議では一転、修正案に反対の討論をして原案に賛成。同僚議員や村民からは「寝返った」、「菅野典雄村長に毒まんじゅうを食わされたか」などと批判が集中している。
 「寝返ったとかそういう事じゃ無いですよ。他人がどう受け止めようが勝手ですし、言い訳しようとも思ってないです。悪く思いたい人は思っていれば良いです。1年半、実際に議員をやってみて、議案に賛否を示すたびに、いまだに『村長派か』とか『共産派か』とか言われます。もううんざりなんです」
 高橋村議は電話取材に対し、そう語った。
 「無駄遣いだと思う人もいれば、子どもたちが実際に触れて人がたくさん村に来て何十人何百人が喜ぶかも分からない。ブロンズ製ベンチの購入が良かったかどうかなんて村長にも行政にも分からないし、議員にだって分からないですよ。物事の良し悪しを決めるのは後世の人だと思いますよ。予算審査特別委員会と本会議で翻ったと言うが国会でも同じですよね。参議院で反対された議案が衆議院で可決される。地方議会でも同じ事です」
 「本会議の採択では予算審査特別委員長も加わるから8人です。そうなると4対4で賛否同数になり、議長採択で原案が可決されたでしょう。その場合、修正案に賛成した村議から村長などへの不信任案が提出され、選挙などで予算の執行がストップする可能性も考えられました。実際には委員長が欠席して7人での採択になりましたが。それが本当に村民のためになるかを考えました」
 「個人的には文学も芸術も好きですし、元々『反対ありき』で委員会に臨んだわけではありませんでした。ただ、復興のシンボルがブロンズ製ベンチなのか、という点は今でも納得していません。別に菅野村長に頼まれたわけでも何かをもらったわけでもありませんが、何でもかんでも『駄目駄目』と言っていては何も進みません。村民を村に帰って来させないために議員をやっているのでは無いですから。地元をどうかしたいから議員をやっているのですから」
 高橋村議は31日に開かれる予定の小宮行政区総会の席上、今回の経緯を説明するという。



(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)
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