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【自主避難者から住まいを奪うな】進まぬ「新たな住まい」探し~拒否相次ぐ戸別訪問、7割以上で「要再訪問」。打ち切り方針は依然、撤回せず

福島県は、原発事故による〝自主避難者〟への住宅無償提供を2017年3月末で打ち切る方針を貫いているが、全国で実施されている戸別訪問も新たな住まい探しも進んでいないことが分かった。訪問出来た県外避難者のうち4割で住まいが決まっておらず、訪問を拒んでいる人も含めて実に7割以上の避難者への再訪問などのケアが必要という。明日9日には、避難者らでつくる「原発被害者団体連絡会」(ひだんれん)と「原発被害者訴訟原告団全国連絡会」(原訴連)による2回目の交渉が福島県庁で開かれる(7月9日号参照)。住宅無償提供終了まで7カ月。「打ち切りありき」の切り捨て策が、被曝リスク回避のために動いた避難者を追い詰めていく。

【険しい「自立」への道】
 7月29日、福島市の「コラッセふくしま」で開かれた「避難者受入関係都道府県連絡会議(兼)生活再建検討会議」で配布された資料によると、今年1月に福島県が実施した「住まいに関する意向調査」で「2017年4月以降の住宅が決まっていない」と回答し、戸別訪問の対象となっている9394世帯(福島県内への避難者を含む)のうち、7月1日までに実際に訪問出来たのは55.2%にあたる5190世帯。特に、受け入れ自治体の職員などに戸別訪問を委託しているケースの訪問率が低く、39.3%にとどまっている。行政への不信感や住宅無償提供打ち切りへの抗議の意思表示として、訪問を拒否するケースが多いという。「不在というより会っていただけない」(生活拠点課)。
 訪問出来た福島県外避難者のうち、来年4月以降の住まいが決まっていないと答えたのは42.5%にあたる1143世帯。公営住宅などからの転居の見通しは立っているものの、さらに追跡調査が必要と判断された世帯も含めると、実に76.8%の世帯が「再訪問が必要」な状態。打ち切り実施まで7カ月と迫っているが、多くの県外避難者が〝漂流〟しているのが実情だ。福島県は今月下旬から2回目の戸別訪問を全国で実施する予定だが、状況が劇的に良化するとは考えにくい。国の言う、避難者「自立」への道は非常に険しい。
 避難者からは「希望する住宅が見つからない」、「公営住宅の抽選に当選するか不安」、「保証人が見つからない」、「収入が低く、家賃負担が発生した場合の生活が不安」などの意見が寄せられているという。これらは、避難者が以前から継続して訴えてきたことだ。福島県は「戻っていただくのが基本」(生活拠点課)という考え方のため、避難継続希望者への支援には消極的。受け入れ自治体の〝厚意〟で若干の受け皿は用意されつつあるが、全体としては福島県の復興のために帰還を促す流れが出来上がっている。


7月1日までに行われた戸別訪問の結果、福島県外への避難者のうち、実に4割以上が新しい住まいが決まっていない。ただ、戸別訪問自体55.2%しか実施できておらず、実際の未確定世帯はさらに増えるものとみられる

【「中通りでは通常に暮らしている」】
 「避難せず、福島県内に残って暮らしている人の方が圧倒的に多いわけです。避難していない県民のうち『支援するのは当然だ』と考える人が多ければ良いが、実際には県外避難者だけ住まいを提供し続ける事への否定的な投書もある。中通りには政府からの避難指示も出ていない。平等という面で矛盾が生じるのは事実だと思います」
 取材に応じた福島県生活拠点課の担当者は、こう語る。「発災当時と状況が違います。復興が進み、福島市のような中通りと双葉郡を同じく論じられなくなりました。そもそも避難が必要な状況なのでしょうか。強制避難区域を除いては通常に暮らしているわけですから」。
 福島県職員は、本音では自主避難者を否定している。「住宅の無償提供が終わるということで戸惑うのは理解出来ますが…。県議会でも大多数の賛成をいただいていますしね」。そもそも「避難者」の明確な定義は無く「本人が『避難だ』と言えば避難者としてカウントする」(生活拠点課)。しかし「避難というのは通常、一時的なもの。戻って来る意思があるものを指す」というのが基本的な考え方のため、福島に戻る意思の無い避難者への支援が後ろ向きになるのも当然だ。来年4月以降は災害救助法上の「避難者」は大幅に減ることになる、。東京五輪に向け世界に復興をアピールする意味でも住宅支援を打ち切った方が国にも行政にとっても都合が良い。
 「原発事故被害者の救済を求める全国運動」のまとめでは、全国17の地方議会から住宅無償提供継続を求める意見書が国や福島県に提出されている。福島県生活拠点課の担当者は「意見書は読んでいる」としたうえで「中通りを双葉郡と同じように思われているのであれば残念。ぜひ、実際に視察に来て欲しい」と話した。意見書を採択した議会は、福島県中通りへの認識が不足しているということなのだろうか。


福島県職員は「避難していない人の方が多い」「中通りでは皆、普通に暮らしている」と話し、7カ月後の住宅支援打ち切り方針を貫く方針だ=7日、福島市の「福島七夕まつり」で

【短冊に「放射能がなくなりますように」】
 福島県外に避難しなかった人々は、そんなに自主避難者支援に否定的なのか。7日、福島市内で開催中の「福島七夕まつり」会場で子どものいる福島市民に話を聴いてみた。
 「避難するしないは個々の判断。福島県内もちゃんとして欲しいし、避難者支援も必要。別に不公平だとは思わない」と話したのは30代の父親。生後6か月の娘とまつりに訪れていた20代の母親も「うちは夫が建築業だし、避難するより残って福島の復興のために貢献しようという考え。でもそれぞれの選択だから避難した人に悪い感情は無い」と語った。「汚染や被曝のリスクをあんまり考えても疲れちゃうので、現実は現実として受け止めながら暮らしている。避難者の支援が不公平だとは思わないが、次のステップに向けて5年というのは一つの区切りにはなるのではないか」と話した父親も。取材した限りでは、否定的な意見はほとんど無かった。
 一方で、こんな父親(46)も。「避難は難しいけど、今も米は北海道や新潟のものを取り寄せ、水にも気を付けている。原発事故当時、幼稚園児だった長女は、七夕の短冊に『放射能がなくなりますように』って書いてたよ」。
 2011年の夏休みは、山形県の受け入れ策を利用して8月末まで妻と2人の子どもを避難させた。アパートの家賃は免除され、光熱費だけの負担で済んだ。「結果として心配し過ぎなのかもしれない。もちろん、何も無い方が良いに決まってます。でもね、もし子供の身体に何かあったら、申し訳が立たないですよ」。
 県外避難に否定的な県職員は「中通りでは通常に暮らしている」と言い放つが、このような父親がいるのもまた事実。「条件さえ整えば、今からでも避難したい」と話す人もいる。住宅支援の打ち切りは、避難の権利を認めず、避難の扉を閉ざすことにつながる。県民を県内にとどまらせ、無用の被曝を望まない住民から避難の選択肢を奪う。原発事故からの「復興」の陰で、切り捨てられる人々がいる事を忘れてはならない。


(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
大手メディアが無視する「汚染」、「被曝」、「避難」を追い続けています。

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