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【福島原発かながわ訴訟】地裁判決受け横浜で集会~被曝リスク直視せず、区域外避難には低い賠償。司法の限界?「5年以上争ってこの程度の判決。それでも闘わなければ…」

原発事故で神奈川県内に避難した人々が国と東電を相手取って起こした「福島原発かながわ訴訟」(村田弘原告団長)。2月20日に横浜地裁(中平健裁判長)で言い渡された判決を受けた集会が20日午後、横浜市内で開かれた。低線量被曝のリスクを直視せず、区域外避難者には冷たい判決。司法は原発事故被害者を救済し得るのか。原告たちは疲弊とジレンマを抱えながら、控訴審での闘いに臨む。この日は奇しくも、福島では聖火リレーの出発地「Jヴィレッジ」の全面再開イベントが開かれた。〝復興〟に覆い隠される被害者たちの叫びに耳を傾けたい。


【「厳しい闘いへの理解こそ最大の支援」】
 「裁判で原発事故被害者が救済される事はあり得ないんじゃないか。いま非常に気持ちが悲観的に落ち込んでいて、何とかして前を向いて進んで行かなければいけないなと思いながらも、違和感や危惧感が非常に強いというのが正直なところです」
 横浜地裁で判決が言い渡されてから2カ月。原告団長・村田弘さん(福島県南相馬市小高区から神奈川県横浜市への避難継続中)はこの日、いつになくネガティヴな言葉を繰り返した。原発事故による避難を始めて8年。裁判の原告団長として先頭に立つ一方、全国の原発避難者との共同行動にも参加し続けてきた。体重も落ちた。肩の辺りを触りながら「畑仕事でモリモリしていたのが、今は骨が触れるようになってしまった」と苦笑した。疲弊は否めない。せめて司法が被害者に寄り添った判決を下してくれたら─。だがしかし、横浜地裁の判断は、決して満足出来るものでは無かった。
 横浜地裁は、東電だけでなく国の法的責任をも認めた。大津波の予見可能性も過酷事故回避の可能性もあったと断じた。だから、退廷直後は「法廷内の梅は8分咲きだった」と表現した。笑顔も見えていた。しかし、時間をかけて判決文を精査するにつれて「どんどん落ち込んでしまった。5分咲き、いや3分咲きだったのではないかと」。
 「今の裁判制度の中で原発被害者の救済を求める事はそもそも限界があるのではないか、と感じました。被害は今でも続いているんです。でも、原発事故被害を見えないようにして次に進もうという明確な意思が背景にあった。年1mSvの追加被曝線量は年20mSvに引き上げられ、2020年の東京五輪を最終目標に被害者切り捨ての順番が決まっていたのです」
 避難指示は続々と解除され、賠償も打ち切り。避難指示区域外避難者(いわゆる〝自主避難者〟)ばかりか、避難指示区域からの避難者への住宅提供も打ち切られ、今月からは国家公務員宿舎からの退去に応じない避難者には2倍の家賃が請求されている。東電はADRでの和解案を拒み続け、原発事故の責任を問われている国も被害者救済に消極的だ。
 「司法は、放射性物質の拡散も沈着も正面から認めようとしない。認められない。この裁判の限界を突破出来ない限りは、本当に意味での被害者救済は出来ません」と力をこめた村田さん。一方で、こんな言葉で自らを奮い立たせながら呼びかけた。
 「大多数の原告は疲れ果てています。5年以上闘ってこの程度の判決かと絶望的な気持ちにならざるを得ないが、シュンとしているわけにもいきません。権力の犯罪をきちんと裁けるのは何なのだろう、と抵抗を続けたい。時間が経つにつれて〝風化〟が進んでいるのは事実だし、『お前ら、いつまでそんな事をやっているんだ』という雰囲気はどんどん蔓延しています。原告を取り巻く環境は厳しくなっていますが、私たちがこうしてしんどい闘いを続けているという事を理解していただくのが最大の支援なのです」
 





(上)判決文を解説した黒澤知弘弁護士(弁護団事務局長)。区域外避難者に対する賠償額の低さや低線量被曝の健康影響に関して科学的知見を排除した形で判断した裁判所の姿勢について厳しく批判した
(中)原告団長の村田弘さんは、裁判への想いや判決への落胆・失望、8年間の疲弊を赤裸々に語った。「5年以上闘ってこの程度の判決かと絶望的な気持ちにならざるを得ない」とも
(下)集会には小出裕章さんや崎山さんも参加。多くの聴衆が集まった=神奈川県横浜市・新横浜駅近くの「スペース・オルタ」

【「避難指示の有無だけで区別、おかしい」】
 判決文を解説したのは、弁護団事務局長の黒澤知弘弁護士。
 「判決のポイントは3つです。①国の国家賠償責任は認められた②認容された慰謝料の金額は避難指示の有無による格差が大きく、被害の実相に見合っていない③低線量被曝の健康影響はきちんと認定されたとは言えない」
 認容された慰謝料の金額については「徐々にではあるが前進していると言える。特に避難指示区域の中の3区域(帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域)の間にあった不合理な格差は一定程度是正されました。特に富岡町や浪江町、南相馬市小高区の居住制限区域、避難指示解除準備区域において、帰還困難区域との格差が一定程度狭まりました」と評価した。
 一方で、避難指示が出されなかった区域からの避難者(いわゆる〝自主避難者〟)に対しては「賠償の水準が大きく落ち込んだ。避難指示の有無による格差は依然として大きいままです」と指摘した。
 「避難指示区域に関しては、金額は十分ではないが被害の捉え方としては大きくずれてはいません。問題は区域外避難者です。避難指示が出されなかった区域も、被害の基本的な構造は同じです。ですが、裁判所は残念ながら、ふるさとや地域社会が変容・棄損させられた損害や生活基盤が失われた損害については区域外避難者に関して認めませんでした」と黒澤弁護士。
 「権利侵害を正面から認めているというよりは、避難するのか避難せずに一定の被曝リスクを甘受するのかの選択を迫られた事に対する権利侵害だけを認めています。その後の避難生活における平穏な生活の破壊に関しては評価の外に置いてしまっている。単純に避難した時点での意思決定の問題に置き換えてしまっている。被害の実相に見合った賠償金額とは言い難いのです。避難者は避難指示の有無だけで区別されるべきではありません」と批判した。
 低線量被曝のリスクについて、横浜地裁は東京地裁と異なりLNTモデル(被曝線量と健康影響の間には、しきい値が無いとの考え方)を「統計的に実証したものではないから、直接の基準とすることはできない」採用しなかった。弁護団は低線量被曝による健康被害を重要な争点と位置付けてきたが、この点についても黒澤弁護士は「裁判所は正面から踏み込んだ判断をしていません。専門的な論争は全て肩すかし。科学的知見を排除して〝裸の社会通念〟で判断しているのは極めて問題です」と厳しく指摘。控訴審で改めて主張・立証していく考えを示した。
 「8年経ち、当事者の方々は疲弊しきっています。世論の関心も低下しているように見える。1人の被害者も泣き寝入りさせてはいけないという原点に立ち返り、一歩ずつ進めていくしか無いと思います」。黒澤弁護士はそう締めくくった。






横浜地裁は避難指示の有無で賠償額を大きく区別。低線量被曝のリスクについても正面から取り上げなかった。原告たちの闘いは、東京高裁に舞台を移して続けられる(黒澤弁護士の資料より)

【「LNTモデルを社会通念にしよう」】
 集会には、NPO法人「3・11甲状腺がん子ども基金」代表理事の崎山比早子さんや、元京都大学原子炉実験所助教・小出裕章さんも参加。崎山さんは、横浜地裁がLNTモデルを採用しなかった点について「裁判に勝つためにはLNTモデルを社会通念にしていく事が非常に重要です」と語った。
 「放射線の健康影響は、しきい値の無い直線モデルで考えるべきです。年20mSv以下なら大丈夫という考え方には倫理性がありません」
 「LNTモデルは理論的にも裏付けがありますし、それは疫学調査でも証明されています。質が高い疫学調査であるほど、LNTモデルを支持する度合いは強くなっています。原発事故後、ベクレル(Bq)やシーベルト(Sv)を知っている人が増えたように、LNTモデルが社会通念になって放射線量には『安全量』は無いんだという事を誰もが理解すれば、裁判には勝てるのではないかと思います」
 小出さんは、複数の地裁判決で国の責任が認められている事について「もし東電が大津波の到来を予見出来なかったら罪にならないのか。過酷事故が回避出来なければ国は無罪なのか。事故は予見できないからこそ事故。予見出来ないもの、過酷事故を回避出来ないものを初めから認めてはいけないのです。国はなぜ、そんなものを認めたのか。そのように考えるべきだと思います」と指摘。
 「福島第一原発の事故で〝原子力マフィア〟が学んだのは、どんな悲惨な被害を出しても誰も責任を取らなくて良い、処罰もされない、という事だ。膨大な被害が生じているにもかかわらず、東電の会長も社長も責任を感じていない。国も同じ。そういう教訓を学んだ彼らは、もはや全く怖くないのです。だから原発を再稼働して金儲けをしようという事になっている。私は裁判官も原子力マフィアの一角だと思っています。国の〝専門的・技術的な見地〟なんていうものを認めて原子力発電を許して来たのは、司法にも責任がある。真っ先に裁判官に謝って欲しい。彼らには被害者の苦しみなど理解出来ません」
 控訴審は早ければ今秋にも始まる見通しだという。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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