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【モニタリングポスト撤去】継続配置決まる。撤去計画浮上から1年余、住民の想いが国を押し切る。規制庁「ここまで反対の声が広がるとは…」、市民の会「まだ注視必要」

「リアルタイム線量測定システム」と呼ばれるモニタリングポスト(MP)の撤去計画が撤回され、継続配置が決まった。29日午前に開かれた「第10回原子力規制委員会」に原子力規制庁が「当面、存続させることを基本とする」という方針案を提出。了承された。福島県内市町村(避難指示区域外)に設置されている約2400台のMPを、2021年3月末までに撤去するという計画が示されてから1年余。住民説明会では反対意見が大勢を占め、市町村議会からは継続配置を求める意見種が相次いだ。当初は撤去に強気の姿勢を見せていた国も、今回ばかりは地元住民の声や行動を尊重せざるを得なかったようだ。


【伴委員「自治体と連携深めて」】
 午前10時から開かれた委員会には、説明者として原子力規制庁監視情報課の武山松次課長らが出席。議題の6番目に据えられた「リアルタイム線量測定システムの見直しに係る今後の方針について(案)」に関し、「空間線量率が十分に低く安定している現状を見れば、現在当該地域全域に配置している可搬型モニタリングポストで十分であるという考えに変わりはない」としたうえで①当面、存続させることを基本とする②狭いエリアに集中的に配置されているものについては、関係市町村の理解を得ながら、当該市町村において全ての除去土壌等が撤去された後、配置の適正化を図ることとする─と委員に伝えた。委員に配られた資料には、住民説明会の参加者から出された意見だけでなく、電話や文書で寄せられた意見、市町村議会から届けられた撤去反対の意見書も64ページにわたって添付された。
 席上、武山課長は代表的な例として「生活と密に関連しているため撤去すべきではない。永久に維持するべき」、「放射線による子供への健康被害の不安もある」、「廃炉作業中に事故が起こる可能性もあり、いち早く自分の目で空間線量率を確認したい」、「規制庁は合理化の追求ばかりではなく感情的な面も考慮し検討すべき」などとする住民説明会(白河市)での反対意見を紹介。「せめて除去土壌の搬出が完了するまで維持すべき」、「狭い区画にいくつも隣接して設置されているものについては撤去の余地がある」などとする住民説明会での意見(福島市)も読み上げられた。
 伴信彦委員から「武山課長と滝田課長補佐には何度も(福島に)足を運んでもらって、毎回、数時間にわたって住民説明会を実施してもらった。本当に大変な作業であったと思います」と事務方を労った。そのうえで「参加者数で見ると延べ652人だけなのかなあというのはありますけれども、それでも、住民の方々の生の声をお聴きして、その声を考えれば、住民の不安は妥当なものであろうと考えます」と意見した。伴委員は方針案で示された「狭いエリアに集中的に配置されているもの」の具体例について質したが、武山課長は「例えば隣接する施設に各々に設置されているケース、100メートル四方に3台くらい設置されているところもある。関係する市町村と相談しながら、どういうところが該当するのか考えて行きたい」と答えた。伴委員は重ねて「つまり台数を減らすという事では無くて、まさに配置を適正化していくとう意味ですね」と念押し。「この問題は地域ごとに相当事情が異なると思うんです。ですから今後、自治体との連携連絡を深めていく努力が必要になると思いますので、その点はぜひ、お願いしたい」と述べた。
 更田豊志委員長は「私もこの方針は妥当なものだと思いますけれども、そもそも背景には財源が消えるというものがあったはずですので、異なる財源を求めなければならない。維持を続けるものに関しては、これらの意見を踏まえたうえで財務当局へきちんとした説明を続けてもらいたい」と最後に述べた。委員から異論は出ず、方針案が了承された。この議題に費やされた時間は9分ほどだった。監視情報課によると、方針案は今月27日に福島県や市町村に伝えたという。






(上)撤去せず配置が継続される事が決まった「リアルタイム線量測定システム」(モニタリングポスト)=福島駅西口
(中)福島県内で開かれた住民説明会では「反対」の意見が相次いだ
(下)市民グループ「モニタリングポストの継続配置を求める市民の会」のメンバーも委員会を傍聴。「配置継続」の決定を喜んだ=東京都港区六本木1丁目

【福島県外の議会からも反対の意見書】
 「個人的には思いの外、反対の声が多かったという印象ですね」
 委員会後、原子力規制庁の担当者が苦笑交じりに語った。当初は比較的MP撤去に強気の姿勢を見せていた官僚が戸惑うほど、確かに反対の声は急速に拡大していった。
 撤去方針が公になったのは2018年3月20日の第74回原子力規制委員会。これを受けて、福島県の浜通り、中通り、会津の母親たちが中心となり「モニタリングポストの継続配置を求める市民の会」を結成。同年4月には都内で①モニタリングポストが不要か否かの「決定の権利」を住民に持たせること②これまで通りに配置を継続すること③住民説明会は撤去を前提として開催しないこと、情報収集が困難な住民をとりこぼさないこと─を求める要請書を原子力規制庁に提出した。
 その後も住民の動きは加速。福島市やいわき市、会津若松市などで、地元の女性たちが継続配置を国に求めるよう首長に直接、訴えた。福島市の木幡浩市長は「MPが存在する事による風評はある」、「将来的な集約というか、どの程度のものが良いかという議論はあり得る」などと発言し、出席した母親たちの反発を招いた。
 原子力規制委員会には会津若松市、喜多方市、いわき市、白河市から継続配置を求める市長名の文書が寄せられたほか、福島県内の9市町村議会から撤去に反対する意見書が届けられた。撤去反対の意見書は福島県内だけにとどまらず、東京都の国立市議会や茨城県のつくば市議会からも寄せられた。福島市議会は「撤去を求める住民もいる」などとして「継続配置を求める意見書」を否決し、「一方的に撤去しないことを求める意見書」を採択した。
 「市民の会」が呼びかけた撤去反対の署名は、福島県内外から3万5000筆を超えた。2018年6月から11月まで福島県内15市町村で開かれた住民説明会では、ほぼ全ての意見が「撤去反対」、「継続配置すべし」だった。
 撤去反対の動きを苦々しく見ていたのが、原子力規制委員会の田中俊一前委員長だった。取材に対し、こう語っている。
 「あんな意味の無いものをいつまでも配置し続けたってしょうがない。数値がこれ以上、上がる事は無いのだから。早く撤去するべきだよ。廃炉作業でどんなアクシデントが起こるか分からない?そんな〝母親の不安〟なんて関係ないよ。そんな事ばかりやっているから福島は駄目なんだ」(2018年7月)
 「MPを撤去しても『さすけね』だ。設置を継続して欲しいと言っているうちは復興出来ない。不安を抱いている事を美学のように思っているのが間違いなんだよ。それをまた、あなたたちが煽り立てるところもいけない。不安に思うのはしょうがないが、福島の復興を考えたら不安に思っていても何の意味も無い。前に進まなくて良いんだったら別に放っておけば良いんだけど。MPなんか値は下がるしか無いんだから。『廃炉作業で何があるか分からない』なんていうのも何の根拠も無い。中通りも双葉町も、廃炉作業でのアクシデントで環境中の放射線量が上がるなんて事は無い。それに(設置し続けるには)お金がかかるんだよ」(2018年10月)
 そもそも田中氏は、MP撤去の〝言い出しっぺ〟。2015年11月25日の原子力規制委員会では「今までどおりのモニタリングでいいかどうかということも含めて見直す必要がある」などと述べたが今回、委員会は住民の想いを尊重した。






原子力規制庁には住民説明会だけでなく、電話や文書、市町村議会の意見書など様々な形で撤去に反対する意見が寄せられた。当初は強気に撤去を進める姿勢も見せた規制庁だったが、さすがに住民の想いを無視できなかった

【「集中配置適正化」には懸念も】
 委員会の傍聴席には、「モニタリングポストの継続配置を求める市民の会」メンバーの姿もあった。同会は「方針変更を受けて」と題したコメントを発表。その中で次のように記している。撤去方針が撤回された事を喜びつつも、「私たちの歩みはまだまだ続くなとも思います」として、今後も注視していく方針だ。
 「この発表をもろ手を挙げて喜ぶわけにはいきません。『狭い地域に集中的に配置されているモニタリングポストについては、除染土壌の搬出が終わったら、関係市町村の理解を得ながら撤去を進める』という部分については、懸念を抱いています。私たちは土壌搬出作業が終わってからではなく、あくまでも廃炉作業が終わるまでの配置を求めており、狭い地域に集中している箇所については撤去ありきではなく、住民説明会の際もあがっていた『配置を求める声』を取り入れてほしいということも、これまで何度も伝えて参りました。『線量の高い場所があり、いつも気になっているので、そこにモニタリングポストを設置してほしい』、『いつも見ていたモニタリングポストが突然撤去されてしまった』などという住民の意見は、説明会の記録にも残っていると思いますし、自治体判断だけでは不十分なニーズのくみ取りを、より丁寧に、詳細に行っていくという課題は残っているはずです」
 いわき市原子力対策課の担当者は、委員会のインターネット動画配信を見届けて、電話取材に応じた。
 「これで、当初の撤去計画は全くの白紙になり、期限を設けずに設置が維持されるという認識です。4月下旬に規制庁の方々がこちらに出向いてきました。その時に口頭で方針案の説明を受けました。おそらく近々、規制庁から正式に今後の対応は通知されてくるでしょう。『狭いエリアに集中的に配置されているものの配置の適正化』については、あくまで住民の理解が必要だと思います。集約する場合には、きちんと住民に説明をして責任を果たして欲しいと伝えてあります」
 原子力規制庁監視情報課によると、年間5~6億円を要するMPの維持費用は、復興特別会計で賄われている。復興特別会計は2020年度末で廃止されるが「2021年度以降はどうするのか、財源のめどは全く立っていない。これから財務当局との話し合いが始まる」という。MPの維持管理を費用も含めて設置されている市町村に移管するとの考え方もあり、市町村や「市民の会」からは「国や東電の責任で維持するべき」などと反発する声もあがっている。



(了)
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