【原発避難者から住まいを奪うな】「経済支援再開しません」「家賃2倍請求もやめません」。復興庁は〝避難者切り捨て庁〟か~衆議院・東日本大震災復興特別委員会より
- 2019/06/11
- 21:00
原発事故に伴い避難指示が出されなかった区域から全国に避難した人々(いわゆる〝自主避難者〟)に対する住宅支援打ち切り問題が、11日の衆議院・東日本大震災復興特別委員会で取り上げられた。民間賃貸住宅に入居する〝自主避難者〟への家賃補助制度が打ち切られて2カ月余。答弁に立った復興庁の渡辺博道大臣も末宗徹郎統括官も「ゼロ回答」。国家公務員宿舎から退去出来ない世帯への「家賃2倍請求」は強行され、家賃補助も含めた経済支援は再開されない。避難者数を意図的に減らすような「統計上のカラクリ」も改めて浮上。福島県に経済支援を再開するよう指導する主体性も無し。これでは、復興庁は〝避難者切り捨て庁〟と批判されても仕方ない。
【復興相「福島県もていねいに進めてきた」】
委員会で避難者の住宅問題について質したのは山崎誠代議士(立憲民主党、神奈川5区)。
まず取り上げたのは、避難後に国家公務員宿舎に入居した人々に対する退去強制と、退去出来ない世帯への「家賃2倍請求問題」。山崎代議士は「この問題を一歩でも前進させたい」、「数字を聞き出すのに昨日、1時間半~2時間くらいずっとヒアリングをした」と前置きしながら、こう質した。
「3月1日時点で国家公務員宿舎に入居している世帯のうち100世帯が未退去という形で残っておりました。(新たな)住居を確保済みの方が29世帯、未確保が71世帯という状況でした。こういう状況の中で3月末で経済支援が打ち切られる。この方々が退去を迫られるという事で、本当にこの100世帯の方々が退去出来るのか。きちんと生活再建を果たせるのかと3月14日の復興特で質問しました。『今、未確保の方々、最後の最後まで努力をしているところでございますので、どうなるのかという仮定のお答えには、答弁を差し控えさせていただきます』という答弁でした。驚愕の御答弁でございました。見てください。3月中に退去できたのは20世帯。未退去の方々が80世帯残りました。5月1日になりますと、未退去の方が60世帯。未確保が53世帯です。何とかしますという宣言をされて、53世帯、まだ残ってらっしゃるんですよ。この実態どうお考えですか。努力して、生活再建を成し遂げますというのが委員会での約束ですが、約束を果たせなかったという事では無いんですか」
これに対し、渡辺復興大臣の答弁は全く答えになっていなかった。
「この間、福島県もていねいに物事を進めて参りました。したがって、現在において53世帯まで、それもやはり、現在未確保の人たちにも相談体制を整えながら進めているところでございます。まあ、はっきり言ってゼロでは無いじゃないかという事でございますが、この問題に関しては当然の事ながら現在住まわれている方々でありますのでていねいに対応していかなければならない。そのように思っております」
内堀雅雄知事は避難当事者と面会もせず、避難者がどこでどのような暮らしをしているのか実態調査もせず、とにかく結論ありきで住宅支援の打ち切りを強行した福島県の、どこが「ていねい」なのか。
さらに「大臣、問題なのはこの方々に対する今の扱いなんですよ。とにかく退去しなさいと言われ、2倍の家賃を損害金として払いなさいという請求がもう間もなく4月分として配られると聴いていますが、これは事実ですか」と質すと、復興庁の末宗統括官が代わって「そのように承知を致しております」とあっさり認めた。なぜ被曝リスクを避けるために避難した人々が「損害金」を請求されなければならないのか。山崎代議士も呆れ顔で言った。
「さすがにあり得ないと思います」

復興庁の渡辺大臣は「この間、福島県もていねいに物事を進めて参りました」と答弁した。しかし、避難当事者と面会せず、生活実態調査もせずに「住宅支援打ち切り」を強行する事のどこが「ていねい」なのだろうか。答弁に納得出来る避難者はいるまい
【「福島県は退去無理強いしない」と統括官】
4月1日以降、国家公務員宿舎への入居を続けている〝自主避難者〟に対し、福島県は退去を求め続けている。福島県生活拠点課によると、今月中にも4月分の2倍の家賃が記載された振込用紙が送付されるという。
山崎代議士はさらに続けた。
「生活保護になってしまった方々か、あるいは転居先が決まったけれどもまだ時間があるという方々は延長を認めますという話なんです。53世帯は(新たな住まいを)確保出来てないんですよ。住まいが見つからないって困っている方々です。確保出来ている人には延長を認めて、見つけられない方々を何でそういう処遇にするんですか。合理性が全然分かりません。なんで53世帯の方々は退去出来ないのか。皆さん、それぞれ事情がありますよ。都営住宅に申し込んでも落選が続いている、60歳未満の単身世帯で、そもそも公営住宅の入居要件に該当しない、非正規労働で低賃金で民間賃貸住宅にはどうしても転居出来ない、病気で転居には耐えられない…。こういう方々が53世帯には含まれていますよ。こういう方々を何で延長出来ないんですか」
末宗統括官は「国家公務員宿舎の貸与は元々2年間の経過措置だった。今回、供与を終了するにあたっては、どうしてもやむを得ない場合、生活保護世帯、新居契約済みの者に限るという事で賃料が据え置かれている」としたうえで「今回、例外措置でございますので、福島県としても明らかに経済的な困窮性が明確である方に限って据え置きをしている。ただし、2倍になる方も含めてでございますけれども、無理強いして出すという事は福島県の方も考えておらないわけでございまして、福祉的な支援が必要な方々については心のケアの相談窓口あるいは自立支援制度そういったサポートのご案内、それから住宅のご案内、そういった事をしながらケアをしているちお伺っているところでございます」と答弁した。しかし2倍の家賃を請求する事自体が、そもそも「無理強いして出す」という事では無いのか。
「何で認めないんですか。合理性が全く分かりません。これは人権の問題です。追い出す事は無いと言っている。でも、不法占拠状態ですよ。損害金まで請求されて、この精神的苦痛をどう測ったら良いんですか。それを甘受しなければいけない責任が、避難者のどこにあるんですか」
山崎代議士は語気を強めたが、渡辺大臣は吉野正芳前大臣と同様に「相談体制」を口にするばかりだった。
「今回は住宅困窮者である生活保護世帯という形で、そして新居契約済みの方、この方たちについては見込みが立っているという事でこのまんま住んでいただいている。賃料を据え置いている。その他についてなぜだという事ですが、少なくともこの2倍の家賃請求については福島県の方では特例措置として対応しているという事で、まずは相談体制をしっかりとやってきめ細かく相談に乗っていただいていると思っております。ここに対応を進めているのが現状だと思っている」
経済支援は再開されない。

山崎誠代議士が委員会で配布した資料。国家公務員宿舎に入居する〝自主避難者〟のうち少なくとも53世帯が新たな住まいを確保出来ていないが、福島県は退去を進めるべく今月中にも2倍の家賃が記載された振込用紙を送付する
【統計から消されていく避難者】
福島県は今年3月末をもって、収入要件を満たした〝自主避難者〟に対する2年間の家賃補助制度を予定通りに打ち切った。避難者団体から再三にわたって延長を求められていたが、耳を貸さなかった。
家賃補助制度を利用していた約2000世帯はその後、問題無く暮らしているのか。末宗統括官は「福島県は4月以降も相談対応などで状況の把握をしていると聞いております」と答えるにとどまった。山崎代議士は「ちゃんとフォローしてください。結局、何も実態把握をしていただけていない。相談窓口に声が届くのを待ってる。フォローするような調査を予定していますか」と重ねて質したが、末宗統括官は「第一義的には福島県が状況把握に努めているので、福島県と連携して取り組んで参りたい」と答弁。国は「福島県が」と言い、福島県は「国が」と言う。この構図は全く変わらない。
そもそも、正確な避難者数を苦にも福島県も把握していない。末宗統括官の答弁は、それを改めて認めた格好だ。
「避難者数でございますけれども、多くの方々がこれまで応急仮設住宅で生活してきましたので、入居が終わり恒久的な住宅に移転する場合に避難者数から除外をするというようなカウントの仕方をしている」
福島県災害対策課によると、避難元に戻らずに避難生活を継続しているとしても「災害救助法に基づく支援対象者」で無くなった瞬間に「統計上の避難者」から外されるという。避難指示区域から避難した人が避難先で新たに住まいを購入した場合、避難生活は続いているにもかかわらず「避難者」としてカウントされなくなるというのだ。これは〝自主避難者〟と同じで、災害救助法による住宅支援制度が打ち切られた段階で、統計上の避難者としては扱われていない。
最新の発表では、福島県から県外への避難者は3万1735人とされているが、そもそも自己申告頼みの〝自主避難者〟の実数は把握し切れていないばかりか、比較的追跡しやすい強制避難者も理由を設けて除外するのであれば、その信頼性は大きく揺らぐ。「まだまだ避難生活は続いて行く。だが、避難者がデータベースから消されていくフェーズに入っている」(山崎代議士)。
渡辺大臣は「全国に避難した〝自主避難者〟を把握するために26の生活支援拠点というものが活動している。今後も生活再生拠点の人たちにしっかりと対応していただく事がまずは大事。われわれも直にお話を伺う機会を設けている」と答弁したが、「誰が避難者一人一人を把握してるんですか。誰が責任を持っているんですか」という問いには、全く答えなかった。
(了)
【復興相「福島県もていねいに進めてきた」】
委員会で避難者の住宅問題について質したのは山崎誠代議士(立憲民主党、神奈川5区)。
まず取り上げたのは、避難後に国家公務員宿舎に入居した人々に対する退去強制と、退去出来ない世帯への「家賃2倍請求問題」。山崎代議士は「この問題を一歩でも前進させたい」、「数字を聞き出すのに昨日、1時間半~2時間くらいずっとヒアリングをした」と前置きしながら、こう質した。
「3月1日時点で国家公務員宿舎に入居している世帯のうち100世帯が未退去という形で残っておりました。(新たな)住居を確保済みの方が29世帯、未確保が71世帯という状況でした。こういう状況の中で3月末で経済支援が打ち切られる。この方々が退去を迫られるという事で、本当にこの100世帯の方々が退去出来るのか。きちんと生活再建を果たせるのかと3月14日の復興特で質問しました。『今、未確保の方々、最後の最後まで努力をしているところでございますので、どうなるのかという仮定のお答えには、答弁を差し控えさせていただきます』という答弁でした。驚愕の御答弁でございました。見てください。3月中に退去できたのは20世帯。未退去の方々が80世帯残りました。5月1日になりますと、未退去の方が60世帯。未確保が53世帯です。何とかしますという宣言をされて、53世帯、まだ残ってらっしゃるんですよ。この実態どうお考えですか。努力して、生活再建を成し遂げますというのが委員会での約束ですが、約束を果たせなかったという事では無いんですか」
これに対し、渡辺復興大臣の答弁は全く答えになっていなかった。
「この間、福島県もていねいに物事を進めて参りました。したがって、現在において53世帯まで、それもやはり、現在未確保の人たちにも相談体制を整えながら進めているところでございます。まあ、はっきり言ってゼロでは無いじゃないかという事でございますが、この問題に関しては当然の事ながら現在住まわれている方々でありますのでていねいに対応していかなければならない。そのように思っております」
内堀雅雄知事は避難当事者と面会もせず、避難者がどこでどのような暮らしをしているのか実態調査もせず、とにかく結論ありきで住宅支援の打ち切りを強行した福島県の、どこが「ていねい」なのか。
さらに「大臣、問題なのはこの方々に対する今の扱いなんですよ。とにかく退去しなさいと言われ、2倍の家賃を損害金として払いなさいという請求がもう間もなく4月分として配られると聴いていますが、これは事実ですか」と質すと、復興庁の末宗統括官が代わって「そのように承知を致しております」とあっさり認めた。なぜ被曝リスクを避けるために避難した人々が「損害金」を請求されなければならないのか。山崎代議士も呆れ顔で言った。
「さすがにあり得ないと思います」

復興庁の渡辺大臣は「この間、福島県もていねいに物事を進めて参りました」と答弁した。しかし、避難当事者と面会せず、生活実態調査もせずに「住宅支援打ち切り」を強行する事のどこが「ていねい」なのだろうか。答弁に納得出来る避難者はいるまい
【「福島県は退去無理強いしない」と統括官】
4月1日以降、国家公務員宿舎への入居を続けている〝自主避難者〟に対し、福島県は退去を求め続けている。福島県生活拠点課によると、今月中にも4月分の2倍の家賃が記載された振込用紙が送付されるという。
山崎代議士はさらに続けた。
「生活保護になってしまった方々か、あるいは転居先が決まったけれどもまだ時間があるという方々は延長を認めますという話なんです。53世帯は(新たな住まいを)確保出来てないんですよ。住まいが見つからないって困っている方々です。確保出来ている人には延長を認めて、見つけられない方々を何でそういう処遇にするんですか。合理性が全然分かりません。なんで53世帯の方々は退去出来ないのか。皆さん、それぞれ事情がありますよ。都営住宅に申し込んでも落選が続いている、60歳未満の単身世帯で、そもそも公営住宅の入居要件に該当しない、非正規労働で低賃金で民間賃貸住宅にはどうしても転居出来ない、病気で転居には耐えられない…。こういう方々が53世帯には含まれていますよ。こういう方々を何で延長出来ないんですか」
末宗統括官は「国家公務員宿舎の貸与は元々2年間の経過措置だった。今回、供与を終了するにあたっては、どうしてもやむを得ない場合、生活保護世帯、新居契約済みの者に限るという事で賃料が据え置かれている」としたうえで「今回、例外措置でございますので、福島県としても明らかに経済的な困窮性が明確である方に限って据え置きをしている。ただし、2倍になる方も含めてでございますけれども、無理強いして出すという事は福島県の方も考えておらないわけでございまして、福祉的な支援が必要な方々については心のケアの相談窓口あるいは自立支援制度そういったサポートのご案内、それから住宅のご案内、そういった事をしながらケアをしているちお伺っているところでございます」と答弁した。しかし2倍の家賃を請求する事自体が、そもそも「無理強いして出す」という事では無いのか。
「何で認めないんですか。合理性が全く分かりません。これは人権の問題です。追い出す事は無いと言っている。でも、不法占拠状態ですよ。損害金まで請求されて、この精神的苦痛をどう測ったら良いんですか。それを甘受しなければいけない責任が、避難者のどこにあるんですか」
山崎代議士は語気を強めたが、渡辺大臣は吉野正芳前大臣と同様に「相談体制」を口にするばかりだった。
「今回は住宅困窮者である生活保護世帯という形で、そして新居契約済みの方、この方たちについては見込みが立っているという事でこのまんま住んでいただいている。賃料を据え置いている。その他についてなぜだという事ですが、少なくともこの2倍の家賃請求については福島県の方では特例措置として対応しているという事で、まずは相談体制をしっかりとやってきめ細かく相談に乗っていただいていると思っております。ここに対応を進めているのが現状だと思っている」
経済支援は再開されない。

山崎誠代議士が委員会で配布した資料。国家公務員宿舎に入居する〝自主避難者〟のうち少なくとも53世帯が新たな住まいを確保出来ていないが、福島県は退去を進めるべく今月中にも2倍の家賃が記載された振込用紙を送付する
【統計から消されていく避難者】
福島県は今年3月末をもって、収入要件を満たした〝自主避難者〟に対する2年間の家賃補助制度を予定通りに打ち切った。避難者団体から再三にわたって延長を求められていたが、耳を貸さなかった。
家賃補助制度を利用していた約2000世帯はその後、問題無く暮らしているのか。末宗統括官は「福島県は4月以降も相談対応などで状況の把握をしていると聞いております」と答えるにとどまった。山崎代議士は「ちゃんとフォローしてください。結局、何も実態把握をしていただけていない。相談窓口に声が届くのを待ってる。フォローするような調査を予定していますか」と重ねて質したが、末宗統括官は「第一義的には福島県が状況把握に努めているので、福島県と連携して取り組んで参りたい」と答弁。国は「福島県が」と言い、福島県は「国が」と言う。この構図は全く変わらない。
そもそも、正確な避難者数を苦にも福島県も把握していない。末宗統括官の答弁は、それを改めて認めた格好だ。
「避難者数でございますけれども、多くの方々がこれまで応急仮設住宅で生活してきましたので、入居が終わり恒久的な住宅に移転する場合に避難者数から除外をするというようなカウントの仕方をしている」
福島県災害対策課によると、避難元に戻らずに避難生活を継続しているとしても「災害救助法に基づく支援対象者」で無くなった瞬間に「統計上の避難者」から外されるという。避難指示区域から避難した人が避難先で新たに住まいを購入した場合、避難生活は続いているにもかかわらず「避難者」としてカウントされなくなるというのだ。これは〝自主避難者〟と同じで、災害救助法による住宅支援制度が打ち切られた段階で、統計上の避難者としては扱われていない。
最新の発表では、福島県から県外への避難者は3万1735人とされているが、そもそも自己申告頼みの〝自主避難者〟の実数は把握し切れていないばかりか、比較的追跡しやすい強制避難者も理由を設けて除外するのであれば、その信頼性は大きく揺らぐ。「まだまだ避難生活は続いて行く。だが、避難者がデータベースから消されていくフェーズに入っている」(山崎代議士)。
渡辺大臣は「全国に避難した〝自主避難者〟を把握するために26の生活支援拠点というものが活動している。今後も生活再生拠点の人たちにしっかりと対応していただく事がまずは大事。われわれも直にお話を伺う機会を設けている」と答弁したが、「誰が避難者一人一人を把握してるんですか。誰が責任を持っているんですか」という問いには、全く答えなかった。
(了)
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