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【県民健康調査】誰のための委員会?何のための議論?「事故との因果関係否定」に反対続出も、星座長は早期決着に固執。会見も打ち切り、県民は「任期や時間より徹底した議論を」

現時点で本当に原発事故と甲状腺ガンとの因果関係を否定出来るのか─。8日午後に福島県福島市内で開かれた35回目の「県民健康調査検討委員会」で、2014~2015年度に実施された甲状腺検査結果について、「現時点において、甲状腺がんと放射線被ばくの間の関連は認められない」とする評価部会の評価に関して議論が紛糾した。反対意見が相次いだが、星北斗座長は議論を打ち切り、文面修正の一任を取り付けた。「今月末の任期満了までに終わらせる」と決着を急ぐ構え。相変わらず記者会見も強引に閉じる〝横暴〟ぶりで、果たして誰のための委員会なのか、大いに疑問が残った。


【尽くされぬ議論、遁走する座長】
 17時を過ぎると、星北斗座長(福島県医師会副会長)はしびれを切らしてリュックを両腕で抱え始めた。撮影されている事などお構いなし。一刻も早く家に帰りたくてランドセルを抱える小学生のような振る舞いに、記者席からは失笑とため息が漏れた。
 まるで駄々っ子のような人物が「座長」として君臨する県民健康調査検討委員会。座長としての采配の根底にあるのは、「県民ファースト」ではなく自身の都合や感情なのだろう。果たしてこれで、原発事故で被曝を強いられている福島県民の健康問題を議論する事など出来るのだろうか。
 まだ記者会見は続いている。記者は質問しようと挙手をしている。座長の想いを忖度した福島県職員が強引に記者会見を閉じた。新幹線で郡山に戻るのだろうか。まるで会場から逃げるように、星座長は一目散に福島駅に向かった。呆気にとられる記者や傍聴者を尻目に、県職員は後片付けを始めた。これが、原発事故後の県民の健康について話し合う委員会の現実だった。 
 委員会には様々な団体から意見表明や要望書が寄せられている。成井香苗委員(臨床心理士、NPO法人ハートフルハート未来を育む会理事長)が「委員会として返事をしなくて良いのか」と質したが、「皆様(各委員)に回覧するという事で、必要に応じてこの場(委員会)で発言していただくという取り扱いを前々からさせていただいております。前にも同じご回答を申し上げましたが、頂きましたものにつきましては、皆様にご回覧申し上げて、ここでの発言に反映していただくという事をもって委員会として受け止めるという事です」と一蹴した。各団体が切実な想いで要望書を提出しても、メールに添付されて回覧するだけ。春日文子委員(国立環境研究所特任フェロー)も「県民に丁寧に説明していく、真摯に向き合っていくメカニズムを考えていただきたい」と発言したが、星座長は「はい、ありがとうございます」と答えたにとどまった。
 委員会の最後に、2年間の任期が今月末で満了する事に対して、星座長が〝総括〟する場面があった。
 「あえて言う必要は無いと思いますけれども、本当にかじ取りが難しい委員会だと思いますね。(誰かと)替われるものなら替わりたいと思いますが、皆様が本当に思う所を発言いただいて、私をいっぱい困らせてくれてありがとうと委員一人一人に御礼と感謝を申し上げる。ありがとうございました」
 笑顔でウクレレを弾く姿とは別人の星座長。嫌味で締めくくる座長の下で、本当に県民の健康を考えた議論が出来るのか。






(上)委員会が開かれたホテル福島グリーンパレス(福島市)では、県民たちが「あいまいなまま結論出すな」などと書かれたプラカードを手に、慎重な議論を訴えた
(中)「結論はまだ早すぎる。『(原発事故と甲状腺ガンの因果関係は)まだ分からない』というところだろう」と反対意見を述べた成井香苗委員
(下)清水一雄委員も「チェルノブイリ原発事故と違うところはたくさんある。『関連認められない』と断言してしまうのは早すぎる」と異論を唱えた

【「腑に落ちない」「申し分ない」と紛糾】
 委員会が開かれたホテルの入り口には、危機感を抱いた県民たちが「私たちの声を聞いてください」、「疑問だらけの結論でいいの?」、「甲状腺検査は誰のため?」、「甲状腺ガン 原因あいまいなまま結論だすな」などと書かれたプラカードを掲げていた。この日の会合には重要な議題が出されていたからだ。
 6月3日に開かれた「甲状腺検査評価部会」。ここで話し合われた「甲状腺検査本格検査(検査2回目)結果に対する部会まとめ」は、2014~2015年度に実施された検査で「悪性ないし悪性疑い」と判定された71人について、「現時点において、甲状腺がんと放射線被ばくの間の関連は認められない」と結論づけた。
 原発事故当時の年齢、二次検査時の年齢が高いほど発見率が上がった点がチェルノブイリ原発事故と異なる事、発見率を単純に4地域(避難区域等13市町村、浜通り、中通り、会津地方)で比較すると差があるように見えるが、検査実施年度や先行検査からの検査間隔など多くの要因が影響している事、UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)が推計した甲状腺吸収線量を使った解析では、放射線量の増加に応じて発見率が上昇する一貫した関係が認められなかった事─が根拠とされている。
 星座長はこれも、あっさり認める腹積もりだったのだろう。しかし、真っ先に異を唱えたのが成井委員だった。
 「まずは4地区で出された結果をしっかりと検討するのが大事」、「UNSCEARの推定線量がどれだけ正しいのか。伊達市を見ても、地域によって全く線量が違う」、「放射線の影響は考えにくいという結論を出してしまうのは早すぎるのではないか。まだ分からない、というところだと思う」
 資料を配りながら力説する成井委員に、星座長は「資料を配る場合は私の許可を得てください」、「秩序を保たせてください」と露骨に不快感を示した。しかし、星座長は委員会の冒頭、「活発な議論をお願いしたい」と述べている。時間が足りないのであれば延長し、後日改めて議論すれば良い。
 清水一雄委員(金地病院名誉院長)も「『総合的に判断して、放射線の影響とは考えにくい』とした『中間取りまとめ』よりはっきりした表現になっている。断言してしまうのはあまりにも早すぎると思う」、富田哲委員(福島大学行政政策学類教授)も「どう考えても強引。結論が送球で腑に落ちない。原発事故による可能性がある以上、それを残すような表現をするのが科学的な態度ではないか」と異論を述べた。
 稲葉俊哉委員(座長代行、広島大学原爆放射線医科学研究所教授)は「詳細に気を配った素晴らしい報告書。内容的に申し上げるもんぼは何も無い」と絶賛した。春日委員は「非常に限定された帰還についての評価である事を文言として加えたらどうか」などと意見した。






(上)記者会見が終了する前からリュックを抱える星北斗座長。福島県職員が会見を閉じると、一目散に会場を後にした
(中)「甲状腺検査評価部会」の鈴木元部会長(国際医療福祉大学クリニック院長)。原発事故と甲状腺ガンとの因果関係を否定する文書を取りまとめた
(下)誰のために議論されているのか。時間をかけてでも議論を尽くす、それが福島県民の健康を守る事になるはずだ

【「結論は変えず表現改める」】
 星座長は「委員会として文面は受け取る。文面については一部誤解を招かないように修文する。修文内容については春日委員の発言その他を参考にしながら私に一任いただくという事でよろしゅうございますか」と議論を打ち切った。春日委員が「修正後の文案を一度、委員に(示して欲しい)」と遠慮がちに発言すると、星座長は「信用されてませんね。信用されてない事が良く分かりましたので、皆さんに回覧します」と返した。
 しかし「一任」されたのは、あくまで修正案の作成だけだ。閉会後の会見で、星座長は「全会一致になるか分かりません。皆さんからのご意見をいただいたうえで御報告させていただきます」と述べた。
 成井委員は「私は一任したとは考えていません。みんなの意見が提出されたものを踏まえて、もう一度推敲されるのだろうと思っています。もし多数決で決めるのだとしたら各委員の賛否を示すのか…」と発言。富田委員も「座長に取りまとめを一任するのは当然だと思っておりますが、最高裁の判決と同じように少数意見を付記する事になるだろうと思います。結論が出ないままずるずる行くのはまずいですから、多数決でも何でも決めなければならない。ただし、少数意見は尊重してもらわなければならない。私は『少数意見』だと思いますが」と述べた。清水委員は「自分の意見を述べただけであって、座長がきちんと取り入れてくれたと思います。それは評価部会でしっかりと討論して、結論を出すのだと思います」と応えるにとどまった。
 星座長は会見で「基本的な結論の方向は曲げなずに、誤解を招かないような表現に改める」と話し、原発事故との因果関係を否定する方向性には変わりないとの姿勢を改めて示した。「急いでいるわけでは無いが、私の任期が今月31日に切れる。任期中に委員会に報告されたものについては、任期内に整理して皆様にお知らせするのが私の務めだと思うからそうする」とも述べ、今月末までに決着させるとの考えを繰り返した。
 ある委員は取材に対し、「星座長の取りまとめる文案なんて方向性が決まっているようなもの。提示された文案に対する議論はどこでやるのか。メールでのやり取りで一致出来れば良いけれども、紛糾したら改めて委員会を開催しなきゃ駄目ですよ」と話した。福島県民が望んでいるのは拙速な議論での因果関係否定か。それとも時間を惜しまぬ議論か。答えは明白だろう。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)
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