【原発避難者から住まいを奪うな】「家賃2倍請求やめて!」当事者団体が福島県に抗議。「家賃2倍請求やめない!」拒む県。無視される1万3000筆の署名~国家公務員宿舎問題
- 2019/07/13
- 07:59
原発事故で政府の避難指示が出されなかった区域から福島県外へ避難している人々(いわゆる〝自主避難者〟)のうち、国家公務員宿舎への入居者に対する家賃2倍請求問題で、「原発事故被害者団体連絡会」(ひだんれん)と「『避難の権利』を求める全国避難者の会」は12日午前、懲罰的な家賃2倍請求の中止を求める要請書と1万3000筆を超える署名を福島県に提出した。受け取った県の担当者は恭しく頭を下げたものの「県の方針に変わりは無い」と明言。抗議は無視され、今後も家賃2倍請求が続く。参院選では、各党が「生活の安定」を掲げているが、原発事故避難者の中には、借金取り立てのような非情な仕打ちを受けている人もいるのだ。
【「生存権を否定する暴挙だ」】
内堀雅雄知事宛ての要請書は、「福島県当局は7月8日付で、国家公務員宿舎を退去できないでいる世帯、退去を申し出ている計63世帯の福島原発事故避難者に対し『4月以降、退去までの家賃2倍に相当する損害金を納付せよ』という請求通知をしました」として、「私たちの度重なる要請にも一切耳を貸さず強行された今回の措置を、断じて認めるわけにはいきません」と直ちにやめるよう求めている。「原発事故被害者の生存権をも否定する暴挙」と強く抗議している。
「ひだんれん」共同代表の武藤類子さんは席上、「私たちは今日は本当に気持ちが重くて、がっかりしている。被害者という意味では同じである福島県庁の皆さんと私たちが(要請書を出す側と受け取る側に)分断されてしまっている事が哀しい。皆さんも苦渋の選択なのかもしれないが、受け取った避難者の気持ちも分かって欲しい」と話した。本来であれば原発避難者支援で手を携えるはずの福島県庁に抗議を続けなければならない事が「哀しい」のだ。
「避難の協同センター」世話人の熊本美彌子さん(福島県田村市から都内に避難継続中)は、実際に家賃2倍請求を受け取った避難者の言葉を代読し、印刷したものを県職員に手渡した。
駐車場代を含み9万円余が請求されている避難者は「約15万円の月給で家賃2倍の支払いなど到底無理な話。先行き真っ暗で不安で仕方ない。国や福島県に見捨てられたと思うしかない」との言葉を託した。別の避難者は「退去しなければならないのなら、せめて被災者が優先的に公営住宅に入居できる道を開いて欲しい」と求めている。「これ以上追い詰めないで下さい。避難生活が長く、経済的には追い詰められています」と訴える避難者もいる。熊本さんの携帯電話にも「家賃2倍請求には絶対に抗議してください」、「政府の原子力政策の結果、避難しているのに追い出すのですか」というメッセージがメールで寄せられているという。
今月5日からインターネット上で始めた署名運動には1万3000筆を超える賛同が集まり、これも福島県に提出された。現在の署名数は1万5000筆を超えている。署名は復興庁にも提出される予定。という




①②「ひだんれん」のメンバーたちは福島駅前に立ち、道行く人々に家賃2倍請求撤回要求への理解を求めるチラシを配った
③福島県職員に要請書を手渡し、頭を下げる山田俊子さん。被害を受け切り捨てられる側がなぜ、頭を下げなければいけないのか。被害者は8年間、ずっと頭を下げ続けている
④記者会見で撤回要求に賛同するネット署名について説明する大賀あや子さん。署名は現在、1万5000筆を超えた。それでも福島県の方針に変わりは無いという
【「地上げ屋やサラ金と同じだ」】
「福島原発かながわ訴訟」の原告団長でもある村田弘さんは、怒りを押し殺すように「これだけ追い詰められている現状を知りながら、日割りで罰金を取るというのはどういう事ですか。こんな事は絶対に通りませんよ。認められませんよ。おやめになるまで抗議し続けます。覚えておいてください」と県職員に向けて言葉をぶつけた。決して怒鳴ったり机を叩いたりはしないが、視線は鋭かった。
住宅問題などで避難者支援を続けている瀬戸大作さん(「避難の協同センター」事務局長)は「避難者の生活実態把握をして欲しい。参院選では多くの政党が居住確保、住宅補助の話をしている。それと全く真逆の事が起きている。福島県の担当者は本当に一生懸命やっているのは知っている。苦悩しているのも知っている。もしかしたら国が福島県にやらせているのかもしれない。ひるむ事無く、県民の立場に立って、県民を守って欲しい」と県職員に語りかけるように訴えた。
福島県庁内の記者クラブで開かれた記者会見で、村田さんは「家賃2倍請求の根拠は、避難者との間で交わされた契約書に書かれているという事だけ。その契約書はそもそも、有効に交わされたものなのか。疑念を抱いている。契約書が示され、内容に同意をして押印したのでは無い。入居し続けるための申請書を出させられて、時間が経った後に契約書を書かされた。なぜ懲罰的な家賃2倍請求などするのか。地上げ屋やサラ金業者と同じではないか」と怒りをこめて話した。
熊本さんは会見で「入居を選択するしか無かったんです。契約を結ばなければ路頭に迷ってしまった。自由な契約では無かったんです」と語気を強めた。避難者はそもそも、ゆっくり入居先を選べる余裕など無かった。混乱の中で必死の想いで入居出来る所に入った。結果として国家公務員宿舎を選択した避難者には懲罰的な家賃2倍請求という仕打ちが待っていた。こんな理不尽な事は無い、と熊本さんは訴えているのだ。




①「ひだんれん」などが福島県に提出した要請書。「原発事故被害者の生存権を否定する暴挙だ」として、国家公務員宿舎に入居している避難者への家賃2倍請求をやめるよう求めている
②福島駅前で道行く人々に配られたチラシ。「知って下さい」、「一緒に声をあげて下さい」と呼びかけた
③署名を受け取った福島県生活拠点課の担当者は恭しく頭を下げた。しかし、家賃2倍請求はやめないという
④福島駅では、来年の〝復興五輪〟に向けてカウントダウンが進む。華やかな〝復興〟の陰で泣いている避難者もいる。そこには光は当たらない
【「5月分以降も順次、2倍請求」】
受け取った福島県生活拠点課の担当者は、取材に対し「8日付で避難者宛てに発送したのは4月分の請求。5月分以降に関してはこれから順次、送る事になる。われわれの方針に変わりは無い。入居が続く限りは2倍請求を続ける」と明確に答えた。
「当初から2年間だけ有償で入居を延長し、その間に新たな住まいを確保して欲しいという事で(民間賃貸住宅入居者への家賃補助とセットで)国家公務員宿舎への入居を認めた。県が財務省から借り受ける書面に『家賃2倍請求』の条項がある以上、それに従って請求するだけ。ただ、財務省からの指示でやっているわけでは無く、あくまで県の判断。県の意思。逆に言えば、家賃2倍請求をしないという考えは県には無い」
県は、既に国家公務員宿舎から退去した避難者、もしくは退去する明確な意思があって住まいを探している避難者に対しても2倍の家賃を日割りで計算して請求している。例えば4月末に退去した避難者には30日分の〝損害金〟が発生しているのだ。県民に対する温情も何も無い。あるのは冷たいルールだけだ。
「退去する意思があるとしても、そのままズルズルと入居し続ける可能性もある。『退去していない』、『未退去である』という事実をもって損害金を請求している。ただ、確実に公営住宅の抽選に当たっていて入居出来る事が決まっているような避難者に関しては延長(損害金の請求を猶予)している。3月末までに新しい住まいの契約書が提出されていない避難者は家賃2倍請求の対象とした」
夜、福島市内で開かれた参院選の個人演説会で、自民党公認の現職・森まさ子候補は何度も「復興」を口にした。一方で、自らも立法に奔走した「子ども被災者支援法」も「原発避難者」も言及されなかった。国も福島県も政権与党も、復興の陰で泣いている避難者には光を当てない。救いの手を差し伸べない。「寄り添う」という空虚な言葉が、居場所を失って彷徨っている。
(了)
【「生存権を否定する暴挙だ」】
内堀雅雄知事宛ての要請書は、「福島県当局は7月8日付で、国家公務員宿舎を退去できないでいる世帯、退去を申し出ている計63世帯の福島原発事故避難者に対し『4月以降、退去までの家賃2倍に相当する損害金を納付せよ』という請求通知をしました」として、「私たちの度重なる要請にも一切耳を貸さず強行された今回の措置を、断じて認めるわけにはいきません」と直ちにやめるよう求めている。「原発事故被害者の生存権をも否定する暴挙」と強く抗議している。
「ひだんれん」共同代表の武藤類子さんは席上、「私たちは今日は本当に気持ちが重くて、がっかりしている。被害者という意味では同じである福島県庁の皆さんと私たちが(要請書を出す側と受け取る側に)分断されてしまっている事が哀しい。皆さんも苦渋の選択なのかもしれないが、受け取った避難者の気持ちも分かって欲しい」と話した。本来であれば原発避難者支援で手を携えるはずの福島県庁に抗議を続けなければならない事が「哀しい」のだ。
「避難の協同センター」世話人の熊本美彌子さん(福島県田村市から都内に避難継続中)は、実際に家賃2倍請求を受け取った避難者の言葉を代読し、印刷したものを県職員に手渡した。
駐車場代を含み9万円余が請求されている避難者は「約15万円の月給で家賃2倍の支払いなど到底無理な話。先行き真っ暗で不安で仕方ない。国や福島県に見捨てられたと思うしかない」との言葉を託した。別の避難者は「退去しなければならないのなら、せめて被災者が優先的に公営住宅に入居できる道を開いて欲しい」と求めている。「これ以上追い詰めないで下さい。避難生活が長く、経済的には追い詰められています」と訴える避難者もいる。熊本さんの携帯電話にも「家賃2倍請求には絶対に抗議してください」、「政府の原子力政策の結果、避難しているのに追い出すのですか」というメッセージがメールで寄せられているという。
今月5日からインターネット上で始めた署名運動には1万3000筆を超える賛同が集まり、これも福島県に提出された。現在の署名数は1万5000筆を超えている。署名は復興庁にも提出される予定。という




①②「ひだんれん」のメンバーたちは福島駅前に立ち、道行く人々に家賃2倍請求撤回要求への理解を求めるチラシを配った
③福島県職員に要請書を手渡し、頭を下げる山田俊子さん。被害を受け切り捨てられる側がなぜ、頭を下げなければいけないのか。被害者は8年間、ずっと頭を下げ続けている
④記者会見で撤回要求に賛同するネット署名について説明する大賀あや子さん。署名は現在、1万5000筆を超えた。それでも福島県の方針に変わりは無いという
【「地上げ屋やサラ金と同じだ」】
「福島原発かながわ訴訟」の原告団長でもある村田弘さんは、怒りを押し殺すように「これだけ追い詰められている現状を知りながら、日割りで罰金を取るというのはどういう事ですか。こんな事は絶対に通りませんよ。認められませんよ。おやめになるまで抗議し続けます。覚えておいてください」と県職員に向けて言葉をぶつけた。決して怒鳴ったり机を叩いたりはしないが、視線は鋭かった。
住宅問題などで避難者支援を続けている瀬戸大作さん(「避難の協同センター」事務局長)は「避難者の生活実態把握をして欲しい。参院選では多くの政党が居住確保、住宅補助の話をしている。それと全く真逆の事が起きている。福島県の担当者は本当に一生懸命やっているのは知っている。苦悩しているのも知っている。もしかしたら国が福島県にやらせているのかもしれない。ひるむ事無く、県民の立場に立って、県民を守って欲しい」と県職員に語りかけるように訴えた。
福島県庁内の記者クラブで開かれた記者会見で、村田さんは「家賃2倍請求の根拠は、避難者との間で交わされた契約書に書かれているという事だけ。その契約書はそもそも、有効に交わされたものなのか。疑念を抱いている。契約書が示され、内容に同意をして押印したのでは無い。入居し続けるための申請書を出させられて、時間が経った後に契約書を書かされた。なぜ懲罰的な家賃2倍請求などするのか。地上げ屋やサラ金業者と同じではないか」と怒りをこめて話した。
熊本さんは会見で「入居を選択するしか無かったんです。契約を結ばなければ路頭に迷ってしまった。自由な契約では無かったんです」と語気を強めた。避難者はそもそも、ゆっくり入居先を選べる余裕など無かった。混乱の中で必死の想いで入居出来る所に入った。結果として国家公務員宿舎を選択した避難者には懲罰的な家賃2倍請求という仕打ちが待っていた。こんな理不尽な事は無い、と熊本さんは訴えているのだ。




①「ひだんれん」などが福島県に提出した要請書。「原発事故被害者の生存権を否定する暴挙だ」として、国家公務員宿舎に入居している避難者への家賃2倍請求をやめるよう求めている
②福島駅前で道行く人々に配られたチラシ。「知って下さい」、「一緒に声をあげて下さい」と呼びかけた
③署名を受け取った福島県生活拠点課の担当者は恭しく頭を下げた。しかし、家賃2倍請求はやめないという
④福島駅では、来年の〝復興五輪〟に向けてカウントダウンが進む。華やかな〝復興〟の陰で泣いている避難者もいる。そこには光は当たらない
【「5月分以降も順次、2倍請求」】
受け取った福島県生活拠点課の担当者は、取材に対し「8日付で避難者宛てに発送したのは4月分の請求。5月分以降に関してはこれから順次、送る事になる。われわれの方針に変わりは無い。入居が続く限りは2倍請求を続ける」と明確に答えた。
「当初から2年間だけ有償で入居を延長し、その間に新たな住まいを確保して欲しいという事で(民間賃貸住宅入居者への家賃補助とセットで)国家公務員宿舎への入居を認めた。県が財務省から借り受ける書面に『家賃2倍請求』の条項がある以上、それに従って請求するだけ。ただ、財務省からの指示でやっているわけでは無く、あくまで県の判断。県の意思。逆に言えば、家賃2倍請求をしないという考えは県には無い」
県は、既に国家公務員宿舎から退去した避難者、もしくは退去する明確な意思があって住まいを探している避難者に対しても2倍の家賃を日割りで計算して請求している。例えば4月末に退去した避難者には30日分の〝損害金〟が発生しているのだ。県民に対する温情も何も無い。あるのは冷たいルールだけだ。
「退去する意思があるとしても、そのままズルズルと入居し続ける可能性もある。『退去していない』、『未退去である』という事実をもって損害金を請求している。ただ、確実に公営住宅の抽選に当たっていて入居出来る事が決まっているような避難者に関しては延長(損害金の請求を猶予)している。3月末までに新しい住まいの契約書が提出されていない避難者は家賃2倍請求の対象とした」
夜、福島市内で開かれた参院選の個人演説会で、自民党公認の現職・森まさ子候補は何度も「復興」を口にした。一方で、自らも立法に奔走した「子ども被災者支援法」も「原発避難者」も言及されなかった。国も福島県も政権与党も、復興の陰で泣いている避難者には光を当てない。救いの手を差し伸べない。「寄り添う」という空虚な言葉が、居場所を失って彷徨っている。
(了)
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