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【自主避難者から住まいを奪うな】福島県が一部譲歩。早期転居者にも家賃補助支給へ。収入要件の緩和も決まる~住宅支援継続要求は拒否

福島県が自主避難者向け住宅の無償提供を2017年3月末で打ち切る方針を撤回しないことを受け、避難者らでつくる「原発被害者団体連絡会」(ひだんれん)と「原発被害者訴訟原告団全国連絡会」(原訴連)は9日午後、福島県と2回目の交渉を行った(7月9日号参照)。県側は無償提供継続は拒んだものの一部譲歩。支援打ち切り後の新たな住まいへの家賃補助に関し、2015年12月以降の転居者にまで支給対象を拡大すること、支給可否の判断材料となる収入要件についても、現在の15万8000円から緩和する方向で最終調整していることを明らかにした。お盆明けにも正式発表するという。ようやく避難者の声が届いた格好だが、県の支援策はまだまだ不十分。両団体は「1人の避難者も路頭に迷わせない」を合言葉に、さらに交渉を重ねて住宅支援継続を求めていく方針だ。


【昨年12月以降の転居者に家賃補助】
 住宅の無償提供打ち切りを前提に、福島県が2015年12月25日に発表した「帰還・生活再建に向けた総合的な支援策」では、避難先の公営住宅に無償で入居している自主避難者の民間賃貸住宅への転居を促すことを主目的に、新たな住まいの家賃に対し1年目は月額3万円、2年目は同2万円を上限として補助金を支給することが盛り込まれている。当初は2017年4月の家賃からが支給対象だったが、今年2月になり2017年1月分まで前倒しすることを発表。今年10月から申請を受け付ける計画になっている。
 しかし、交渉に出席した福島県生活拠点課の担当者によると、県側は、打ち切りを発表して急かしておきながら「早い段階での転居は想定していなかった」。そのため、現行制度のままでは住宅支援打ち切り発表を受けて既に新たな住まいへの転居が済んでいる避難者や、間もなく転居することが決まっている避難者が家賃補助を受けられない可能性が浮上(7月14日号参照)。特に子育てをしている避難者にとっては学校や保育園のことを考えて早めに動くのは当然で、県側の方針は実態にそぐわない。避難者や支援団体から抗議が相次いだこともあり、補助金の支給対象期間を2015年12月にまで拡大することになったという。
 さらに、家賃補助を受けるには収入要件(15万8000円)を満たしていることが必須だが、これも緩和して対象を拡大するという。実際、避難者を受け入れている新潟県は独自の支援策として、小中学生がいる世帯が対象だが収入要件を21万4000円に設定。福島県の補助金にさらに1万円を上乗せして支給することを決めている。福島県の担当者は金額は明らかにしなかったが、交渉への出席者からは新潟県並みの緩和を期待する声があがった。


「お盆明けにも、新たな支援策の改正点を発表する」と語った福島県生活拠点課の担当者。早期転居者への家賃補助適用や収入要件緩和が盛り込まれるという

【「無償提供打ち切りは再検討しない」】
 福島市から京都府に〝自主避難〟している母親は、福島県側の譲歩を評価しつつも「そもそもスケジュールに無理がある。住宅支援打ち切り時期の変更も含めて検討していただけないか」と求めた。「子育て世代にとって夏休みはとても重要なんです。お盆明けに改正点を発表されても、情報が行き渡る頃には夏休みが終わってしまう。無理なスケジュールが避難者の生活を破壊しているんです」。
 そもそも、政府の避難指示の無い〝自主避難者〟への住宅無償提供打ち切りは1年ごとに延長されてきたが、福島県の内堀雅雄知事が「これ以上、災害救助法に基づく住宅提供は難しい」と判断。来年3月末での打ち切りを先に決定し、後から避難者の意向調査や戸別訪問を実施。当事者の意向が全く施策に反映されないまま〝切り捨て〟が強行されようとしている。
 一方で避難者は国との交渉も重ねてきたが、国は「災害救助法の実施主体は県であり、福島県が住宅の無償提供延長を求めてきた場合にはきちんと受け止める」との意向を示している。この日の交渉でも「来年3月末での打ち切りを撤回し、住宅提供の1年延長を国に申し出て欲しい」との声があがったが、県側は「国から(打ち切りへの)同意が得られた時点で、国もわれわれと同じ考え方であると認識している。再検討は考えていない」と拒否。「除染の進捗状況や食べ物の安全性などから避難継続の必要性は無い」との認識を改めて示した。
 福島県田村市から東京都内に避難している女性は「1人の避難者も路頭に迷わせないということを確約して欲しい。避難者は瀬戸際に追い込まれているんです」と訴えたが、県側は「新たな支援策で生活再建を支援したい」と述べるにとどまった。「県職員はどこを向いているんだ」、「なぜそんなに頑ななのか」など出席者から怒声が飛び交う場面も。両団体は再三にわたって打ち切りを最終決定した内堀雅雄知事との直接対話を求めたが、県の担当者は「打ち切り撤回を求めた地方議会からの意見書を含め、知事や副知事にはペーパーで報告している。知事への要請案件は多数あり、すべて担当部署が対応することになっている」と繰り返し、交渉への内堀知事の出席を拒んだ。


避難者らと福島県の2回目の交渉。県側は一部譲歩したものの、住宅支援継続は拒否。避難者からは「1人の避難者も路頭に迷わせたくない」との声があがった=ふくしま中町会館

【尊重されない「避難の権利」】
 「私たち家族は、今日まで出されたどんな支援策にも該当致しません」
 交渉の席上、福島県いわき市から都内に避難している母親の手紙が代読された。被曝リスクを避けるために避難し、二重生活は家計を圧迫すると夫も帰還しての仕事再開を断念。収入要件を満たさないため新たな支援策の対象とならないという。いわき市に帰ることも考えたが「来年、小学校に入学する子どもが『私だって保育園のお友達と同じ小学校に通いたい』と涙目で訴えてきた。子どものために、これ以上環境を変えたくありません」。
 この国では原発事故以降、被曝リスクを避けるための「避難の権利」は事実上、認められていない。福島県が胸を張る「新たな支援策」では、避難者全員が救済されるわけでは無い。支援策の対象となっても自己負担は多い。福島市から京都市内に母子避難中の母親は「高校生の娘を育てるために、フルタイムで派遣労働をしています。福島市に残っている夫の収入と合わせると収入要件を超えてしまい、公営住宅への入居を申し込めません。福島県の家賃補助も受けられません」と訴えた。
 都内に避難中の母親は「そもそも、これまでに自主避難先で転居した避難者は自己都合での転居とみなされ、災害救助法での住宅支援を受ける権利を失っている。避難者支援は不十分な点が多すぎる」と指摘する。現在、入居している都営住宅は退去が前提。別の都営住宅に当選したとしても転居費用をねん出出来ない避難者が少なくないという。しかも、前家賃や保証人の確保も必要。国や福島県の言う「自立」へのハードルは低くない。
 半歩、いやごくわずかな前進。間もなく発表される改正支援策で一部条件が緩和されるとはいえ、避難者を切り捨てる福島県の方針には変わりない。「国の原子力緊急事態宣言は解除されておらず、緊急事態は今も続いている」(原子力安全対策課)と言いながら、「中通りは避難指示区域とは状況が異なる」と帰還を促す。自主避難者切り捨てまで7カ月。


(了)
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Author:鈴木博喜
大手メディアが無視する「汚染」、「被曝」、「避難」を追い続けています。

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