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【参院選2019】福島県民の選択は自民・森まさこ。秋の県議選、次期総選挙へ意気上がる自公。終わってみれば10万票差、野党統一候補は完敗。「〝風〟吹かなかった」

第25回参院選は21日投開票され、与野党一騎打ちとなった福島選挙区(改選1議席)では、自民党の現職・森まさこ候補(54)=いわき市=が三選を果たした。6年前に得票した48万4000票には及ばなかったものの、44万5000票余を獲得。野党統一候補の新人・水野さちこ候補(57)=会津若松市=に10万票差をつける圧勝だった。今秋の県議選、来たるべき総選挙や参院選に向けて意気上がるふくしま自民党。野党統一候補で3度目の勝利ならなかった野党。双方の陣営は今回の選挙をどのように振り返ったか。完敗の原因は知名度か、〝風〟か、それとも─。


【「福島の復興はさらに前へ進む」】
 「厳しい選挙戦」はしかし、あっさり決着がついた。
 福島県福島市内の森まさこ選挙事務所。20時ちょうどにNHKが「当選確実」を報じた。沸き上がる支持者たち。立ち上がり、両腕を突き上げた。浴衣姿の女性が涙を流す。そこに、待機していた森まさこ候補が夫や長女とともに入って来た。夫と必勝ダルマに目を入れ、亀岡偉民代議士(福島1区)の発声で万歳三唱をした。3年前は、現職の法務大臣が野党統一候補に敗れた。あの時の「悪夢」を振り払うかのように、自公の関係者は両腕を突き上げた。今回も敗けていれば、ふくしま自民党は福島選挙区選出の参議院議員を失っていた。議席死守は至上命令だった。
 「至らない私をお支えくださっている支援者の皆様を信じて最後まで戦い抜く事が出来ました。皆様から受けた負託の重さをしっかりとかみしめて、公約に掲げさせていただいた『復興の前進・生活の安心・復興のその先の未来』の実現に向けて謙虚に、愚直に、全力で働いて参ります。皆様本当にありがとうございました!」
 森候補のあいさつは絶叫調。関係者も続々と「復興」を口にした。
 「これで福島の復興はさらに前へ進みます」。根本匠厚労大臣(自民党福島県連会長)は、いつものかすれた声でマイクを握った。
 「秋の県会議員選挙、さらに次なる参院選。その前に衆議院選挙がありますから頑張りますが、次の参議院選挙は自民党が議席を奪還する!」
 太田光秋県議(自民党福島県連幹事長)も「県連としても責任の重さを感じているところであります。これからも福島復興のために全力で取り組む事を御約束させていただきます。ありがとうございました!」と力をこめた。
 福島県商工会議所連合会の渡邊博美会長(福島ヤクルト販売代表取締役会長)は「厳しい選挙戦だったが、こんなに早く『当選確実』が出た。これは森先生の12年間の実績と、8年前のあの東日本大震災の時の取り組みが福島県民の皆さんの心を打った。そして、これからの期待を間違いなくかけたからだと思います。われわれ商工業者も地元が良くなるように頑張っていきたいと思います。森先生おめでとうございました!」と最大級の賛辞を送った。 
 そして〝祭り〟は幕を閉じた。選挙事務所には福島市の木幡浩市長の姿もあった。




三選を果たした自民党・森まさこ候補(現職)。夫とともに勝利報告会で万歳三唱した。野党統一候補に10万票の差をつけての勝利に、自民党福島県連会長の根本匠代議士(厚労大臣)は「これで福島の復興はさらに前へ進みます」、「次の参議院選挙は自民党が議席を奪還する!」とあいさつした=福島県福島市蝦貫の選挙事務所

【「保守層の票得ないと勝てぬ」】
 歓喜に包まれる森まさこ選挙事務所から1・8キロほどの場所にある水野さちこ選挙事務所。衆院選の選挙区別に作られた得票結果の表に数字を入れるまでも無かった。お通夜のような重苦しい空気が漂った。3年前の参院選、2年前の衆院選で味わった勝利の味を、三たび味わう事は出来なかった。まさに完敗だった。
 地元・会津若松市に急行する水野候補を見送った高橋秀樹県議(立憲民主党、県民連合議員会)が重い口を開いた。
 「やっぱり、知名度と浸透率。その差があったのかな。それと、今回はものすごく投票率が低い(福島選挙区で52・41%、3年前より4・71ポイント減。全国では48・80%、同5・9ポイント減)。投票率が上がれば機運も高まったと思うが、なかなかそうはならなかった。現実を受け止め、これから総括・分析をしなければいけません。ただただ残念だが、負けは負けとしてしっかりと受け止めなければいけない。今後の野党共闘のあり方?それは選挙ごとに考えていくものですから、今すぐどうのという事ではありません。候補者まで下げてもらった共産党の皆さんには、私からもお詫びをしました。総選挙がいつあるか分かりませんが、基本的なベースは変わりません」
 大場秀樹県議(国民民主党、県民連合議員会)は「自民党を破った過去の2回の選挙とは違う」と語る。
 「安倍さんは『民主党政権は駄目だった』、『あれより自民党の方が良いべ』というイメージ作りは上手いと思う。それに、増子輝彦さんの時(2016年の参院選)も金子恵美さんの時(2017年の衆院選)も自民党支持者の票が入った。元々自民党だから(増子議員はかつて自民党に所属。金子議員の父親も自民党の代議士で後に離党している)。この国の選挙というのは保守層の票も取り込まないと勝てないんだよね」
 別の関係者は「過去の2回はマスコミも味方をしてくれた。いわゆる〝風〟が吹いた。そういう意味で今回は全然違った。それに、投開票日の2日前になって『福島第二原発廃炉』のニュースが流れた。誰が意図的に流したのか。あれで『原発廃炉』という争点は潰された。あれはかなり大きい」と語気を強めた。ある議員は「水野さんは会津の人。生活圏に除染で生じた汚染土壌が保管されているなど、浜通りや中通りの人たちの想いがどうしてもピンと来ない部分はあったと思う」と分析した。
 選挙戦終盤には、国会議員らが「子ども被災者支援法」に対する森まさこ候補の〝手のひら返し〟を激しく批判したが、別の国会議員が筆者に「一般の人にそんな事言ったって理解されないよ」と苦笑するチグハグさも見せた。
 水野候補は「私の不徳の致すこところ」と支持者に頭を下げた。「私は無名の新人。向こうは大臣経験者」とも。選挙事務所内には、「福島県電力総連」や「電機連合福島地方協議会」からの為書きも掲示されていた。




20時40分には地元・会津若松市に向かった水野さちこ候補。〝主〟のいなくなった選挙事務所は重苦しい空気に包まれた。地元紙の情勢分析は終始、劣勢。「奇跡の大逆転」を果たす事は出来なかった=福島県福島市本内

【「野党の力を結集出来なかった」】
 選挙期間中、常に「状況は厳しい。特に県北はリードされている」と引き締めに躍起になっていた自民党の亀岡代議士。既に勝利を確信したのか、投票が締め切られる1時間ほど前にこう語っていた。
 「有権者がきちんと政策を検討して判断したという事でしょう。最後は好き嫌いでは無く政策ですよ。誰が観たってわれわれの政策の方がね。野党に任せるわけにはいかんでしょ。当たり前の話です」
 そして「今の政権はあまりにも乱暴すぎる」と言う筆者に、笑いながらこう反論した。
 「それはさ、そういう風に見せられてるだけだよ。やっている方はものすごくていねいだからね。国会運営だって野党に気を遣ってるんだから。ものすごく気を遣っている。どれだけていねいにやったって、野党はああいう言い方をする。完全な印象操作だよ。憲法にしたって、どれだけ議論してきた?今までどれくらいやった?立法府って何のためにあるの?憲法改正するしないに関わらず、ちゃんと議論しなきゃ駄目でしょ。議論しない理由はどこにあるの?それもやらないで選挙のための道具に使うなんておかしいじゃない。堂々と議論しなきゃ。見せ方に惑わされちゃ駄目だよ。野党は粗探しをして批判ばっかり。あんなのやめた方が良いよ。マスコミも偏向報道ばっかり。中道を行けば良いんだよ、中道を」
 議席を失うどころか圧勝したふくしま自民党。完敗した水野陣営の関係者は「単純に野党の票を足し算すれば勝てるんだよ。それがそうはならなかった。3年前は増子さんが圧倒的に強かったけど、今回は知名度の問題があった。3年前は現職の法務大臣で敗けてるから、自民党もかなり力を入れて来たのは事実。とにかくタマ(候補者)がいないんだよ」と振り返った。
 「今回の敗北は、ちゃんと総括しなきゃ駄目だな。増子さん本人にかなりダメージが及ぶだろう。『野党共闘』という名の下に力を結集し切れなかったのはなぜか。1票差でも敗けは敗け。当選しなきゃ駄目なんだ。野党は再編するような動きが出て来るだろう。連合福島もね」
 福島県選管によると、比例区での自民党の得票率は38・17%に達した。勢いづく自民党に敗戦のショックが大きい野党。そこに庶民の「生活」はあるだろうか。参院選が終わった。



(了)
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鈴木博喜

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