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【原水禁福島大会】「情報無く被曝を強いられた」「年1mSv超は法律違反の人権侵害」。医師や飯舘村議らが原発事故後の問題点指摘。「健康手帳」の必要性、「放射能のホント」への批判も

原水爆禁止世界大会の福島大会が27日午後、福島県福島市の県教育会館で開かれた。シンポジウムには飯舘村議、医療生協の専務理事、医師が登壇。約650人の参加者を前に、原発事故から100カ月後の課題や問題点について指摘した。正確な情報が与えられないまま被曝を強制させられた事、その責任を果たさせるためにも健康手帳を作って国に医療や生活を保障させる必要がある事、除染の限界や復興予算が単年度で執行されるために〝ハコもの〟が増え、将来の村の財政に不安が高まっている事などが語られた。復興庁のパンフレット「放射能のホント」への批判も続出した。


【「被曝の過小評価などさせまい」】
 「政府から『ただちに人体や健康に影響を及ぼす数値では無い』とだけ言われて、放射線に関するデータは隠蔽されました。福島市では3月15日に24μSv/hを計測しましたが、全く知らされない中で屋外活動をしておりました。われわれは被曝を強いられたのです。当時は水道水も止まってしまったので、多くの福島市民が、最も放射線量の高かった時に子どもを連れて給水の列に並びました。何の情報も無く被曝をさせられたのです。泣き寝入りしてはいけないし、(被曝の)過少評価も絶対にさせない。それを次の世代に引き継いでいきたい」
 福島県福島市で診療所や老人保健施設などを運営している「きらり健康生活協同組合」専務理事の福地庸之さんは語った。 
 「今は除染も終わったので事故前と変わらない生活を送っています。でも、若い職員の中には、つらかった当時の体験に触れない人が多いです。学習会を開いても参加しない。当時を思い出してしまうし、目の前の生活をどうするかで精いっぱいなのが実情だからです。考え方の違いから家庭内の〝分断〟も起きています」
 最後に福地さんはこう強調した。 
 「一度事故が起きたらコントロール出来ないのが原発です。事故が起きると人権侵害が生じる。健康破壊が生じる。取り返しのつかない結果をもたらします。再稼働などあり得ません。原発事故を忘れてはいけません。一方で、ここに住んでいる人たちに『福島に残って良かった』と言ってもらえるような活動も必要です」
 2017年9月の村議選で初当選した飯舘村の佐藤健太さんは、原発事故前の村の生活を四季ごとに振り返りながら、原発事故後の課題を提示した。
 「国直轄で除染(宅地、農地、山林)が行われました。土壁などで除染出来なかった家屋もありました。農地は、あぜ道や法面はいまだに除染していません。畜産農家が水田を利用した牛の放牧を始めていますが、牛があぜ道や法面の草を食べた場合に放射性物質が体内に移行してしまう問題に苦労しています。飯舘村は75%が森林です。除染は宅地・農地から20メートルの範囲しか行われていません。汚染は残ったままと言って良いくらいの除染です。どこまで除染したかの境界線も示されていないので、どこからどこまでが未除染なのか分かりません。山の中に立ち入らないように表示で注意喚起して欲しいと国には再三申し入れているが、手つかずのまま放置されています」








①医師の振津かつみさんは「多くの人が年1mSvを超えた。明らかに法律違反だし人権侵害だ」と厳しく批判した
②飯舘村議の佐藤健太さんは、村内除染の課題や財政問題について指摘した。
③「きらり健康生活協同組合」専務理事の福地庸之さんは「何の情報も無く被曝をさせられたのです。泣き寝入りしてはいけないし、(被曝の)過少評価も絶対にさせない」と力をこめた
④シンポジウムでは、復興庁が作ったパンフレット「放射線のホント」も取り上げられた。福地さんは「よくこんな事が書けるなと怒りを込めて伝えたい」と撤回を求めた

【「単年度の復興予算で〝ハコもの〟続々」】
 飯舘村では存在の除染で生じた放射性廃棄物が250万袋に達した。それらはフレコンバッグに入れられ、20行政区それぞれに設けられた〝仮仮置き場〟103カ所に置かれた。直接、中間貯蔵施設に運び込まれたり、村内の焼却炉で燃やされた後に灰として中間貯蔵施設に搬出されたりしている。今年4月末までに33カ所の仮仮置き場からの搬出が完了しているという。
 震災前には6509人(1700世帯)だった人口は、避難指示・解除を経て今月1日現在で5567人(2300世帯)に減少。「人口は減っているのに世帯数が増えているのは、広い部屋を確保出来ずに『世帯分離』をして避難せざるを得なかったためです」(佐藤さん)。うち、1324人(23・78%)が住所としては村に戻している。大半が65歳以上で、佐藤さんは「人口構成が変わった事で、地方交付税など様々な問題が浮上しています。本来であれば30~40年かけて取り組むはずだった少子高齢化が一気に進んだ、急激に超高齢化がやって来ました」と指摘する。「村外で生活している村民は、今年3月末で仮設住宅の供与が終了したため〝自主避難〟扱いになっています」。
 小さな村に多額の復興予算が舞い込んだ。
 「震災前は村の予算は40億円前後でしたが、2017年度が最高で212億円に達しました。その結果、学校やスポーツ公園、道の駅、葬儀場などの〝ハコもの〟が建てられました。復興予算はほぼ単年度で使わなければいけません。住民の合意形成が間に合わない。調査も何も追い付かない。村民の意向を酌まないまま予算が執行されました。今年度も過去2番目の予算規模となりました。今後の村の財政が心配です。『復興のためにいろいろな事をやったけれども結局、駄目でした』という事にはさせないようにしないといけません。村民が戻らない中で商売の再開も難しい。税収をどう確保していくか。村自体がもたなくなるのではないかという危機感があります」
 医師の振津かつみさん(チェルノブイリ・ヒバクシャ教援関西)は、2011年4月から毎月のように福島に通い、診療や健康相談を続けている。原発事故を未然に防げなかったという悔しい想いを抱きながら活動しているという。
 「事故が起きた途端に『事故は大した事は無かった』という動きが始まったが、原発事故から10年になるのを前に、被災者に必要な生活再建支援を打ち切り、切り捨てていく姿勢が強まっています。どうはね返していくかが問われています」
 振津さんは「国策で進められてきた原発の事故で被曝で強いられた」と厳しく指摘。「日本の法律では、一般公衆の年間被曝線量限度は1mSvです。それが、福島県中通りでも少なくとも2011年1年間だけで大半の人が1mSvを超えています。明らかに法律に違反した人権侵害です。ただちに健康上の問題は無いかもしれないが、リスクを負ったという事です」








①②③シンポジウムでの発言順に佐藤健太さん、福地庸之さん、振津かつみさん
④原水爆禁止福島大会には、全国から約650人が参加した=福島県福島市の福島県教育会館

【「低線量でも健康リスクある」】
 国策で原発政策を進めながら、事故が起きたら平気で法律を破り、地元の人々に被曝を強いる─。振津さんは国の姿勢を厳しく批判した。
 その上で「100mSv以下、20mSv以下では健康に影響は無いと主張する専門家もいるが、どんなに低線量であっても線量に応じた健康リスクはある事は原爆被爆者の貴重なデータから明らかになっています。影響はガンや白血病だけではありません。しかも残念な事に、事故直後に被曝したものの影響は一生消す事が出来ません。もちろん、全員が病気になるわけではありません。しかし、何かあった時にお金があっても無くても医療を受けられる。そういう制度を、事故を起こした国の責任でやらせるのが私たちの仕事だと思っています」と語った。
 原爆被爆者に関わって来た経験から、振津さんは「原発事故でも健康手帳の交付が必要」と訴える。
 「低線量でも健康リスクはゼロではありません。無料の検診と医療、生活の保障という権利を守る手帳、法的根拠を伴う手帳を交付する事は国の責任だと思います。住民だけでなく原発作業員や除染作業員も、原発事故が無ければ被曝せずに済んだのです。全ての人々に手帳を交付するべきです。もちろん『広島や長崎と一緒にして欲しくない』、『』という意見もあるのでしっかりとした議論は必要だと思います」
 健康手帳に関しては、村独自の手帳作成に奔走した佐藤さんも「初めは反対意見もありました。『うちの子がヒバクシャ扱いされるようなものを作られたら困る』という声もありました。記録だけでも残そうと作りました」と話した。
 シンポジウムでは、復興庁が風評払拭を目的に作ったパンフレット「放射能のホント」も取り上げられた。
 「ここに何と書いてあるか。『野菜不足や塩分摂取と変わらない』など、よくこんな事が書けるなと怒りを込めて伝えたい。『原発事故で健康への影響が出たとは証明されていない』とも言い切っている。事故が無かったかのように持って行きたい意向がありありと見える。撤回して欲しい」と話したのは福地さん。
 振津さんも「言うまでも無く『放射能のウソ』だと思う。原発事故は福島だけの問題では無いからこそ、国は無かった事にしたいのだろう。無かった事になれば『事故が起きても大丈夫大丈夫と地元に被曝を押し付けて10年で終わり』と平気で原発を再稼働出来る」と厳しく批判した。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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