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【汚染土壌の再利用】「福島県外搬出」へ総量減らしたい国、桜井前市長の〝暴走〟覆した南相馬市。二本松市でも実証事業断念。環境省は高専の学生使うなど「理解醸成」を画策

原発事故後の除染で生じた汚染土壌のうち、8000Bq/kg以下のものを公共事業で再利用しようと環境省が動いている問題で、実際に汚染土壌を使った実証事業が二本松市に続いて南相馬市でも頓挫している。原発事故に伴う被曝リスクや精神的損害に加え、再利用で「三たび苦しみを受ける」、「最終処分地にされてしまう」と反対の声が高まったためだ。何としても再利用で汚染土壌を減らしたい環境省は、特別チームを設置。福島高専の学生を〝利用〟するなどして「国民の理解醸成」を画策する。前市長の〝暴走〟を払拭したい南相馬市を軸に、汚染土壌再利用の現状をまとめた。



【二本松に続き南相馬も頓挫】
 「実証事業と再生利用とを分けて考えております。安全性を確認するための実証事業については、積極的にでは無いが、市としても理解はするという事です。ただ、市内での再生利用については、現段階では明確に『実施しません』と言っております」
 取材に応じた南相馬市環境回復推進課の担当者はそう話した。環境省は昨年12月、常磐道の4車線化工事現場(原町トンネル南部の羽倉行政区)で、盛り土に汚染土壌を使って空間線量の変化などを調べる実証事業計画を南相馬市議会全員協議会に提示。地元紙・福島民報には「環境省 除去土壌再利用へ 小高の常磐道4車線化で」との4段見出しが躍った。
 しかし、同市の門馬和夫市長は今年1月7日の定例会見で「再生利用に向けた国の方針は理解している」、「実証事業は否定しない」としながらも、「基準が決まっていない中での再生利用は問題外」として市内での再生利用には否定的な見方を示した。
 その実証事業計画にしても、今年3月に環境省が開いた住民説明会で反対意見が続出。半年近く経った今でも具体的な進展はみられない。環境省環境再生・資源循環局の担当者も、電話取材に対し「3月の住民説明会では様々な意見が出た。『こんな話、初めて聞いた』という意見もあった。もろ手を挙げて賛成というわけでは無かったので、引き続き地元の皆さんと良く相談して進めていきたい。二本松のケースとは違い、白紙撤回では無い」と話したが、事実上、計画がとん挫している事を認めた。
 今年4月に開かれた「南相馬市地域協議会合同会議」でも、市民生活部長が「再生利用につきましては、法整備や市民の理解等の調整等が出来ておらず、実施する考えはございません」、「実証事業につきましては、今後とも国の動向を注視して参る」と述べるにとどまっている。流動的とはいえ、二本松市のケースと同様に、市民の声が計画を止めている状態。
 ちなみに、二本松市で計画されていた実証事業に関しては今年6月11日の参議院・環境委員会で、環境省環境再生・資源循環局長の山本昌宏氏が「地元の御理解が得られないという判断をさせていただきまして、事業の再検討というふうにさせていただいたところでございます」と事実上、断念した事を認めている。
 環境省は、汚染土壌再利用への理解を高めようと「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会」内に「コミュニケーション推進チーム」を設置。昨年12月の第2回会合では、福島高専の学生による除去土壌等の減容等技術実証事業「除去土壌の再生利用等に関わる理解醸成のための課題解決型アプローチの実践」や、PR動画「なすびのギモン『除去土壌の再生利用って何?』」などが紹介され、「信頼を醸成するためには長い時間がかかる。そのことを理解したうえで、あきらめずに継続していかなければならない」、「マスコミというのは日本国民にとっては非常に重要」などの発言があった。




(上)南相馬市議会の渡部寬一市議(日本共産党議員団)は「南相馬を最終処分地にはさせない」との想いで、実証事業を含めた汚染土壌の再利用について反対の姿勢を貫いている
(下)農道(市道)での実証事業が計画されていた二本松市では、市民グループの取り組みや5000筆の反対署名などで計画を止めた。反対運動に参加した鈴木久之さんは今月7日の講演で「全国の皆で考えなければならない課題だ」と話した

【「政府一丸となって取り組む」】
 汚染土壌の再利用はそもそも、中間貯蔵施設に運び込む汚染土壌の削減を目的に浮上した。
 2016年6月に発表された「再生資材化した除去土壌の安全な利用に係る基本的考え方について」では、「再生利用とは、利用先を管理主体や責任体制が明確となっている公共事業等における人為的な形質変更が想定されない盛土材等の構造基盤の部材に限定した上で、追加被ばく線量を制限するための放射能濃度の設定、覆土等の遮へい、飛散・流出の防止、記録の作成・保管等の適切な管理の下で、再生資材を限定的に利用することをいう」と定義されている。
 再利用を進める理由は「中間貯蔵に搬入される除去土壌等は最大2200万立法メートルと推計され、全量をそのまま最終処分することは、必要な規模の最終処分場の確保等の観点から実現性が乏しい」、「土壌資源の有効利用による土砂の新規採取量の抑制を図るとともに、最終処分必要量を減少させ、最終処分場の施設規模を縮小することにより、県外最終処分の実現をより容易にする」と説明している。「再生資材の放射能濃度は(中略)8000Bq/kg以下を原則と」する旨も記載されている。
 今年度版の「環境白書」でも「福島県内の除去土壌等については、中間貯蔵開始後30年以内に福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずることとされています。福島県外における除去土壌等に最終処分の実現に向けては、減容技術等の活用により、除去土壌等を処理し、再生利用の対象となる土壌等の量を可能な限り増やし、最終処分量の低減を図ることが重要です」と明記。
 今年3月19日の「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会」では、環境省の秋元司副大臣が「とにかく最終処分量を減らすため、除去土壌等の減容・再生利用を実施していく方針」、「3月8日に閣議決定された『東日本大震災からの復興の基本方針』においても、福島県内の除去土壌等の県外最終処分量を低減するため、政府一丸となりまして除去土壌等の減容・再生利用に取り組むとされている」などと発言するなど、〝至上命題〟となっている事が分かる。
 南相馬市内では、環境省が東部仮置き場(小高区耳谷)内に盛り土を作り、空間線量などを測定。「空間線量率等の大きな変動が見られず、盛土の浸透水の放射能濃度は全て不検出であり、再生利用について一定の安全性が確認されています」(環境白書)。飯舘村でも、帰還困難区域の長泥地区で、汚染土壌を使った農地造成の実証事業が行われているが、これには「帰還困難区域内の除染を条件に住民に受け入れを迫った」との指摘もある。




(上)住民からの反対が相次いでいる事を受けて、環境省は「国民の理解醸成」を重視。コミュニケーション推進チームを設置し、福島高専の学生なども〝利用〟しながら、汚染土壌の再利用が「安全」で「有益」なものである事をいかに国民に理解させるかに知恵を絞っている(「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略 進捗状況について」より)
(下)二本松市では、環境省は「生活圏から1日も早く汚染土壌を無くす」事を掲げて再利用の実証事業を受け入れさせようとした。南相馬市でも同様の理屈で計画が進められてきたが、市職員は「中間貯蔵施設への搬入が進み、わざわざ市内で再利用する必要性も無くなってきた」と話す

【門馬市長「私は前市長とは異なる」】
 実は、汚染土壌の再利用を巡って南相馬市を悩ませているのが「桜井前市長の〝暴走〟」だ。
 桜井勝延氏は昨年1月の市長選挙で落選したが、市内での再利用に積極的だったのが桜井氏だった。今年3月に放送された「報道特集」でインタビューに応じ「やむを得ずやるべきだと思っています。一番は仮置き場が徐々に無くなって行くわけですよ。そのことによって農業の復旧が進む」、「こういう事も悔しいけれども手段としては取らざるを得ないという想いでやってきているという事は理解していただきたい」と語っている。
 「これを読む限りでは、桜井前市長から国に(市内での再利用を)持ちかけたように受け取れますよね」
 そう話すのは、南相馬市議会の渡部寬一市議(日本共産党議員団)。「これ」とは市当局から入手した桜井前市長の2016年から2017年にかけての出張復命書。渡部市議は6月20日の市議会本会議で一般質問し、11回に及ぶ出張の驚くべき内容を明らかにした。
 「2016年6月8日、農水省を訪問。食料産業局長や林野庁長官などに対して『私が当初から環境省に提案していた低線量の除染廃棄物を再利用する実証が南相馬市で始まる』と発言」
 「2016年6月30日、環境省を訪問。廃棄物リサイクル対策部長に対し『小高の住民はリサイクルに協力的であり、除染廃棄物の再利用の実証も小高で始まる』と発言」
 「2016年12月15日、環境省で事務次官らに『安倍首相が南相馬市に来た時に、除染廃棄物の再利用と減容化等について説明した』と発言」
 「2017年1月6日、環境省福島環境再生事務所を訪問。『国交省道路局長にも、常磐道4車線化の資材として利用すべきであると話した。飯舘村長にも進言している』と発言。福島県土木部長には『県道12号線のバイパス工事でも再利用するように飯舘村長に話している』と発言」
 前市長の意向を受け、2016年12月21日の南相馬市除染推進委員会には「メリットが分かれば理解を得られやすい。除去土壌が再生資材として搬出されることで、仮置き場の早期解消につながる」、「常磐自動車道の早期4車線化は、再生資材としての需要が見込まれ、地域住民の受容性・利便性の向上も期待できる」などとする市職員作成の資料が提出されていた。
 これに対し、門馬和夫市長は「私は就任以後、環境省に対して『前市長とは態度が異なります』、『前市長は再生利用を要望しましたが、私はその立場はとりません』と申し上げた。こういう経過でございます」と答弁している。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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