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【101カ月目の浪江町はいま】〝原発事故後10年〟控え高まる町民の不安。いずれ終わる減免措置、懸念される住民票の一斉転出。原発立地町との差に怒りも~議会報告会より

福島第一原発の爆発事故に伴う避難生活が8年を超え、浪江町民の不安や葛藤が高まっている。今月19日に福島市内で開かれた議会報告会では、参加した町民こそ少なかったものの、住民税などの減免措置がいつまで続くのか、避難先の市町村に住民票が一斉に移されたら町が立ち行くかなど、切実な声が相次いだ。「町に原発は立地していなくても被害は同じ。でも、現実には立地町と(賠償金などで)差がつけられている」といった不満の声も。来夏の東京五輪が終われば再来年で丸10年。国や東電への怒りとふるさと浪江への想い、切り捨てへの不安。町民の胸には複雑な感情が交錯している。



【住民税などの減免いつまで?】
 「住民はすごい不安を持ってる。来年3月末で打ち切りですよとか、無料が終わるとか…。難しくて理解出来ない。報告会を開くから集まれと言うのでは無くて、団地の集会所に来て欲しい。分かりやすく、決め細かな説明をして欲しい」
 「少人数でも良いから、ぜひ団地に来て欲しい。『広報なみえ』に載っていると言うかもしれないが、住民は広報紙を読まないですよ。面と向かって口頭で説明して欲しい。顔を見ながら住民の想いをくみ取って欲しい。ただ議会報告会を開いてるだけでは、議員の数減らせ、われわれの事を考えていないじゃないか、という声があがってしまいますよ」
 町役場によると、住民票や戸籍謄本の発行などに関する手数料は今年4月から従来通りに支払うようになったが、固定資産税や住民税などの減免措置は継続している。
 例えば固定資産税は、昨年度は国が2分の1減免、町が2分の1減免していたので、町民の実質的な負担はゼロだったが、今年度は国の減免は2020年度まで継続。町の減免が2分の1から4分の1に変わったので、町民は今年度は本来の固定資産税の4分の1を負担する事になった。
 住民税は所得によって段階的に減免幅が決まっており、400万円以下は全額免除。400~500万円は4分の3減免、500~750万円が2分の1減免、750~1000万円は4分の1減免されている。昨年度は500万円以下の町民は全額免除されていたが、今年度から400万円に引き下げられた。
 これが果たしてどうなるのか。事故後10年で完全に終了するのか、別の形で継続されるのか。町職員も一様に「分からないので何とも言えない」と口を揃える。
 議会報告会でも、佐々木恵寿議長は「来年の事ははっきりとは言えない。概ね10年間は減免措置はあると考えて差し支えないと思う。では11年目以降はどうなるのか。全くもって分からない。施策が続くように要望していくのがわれわれの仕事だと思っている。われわれも努力していく」と答えるにとどまった。先が見えない避難生活は事故直後も今も、何ら変わっていないのだ。


町内で生活する人は1000人をようやく上回ったが、除染作業員などを含めての数字。決して「帰町者数」では無い。町役場は「おかえりなさい」の看板で帰町を促すけれど…

【町職員も不安視する転出加速】
 町民からは「胸の中がモヤモヤしている」、「われわれは宙ぶらりんだ」との声も出た。
 原発事故が無ければ避難も減免措置も必要無かった。一方で、町に住民票を残しながら居住実態は避難先の市町村─という状態への葛藤もある。地方税法には住民票が移されていなくても住民税を課税できる「住登外課税」という制度があり、実際に127人の浪江町民が町からでは無く避難先の市町村から住民税を課税されている。その場合は減免措置が受けられないため、異議申し立てをして、町からの課税に戻す町民もいるという。
 町役場課税係の担当者は「住登外課税を適用するか否かは避難先の市町村によるが、決して意地悪で適用するわけでは無く、単純に居住実態だけで判断するので避難者か否か知らずに処理している。避難生活が長期化している事が、全ての問題を分かりにくくしている」と話す。
 佐々木議長は「今は『原発避難者特例法』で避難先にいても住民サービスを受けられているが、いつまでという議論はまだなされていない。当初は10年で終わるという話もあったが、もうちょっと延びるのではないか。特例法の適用が終わった時に避難先に住所を移してしまって良いのか、町の人口が1000人や2000人になったら、町の運営は出来るのか。議会はどうなるのか。様々な問題が出てくる。これは被災12市町村全体に及ぶ話だ。大きな問題を抱えているという認識を持っている」と語ったが、町民も「転出してしまえば町民でなくなってしまう。残るのは固定資産税だけ。住民税などは町に入らなくなってしまう。だから住民票を残しているんだ」と苦悩を口にした。
 町職員も「総務省からは何も言われていない。いつまで、という話も無い。町民が困らないようにと要望しているが、いつ終わるのか不安だ」と話した。「住民票をいったん町外に移してしまうと、居住実態の無い町に戻す事は出来ない。避難した町民でも無くなってしまう。転出を希望する町民は実際に居るので、よく考えて決めるようにお話はしているが、転出するなとも言えないですし…」。
 そして、こんな悲痛な言葉も口にした。
 「私自身も町民だから不安です。町民としても職員としても不安です。転出が相次いで町民が1000人になってしまったら、私たち職員もこんなに必要無くなっちゃいますよね。いつ、国から見限られるか」


町内でも開催を皮切りに、二本松市、いわき市でも開かれた議会報告会。町民からは「町民に出てこいと言うのでは無くて、団地に議員が足を運んで、町民の話を聴いて欲しい」という声も出された=福島県福島市の「あつまっぺ交流館」

【「被害受けたの立地町だけ?」】
 議会報告会では、町役場を中心としたエリアでの「復興事業」についても説明された。町役場の北側では「道の駅なみえ」の工事が始まった。2020年7月の一部開業を目指しているが、町議の1人は「採算なんて取れないよ。赤字に決まってる」と話した。しかも、町民の関心事はそこには無い。ある女性は怒りをぶつけるように、こう訴えた。
 「お金というのは双葉郡の町村には同じように来ているんですか?立地町にはプラスされているとかはあるんですか?賠償金とかです。先日、福島第二原発が廃炉になるという話がありましたが、廃炉になると富岡町や楢葉町にはお金が入って来なくなるからって、それに代わるものを要求していました。私たちは立地町では無いけれど被害を被ったのですよ」
 女性の発言は確かに賠償金や交付金が混在している。だが、同じ放射能で被害をうけたにも関わらず支援策に差が付けられているのではないかとの想いは多くの町民が口にする。「浪江原発訴訟」の第1回口頭弁論では、町民が「福島第一原発の事故は、巨大な人災です。核の人災です。加えて、浪江町は原発隣接地であるにもかかわらず、町民にはバスなどの避難手段も汚染の情報も国から提供されませんでした。浪江町民は皆、国から見棄てられた『棄民』です」と怒りをこめて意見陳述した。紺野則夫町議が代弁するようにこう言った。
 「浪江町にも帰還困難区域があるが、東電が『ふるさと喪失慰謝料』として支払った賠償金には差が付けられている。双葉町や大熊町は1000万円だが、浪江など非立地町は700万円。とんでもない話。おかしいですよ。許すわけにいかない」
 別の町民が自嘲気味に「きっと放射能が違うんだろう」と言った。「町や町議会の交渉がぬるいんじゃないか」との声も。予定された90分間はあっという間に終わった。地元紙は聖火リレーや復興五輪の盛り上げに躍起だが、切実な避難生活がある。ふるさと浪江の将来への不安がある。安倍晋三首相は避難指示部分解除直後の2017年4月、町役場横の仮設商店街を訪れて「なみえ焼きそば」を食べてみせたが、そんな事では理解出来ない町民の想いが渦巻いている。



(了)
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鈴木博喜

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