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【原発避難者から住まいを奪うな】「家賃2倍請求問題」で国連人権理事会に意見書送付。「日本政府に対し人権侵害政策の是正勧告を!」。方針変えぬ福島県。「2倍請求続ける」

原発事故で政府の避難指示が出されなかった区域から福島県外へ避難している人々(いわゆる〝自主避難者〟)のうち、国家公務員宿舎への入居者に対する家賃2倍請求問題で、「原発事故被害者団体連絡会」(ひだんれん)と「『避難の権利』を求める全国避難者の会」、「避難の協同センター」は、国連人権理事会に対し、日本政府に対し政策の是正勧告を行うよう求める意見書を送った。三者で継続して取り組んでいる共同行動の一環で、国際社会に訴える事で事態の打開を図りたい狙いもある。意見書は9月上旬にも国連人権理事会の公式サイトに掲載される見込みだ。





【「原発事故被害の『ステレス化』だ」】
 意見書は、日本語訳でA4判2枚相当。
 「東京電力福島第一原発事故から8年6カ月を経過した2019年7月現在、日本国内には放射線被害から逃れようとして国内避難民となり、各地で避難生活を送っている被害者が5万人を超え、関連する死者が後を絶たず、健康被害への懸念も高まっている」、「2020年の東京オリンピック・パラリンピックを前に、『原発事故からの復興を成し遂げた』ことを世界にアピールしようとする日本政府は、避難者に対する援護を打ち切り、避難者を切り捨て、原発事故被害を『ステレス化』する政策を推進している」、「政府の方針に追随する福島県は、2019年3月末日で東京・東雲などにある国家公務員住宅の提供を打ち切り、病気や経済的困窮などから退去できない63世帯の避難者に対し、4月以降、家賃の2倍に相当する『懲罰的損害金』の支払いを迫っている」と経緯を説明。
 「日本政府と福島県は事故後、避難者に対し公営住宅や民間から借り上げた住宅を無償で提供してきたが、2017年3月、『避難指示が出されていない地域の放射線量は下がった』として、これらの地域から避難していた1万2539世帯(3万2312人)に対する住
宅の無償提供を打ち切った。その際、住居を確保できなかった148世帯に対し、『2年間の暫定措置』として政府の所有している国家公務員住宅を福島県が借り受け、有償で貸し付けていた。福島県が支払いを迫っている請求額は、最高15万5000円(約1470ドル)。パート労働で得られる月収の全額に当たる請求を受けている母子避難の母親は途方に暮れ、健康を害し働けない男性は損害金の督促に脅える毎日を送っている」として、次の2点を求めている。
 ①「日本政府及び福島県は、国家公務員宿舎からの原発避難者の強制退去及び懲罰的家賃2倍相当の損害金請求は直ちに撤回し、原発避難者に安定的な住宅を保障すべき」
 ②「国連人権理事会は日本に特別報告者を派遣し、原発避難者の住宅、生活状況を調査し、日本政府に対し政策の是正勧告を行うべき」


国連人権理事会に送付された意見書(日本語訳版)。「日本への特別報告者を派遣」、「原発避難者の住宅、生活状況の調査」、「日本政府に対する政策の是正勧告」を求めている

【「避難者の生存権脅かす人権侵害」】
 意見書は「安倍晋三首相は2013年9月、ブエノスアイレスでの東京五輪招致演説で『原発事故の汚染水はアンダーコントロール』と発言。これを受けて日本政府と福島県は2020年までに原発事故被害を『処理』し、『復興』を世界に発信するという政策を策定した」、「これに従って、日本政府は2018年4月までに、年間空間線量が50ミリシーベルトを超える高濃度汚染地を除き避難指示を全て解除、被害者に対する唯一の保障措置であった住宅提供を打ち切り、避難者を福島県へ戻す『帰還政策』を推進してきた」と国や福島県の取り組みを批判。
 「事故を起こした原発サイトは溶け落ちた燃料デブリの所在すらわからず、収束作業は遅々として進んでいない。サイトからは汚染水や放射性物質の流出が続いており、事故直後に政府が発した原子力緊急事態宣言はいまも続いている。元の居住地に帰還しているのは20%にも満たず、帰還者のほとんどは高齢者で、放射性物質による健康被害を怖れる子どもや若者の姿は稀である。このような状況の中で、日本政府は自らの責任に直結する避難指示とその解除によって被害者を見えなくするという人権無視の政策を進め、被害者である福島県もその先兵となって住宅提供を打ち切る政策を推進している。その象徴的な事実が今回の住宅追い出し・家賃2倍相当の損害金請求である」と人権上の問題点を指摘している。
 さらに、「日本政府の被害者政策については、2013年5~6月の第23会期国連人権理事会で採択された達成可能な最高水準の心身の健康を享受する権利に関する特別報告者アナンド・グローバー氏の調査報告以来、数多くの調査報告、勧告が出されている」、「日本政府が締約している自由権規約には『移動の自由及び居住選択の自由』が規定されている。社会権規約には『居住を含む相当の生活水準に対する権利』保障の義務が規定されている」などとして、「日本政府及び福島県が現在行っている国家公務員宿舎からの退去強要、懲罰的家賃2倍相当の損害金請求は、これらの勧告、条約義務違反に当たるばかりでなく、窮迫した原発避難者の生存権をも脅かす重大な人権侵害行為であり、直ちに撤回されるべきものである」と訴えている。


福島県が7月、国家公務員宿舎に入居する〝自主避難者〟に送り付けた通知文は2種類あった。左は、2倍の家賃のみを請求しているケース。右は、過去の家賃未払い分も含めて請求しているケース。今月8日までに〝第2弾〟が送付された(情報公開請求で入手)

【福島県「2倍請求やめない」】
 国や福島県との交渉に継続的に参加している村田弘さん(「福島原発かながわ訴訟」原告団長、福島県南相馬市小高区から神奈川県横浜市への避難継続中)によると、意見書は東京造形大学の前田朗教授が監修。NGO団体「国際人権活動日本委員会」(JWCHR)を通じ、既に国連人権理事会に送付されたという。
 前田教授は今年3月の国連人権理事会で「福島原発かながわ訴訟」に関して発言。「自宅に帰りたいが、放射能汚染のために帰ることができない」、「横浜地裁の賠償命令(今年2月の判決)は、東京電力に対する8番目、日本政府に対する5番目の命令である。にもかかわらず、日本政府はこれまで5つの裁判所の命令を拒否している」、「国連人権理事会が日本における国内避難民の状況を監視し、検討するよう要請する」などと述べている。
 村田さんは「国連人権理事会の公式サイトに意見書が掲載されれば、世界中の人々の目に触れる事になる。福島県との交渉を求めているが、なかなか応じてもらえない。この意見書も活用しながら、福島県や国との交渉を進めていきたい」と話している。
 福島県生活拠点課によると、「家賃2倍請求」を続けていく方針は変えず、今月8日までに該当する避難者に対し、通知と払い込み用紙の送付(5月分)を終えている。7月に送付した4月分の家賃2倍請求に関して、生活拠点課の担当者は「2倍の家賃を支払った世帯はある」としながらも「数は言えない」として明らかにしていない。村田さんたちの要求は無視され、9月以降も家賃2倍請求は続くという。



(了)
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鈴木博喜

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