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【原発避難者から住まいを奪うな】「家賃2倍請求やめて」避難者・支援者が国に要求するも〝ゼロ回答〟。官僚は「福島県が決めた事」「福島県の意思」繰り返す~平行線の政府交渉

原発事故後、政府の避難指示が出されなかった区域から福島県外へ避難している人々(いわゆる〝自主避難者〟)のうち、国家公務員宿舎への入居者に対する家賃2倍請求問題で、避難当事者と支援団体が29日午後、東京・永田町の衆議院第二議員会館で復興庁や財務省などに「家賃2倍請求」を中止するよう求めた。しかし、官僚たちは「福島県が決めた事」、「福島県の意思を尊重する」と繰り返すばかりで〝ゼロ回答〟。約2時間の話し合いは平行線のまま終わった。官僚側は家賃2倍請求中止について1週間以内に文書で回答する事を約束した。避難者には間もなく、3回目の家賃2倍請求が届く。


【復興庁「福島県も努力されている」】
 復興庁の担当者は、用意した書面を淡々と読み上げた。これまでと同じように主体者はあくまでも福島県。国は主体性をもって関わらない。福島県も相談対応など努力を続けている─。改めてそれを〝宣言〟するかのような言葉だった。
 「福島県は、応急仮設住宅供与終了後の経過措置として国家公務員宿舎貸与等の取り組みをしてきた。今回、2年間の経過措置が終了した事から、これらの措置も終了したものと承知している。本年3月末で支援が終了したところであるが、それまでの間に相談対応などで避難者の状況を細かく把握して来たと承知している。その上で、福島県の方で、やむを得ない場合に限り、例外措置として国家公務員宿舎の貸し付けを延長したと承知している。それ以外の方々に対しても、相談対応によって状況を把握しながら、出来るだけ希望に沿った住まいが確保出来るように努力されているものと承知している。復興庁としては引き続き福島県の考えを尊重しながら、密に連携をとりながら、避難者の方々の生活再建を支援して参りたい」
 「未契約の方々に関して福島県が訴訟提起を検討しているという事は承知している。福島県の考えは尊重しつつ、引き続き連携をとりながら、避難者の方々の生活再建を支援して参りたい」
 「福島県のお考えとしては、生活保護を受けているなど経済的困窮性が明らかであったり、新たな住まいは確保出来ているが転居先の都合で3月末までに退去出来かったりする18世帯に関しては、例外的措置として今年4月以降も貸し付けを延長したと承知している」
 参加した避難者や支援者の願いはただ1つ。家賃2倍請求などという懲罰的な仕打ちをいったんやめ、国と福島県が一体となって避難者の実態調査を進める事だ。相談をただ待っているのではなく積極的に関与していく。その上でどのような方策があるかを検討する姿勢だ。〝追い出し訴訟〟を起こすなど論外。しかし、これまでの政府交渉の動画を観ているかのように、官僚たちは同じ言葉を繰り返すばかりだった。






東京・永田町の衆議院第二議員会館で行われた政府交渉。復興庁や財務省、国交省、外務省の官僚が出席したが、具体的な進展は無かった。「福島県も何もしていないわけでは無い」との声すらあった

【契約書の有効性に疑問の声】
 家賃2倍請求に関しては、既に福島県が4月分と5月分の請求通知を納付書とともに送付。4月分の納付期限は7月26日だったが、期日までに2倍の家賃を支払ったのは63世帯のうち7世帯にとどまっていた事が本紙の調べで分かっている。5月分の納付期限は既に過ぎており、福島県は間もなく6月分の納付書を送付する。福島県生活拠点課の担当者は取材に対し「入居者がゼロになるまで、最後の1人が退去するまで家賃2倍請求は続ける」と答えている。
 「避難の協同センター」事務局長の瀬戸大作さんは「具体的に言うと、月収が9万円しか無い避難者がいる。家賃2倍請求されると5万円になってしまう。そういう事を国が福島県にさせて良いのか。原発事故の責任は国にもある。何で福島県の責任にして関与しないのか」、「財務省が福島県に対して家賃2倍の損害金を請求すれば、最終的に避難者に請求される事は当然、認識していただろう。福島県が本当に損害金に関して了承したのか」、「先ほどから『福島県が決めた事だ』という話が出ているが、本当に福島県が主体的に判断したのか。政府が具体的に主導したのではないのか」と繰り返し質した。
 国家公務員宿舎を管理する財務省理財局は「国は福島県に対して使用許可を与えており、家賃2倍に相当する損害金を福島県から受領している。福島県に対する使用許可の中に、義務を履行しない場合の家賃2倍(損害金)について記載したのは財務省。(入居者に対する家賃2倍請求は)福島県が策定した『総合的な支援策』との整合性等をふまえて、福島県において判断した事」と答弁。あくまで「福島県が主体的に決定した」との姿勢を貫いた。
 政府交渉では、福島県が避難者と交わしたとされる契約書の有効性について支援者から疑問の声があがった。
 「果たして契約書が有効か否かを改めて確かめて欲しい。例えば、国家公務員宿舎への入居者には、日本語がほとんど話せない中国の人がいる。その方にどうやってサインさせたのか。そういう事実を把握しているのか。きちんと説明もされていないままサインさせられている。これは法的に問題になる」
 しかし、財務省は「福島県と各入居者との契約についてどういう状況で説明したか把握していない」と主体的に調べる意思が無い。復興庁に至っては、相変わらず同じ文言を何度も読み上げるばかりだ。「繰り返しになってしまいますが、引き続き連携しながら支援して参りたい」。
 瀬戸さんは「月収15万円の人に15万円もの家賃を請求する事がなぜ認められるのか。完全に生存権を侵害している。憲法25条違反だ。財務省はそれに加担している事を分かっているのか」、「実態把握を早急に進めて欲しい。56世帯がなぜ支払えないのか実態すら調べないのか」、「2014年に起きた千葉県銚子市の事件だって、行政がきちんと実態把握をしていれば防げた」と迫ったが、復興庁も財務省もはっきりとは答えなかった。






(上)避難当事者の男性が持参した都営住宅の「落選通知」。何度も申し込んでいるが一向に当たらない。そこに家賃2倍請求の仕打ち。男性は落選通知を手に「精神的な病で働けない。何とかよろしくお願いします」と訴えた
(中)政府交渉の設定に協力した山崎誠代議士。「復興庁は、家賃2倍請求しないよう福島県に要請する立場にある」などと語気を強めた
(下)福島県が63世帯に対して送付した4月分の納付書。7世帯がやむなく2倍の家賃を支払った

【外れ続ける都営住宅】
 「避難者たちは『ずっと無償で住まわせろ』など、何もわがままを言っているわけではありません。新たな住まいを確保しようと努力している。それでもまだ退去出来る段階に無い。それなのに家賃2倍請求なんて間違っている」 
 都内で避難者支援を続けている男性は、そう強調した。隣には避難当事者の男性が座っていた。男性の目の前には6枚のハガキ。都営住宅の落選通知だった。
 「公開抽せんの結果、あなたは 落せん となりましたので、お知らせします」
 「落せん」の3文字だけ、太く大きく印刷されている。都営住宅の抽選には何度も申し込んだ。しかし当選しない。地域にこだわらなくても当たらない。精神的な病で働けていない。そこに家賃2倍請求ではどうする事も出来ない。
 「避難の協同センター」世話人の熊本美彌子さん(福島県田村市から都内に避難継続中)「2倍の家賃を請求されてしまうと、一番多い人で管理費も含めると毎月15万5000円を支払わなくてはならなくなってしまう。こんな金額を年金生活者がどうして払えるのか。〝自主避難者〟の窮状は、行政によって作り出された窮状ではないか」と訴えた。「ひだんれん」幹事の村田弘さん(「福島原発かながわ訴訟」原告団長)も「復興庁にお願いしたい。家賃2倍請求をやめさせるよう国から指導出来ないものか」と質したが、復興庁も財務省も「家賃2倍請求は福島県の御判断。私どもとしては尊重したい」と繰り返すばかりだった。
 政府交渉には山崎誠代議士(立憲民主党)も同席。「この問題はずっとお願いをしてきた。結果としてゼロ回答のまま、ここまで来ている。家賃2倍請求はあり得ない。3月14日の衆議院・東日本大震災復興特別委員会で渡辺博道復興大臣も『できるだけ次の住宅が確保できるような状況に努力をしてきている。あと二週間も、その気持ちでしっかりと取り組んでまいりたい』明言していた。しかし、その約束が守られていない。こういう話し合いを続けなければならない事が本当に残念でならないが、命がかかっている。問題が解決するまでは続けていく。出来るだけ前向きな議論をして、解決の糸口を見つけたい」と語った。
 しかし、約2時間の話し合いは平行線のまま。山崎代議士は「復興庁は言い放ってないで、福島県に家賃2倍請求しないよう要請する立場にあると思う」、「福島県とどういう協議をしたのか、議事録を開示して欲しい。国が延長を拒否して打ち切ったのではないか」、「各世帯がこうすれば退去出来る、というような具体的な方策を示して欲しい」、「10月にも予定されている臨時国会で取り上げないといけない」と発言した。
 瀬戸さんたちは家賃2倍請求をやめるよう福島県に指導する事、早急に避難者の実態調査を行う事について要請。官僚側は1週間以内に文書で回答すると約束した。交渉の冒頭では家賃2倍請求中止を求める復興大臣宛ての署名が提出された。



(了)
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鈴木博喜

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