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【燃やされ消される「原発事故対応」】希薄だった「アーカイブ」意識。浜通りは行政文書を独自保管するも扱いは「廃棄文書」「不存在」。県議からは「永年保管するべき」との声

2011年3月に発生した福島第一原発事故以降の行政文書が保管期限を迎え、福島県や県内市町村で続々と廃棄処分されている問題で、避難指示区域となった浜通りでは、複数の自治体が独自の判断で文書を廃棄せず保管を続けている。しかし統一ルールは無く、保管期限を過ぎたものは「廃棄文書」扱い。文書は存在するのに開示出来ないという〝矛盾〟をはらんだままの保管。浜通りとの温度差が大きい中通りでは既に大量の行政文書が廃棄されており、担当職員からは「県が保管を主体的に呼びかけてくれたら捨てられなかったのでは無いか」との声も。共産党福島県議団がこの問題に着目。11日の県議会本会議で主体的に永年保管求めない県の姿勢を質す。


【統一ルール無く「使命感」頼み】
 「2014年度から2016年度にかけて、福島県立博物館が中心となって地震や津波、原発事故の記録を後世に伝える『ふくしま震災遺産保全プロジェクト』が取り組まれました。私は当時、プロジェクトに参加したので、行政文書も含めて後世に残すべきだという事を学ぶ事が出来ました。それが無ければ多分、残しておかなければいけないという発想にはならなかったと思います。重要な書類なんだ、という意識付けが早い段階で必要でした。外部から見たら、市町村職員は当然そのくらいの意識は持っているだろうと考えるのかもしれませんが、現実にはなかなかそうでは無いと思います」
 取材に応じた双葉町総務課の担当者は、率直に語った。同町も含め、確認出来ただけで大熊町や浪江町、飯舘村では極力、原発事故後の行政文書を保管しようと取り組んでいる事が分かっている。しかし、国や県からの指示などは一切無く、あくまでも市町村独自の判断。なぜ廃棄を始めた中通りと異なり、浜通り(相双地区)の市町村は保管し続けているのか。双葉町の担当者は「3年ほど前に、大熊、浪江、双葉の3町でアーカイブに関する勉強会を開いていました。筑波大学の先生にも入っていただいて、震災後の行政文書を捨てては駄目だという話になっていました。そういう事も影響していると思います」と分析した。
 大熊町は2017年9月に「アーカイブズ検討委員会」を設置し、筑波大学教授の白井哲哉氏を委員長に議論を進めて来た。8月末、公文書保管のルールづくりなどを盛り込んだ提言をまとめた。大熊町総務課の担当者は次のように語る。
 「今のところ行政文書は全部、保管しています。保管場所の問題もあるので今後、選別する事になるが、震災や原発事故に関するものは全て、廃棄せずに保管していく事になると思います。震災を後世に伝えるためにどうしたら良いか。関連文書は残さなければならないという使命感のようなものはあります。後々、貴重な資料になりますから。原発事故対応と言っても市町村によって異なるので、全て残していくべきだと思います」
 国も福島県も原発事故対応に関する行政文書保存の環境づくりをせず、市町村職員の使命感頼み。その浜通りでも、行政文書以外のものでは既に捨てられたものがあるという。




行政文書が保管されている浪江町役場の書庫。保管期間が過ぎた文書も廃棄せず、休校中の浪江小学校校舎を利用しながら保管を続ける。「しかし、いつまでも校舎に保管するわけにもいきません。県の『東日本大震災・原子力災害伝承館』が完成したらぜひ、そちらで保管したい」と町職員は語るが…

【「アーカイブという発想無い」】
 双葉町総務課の担当者はさらに、こう明かした。
 「以前、県のアーカイブ拠点施設『東日本大震災・原子力災害伝承館』について議論した時に、行政文書に限らず貼り紙だとか物だとか、震災や原発事故以降のものは残そうという話が県からありました。『どうでしょう、皆さんの市町村では残っていますか?』と問いかけられたのですが、ある自治体職員の答えは『全然無い』だったんです。避難指示が解除されたので片付けないと戻れない、だから避難所の運営に関わるようなものなど全てを処分してしまったという話でした。そこは理解出来ます。責められません。復旧・復興に向かって歩き出す瞬間には、職員には『アーカイブ』という発想が無いですから。ごみとしか見られなくてもやむを得ないと思います。だから早い段階で、県職員や学芸員のような方が全てを残すような働きかけをしてくれれば良かったと思います」
 双葉町では毎年、行政文書が300箱ずつ増えているという。現在はいわき市内の倉庫で保管しているが、いずれはパンクしてしまう。「どこかの段階で、本当に必要なものとそうでないものとを精査しなければいけません。今後の保管のあり方を庁内で議論しています」。
 飯舘村も、2011年度以降の行政文書は極力、保管するよう取り組んでいるという。
 「条例や規則などで明確にルール化しているわけではありませんが、各課の判断で出来るだけ保管するようにしています。後々のために震災当日以降の書類はなるべく保管しておくようにと、村長から全庁的に指示があったので、廃棄はしていません」と村総務課。「保管場所には確かに苦慮しています。きちんと分類や整理も出来ておらず、『文書管理』という状況には至っていない。箱詰めして積み上げるのが精一杯です」とも。保管場所に苦慮しているのは大熊町も同じだ。
 「会津若松やいわきの出張所で保管しています。今後、県とは別に町独自にアーカイブ施設をつくる計画がありますが、どのように保管していくか、どのような形で公開するかが今後の課題です」
 福島県は55億円かけて「東日本大震災・原子力災害伝承館」を建設中だが、行政文書保管には消極的だ。




(上)福島県が双葉町に建設している東日本大震災・原子力災害アーカイブ拠点施設「伝承館」展示室のイメージ図。福島県生涯学習課の担当者は「行政文書の寄贈は拒まないが、こちらから呼びかける事はしない」と消極的だ=福島県のホームページより
(下)中通りの市町村を中心に、原発事故関連の行政文書は既に大量に廃棄されてしまった。燃やさなくても、「永年保管」に指定しなければ「不存在」と同じ扱いになってしまう

【「『伝承館』は公文書館では無い」】
 福島県は、震災・原発事故関連資料を保管・展示するアーカイブ拠点施設「東日本大震災・原子力災害伝承館」を双葉町中野地区(JR常磐線・双葉駅から約2km)に建設中。〝復興五輪〟にあわせて2020年7月のオープンを目指している。地上2階建てで、延床面積は約5200平方メートル。基本理念の1つには「原子力災害と復興の記録や教訓の未来への継承・世界との共有」が掲げられている。
 浪江町総務課の担当者は「伝承館が完成したらそちらに保管する計画です。それまで浪江小学校で仮置きしている状態。もし伝承館の建設計画が無かったら、今まで通りに焼却処分していたかもしれません」と話す。
 しかし、当の福島県は行政文書の保管に消極的だ。
 「県で原発事故後の行政文書を全部集めるとか、そこまでは考えていないです」
 「伝承館」を所管する福島県生涯学習課の担当者はそう話した。
 「『伝承館』はそもそも、公文書館という位置付けではありません。浜通りの市町村はまだ大変な状態が続いていますので、とりあえず保管しているという状況だと思います。整理した後に寄贈して頂けるという事であればもちろん、喜んで頂きます。しかし、一律に行政文書の保管や提供を呼びかけるのは難しいです。行政文書の保管や廃棄は、各市町村の裁量による『自治事務』ですから」
 取材に応じた浜通りの市町村職員は一様に「原発事故に対する中通りの市町村との温度差はある程度やむを得ないと思う。だからこそ、早い段階で県が積極的に主導していれば、全県的に行政文書は保管するという流れになっただろう。しかし、国からも県からも何も指示は無かった」と口を揃える。時既に遅し。2011年度に作られた大量の行政文書は燃やされてしまった。中通りの市町村を中心に、今年中には2012年度の行政文書が焼却処分されてしまう。
 浜通りで保管されている行政文書にしても、保管期間を過ぎたものは「廃棄文書」という位置付けになるため「現行規則では、仮に町民から開示請求があっても『不存在』とせざるを得ない」(浪江町総務課)。これでは当時の行政対応が適切だったか検証する事は難しくなってしまう。
 「だからこそ、原発事故関連の行政文書は保管期間を設けない『永年保管』にするべきだ」。宮本しづえ県議(日本共産党福島県議会議員団)は、11日午後の県議会・代表質問で県の姿勢を質す。



(了)
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鈴木博喜

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