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【日本乳腺甲状腺超音波医学会】山下俊一氏が福島での学術集会で講演。厳重な「撮影一切禁止」の中で、原発事故による健康影響を否定、甲状腺ガンも「放射線の影響では無い」

福島県の「県民健康調査検討委員会」初代座長で、福島県立医大副学長・理事長特別補佐の山下俊一氏が6日午前、福島県福島市で開かれた「日本乳腺甲状腺超音波医学会」(JABTS)の第43回学術集会で40分間、特別講演した。撮影が一切禁じられる中、婉曲的な表現ながら、2011年3月の原発事故による健康への被曝リスクを否定。甲状腺検査で200人以上の小児甲状腺ガン(疑いも含む)が見つかっている事に関しても、過剰診断との見方には否定的であるものの、「放射線の影響では無いと思われる」と述べた。明日7日には、新しい顔ぶれでの県民健康調査検討委員会が開かれる。
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【「山木屋は65・5μSv/hだったが…」】
 「未曽有の出来事ではあったが、広島長崎、チェルノブイリの経験が生かされなかったわけでは無い。果たして当時、戦略をもって原発事故に対応出来たのだろうか。チェルノブイリ原発事故からまだ33年。福島第一原発事故から8年。『歴史』と言うにはまだ短すぎる。しかし、この事を学ばずして未来に責任を果たせるか。8年半前、いったい何が起きたのか。お話をしたい」
 講演は午前9時20分に始まった。山下氏は、いつもの穏やかな口調で語り始めた。並べられたパイプ椅子は空席が目立った。
 「風化という問題は避けられない。2013年4月の学術集会で、私はやはりこのホールで講演した。聴衆で満杯だった。6年半経ってこういう状況。時間軸で人の価値観は変わり得るという事を示している」
 原発事故直後に発売された週刊誌「AERA」の表紙が大きく映し出された。タイトルは「放射能がくる」。山下氏は直接的な表現では批判しなかったが、否定的に用いられたのは明らかだった。
 「情報伝達が閉ざされ、正しい情報が入って来ないという中で、不安と恐怖が蔓延した。チェルノブイリ原発事故と比較すると良く分かると思うが、放出された放射性物質はだいたい10分の1程度だった。幸いなことに8割は太平洋に流れた。情報にアクセス出来る人もいれば出来ない人もいる。そういう中で、こういう雑誌が席巻した」
 2011年4月1日、川俣町・山木屋地区に立ち寄った際に自身で測定した空間線量は65・5μSv/hだった。しかし、これも健康被害を生じさせるような数値では無いという。
 「2011年3月14日から19日にかけて、長崎大学からREMAT(緊急被曝医療支援チーム)が福島に派遣された。いろんな人々がいろんな想いで集まったが、国からしっかりとした情報や指示があったわけでは無い。フィルムバッヂやホールボディカウンター(WBC)で測定した結果、幸いにして、私たちが派遣した5人の6日間の被曝線量は約31μSvから52μSvだった」

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山下氏の講演だけでなく、全てのプログラムに関して写真や動画の撮影が禁じられた。別会場のブースも撮影禁止。学会の関係者は「学会として全ての取材者にそのようにお願いしている。理由は分からない」と話した=コラッセふくしま

【「混乱招いた『ただちに影響無い』」】
 話は当時の官房長官、枝野幸男氏にも及んだ。
 「当時は『被曝イコール健康影響』だった。当時の官房長官は『ただちに影響無い』と何度も繰り返し混乱を招いた。彼は『影響は無い』とは言えなかった。実際には誰しもが微量の放射性物質を吸い込んだ。それは関東も同じ事」
 この日の講演で山下氏は、直接的な表現を極力、避けていたが、一貫していたのは「原発事故による被ばくリスクは無い」という事だった。
 「警察や消防、自衛隊員として2011年3月12日から3月末まで半径20キロ圏内で作業した2967人の被曝線量の測定結果がある。ほとんどが2mSvも無い。訓練された人間は事故の相場観が分かったが、一般公衆にとってはまさに青天の霹靂であった。真の健康リスクとのかい離があった。3月18日から27回、福島県内で講演会や対話集会を行った。聴衆は1万240人に上った。一般の住民とどのように健康リスクについてコミュニケーションするか、難しさが露呈した」
 ちなみに当時、山下氏らが福島県内で行った講演の内容は、今なお民事裁判で東電が原発事故による健康被害の可能性を否定する根拠としてたびたび引用されている。
 「県民健康調査」として行われている甲状腺検査については「進行中であって結論めいた事を述べるのは難しい。データを総合的に評価し、チェルノブイリの経験を今後も福島に活かしていく必要がある」と述べた。県民健康調査検討委員会では「過剰診断ではないか」との意見もあるが、それについては否定的な見方を示した。
 「200人を超す子どもの甲状腺ガンが見つかっている。初めてのデータ蓄積。放射線の影響では無いのに、なぜこれだけ多くの甲状腺ガンが見つかるのか。それがしきりに問われている。『過剰診断』とも言われるが、それは本当だろうか。疫学的に後で振り返って過剰診断だと言う事が出来る」
 最後に、「福島は『現存被ばく状況』が続いている」として、「学而不思則罔 思而不学則殆」(学びて思わざれば則ちくらし、思いて学ばざれば則ちあやうし)という言葉で講演を締めくくった。筆者の取材に対し、山下氏は「中通りには放射線による健康影響は無い」とはっきりと答えた。避難指示の有無にかかわらず今なお福島県外に避難している人々がいるが、「放射線の健康リスクを正しく学べ」という事なのだろうか。

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学術集会の会場となったコラッセふくしまでは、甲状腺検査に関するパネル展示のほか、超音波健診車も展示された

【「これからも検査は続く」】
 今回の学会長を務めた志村浩己氏(福島医大放射線県民健康管理センター甲状腺検査部門長)も講演。被曝による健康影響を否定した。
 「われわれが行っている基本調査の結果からは、福島での外部被曝線量は悪くても0・03Sv(30mSv)までであろうと考えられている。ほとんどゼロに近い。内部被曝も同じ程度。しかし、放射線を被曝している事には変わりない。当然ながら、住んでいる人々は健康被害を心配した。そこで、福島県と福島医大は約半年後から甲状腺検査を始めた。非常に素早い対応だった。原爆被爆者やチェルノブイリのデータから『若年者にリスクが高い』という事が分かっていたので、当時、福島県内に住んでいた0歳から18歳までの36万人を対象にした」
 検査で見つかるのう胞については「先行検査の結果からは女性の方が少し多い。サイズの小さい、3ミリ以下のものが低年齢層で多い。ピークは小学校高学年から中学生。中学校では、のう胞が無い子どもを見つける方が大変というようなイメージだ」、結節については「年齢が上がるにしたがって発見される頻度も高まっている。女性の方が多いというのは、一般的な甲状腺疾患で言われている事と同じ」と述べた。検査結果の地域差については否定した。「なるべく近くの医療機関で気軽に検査を受けられるようになれば良いなと思っている」とも話した。
 青森県、山梨県、長崎県で4365人を対象に実施された「三県調査」は、環境省が「日本乳腺甲状腺超音波医学会」に委託して実施された。責任者だった志村氏は「福島のデータと同じくらい。福島の結果と変わらなかった」と述べた。
 甲状腺検査を巡っては「縮小論」も根強いが、志村氏は「これからも続くと考えられている。これまで以上にご協力をお願いしたい」と呼びかけた。講演の座長を務めた鈴木眞一氏(福島医大教授)も「これからも高い精度で検査を続けて欲しい」と〝エール〟を送った。
 なお、冒頭の山下氏の写真は、2016年12月に郡山市内で撮影した。今回の学術集会の取材にあたっては、主催する学会側から「講演会場内での写真撮影、動画撮影、録音はプレスの方であっても一切禁止です」などとする「取材要項」が提示され、同意書への記入を求められた。会場は多目的ホールや会議室など複数あったが、全ての会場で撮影が禁じられた。学会の関係者は「学会として全ての取材者にお願いしている。理由は分からない」とだけ説明した。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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