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【県民健康調査】新たな顔ぶれで議論再開。甲状腺検査の「悪性ないし悪性疑い」は13人増、計231人。根強い検査継続論、座長は4たび星北斗氏を選出~第36回検討委員会

原発事故後、福島県が実施している「県民健康調査」の第36回検討委員会が7日午後、福島市のホテル福島グリーンパレスで開かれた。任期満了に伴い5人が入れ替わり、新たな顔ぶれでの議論再開。甲状腺検査で「悪性ないし悪性疑い」と診断された人は6月末現在、13人増えて231人になった事が報告されたほか、座長は4たび、委員の互選で星北斗氏が選出された。星座長は今後の検査の在り方について意見を求めたが継続を求める声は根強く、いまのところ「縮小論」は影を潜めている格好。新任委員の〝顔見世〟にしては様々な意見が出された。
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【吉田明委員「男女比おかしい」】
 甲状腺検査の二次検査で「悪性ないし悪性疑い」と判定された数は、6月30日現在で計231人だった。前回委員会に出された3月31日現在の数字より13人増えた。
 2016年度から2017年度に実施された「本格検査(検査3回目)」では、二次検査の対象者1499人のうち72人に穿刺吸引細胞診を実施。29人(男性12人、女性17人)が「悪性ないし悪性疑い」と診断された。前回データより5人増えた。原発事故当時の年齢は5歳から16歳。腫瘍の大きさは5・6ミリから33・0ミリだった。19人が手術を受け、全員が乳頭ガンだった。29人のうち、一次検査でA2判定を受けたのは13人(うち10人がのう胞、3人が結節)。
 2018年度から行われている「本格検査(検査4回目)」では、二次検査の対象者655人のうち23人に穿刺吸引細胞診を実施。13人(男性6人、女性7人)が「悪性ないし悪性疑い」と診断された。前回データより8人増えた。原発事故当時の年齢は4歳から12歳。腫瘍の大きさは6・9ミリから17・2ミリだった。1人が手術を受け、乳頭ガンと判定された。13人のうち、一次検査でA2判定を受けたのは8人(うち6人がのう胞、2人が結節)。
 閉会後の記者会見で「男女比」について、雑誌「科学」の記者から問われた吉田明委員(神奈川県予防医学協会・婦人検診部長)は「県民健康調査で出ている男女比については、おかしいなというような感想を持っている。小児の甲状腺ガンをずっと調べていても、やっぱり女性の方が多い。年齢が若くなると差は縮まるが、それでも1:3とか1:4くらいでとどまっている。これが1:1に近いというのはやはり、ちゃんと真面目に検討しなければいけないんじゃないかと思っている」と述べた。
 委員会の終盤、星座長が「甲状腺検査について将来、どうするのか。皆さんの意見を伺いたい」と提起。富田哲委員(福島大学・行政政策学類教授)は「今すぐ検査体制を縮小するのには大きな疑問がある」と述べた。
 「今でも大学では線量計を貸し出している。線量計を持って福島市内を歩いてみれば、モニタリングポスト(リアルタイム線量測定システム)は低めに出ているのが良く分かる。現実には2~3割高いという印象を抱いている県民は多い。もちろん、検査を未来永劫続けるという事にはならないだろうが、少なくとも原発事故当時に生まれた子どもが高校を卒業するくらいまでは続けるべき。福島県民の中には『ひょっとしたら』とビクビクしながら生活している人も多い。このあたりも理解して欲しい」
 一方、津金昌一郎委員( 国立がん研究センター・社会と健康研究センター長)は「必ずしも検査を受けるメリットが優れているという状況では無い。希望する人に対する無償検査は絶対にやめてはいけないが、より任意性が求められる。特に学校での検査は強制的になる傾向がある。一度立ち止まって、きちんと議論して進めるべきではないか」と発言した。

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(上)「本来は国が責任をもって広域検査するべき。福島県内だけが対象になっている現在の制度設計には不満がある」と述べた富田哲委員
(下)吉田明委員は会見で「県民健康調査で出ている男女比については、おかしいなというような感想を持っている。1:1に近いというのはやはり、ちゃんと真面目に検討しなければいけないんじゃないかと思っている」と述べた

【「国の責任で広域検査するべき」】
 2020年4月から始まる「本格検査(検査5回目)で配布される「お知らせ文」の文言改訂案に関しては、様々な意見が出た。
 稲葉俊哉委員(広島大学原爆放射線医科学研究所・がん分子病態研究分野教授)は「学校健診ではどうしても強制性が拭えないが、強制性を低減するような工夫が必要。自分の身体の事を自分で判断出来る年齢になっている子どもたちが、検査を受ける事によってどういう社会的不利益を受けるのか検査をする側が説明出来ないのなら、子どもたちが想像も出来ない。こういうところを検討しなければならない」と発言した。 津金委員は「稲葉先生のおっしゃる通りだ。就職や保険加入など明らかなデメリットが存在する」とフォローした。
 吉田委員は「小児甲状腺ガンは死亡例はある。検査によって甲状腺ガンを根治させる可能性があるという事を書くべきだ」と述べた。菱沼昭委員(獨協医科大学感染制御・臨床検査医学教授)は「必ずしも全員手術するわけでは無い。経過観察でも良いという症例も多い。検査をやらなくても良いという事ではないが、見つかった時にどうするかという医療の態度が変わってきているので、そこを書いた方が良いのではないか」と意見した。
 議論の中で、富田委員が「なぜ福島県内だけで甲状腺検査が行われているのか、質問しに来る学生もいる」と発言する場面があった。その点について記者会見で筆者が質問すると、富田委員は次のように答えた。
 「宮城県白石市や角田市、丸森町や茨城県の北部が放射線量が高いという話だが、福島県が県立医大に依頼して行っているので、福島県内だけという制度設計。現在の制度設計の枠では福島県外は対象外。県外より(汚染の度合いが)低いところでも福島県内であれば対象になる。そういう制度設計を話した上で、理想的にはもう少し広域の検査をしなければいけない。福島県外の人が甲状腺ガンにならない事など無い。最終的にはやはり国が責任をもって検査するべきだ。だが、現在の検査体制はそうはなっていない。不満はあるが無いよりはまし。そう答えるようにしている。学生は納得するか?納得しません」
 なお、菅野達也県民健康調査課長は子ども向けの「お知らせ文」作成を県立医大が検討している事も明らかにした。また、「甲状腺検査本格検査(検査2 回目)結果に対する部会まとめ」に対する検討委員会の見解を取りまとめる過程で各委員から星座長に宛ててメールで送られた意見の内容について情報公開請求された場合の対応について、菅野課長は「過程の資料なので『公文書』にあたるのかどうか。扱いは慎重にしたい。個人が個人に宛てたものとして考えている」との見解を示した。

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甲状腺検査で見つかった小児甲状腺ガン(疑いも含む)の数は、3カ月間で13人増えて合計231人になった(配布資料より)

【既定路線だった星座長続投】
 委員の任期は今年8月1日から2021年7月31日までの2年間。委員会の冒頭では、福島県の戸田光昭保健福祉部長を仮議長として委員の互選で座長が決められた。検討委員会の初代座長は山下俊一氏。2013年からは星北斗氏(福島県医師会副会長)が座長を続けている。
 星氏は、今年8月に内堀雅雄知事を表敬訪問した際、取材に対し「(座長は)もうこりごりだ、という想いが全く無いと言えば嘘になるかもしれない」、「非常に大変で疲れる仕事」としながらも「仮にもう一度やって欲しいと言われたとすれば、積極的に断る理由は無い」と答えていた。委員会では、堀川章仁委員(双葉郡医師会長)が「前回からの引き継ぎという考え方からして星北斗先生を推薦致します」と発言。他に意見は無く、星氏も頭を下げて受諾した。
 4たび座長に選出された星氏は「この2年の任期中に(原発事故から)10年の節目を迎える。様々なご意見がある中で、皆さんのご意見を参考にしながら、そして県民の声に耳を傾けていきたい」と述べた。座長代行には、引き続き稲葉俊哉委員(広島大学原爆放射線医科学研究所・がん分子病態研究分野教授)が選ばれた。
 閉会後の記者会見で、星座長は筆者の質問に「内心は、そうで無い(座長に推薦されない)と良いなと思っていたが、そうでは無かった。私は座長をしたいわけでは無い。しかし、議論を裁くというか進めて行くために必要な役割だと考えている。私が個人的に大きな責任を1人で背負い込むという事では無くて、変わりつつある状況、変わらぬ不安というものをしっかりと見据えて議論を進めていく事の大切さを認識しているからこそ、喜んでやる仕事では無いかも知れないが、受けざるを得ないなと思って引き受けた。私がどちららに(議論を)引っ張って行こうというのでは全く無しに、皆さんのご意見をうまく引き出すような役割なのかなという想いだ」と答えた。
 星氏を推薦した堀川氏は「こういう調査は流れが大事。途中で流れが変わるのは残念に思うので、今までの流れを良く踏まえて議事進行していただける人が良いなと思って薦めた」と語った。自身は座長をやらないのか、と質したところ「私は非常に忙しい。双葉郡立診療所を2カ所でやっている。公立双葉准看護学院の学院長や双葉郡医師会の会長もやっている。それに、自分の住まいもまだ帰還困難区域で迷いもある。正しい道というか、私の考えでは横に逸れそうなので自分が座長を引き受けるという考えは無かった」と答えた。
 会見後、堀川氏は「委員会の直前に、星先生に推薦する旨は伝えた。しょがねえな、と言っていた」と笑った。また、別の委員は「非公式ながら、事前に星先生が座長をやりたいという打診があった」と話し、続投が既定路線だった事を明かした。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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