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【〝アベ友〟法相と子ども被災者支援法】「自主避難者支援」に背を向け再び入閣した森まさ子参院議員。10万票差で圧勝した今夏の参院選で語っていた事、語らなかった事

河井克行前法務大臣の辞任を受け、急きょ法務大臣に就任した森まさ子参院議員(福島県選挙区、いわき市、55歳)。就任直後の地元紙のインタビューでは「困っている人、弱い人を助けるために法はある」と語っているが、自身が発議者となった「子ども被災者支援法」の事などすっかりお忘れの御様子だ。フェイスブックには〝大臣就任記念動画〟までアップする始末。〝自主避難者〟も含めた「原発避難者支援」に背を向けてしまった森大臣が、夏の参院選では何を訴えていたのか。少し長くなるがきちんと振り返っておきたい。
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【発議一転、背を向け骨抜きに】
 「嫌いなんだよ、俺」
 〝森法相誕生〟を受けて、浪江町民が吐き捨てるように言った。
 「お友達内閣じゃ駄目だよ。だいたい、あの人は『子ども被災者支援法』を作ったんでしょ?その後どうなっちゃったんだよ。福島県民の代弁者として国会に行ったんだろうけど、全く代弁者になっていないじゃないか。そもそも、就任したばかりの法務大臣が辞めるのがおかしいんだけどさ」
 この男性が言う通り、超党派の議員立法で2012年6月に成立した「子ども被災者支援法」の制定に森大臣も加わっていた。2012年6月の衆参「東日本大震災復興特別委員会」では、発議者の1人として答弁している。自身の公式ホームページでも「実績」の中の「国会での活動」のページに「森まさこが原案を起草」、「自主避難支援等を行うための法律です」などとアピールしている。
 しかし、2012年12月の総選挙で民主党が大敗。自民党が政権を奪還した事で事態は一変した。森氏は「女性活力・少子化問題・子育て支援、消費者・食品安全」を担当する国務大臣に抜擢。内閣の一員になり、森氏はあれほど制定に奔走したはずの「子ども被災者支援法」に背を向け始める。
 2017年6月、法制定5年の節目に参議院会館で開かれた集会。〝自主避難者〟の1人はこう怒りを口にしていた。
 「この法律が歩んだのは、ここに集まった皆さんなら御承知の通り、『塩漬け、棚ざらし、骨抜き』の道でした。大切な子どもたちへの私たちの想いをフェイクの道具のように使うのはやめて欲しいと思いました。救世主であったはずの法律がこんなことになってしまった、と憤りました」
 今年7月の参院選でも、荒井聰代議士(立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム、「子ども・被災者支援議員連盟」会長)が「私は森さんと一緒に『子ども被災者支援法』を超党派の議員連盟で作りました。しかしその後、一切無しですよ。私は会長ですから、いろいろな協力を求めたいと申し入れても、一切受け付けませんでした。私は、あの人には誠実さは感じない」と批判。
 福島県選出の金子恵美代議士(立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム、伊達市)も「議員立法で与野党一体となって法律を作ったんです。あの時は自公も乗った。福島の子どもたちを一生涯、医療を含めて面倒を見ていかれる仕組みを作る、県外に避難している人たちへの支援の仕組みを作る法律です。森まさ子さんも法律提案者の1人です。私もそうでした。いろいろな議論をしました。基本方針を作ったら、それに則った形で政策をどんどん進めましょうと言っていた。その後政権が交代しました。そうしたら基本方針、全部骨抜きなんですよ。今の与党に任せていたら、福島の子どもたちを救う事が出来ないんじゃないですか。『人』を中心とした本当の『復興再生』をしていかなくてはいけないんです」と語気を強めていた。
 「自主避難支援」はその後、唯一の支援策とも言える住宅無償提供が2017年3月末で打ち切られ、ついには避難元の福島県が、避難先の国家公務員住宅に入居する避難者追い出しのための訴訟を起こそうという事態になっている。当初の理念を置き去りにした森大臣は、安倍首相も駆け付けた今夏の参院選でこう訴えていた。

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果樹園での演説で「最後の最後まで全力で、死ぬ気で戦って参ります」と誓った森まさ子参院議員。〝宣言〟通り、水野さち子候補に10万票差をつけて圧勝した

【「災害の教訓、福島の新しいブランドに」】
 「皆様こんにちは。今日から始まる参議院選挙。福島県選挙区より自民党公認、公明党推薦で立候補させていただきました森まさ子でございます。どうぞよろしくお願い致します。
 選挙戦初日の演説を、このフルーツライン、あづま果樹園をはじめとした果樹園の皆様方のフルーツラインでさせていただきます事を本当にうれしく思います。わたくしは福島県に生まれ、福島県で育ち、福島県の美味しいモモ、サクランボ、美味しい果物、美味しい農作物いっぱい食べて育って参りました。この福島県を愛しています。福島県の復興のために、皆様に12年前国会に送っていただいてから、8年前のあの大震災の時から働いて参りました。
 福島県の復興を進める。わたくしは3つの約束をさせていただいております。1つは『復興の前進』です。2つ目は『生活の安心』です。そして3つ目は『復興のその先の未来』です。
 まず『復興の前進』。あと2年を切った復興庁の期限。新しい後継組織を必ずつくって参ります。
 いま安倍総理が御着きになりました。ありがとうございます。安倍総理にはまず、あづま果樹園さんの美味しいモモを召し上がっていただこうと思います。どうぞよろしく、お願いを致します。
 総理、美味しかったですか?美味しいモモを召し上がっていただきました総理、ありがとうございます。総理が御出でになりましたが、演説の続きをさせていただきます。
 先ほど3つの約束。1つ目は『復興の前進』。2つ目は『生活の安心』。そして3つ目は『復興のその先の未来』でございます。
 まず1つ目の『復興の前進』。あと2年、復興庁の期限。その後継組織を必ずつくります。総理が約束してくださいました。問題はその中身。しっかりとわたくし自民党復興加速化副本部長として、果樹園の皆様、福島の農業者の皆様、すべての皆様のご要望をしっかり入れて福島県の復興を進めて参ります。担当大臣を置いて、しっかりと予算を獲得して参りたいと思います。そして、第一原発、第二原発の廃炉。福島県内全基廃炉をめざして、しっかりと頑張って参りたいと思います。
 2つ目が『生活の安心』です。年金、医療、介護の安心を守って参ります。少子高齢化社会において、人口減少にしっかりと向き合い、女性の輝ける社会、女性活躍とともに、子どもを産み育てながら仕事を両立出来る。そんな福島県に、全国の課題最先端解決地域にして参りたいと思います。少子化担当大臣の経験をさせていただいた、この知識、経験、人脈を生かして、この福島県をしっかりと前へ進めて参りたいと思っています。そして高齢者の皆様の老後の安心を守ります。子どもたちの教育、幼児教育の無償化を実現致しました。3歳から5歳、すべて無料になります。わたくしが大臣時代に『第3子の無料』を実現し、幼児教育の無償化の一歩を始めました。ようやく実現をし、『高等教育の無償化』まで進めて参りたい。0歳からの子どもの非認知能力の教育、これからの次世代型の未来社会において生きる力を持った子どもたちを育て、この福島県の担い手を育成して参ります。
 3つ目が『復興のその先の未来』です。
 風評被害を払拭し、農業の継続補助金を確保し、農林水産業、すべての産業をしっかりと復興を推し進めた、その先の未来には、福島県を必ず、世界に輝く地域に致して参ります。災害を被ったわが県だからこそ、防災の知識、教訓、経験を活かして、全国の災害、世界の災害に貢献出来る、そう思っております。日本人で初めてエマージェンシーマネジャー、国際危機管理士の資格を取得し、世界大会を福島に誘致をしたいと思っています。災害の技術、災害を乗り越える私たちの絆を世界中にアピールし、福島の新しいブランドにしていきたいと思っています。
 そんな夢を実現させるために、このたびの選挙、大変厳しい戦いをしておりますが、こんにちまで支えて頂いた皆様に心から感謝をするとともに、この戦い、最後まで共に戦い抜かさせて頂き、必ずこの参議院福島県選挙区の自民党の議席を守り通す。その覚悟でございます。ありがとうございます。最後の最後まで全力で、死ぬ気で戦って参りますので、どうぞ皆様方の最後までの御支援をよろしくお願いを致します。どうぞよろしくお願い致します」
(公示日の7月4日、福島県福島市の果樹園で行われた演説より)

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森大臣が自身のホームページに掲載している後援会通信「もりもり新聞」。ここでも「子ども被災者支援法」の制定に奔走した様子が強調されている

【「弱い人を助けるために法はある」】
 もはや「自主避難者支援」など全く語られない。選挙期間中に福島市内で行われた個人演説会でも「震災当時は野党だったから県民の皆様をお守り出来ない」、「私は風評被害の専門家。風評被害は今が一番きつい」などと訴えた。しかし、残念ながら森大臣の言う「3・11の教訓」は生かされず、今回の「10・12水害」では福島県内だけで30人以上が亡くなった。
 森大臣は1日、法務省職員を前に「国民の声を聴きながら国民の目線に立って政策課題に取り組んでほしい」などと訓示した。また、地元紙・福島民友のインタビューにも応じ「困っている人、弱い人を助けるために法はある。正義の実現に対する疑問や不安を払拭するのが法相の務めだ。国民に信頼していただけるよう謙虚に、真摯に務めたい」、「初心に帰り、国民のために責任を果たす。弁護士、国会議員の経験を法務行政に生かしたい。児童虐待の防止や子どもの貧困問題に力を入れていく。子どもの貧困の要因は特にシングルマザー、ひとり親家庭の生活水準にある。離婚した場合に養育費が支払われない人が多いのが現実だ。問題点に気が付きやすい女性の立場から改善に取り組む」などと答えている。
 福島民報には「身の引き締まる思いだ。国家、国民のために謙虚に、真摯に務めて参りたい」、「法の適正な執行に目を行き届かせ、時代の流れに沿った法改正によって、消費者を守る法務行政を前に進めたい。国会議員になってから児童虐待や養育費の不払いなどの問題に取り組んできた経緯を踏まえ、女性と子どもの人権を守っていきたい」と語っている。
 森大臣の言う「女性と子ども」に原発避難者は含まれないのだろうか。原発事故被害はもはや終わった話なのだろうか。自身のフェイスブックでは、法務大臣に任命された前後の様子を編集した動画まで公開している。まるで〝大臣就任記念動画〟のようだ。本当に弱者救済に取り組む気概があるのだろうか。法務大臣として、改めて「子ども被災者支援法」を読み返していただきたい。



(了)
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プロフィール

鈴木博喜

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(メールは hirokix39@gmail.com まで)
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