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【福島原発かながわ訴訟】闘いの場は東京高裁へ。12月20日控訴審開始~原告や支援者が横浜でシンポジウム「つらいが、原発事故を再び起こさぬためにも闘う」

2011年3月の原発事故で神奈川県内に避難した人々が国と東電を相手取って起こした「福島原発かながわ訴訟」(村田弘原告団長)の控訴審が12月20日、東京高裁で始まる。今年2月に横浜地裁で言い渡された判決を一定程度、評価しつつ、賠償額の低さや低線量被曝リスクの軽視など不十分な点が多いとして控訴していた。11日夜には原告や支援者が横浜市内に集まり、約1カ月後に再び始まる司法の場での闘いに改めて団結を確認した。争いの舞台は横浜地裁から東京高裁へ。低線量被曝による健康リスクと完全賠償を求めて、原告たちは再び法廷に立つ。
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【「司法の場で闘う他に手段無い」】
 「私たちは人生設計などを大きく狂わされたまま、被害が回復されないまま、来春には事故から9年になろうとしています。国の政策による〝第二の被害〟が続いているのです。それが典型的に表れているのが区域外避難者(いわゆる〝自主避難者〟)への住宅無償提供打ち切りであり、国家公務員宿舎から退去しない避難者への家賃2倍請求、追い出し訴訟です。住まいは生活の根幹なのです。出来る限り訴えてきたつもりですが、今なお継続している被害の深さを横浜地裁の裁判官には理解してもらえていません」
 原告団長の村田弘さん(福島県南相馬市小高区から神奈川県横浜市に避難継続中)は怒りを押し殺すように話した。横浜地裁判決は確かに、国や東電の責任を認め、中間指針を上回る賠償額を認めた。しかし、避難指示の有無による格差が依然として大きいなど、課題も残った。
 「日本はなんて、人権や人命をお金に換算する時の金額が安いのだろう。判決文を読みながらそう思いました。帰還困難区域からの避難者に対する認容額は1500万円です。金額の根拠になっているのは交通事故に対する損害賠償。交通事故で一家の中心になっている人が亡くなった場合は1500万円なんです。それを引き合いに出して、帰還困難区域は1500万円が相当だと判決文に書いています。本当にそれで良いのでしょうか。さらに、区域外避難者に対する賠償金は30万円ですよ。これで良いと考えている司法が私には信じられません。被害の大きさは、こんな金額では表せないはずです。とても理解出来ないし、納得出来ません」
 控訴審で地裁判決を乗り越えられる自信など無い。しかし、司法の場で争う以外に方法は無い。
 「あらゆる知恵を絞って立証して来て出されたのがこの判決です。これを破るのはなかなか大変だなという想いがしています。しかし、これが定着するという事は『これだけの事故を起こしても10年経てば皆おとなしくなるんだ』という新しい〝安全神話〟をつくらせる元になってしまうのではないかと思うんです。少なくとも10倍以上の全うな賠償を獲得しない限り、国や東電は反省しないのではないでしょうか。難しいけれど、それを目指して高裁で被害を訴え続けていきたいと考えています。国や東電の姿勢が変わらないのであれば、司法の場で闘うしか他に手段がありません」
 村田さんは自らに言い聞かせるように言った。
 「これを認めてしまったら、必ず将来、同じ事が起きますよ。私たちが味わった想いを、他の人には味わわせたくないのです。その一点で、つらいですけど、命ある限り頑張っていかなきゃいけないなと考えています」

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原告団長の村田弘さん。シンポジウムでは「これを認めてしまったら、必ず将来、同じ事が起きますよ。私たちが味わった想いを、他の人には味わわせたくないのです。その一点で、つらいですけど、命ある限り頑張っていかなきゃいけないなと考えています」と語った=横浜市のかながわ県民センター

【「避難は命守る行動、損害は共通だ」】
 シンポジウムでは、弁護団事務局長の黒澤知弘弁護士が横浜地裁判決の問題点と控訴審の展望について話した。
 「かながわ訴訟は2013年9月11日、横浜地裁に提訴しました。求めているのは①完全な賠償②国や東電の法的責任、です。そのために『避難慰謝料』、『ふるさと喪失慰謝料』を共に認めるべきだと主張して来ました。それに対し、横浜地裁判決では175人のうち152人に対する損害賠償を認めましたが金額は十分ではありません。原発事故当時、福島健在に居なかった、生まれていなかった、ADRなどによる既払い金額が認容額を上回っていたなどの理由で23人が請求を棄却されました」
 黒澤弁護士は、地裁判決のポイントを①国の国家賠償責任が認められたか②原告に対する慰謝料金額は十分か③慰謝料の前提として低線量被曝の健康影響がきちんと認定されているか。国の法的責任を判断する前提として被曝リスクを軽視していないか─に分けて解説。横浜地裁判決は「福島第一原発の敷地高を超える津波の到来を予見すべき義務があり、かつ、予見が可能であったと認められる」などとして、国の法的責任を認めている。
 慰謝料の金額に関しては、黒澤弁護士は「他の集団訴訟と比べると比較的高水準。中間指針などは超えて前進した」と一定の評価をしている。「一方で、『帰還困難区域』、「居住制限区域」、『避難指示解除準備区域』、そして『避難指示区域外』の間の不合理な格差を埋めきれていない。避難指示区域外での被害が軽視されて避難指示区域との金額の差が大きい。控訴審では、避難指示の有無に関わらず、被曝影響や生活基盤の喪失、地域コミュニティの喪失という点で被害は共通していると立証していきたい」と語った。
 弁護団は「被曝の影響」を重視している。「控訴審では、今まで以上に強調していかなければいけないと考えている」と黒澤弁護士。「被曝影響に関する裁判所の理解が不十分。『被曝によって生命・身体の危険が現実化する事を避けるために回避行動としての避難』、『(特に子どもの)命や健康を守るための行動』という理解がなされていないのではないか。その意味では本来、避難指示の有無に関わらず被害は共通のはず。一定期間のひなんによって生活基盤が失われるという被害も共通なはず。それなのに、避難指示の有無で差がついてしまっている。横浜地裁判決は原告の主張に正面から応えていない」と強調した。

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「控訴審では、今まで以上に被曝の健康影響を強調していかなければいけない」と強調した黒澤知弘弁護士。「避難指示の有無に関わらず、被曝影響や生活基盤の喪失、地域コミュニティの喪失という点で被害は共通している」

【「被曝影響を正面から判断せず失望」】
 控訴審に臨むのは59世帯(1世帯のみ敗訴確定)。7月24日付で東京高等裁判所に提出された「控訴理由書」は、A4判で104ページに及ぶ。
 大津波の予見可能性と過酷事故を回避出来た可能性について、「『建屋の水密化』等の措置が講じられていれば、本件津波においてタービン建屋等への浸水を防ぎ、全電源信喪失に陥ることを回避することは十分に可能だった」などと主張。
 原告たちが被った損害の認定に関しては、「『ふるさと喪失慰謝料』と『避難慰謝料』を区別することなく慰謝料を一括して算定しており、特に一審原告らに生じた避難生活に伴う精神的苦痛を十分に評価していないという結果を招いている」、「避難の継続中にも継時的に権利侵害及び損害が発生していることを認め、『ふるさとの喪失・生活破壊』に対する慰謝料にとどまらず、避難の継続期間に応じた精神的苦痛も正当に評価し算定されるべき」などと求めている。
 放射線被曝については「政府の避難指示の基準となっている年間20ミリシーベルトの被ばく線量を下回った場合でも、なお被ばくの健康影響は認められ、避難行動に法的相当性があるといえるのか、あるいは、この場合、被ばくの健康影響は無視できる程度であり、避難行動は本件事故との間に法的相当性を認めることができないのかが問われる」と定義。
 横浜地裁判決を「科学的知見に基づく判断を基本的に放棄しており、その結果、避難の法的相当性の判断について、すべて社会通念に委ねてしまっている」、「避難の相当性というのはまさに法的判断(規範的判断)であり、こうした客観的指標のない裁判所のさじ加減次第という手法が、法的判断とはほど遠いものであることは明らか」などと批判している。「放射線の健康影響に関して正面から判断することをしなかったものであり、かかる原判決の姿勢には一審原告らは失望を禁じ得ないし、極めて不当であると断ぜざるを得ない」。
 また、こうも論じている。
 「固形がんにしきい値は観念されないとすれば、20ミリシーベルトを下回る被ばく線量であっても、将来生命の危機を含む重篤な症状を招来する危険を認めることができるのであり、避難指示等対象区域外から避難した一審原告らの避難の相当性は肯定される」
 控訴審の第1回口頭弁論は12月20日14時、東京高裁101号法廷(白石哲裁判長)で開かれる。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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