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【北塩原村長選】金銭不祥事も百条委もどこ吹く風。現職が圧勝で三選~「この村は変わらないのか…」。完敗だった〝コンビニのおばちゃん〟

任期満了に伴う福島県・北塩原村長選挙は28日、投開票され、現職の小椋敏一氏(68)が1069票で三選を果たした。次点は前村議の遠藤和夫氏(61)で723票。〝コンビニのおばちゃん〟伊関明子氏(61)は175票で完敗だった。小椋村長の金銭不祥事、それを追及出来ない村議会の百条委員会(8月4日号参照)を受けて「村政の透明化」、「観光地として防災・減災対策の充実」などを訴えたが「村内にそびえる〝ベルリンの壁〟」は想像以上に厚く、高かった。なお投票率は80.67%で、8年前(前回は無投票)と比べて9.73ポイント減。「この村は変わらないのか…」。伊関さんは肩を落とした。


【「批判票を重く受け止めて」】
 午後9時すぎ。落選が決まると、自宅近くの事務所で「えー」と声をあげた。得票率8.9%。福島県知事選挙(2014年10月)での村内での得票数(374票)を大きく下回り、「この村は変わらないのか…」と肩を落とした。「正直、もう少し投票してもらえると思っていた」とも。有効投票の10%にわずかに満たなかったため、供託金(50万円)は没収される。開票立会人を務めた夫の和郎さんも「供託金のラインは超えると思ったが…」と落胆の色が濃かった。
 「家族を除けば、172人が私に村政を託してくれた。これはすごい応援団です。遠藤さんの得票を加えれば、898もの批判票が集まったことになる。小椋村長はこの現実を重く受け止めて欲しい」。地元紙記者のインタビューにこう答えた。
 選挙戦を通じて、改めて村の現状を知ることが出来た。村政への不満を多く耳にした。村政に失望した人からは「伊関さんみたいな人が村長になってくれたら村を出て行かないのになあ」と声を掛けられた。村長選挙を「村民の最後の希望」と位置付けて臨んだが、村民が抱いている不満がそのまま投票行動に結びつかないのもまた、この村の現実だった。「村民の支持を得てしまったのだから、これまでよりもっと酷い村政になるかもしれない」。伊関さんは危惧する。


落選が決まり、地元紙記者のインタビューを受ける伊関さん。「この村は変わらないのか」と肩を落とした=福島県耶麻郡北塩原村桧原

【「観光客に配慮しながら演説」】
 後援会も選挙はがきも無し。選挙カー1台、夫婦二人三脚での選挙戦だった。観光地・裏磐梯のコンビニ経営者らしく、マイクを握っての選挙活動は午前10時を過ぎてから始めた。「だって、村に遊びに来てくれたお客さんたちが宿をチェックアウトするじゃない。百条委員会だとか村役場に防災課が無いとか、そんな時に聞かされるのは嫌でしょ」。2年前の県知事選挙後にマイカーのタイヤをパンクさせられたこと、告示日の未明にまで電話がかかってきて「今から立候補を取り下げて内堀(雅雄現知事)につけ」と迫られたことなど、自身が味わってきた「選挙の暗部」も、観光客が一番少ない時間帯を選んで口にするように努めた。
 他の2陣営は何台もの選挙カーを連ね、大音量で名前を連呼した。伊関さんはペンション周辺では声のトーンを下げ、自身の名前より「お騒がせしております」と何度も口にした。夕食の時間帯も同様だった。村長選挙に要した費用は供託金を含めて約100万円。「金をかけなくても村長選挙を戦えることを示したい。選挙のハードルを下げたい」という想いがあったが、残念ながら豊富な資金力や組織力の前に歯が立たなかった。
 「義理とか人情とかではなく、村政を考えて一票を投じてください」。何度も訴えたが、村民は長年のしがらみという呪縛を解くことは出来なかった。村内では、選挙に合わせるような公共工事が複数個所で行われている。村民の生活は、どこかで村役場とつながっているのが小さな村の現実だ。


後援会も選対本部もない選挙戦。選挙カー1台、夫婦二人三脚で村内を巡ったが、村民は金銭不祥事をうやむやにしたままの現職を選んだ

【高く、厚かった〝ベルリンの壁〟】
 選挙期間中、村民の1人が口にした「正義が通らない村」が現実になった。あくまで確証は無いが、他陣営にまつわる噂話が次々と耳に入ってきた。過去の選挙での金銭授受に関する話題は事欠かない。だからこそ「クリーンな選挙」、「村政の見える化」を掲げた。以前、行政区長として共に動いた男性は「ミニFM局の開設など、伊関さんは村を良くしようと一生懸命に考えてくれているが、村民は村政に関心が無い。村政懇談会を開いても集まらない」。別の村民も言う。「結局、百条委員会も公約も関係ないんだ。選挙という名の別のイベントをやっていた感じだった」。
 妻を支えてきた夫の和郎さんは「〝ベルリンの壁〟は高く、厚かったね」とねぎらった。それまで気丈に振舞っていた明子さんだったが、「申し訳ございません」と両手で顔を覆った。涙があふれてきた。こうして〝コンビニのおばちゃん〟の選挙は終わった。両腕は日焼けで真っ赤になっていた。「日焼けを気にするなんて、農作業の手を休めて聴いてくれる方に失礼だからね」。
 今後は一民間人として、村政に物申していく。選挙戦の疲れを癒す間もないまま、コンビニ経営者としての多忙な日々に戻る。


(了)
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鈴木博喜

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