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【台風19号水害】体の良い追い出し? 郡山市が「25日で避難所終了」を決定。いわき市なども「無理に追い出さないが年内閉鎖を目標に支援続ける」。避難者を路頭に迷わすな!

「10・12水害」から10週間が過ぎた。福島県の集計では12日現在、5市で20カ所の避難所を開設。依然として433人が身を寄せているが、郡山市は16日、市内8カ所の避難所を今月25日をもって「終了」させる事を正式に決めた。市の担当者は「無理矢理追い出す事はしない」と話すが、いわき市や本宮市も「年内閉鎖」を目標に掲げており、「早く避難所を出ろ」のプレッシャーが被災者を覆う。あと2週間で新年。避難所では「自宅の修繕が終わるまでは居させて欲しい」との声も聞かれた。〝追い出し〟で水害被災者が路頭に迷うような事態は絶対にあってはならない。
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【郡山市「食事の手配も難しい」】
 「市内の避難所を今月25日で終了する」
 16日午後に開かれた「災害対策本部会議」で、水害発生以来、被災者が身を寄せている避難所を閉鎖する時期が具体的に示された。
 郡山市防災危機管理課によると16日朝現在、安積総合学習センターなど市内8カ所の避難所で寝泊まりをしている被災者は依然として55世帯90人いる。各避難所には既に、「避難所の生活が長期化し、寒さも一段と厳しくなってまいりました」、「皆様の居住先の確保の状況を踏まえまして、令和元年12月下旬を目安に避難所を解消したいと思います」との「お知らせ」が避難所に貼り出されていた。表現は柔らかいが、要は「避難所を閉鎖したいから早く新しい住まいを決めてください」という事だ。
 「お知らせ」では、「避難所解消」の理由として「避難者の皆様の生活環境の改善、健康保持等の観点」の部分が赤い字で強調されていた。しかし、これは体の良い〝避難者追い出し〟ではないのか。取材に対し、郡山市保健福祉部の担当者は「『追い出し』ではありませんし、『閉鎖』という表現も使っていません。25日までに避難所を『終了』するという事です」と否定した。
 「避難所への配食を委託している業者が『26日以降は年末年始で食事の用意が難しい』という事もあり、25日までに終了しようという事になりました。これまでも避難所での個別相談を続けており、ほとんどの方が25日までに新しい住まいに移れる見通しが立っています。先の見えていない方はひとケタにすぎません。もちろん、25日までに新しい住まいを確保出来ない方がいらっしゃる場合には、無理矢理追い出すような事はしません。何らかの形で新たな〝避難所〟を用意する事になると思います。これからもていねいに相談に応じながら、25日までに第二のステップアップをしていただきたいと考えています」

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今月25日で避難所を閉鎖する事について、郡山市は「26日以降の食事の手配が難しい事も要因の1つ」と説明するが、それが期限を区切る理由だとしたら本末転倒ではないのか

【いわき市「追い出さぬが年内閉鎖目指す」】
 もちろん、避難所での生活が長期化する事が被災者にとって最良の形であるなどとは誰も考えないだろう。3カ所に154人が身を寄せているいわき市も、具体的な時期こそ明確には示していないが、年内の避難所閉鎖を目指しているという意味では郡山市と同じだ。
 「あくまで目標ですが、年内の避難所集約・閉鎖を目指して支援を続けていく方針です。12月市議会でも保健福祉部長がそのように答弁しています」。いわき市保健福祉課の担当者はそう話す。日に日に減っているとはいえ、まだ154人もの市民が市内3カ所の避難所(中央台公民館、内郷コミュニティセンター、好間公民館)で寝泊まりをしているのに、なぜ期限を区切るのか。なぜ「年内」にこだわるのか。その点について、保険福祉課の担当者は次のように説明した。
 「避難所では無く、新たな住まいで新しい年を迎えて欲しいという想いがあります。また、寒さが厳しくなる中で感染症対策の意味合いもあるのです。避難所で集団感染が発生しないとも限りません。そういう意味で、出来るだけ年内に新しい住まいに移っていただきたいのです。それでも、どうしても新たな住まいに移れない方が残ってしまう可能性はあります。ですので、あくまで目標であって、期限を区切って追い出すような事はしません」
 いわき市中央台公民館では10月下旬、ノロウイルスの集団感染が発生している。
 担当者によると、避難所から出られない被災者には次のようなケースがあるという。
 ①生活圏や職場との距離を考え、エリアを限定してアパートなどを探している
 ②子どもの学区から出たくないとの考えから行政が提示する物件とマッチングしない
 ③アパートが仮に見つかっていても、家財道具をそろえる費用を捻出できない
 いわき市は「住み慣れた自宅が水没したショックが大きく、気持ちの整理がつかず再建への一歩を踏み出せない被災者も多い」として、不動産業者を避難所に招いて相談会を続けている。物件探しのエリを限定してしまう傾向に関しては「『わがまま』とは思わないですが、一方で避難所を出られていないの現実。このまま避難所での生活を当面続けるか、ご自身の落ち着いた空間を確保するか、どちらがよい良いのか考えて欲しいです」と担当者は話す。
 本宮市は今月1日から、避難所を「あぶくま憩の家」1カ所に集約。14日の段階で15人が身を寄せている。今後について担当者は「年内で区切れるものでは無いので、被災者の皆さんの状況を見ながらです。もちろん追い出すような事はしません」と話した。26日には皇族の訪問が計画されている。

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避難所に身を寄せる被災者は決してわがままで残っているわけでは無い。避難所では「親族が借りた公営住宅があまりに汚くて閉口した」、「工務店が多忙で自宅の修繕が終わるのが来春になりそう。それまではここに居させて欲しい」との声を複数聴いた=福島県伊達市の「梁川寿健康センター」

【伊達市「年内閉鎖など難しい」】
 23世帯51人が避難所での生活を続けている伊達市。消防防災課の担当者は「いつまでも避難所で生活するのが良いとは思いませんが、かといって年内で閉鎖するというのも難しいです。場合によっては2月頃まで開設する事になるのではないでしょうか」と話した。「アパートなど物件は十分にありますが、入居にあたっては家財道具をご自身で用意していただかなければなりません。布団も暖房器具も何も無い部屋で生活を始めるなんて無理ですよね」。
 阿武急・やながわ希望の森公園前駅近くの「梁川寿健康センター」では、70代の女性が「『環境が整うまでは避難所に居て良いですよ』と市の職員さんが言ってくれているので助かりますが、ここ数日で避難所を出て行く人がさらに増えたので何だか落ち着か無いです」と話した。
 伊達市梁川町にある女性の自宅は1階部分が完全に水没。寝具も家電製品も全てを失った。罹災証明は「大規模半壊」だった。工務店に修繕を依頼しているが「あちらこちらから依頼があるようで、私の家が住めるようになるのは3月頃になるようです。見積もりでは1000万円かかるという事でした。消費税だけで100万円でしょ?もう目が回ります。ここは暖かいしお風呂もある。申し訳ないですが、自宅の修繕が終わるまではこちらでお世話になります」と恐縮する。
 もちろん、市営住宅への入居も考えなかったわけでは無い。「でも実際に入居した人の話では、カギが錆びていて開かない、畳もふすまもボロボロ、ガラス窓にもヒビ、お風呂も汚い状態だったそうです。それだったら、家に住めるようになるまでここに置いて欲しいと思いました」。市営住宅の劣悪さに関しては、同じ避難所の別の女性も「親族が入居しましたが、あまりに汚くてまずは掃除が必要でした。それに家財道具も何にも無いですしね。大変でした」と話している。
 水害発生から10週間が過ぎ、あと2週間で新年。しかし、被災者にはあまりに厳しい年越しとなりそうだ。「早く避難所を出ろ」のプレッシャーが被災者を覆う。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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