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【原発避難者から住まいを奪うな】届かぬ避難当事者の叫び、耳を傾けぬ福島県の内堀知事。叫んでも頭を下げても方針変えぬ福島県「追い出し訴訟も家賃2倍請求もやめない」

2011年に起きた原発事故から8年9カ月が過ぎ、原発避難者たちの「住まいを奪うな」という叫び声がかき消されている。21日に東京国際フォーラムで行われた「ふくしま大交流フェスタ2019」では、今年も避難者や支援者たちが福島県の内堀雅雄知事に直接、訴えたが知事は無反応。25日には、避難者団体と福島県職員が話し合ったものの、福島県は「追い出し訴訟も家賃2倍請求もやめない」と改めて拒んだ。来年3月で原発事故から丸9年。聖火リレーと五輪開催でますます、原発避難者の小さな声など内堀知事の耳には届かなくなりそうだ。
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【「避難者の追い出しはやめて!」】
 「内堀さん!待ってください!」
 今月21日に東京国際フォーラムで開かれた「ふくしま大交流フェスタ2019」。福島県の内堀雅雄知事とプロ野球・元ヤクルト監督の古田敦也氏のトークショーが終わり、ステージ裏に下がろうとする内堀知事に、「福島原発かながわ訴訟」原告団長を務める村田弘さん(77)=福島県南相馬市小高区から神奈川県横浜市への避難を継続中=が声をかけた。
 これを合図に、他の原発避難者や「福島原発かながわ訴訟を支援する会」(ふくかな)のメンバーなども立ち上がって声をあげた。「原発避難者の追い出しはやめて!」と書かれた紙を掲げる避難者の姿も。今年も結局、内堀知事は避難者団体との話し合いの場に一度も顔を出さなかった。何度申し入れても会おうとしない内堀知事に想いを伝えるには、こういう方法を取らざるを得ない。だから毎年、この時期に行われるイベントでこうやって直接行動を続けているのだ。
 当事者の話を直接聞く事もせず、内堀知事は避難指示が出なかった区域からの避難者(いわゆる〝自主避難者〟)への住宅無償提供を打ち切り、家賃補助制度も2年間のみ。そしていよいよ、国家公務員宿舎への入居を続ける5世帯に対し、退去とこれまでの家賃支払いを求める訴訟を起こす。過去には、避難当事者が〝直訴状〟を手に福島県庁を訪れた事もあったが、その時も内堀知事は直接受け取らず、担当課の職員が受け取った。
 村田さんたちの声をかき消すように、ステージでは女性アナウンサーが次の予定を紹介していた。内堀知事は例年通り、何ごとも無かったようにステージ裏に下がって行った。古田氏とのトークショーでは、こんな事も言って古田氏を喜ばせた。
 「東京五輪で野球の試合会場となっている福島市の県営あづま球場に関して、まだまだ直して欲しいという声を監督や選手からいただいている。ギリギリまでベストに近い形まで直していきたい」
 野球場は求めに応じていくらでも直せるのに原発避難者の要求には応じない。内堀知事が何を優先して何を切り捨てているのか。それが如実に現れた言葉だった。

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(上)(中)原発事故による避難者や支援者たちは今年も、「住まいを奪うな」と内堀知事への直接抗議を行った。しかし、内堀知事は耳を傾けようとしない
(下)古田敦也氏とトークショーを行った福島県の内堀知事(左)。「東京五輪で野球の試合会場となっている福島市の県営あづま球場に関して、まだまだ直して欲しいという声を監督や選手からいただいている。ギリギリまでベストに近い形まで直していきたい」などと語った=21日午後、東京国際フォーラム

【避難者の〝直訴〟に沈黙した知事】
 内堀知事への抗議行動を終えた避難者たちは、「ふくしま大交流フェスタ2019」とは別会場で開かれた「ふくしま避難者交流会」にも参加。避難者と言葉を交わした内堀知事に改めて「住まいを奪うな」と訴えた。
 「避難の協同センター」代表世話人の松本徳子さん(福島県郡山市から神奈川県川崎市への避難を継続中)は、何度も何度も内堀知事に直接、訴えたという。
 「国家公務員宿舎に入居している〝自主避難者〟に対して家賃2倍請求などやめてくださいと言いました。内堀知事の力で、5人に対する提訴などやめてくださいとお願いしました。避難元の福島県が避難先に居る避難者をいじめるような事は恥ですよ、と言いました」
 「はい」でも「いいえ」でも無い内堀知事に、松本さんは繰り返し言葉をかけたという。「聞くだけでは駄目です。何とか言ってくださいと言いましたが知事は黙っていました。すぐ横に居た県職員は『努力します』と言っていましたが…。私はたぶん、鬼のような表情だったと思います」
 この点について、交流会終了後に取材に応じた福島県生活拠点課の担当者は「国家公務員宿舎に入居している〝自主避難者〟への『家賃2倍請求』も『提訴』もやめません。方針には全く変わりはありませんし、変わる事もありません。仮に職員が『努力する』と発言したとしたら、それは『提訴に至らないよう、ギリギリまで努力する』という意味ではないでしょうか。県にとっても提訴など本意ではありませんから」と答えた。
 松本さんだって、郡山に帰りたい想いはある。「確かに空間線量は下がりました。でも、土壌汚染はまだ解決していません」。そもそも、避難するもしないも、全ての選択を尊重するのが「子ども被災者支援法」ではなかったのか。
 「頑張るしかありませんね」。そう言って、松本さんは会場を後にした。

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(上)原発避難者の交流会で挨拶する内堀知事。こういう場には姿を見せるが、避難者団体との話し合いの場には一度も顔を出していない=21日午後、東京国際フォーラム
(中)内堀知事宛てに提出されたネット署名。「追い出し訴訟」や「家賃2倍請求」の中止を求めている
(下)この日の話し合いも平行線。福島県側は「国家公務員宿舎から退去しない限り、『追い出し訴訟』も『家賃2倍請求』もやめない」、「これまでもずっと努力しているが、避難者が電話にも出ないし会ってもくれない」との主張を繰り返した=25日午後、福島県福島市の中町会館

【県職員「避難者こそ会ってくれない」】
 25日午後には、「ひだんれん」(原発事故被害者団体連絡会)と福島県職員との18回目の話し合いが行われた。インターネット上で集めた内堀知事宛ての署名を提出。避難当事者たちは国家公務員宿舎に入居する〝自主避難者〟への「追い出し訴訟」や「家賃2倍請求」をやめるよう求めたが、1時間余の話し合いを終えても、福島県側の回答は、いずれの要求に対しても「NO」。「家賃や損害金を一括納付して避難者が全員退去すれば、こちらもやめる」と、あくまでも避難者が国家公務員宿舎から退去しない限り、家賃2倍請求も提訴もやめない考えを改めて示した。
 「(国家公務員宿舎を管理する)財務省が『2倍の家賃など要らない』と言えば、2倍請求をやめる条件の1つにはなり得る」という回答を福島県側から引き出したのが、唯一の〝収穫〟だったのかもしれない。
 しかし、実際には国も「福島県の考えを尊重する」という言い回しで避難者追い出しを一体となって進めている。それだけにこの日の福島県職員は強気一辺倒だった。特に〝追い出し訴訟〟の対象となっている東雲住宅(東京都江東区)の5世帯について、「新しい住まいを見つけるべく何度も電話や手紙などでアプローチをしているが、電話にも出てくれない」という主張を改めて繰り返した。
 ひだんれん側から「避難当事者が電話に出ないという理由で、緊急連絡先になっている親や兄弟に電話が入ったようだが、日中は仕事で電話に出られない人もいる。なぜそんな事をするのか」という声があがったが、県側の答えは「こちらからの連絡は一度や二度では無い。何度も連絡を試みている。そんなに電話にも出られないものか」というものだった。支援しようと努力して歩み寄っているのに避難者側がテーブルについてくれないじゃないか。行政ばかりを責めるな─。そんな想いが感じられた。
 「家賃2倍請求」に対して実際に支払っている避難者世帯はひとケタにすぎないが、なぜ支払えないのかという理由に関しても、県職員は「ぜひ、直接お聞きしたい」、「お聞きしないと分からない」と言い放って避難者たちを驚かせた。
 〝親分〟の内堀知事は決して避難者たちの前には姿を見せず、〝子分〟の職員たちに切り捨てさせる。この構図は2020年になっても変わらない。そしていよいよ、帰還困難区域も含めて避難指示が出されていた区域からの避難者に対する住宅供与も打ち切られる。年が明ければ5世帯の〝自主避難者〟が被告として法廷に立たされ、家賃2倍請求も退去するまで続く。3月にはJヴィレッジから聖火リレーが始まり、夏の五輪開催で国も福島県も「もはや原発事故後では無い」と世界にアピール。避難者の小さな声はかき消される。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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