【自主避難者から住まいを奪うな】避難者から逃げ続ける福島県知事~「それが現場主義?」。疑問呈する記者クラブにも〝内堀話法〟で的外れな回答
- 2016/08/30
- 12:57
「県庁全体として丁寧に対応する」。これが具体的に何を指しているか、理解できる人はいるだろうか。福島県は、政府の避難指示の無い〝自主避難者〟向け住宅の無償提供打ち切り(2017年3月末)を昨年6月に発表したが、当事者からの度重なる求めにも関わらず、内堀雅雄知事は一度も避難者との面会に応じていない。8月29日の定例会見では、「現場主義」を掲げながら避難者と会わない内堀知事の態度にとうとう記者クラブから疑問の声があがったが、冒頭の言葉を繰り返すばかり。あいまいで、的外れな回答で避難者を愚弄する〝内堀話法〟からは「丁寧に寄り添う」などという温かみは伝わって来ない。
【イエスでもノーでも無い〝内堀話法〟】
予定調和のやり取りに終始することの多い福島県庁の記者クラブだが、矛盾だらけの内堀雅雄知事の態度に業を煮やしたNHKの女性記者が手を挙げた。「知事は〝現場主義〟を掲げている。自主避難者と会う可能性はあるのか。会わないのはどういう理由なのか」。もっともな質問だった。
「いろんな日程に対応しておりますので、全部が全部会えるわけでは無い。それが現実です」。内堀知事は一般論を述べたうえで、「今回のこの問題(住宅無償提供打ち切り問題)、非常にですね、それぞれのお立場があって事情も異なります」と続けた。そして「(29日から始まった2回目の戸別訪問に)非常に多くの用務があって厳しい状況ですが福島県の職員を多く出してですね、一戸一戸丁寧に対応するという中で、県庁全体としてしっかりと対応していきたいと思います」が結論だった。答えになっていない。
イエスでもノーでも無い。これが〝内堀話法〟の特徴だ。それでいて、避難者とは絶対に会わない。25日の「第21回山形・新潟・福島三県知事会議」でも、山形県の吉村美栄子知事が住宅の無償提供延長を求めたにもかかわらず、態度を明確にしなかった。「住宅支援の延長を求める会」(山形県)が面会を求めていることに関して、定例会見で河北新報の男性記者が内堀知事の意向を質したが、やはり「県庁全体として丁寧に対応して参ります」との回答。男性記者はさらに質問を重ねたが「ただ今、申し上げた通りでございます」と、得意の〝内堀話法〟で返すばかりだった。結局、避難者と会う意思など無いのだ。

避難者からの面会要求を頑なに拒み続ける福島県の内堀雅雄知事=8月25日の「第21回山形・新潟・福島三県知事会議」で撮影
【風評払拭になる相手には時間を割く】
知事が多忙なことくらい、避難者だって承知の上だ。30分でも良い、当事者の話を聴いてから結論を出してほしい。そう考えるのは当然だ。山形県の吉村知事でさえ、8月18日の定例会見で「福島県におかれましては機会を設けて避難者の皆さんのお話を十分聴いていただければというふうに思っております」と語っている。
内堀知事は「福島県の復興や風評払拭に結びつく相手」との面会には、きちんと時間を割く。最近では、福島米のキャンペーンクルー「2016うつくしまライシーホワイト」や県北4温泉地の若旦那たちでつくる「ふくしま若旦那プロジェクト実行委員会」、エベレスト登頂を成功させたタレントなすびさんが好例だ。東京にも海外にも積極的に出張する。
一方、県外への避難者は被曝リスクを避けるために行動した人々だ。「風評払拭」に逆行する避難者を手厚く支援することは行政が被曝リスクの存在を公に認めることになる、と考えているのだろう。実際、住宅無償提供打ち切りや「新たな支援策」の所管部署である「生活拠点課」の幹部は、避難者との話し合いの場で「除染の効果で中通りは避難を要する状況ではなくなった。多くの人が普通に暮らしている」と何度も発言している。取材に対しても「帰って来ていただくのが基本的な考え方」と回答。2年間に限った家賃補助(最大月3万円)を軸とした支援策を公表しているが、避難者支援には消極的なのだ。

内堀知事との面会は、これまで複数の団体が福島県に申し入れている。しかし、一度も実現していない=5月30日、福島県庁で撮影
【無視され続ける面会要求】
「現場主義」を標榜し、避難者に寄り添うと言いながら〝内堀話法〟で逃げ回るのが福島県知事の正体。ある避難者は「内堀知事との面会を申し入れているが、1年くらい前から無視され続けている。『申し訳ないが会うことは出来ない』と答えれば良いのに、それすらしない」と憤る。昨年12月には、京都への自主避難者たちが知事との面会を求めて「直訴状」を手に知事室を訪れた。他にもいくつもの避難者団体が同様の申し入れをしてきたが、避難者から住まいを奪うという決断を一方的に下した内堀知事は、知事室の奥に引っ込んだまま。話し合いのテーブルにつこうとしない。
大型台風の接近を控え、内堀知事は定例会見で「念には念を入れて警戒して欲しい、危機感を持って欲しい」と県民に呼びかけた。しかし、それこそ「念には念を入れて」被曝リスクからわが子を守ろうとしている〝自主避難者〟には非常に冷淡だ。
今の住居に住み続けたい。避難者の願いはそんなに無理難題だろうか。なぜ来年3月末で打ち切られるのか、避難者は一度も福島県から論理的な説明を受けていない。「一方的に切り捨てないで当事者の話を聴いてから制度設計をして欲しい」。そんな声すら内堀知事の耳は届かない。受け入れ自治体の知事に出来る事が当時県の知事には出来ない愚。出来もしない「現場主義」なる旗を下ろすか、心を入れ替えて避難者との直接対話に応じるか。内堀知事は本当の意味で避難者に寄り添って欲しい。理不尽な打ち切りまで7カ月。
(了)
【イエスでもノーでも無い〝内堀話法〟】
予定調和のやり取りに終始することの多い福島県庁の記者クラブだが、矛盾だらけの内堀雅雄知事の態度に業を煮やしたNHKの女性記者が手を挙げた。「知事は〝現場主義〟を掲げている。自主避難者と会う可能性はあるのか。会わないのはどういう理由なのか」。もっともな質問だった。
「いろんな日程に対応しておりますので、全部が全部会えるわけでは無い。それが現実です」。内堀知事は一般論を述べたうえで、「今回のこの問題(住宅無償提供打ち切り問題)、非常にですね、それぞれのお立場があって事情も異なります」と続けた。そして「(29日から始まった2回目の戸別訪問に)非常に多くの用務があって厳しい状況ですが福島県の職員を多く出してですね、一戸一戸丁寧に対応するという中で、県庁全体としてしっかりと対応していきたいと思います」が結論だった。答えになっていない。
イエスでもノーでも無い。これが〝内堀話法〟の特徴だ。それでいて、避難者とは絶対に会わない。25日の「第21回山形・新潟・福島三県知事会議」でも、山形県の吉村美栄子知事が住宅の無償提供延長を求めたにもかかわらず、態度を明確にしなかった。「住宅支援の延長を求める会」(山形県)が面会を求めていることに関して、定例会見で河北新報の男性記者が内堀知事の意向を質したが、やはり「県庁全体として丁寧に対応して参ります」との回答。男性記者はさらに質問を重ねたが「ただ今、申し上げた通りでございます」と、得意の〝内堀話法〟で返すばかりだった。結局、避難者と会う意思など無いのだ。

避難者からの面会要求を頑なに拒み続ける福島県の内堀雅雄知事=8月25日の「第21回山形・新潟・福島三県知事会議」で撮影
【風評払拭になる相手には時間を割く】
知事が多忙なことくらい、避難者だって承知の上だ。30分でも良い、当事者の話を聴いてから結論を出してほしい。そう考えるのは当然だ。山形県の吉村知事でさえ、8月18日の定例会見で「福島県におかれましては機会を設けて避難者の皆さんのお話を十分聴いていただければというふうに思っております」と語っている。
内堀知事は「福島県の復興や風評払拭に結びつく相手」との面会には、きちんと時間を割く。最近では、福島米のキャンペーンクルー「2016うつくしまライシーホワイト」や県北4温泉地の若旦那たちでつくる「ふくしま若旦那プロジェクト実行委員会」、エベレスト登頂を成功させたタレントなすびさんが好例だ。東京にも海外にも積極的に出張する。
一方、県外への避難者は被曝リスクを避けるために行動した人々だ。「風評払拭」に逆行する避難者を手厚く支援することは行政が被曝リスクの存在を公に認めることになる、と考えているのだろう。実際、住宅無償提供打ち切りや「新たな支援策」の所管部署である「生活拠点課」の幹部は、避難者との話し合いの場で「除染の効果で中通りは避難を要する状況ではなくなった。多くの人が普通に暮らしている」と何度も発言している。取材に対しても「帰って来ていただくのが基本的な考え方」と回答。2年間に限った家賃補助(最大月3万円)を軸とした支援策を公表しているが、避難者支援には消極的なのだ。

内堀知事との面会は、これまで複数の団体が福島県に申し入れている。しかし、一度も実現していない=5月30日、福島県庁で撮影
【無視され続ける面会要求】
「現場主義」を標榜し、避難者に寄り添うと言いながら〝内堀話法〟で逃げ回るのが福島県知事の正体。ある避難者は「内堀知事との面会を申し入れているが、1年くらい前から無視され続けている。『申し訳ないが会うことは出来ない』と答えれば良いのに、それすらしない」と憤る。昨年12月には、京都への自主避難者たちが知事との面会を求めて「直訴状」を手に知事室を訪れた。他にもいくつもの避難者団体が同様の申し入れをしてきたが、避難者から住まいを奪うという決断を一方的に下した内堀知事は、知事室の奥に引っ込んだまま。話し合いのテーブルにつこうとしない。
大型台風の接近を控え、内堀知事は定例会見で「念には念を入れて警戒して欲しい、危機感を持って欲しい」と県民に呼びかけた。しかし、それこそ「念には念を入れて」被曝リスクからわが子を守ろうとしている〝自主避難者〟には非常に冷淡だ。
今の住居に住み続けたい。避難者の願いはそんなに無理難題だろうか。なぜ来年3月末で打ち切られるのか、避難者は一度も福島県から論理的な説明を受けていない。「一方的に切り捨てないで当事者の話を聴いてから制度設計をして欲しい」。そんな声すら内堀知事の耳は届かない。受け入れ自治体の知事に出来る事が当時県の知事には出来ない愚。出来もしない「現場主義」なる旗を下ろすか、心を入れ替えて避難者との直接対話に応じるか。内堀知事は本当の意味で避難者に寄り添って欲しい。理不尽な打ち切りまで7カ月。
(了)
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