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【台風19号水害】SL走る〝花見の名所〟に5000トン、伊達市職員を悩ませる災害ごみの山。「桜の季節までには片付かない!」 福島県全体では56万トン規模

台風19号に伴う「10・12水害」で発生した災害廃棄物の処理に福島県内の市町村が頭を悩まされている。福島県のまとめでは、今後の家屋解体分も含めて県全体で約56万トンに達する見込み。梁川町を中心に甚大な被害が生じた福島県伊達市は桜の名所として知られる「やながわ希望の森公園」内の駐車場4カ所に5000トンもの災害ごみを仮置きしているが、処理完了の時期は見通せず、春の「桜まつり」も開催出来るか分からない状況。最悪の場合、SLの線路沿いに山積みにされた災害ごみが無くなるのは今冬になりそうだという。
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【市民「まるで〝ごみ屋敷〟」】
 言葉を失う、とはこういう事を言うのだろう。想像をはるかに超える量だった。
 「まるで〝ごみ屋敷〟のようだから行ってごらん。すごい事になってるから」
 避難所取材で耳にした言葉がきっかけだった。阿武急・やながわ希望の森公園前駅から歩いて10分ほど。桜の季節には伊達市内外から多くの人が集まる「やながわ希望の森公園」(1985年4月開園)。「桜まつり」や夜間ライトアップも恒例となっているが本来、駐車場として使われているスペースには、「10・12水害」で泥水に浸かってしまった家財道具などが山積みにされている。冷蔵庫やテレビなどの電化製品や畳はもちろん、ドラムセットや40年近くの前の賞状まで。わずか3カ月前までは日常生活の一部としてあった物が、今や「災害廃棄物」となっている。
 車道沿いには線路が800メートルにわたって敷設されている。冬の期間は休みだが、4月から11月までは蒸気機関車「さくら1号」がゆっくりと走る。しかし、今は線路のすぐ横にまで災害ごみが置かれているので予定を早めて運休になった。3カ月もすればミニSLが走るはずだが、今年は果たして運行出来るかどうかも分からないという。森の入り口には2つの駐車場があるが、どちらにも膨大な量の災害ごみが山積みされている。
 「ここだけでは無いですよ。奥の駐車場にもまだあります」
 通りかかった男性が教えてくれたので森の中に入ってみる。ミニSL乗り場から10分ほど歩くと、確かに災害ごみの仮置き場がさらに2カ所あった。まるで津波被害に遭った街のよう。ありとあらゆる災害ごみが駐車場を覆い尽くしている。搬入は11月24日で終わっており、家庭ごみなどの不法投棄を監視するための防犯カメラが設置されている。これが、「予測されていろいろ言われていた事から比べると、まずまずに収まったという感じだが、それでも相当の被害が広範に及んでいる」(自民党・二階俊博幹事長)などと言われた台風被害の現実だった。

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「やながわ希望の森公園」の駐車場は「10・12水害」で生じた災害ごみであふれ返っている。例年、4月になるとミニSLが走るが、今年は運行も花見も出来るか分からないという=福島県伊達市梁川町字内山

【家屋解体でさらに増加か】
 「仮置きしている災害廃棄物は4カ所合わせて約5000トンです。全て梁川町で発生したものです。測る事が出来ないのであくまで概算ですが…」
 伊達市生活環境課の担当者が取材に応じた。「産廃業者でつくる『福島県産業資源循環協会』(福島市)にお願いしていますが、伊達市以外にも郡山市やいわき市など福島県内では災害廃棄物が発生しているので、決して搬出が順調に進んでいるとは言えないのが実情です。減ってはいますが、それほど劇的に減っているという事ではありません」。
 発災直後の10月14日から「希望の森」駐車場への仮置きを始めたが、市職員の予想をはるかに上回る速さで災害ごみが搬入されていった。「そこまでごみが増えるのか、と当時は胃が痛くなりました」と担当者。あっという間に4カ所の駐車場が満杯になった。搬入がひと段落したため搬入を11月24日で止めたが、実は再び災害廃棄物の大量発生が待ち構えているという。
 「今月6日から公費家屋解体の受付が始まりました。申請には罹災証明書だけで無く、建物の登記事項証明書など多くの書類を揃える必要があるので、実際に被災した市民の方々から申請があるのは少し先になると思われます(受付期間は3月末まで)。そこから業者を入札で選定したり発注したりするとなると、被災家屋を解体した廃棄物が『希望の森』に運び込まれるのは、早くても桜の花が散る頃になりそうです」
 現時点では候補地の1つにすぎず、家屋解体で生じた廃棄物が「希望の森」に運び込まれるとは正式決定していないが、他に仮置き出来る場所が無いのも現実。「そもそも『希望の森』に仮置きをしたのも、住宅街から離れていて近くに民家が無いなどの条件が揃っているのがそこしか無かったのです」(伊達市生活環境課)。
 森には、旧梁川町時代に姉妹都市となった北海道松前郡松前町から贈られた桜も多く植えられている。市内でも有数の「桜の名所」だが、管理する梁川総合支所の担当者は「現時点では何とも言えない。災害廃棄物が片付いて例年通りに『桜まつり』を実施したいですが、状況を注視するしか出来ないですね」と話すにとどまった。

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福島県生活環境部のまとめでは、大風19号に伴う災害廃棄物は県全体で約56万トンに達する見通し(家屋解体分推計も含む)。処理完了には2021年春までかかるもよう。伊達市では最終的に12万トンに達する見込みで、花見どころでは無くなりそうだ

【県「仮設焼却炉も活用」】
 福島県生活環境部は仕事納め前日の12月26日、「令和元年台風19号等に係る福島県災害廃棄物処理実行計画」を公表した。
 それによると、今後の家屋解体分も含め、県全体で発生する災害廃棄物は55万7800トンに達する見通し。
 市町村別ではいわき市が最も多く13万5710トン、伊達市は11万7630トン。以下、須賀川市約7万トン、相馬市約5万2000トン、本宮市約5万トン、石川町約3万3000トンと続く。被害が大きかった郡山市は1万8700トンと少ないが、これは「今後、発生するであろう家屋解体に伴う廃棄物量の推計が現時点では難しいので、県には片付けごみの実数だけを報告した」(郡山市3R推進課)事が原因。他の市町村は家屋解体数も推計した上で県に報告している。そのため、家屋解体の推移次第では、県全体の災害廃棄物量も増減する事になる。
 県は各市町村の一般廃棄物処理施設での処理を基本としつつ、民間産廃業者の処理施設なども活用しながら2021年4月末までに全ての処理を終える計画を立てている。
 相馬市や南相馬市、本宮市で発生した災害廃棄物のうち可燃性の廃棄物に関しては、環境省が原発事故後に設置した仮設焼却炉も活用する予定。南相馬市、浪江町、二本松市、葛尾村、飯舘村の仮設焼却炉で燃やす計画だが、福島県生活環境部の担当者は「具体的な日程は今後、調整して決めます。災害廃棄物を搬入する場合は放射性廃棄物とは混ぜず、その期間は災害廃棄物だけを燃やします。また、焼却灰は発生した市町村が引き取る事になっています」と説明している。
 また、福島県外に搬出して処理する場合には、原発事故による表面汚染密度などを測定するという。「受け入れ側の求めがあれば測って伝えますが、公表はしていません」という。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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