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借金取り立ての「浪花節選挙」と「アベ友」で得た大臣の座。森まさ子法務大臣は初心をお忘れか? 「被告自身が無罪を証明すべき」発言で改めて問われる資質

保釈中に出国し、レバノンで開いた会見で日本の刑事司法を批判したカルロズ・ゴーン被告に対し、反論会見で「潔白というのなら司法の場で無罪を証明すべきだ」と言い放った森まさ子法務大臣(参院議員、福島県いわき市)。SNS上で「本当に弁護士なのか?」、「法務大臣の資質はあるのか?」との声が一斉にあがった。幼少期の経験から「困っている人を助けたい」と弁護士を志し、安倍晋三首相の庇護の下で法務大臣にまで登りつめたが、就任当初から疑問視されていた「大臣の資質」が改めて揺らいでいる。2019年11月6日号に続いて、大臣の資質を再び問いたい。
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【「私を売り飛ばせば金返せる」】
 「困っている人を助けたい」
 森まさ子法務大臣の公式ホームページを開くと、真っ先に表示されるのがこの言葉だ。そして、こう続く。
 「幼い頃、取り立てに怯え困っていた私。あの時助けてくれた人のように、私も今、困っているあなたを助けたい」
 幼少の頃のエピソードは選挙のたびに語られ、福島では有名な話だ。地盤としている浜通りでは「〝お涙ちょうだい〟ばかりで中身が無い」との声さえ聞かれる。野党統一候補に圧勝した昨年7月の参院選でも〝浪花節〟は健在だった。福島市内で行われた個人演説会での発言を振り返りたい。
 「私は小さい頃、貧しい家庭に育ちまして、取り立てがあり、学校に行く事が出来ませんでした。いつもおうちにいました。取り立ての人が来るので、一番上の長女である私を売り飛ばせば借金が返せるなんて怖い事を言うので、学校に行けないんです。でも、学校の先生が迎えに来てくれて『大丈夫だよ、毎日迎えに来てあげる』と言ってくれました。進学もあきらめていました。義務教育が終わったら働かないといけないと」
 「父の給料は差し押さえられ、小さい妹2人はお腹をすかせて泣いていました。しかし、先生がおっしゃったんです。『教育を受けて、そしてしっかり働いて、親に恩返しをした方がずっと良いんだよ』。貧困の連鎖を断ち切るという事です。私は弁護士さんにも助けていただき、高校に進学する事が出来ました。奨学金をもらい、毎日働きながらです。教育を受けられない家庭のはずだった私が、その時教育を受けたという事でここに立っています。皆さんのためにお役に立てる。その仕事をいただいて社会に貢献する事が出来るのです」
 浪花節の効果もあったか、野党統一候補に10万票差をつけて圧勝。それだけでなく、前任者の不祥事で〝棚ぼた〟のように法務大臣の座が舞い込んできた。そして法務大臣就任してから約3カ月。森大臣は信じられない発言で世間を驚かせることになる。
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森まさ子法務大臣のホームページには、自身の生い立ちや弁護士を目指すまでがイラスト入りで紹介されている。昨夏の参院選の応援に駆け付けた三原じゅん子参院議員は「お互い生まれた境遇が似ている」と語った

【「『主張』と『証明』言い違えた」】
 「潔白というのなら(ゴーン被告自身が)司法の場で無罪を証明すべきだ」
 保釈中にプライベートジェットで出国し、レバノンに逃亡した日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン被告が日本時間8日22時から現地で記者会見を開いたのを受け、森大臣は9日午前0時すぎから臨時会見を開いた。そこで何と、そう述べたのだった。
 会見だけで無く、自身のツイッターでも「司法の場で正々堂々と無罪を証明すべきであります」と投稿。これには「法務大臣なんか務まるのか」と口にしていた福島の人々を驚かせただけでなく、法曹界から資質を問う声が次々とあがった。弁護士ドットコムニュースは【森法務大臣「無罪証明すべき」発言がトレンド入り 「ありえない」と波紋】とする記事を掲載。「刑事裁判では、被告人が有罪であることを検察官が証明しなければならず、被告人やその弁護人が無実であることを証明する責任はない」と大臣発言の問題点を指摘した。
 森大臣は9日16時すぎ、ツイッターに「無罪の『主張』と言うところを『証明』と言い違えてしまいました。謹んで訂正致します。記者の皆様に配布したコメント文面には〝わが国の法廷において『主張』すればよい〟と記載してましたが私が言い違えてしまいました。無罪推定の原則は当然重要な原則であり日本の司法もこの原則を遵守しております」と投稿した。あくまで言い間違いだと釈明、問題のツイートも削除した。
 しかし、郷原信郎弁護士は、ヤフーニュースに「森法務大臣は弁護士でもあるのに、『推定無罪の原則』という認識が全くないから、こういう発言をしてしまうのだろう。海外メディアは、こういう発言を、Minister of Justiceが行ったことに驚愕しているのではないか。刑事司法を所管している法務省のトップがこの有様だから、日本の刑事司法の改革は、国内だけでは実現できないということだろう」とコメント
 森大臣の釈明に対しても「これを『言い間違い』で済まそうとする法務大臣の下で、刑事司法が健全であるわけがない」、「『言い間違い』かどうかは、大した問題ではないと思う人もいるかもしれない。しかし、法務大臣が『推定無罪の原則』という、ゴーン氏から日本の刑事司法に関して指摘されていることをどう考えているのかに関わる重大な問題。発言の意図、ツイッターを訂正した意図を問い質すことが不可欠」と自身のツイッターで厳しく指摘した。

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現在は削除されている森大臣のツイート

【「子ども被災者支援法」も放置】
 ネット上では「本当に弁護士なのか?」とまで書かれた森大臣。「どん底の自分たちを救ってくれたヒーロー(弁護士)になりたい」と、東北大学法学部に進学。5回目の受験で司法試験に合格したのだった。
 1995年に弁護士登録。「消費者弁護は貧しい人を助けるので弁護士費用を十分にもらえず、圧倒的に数が足りていませんでした。それでも被害に遭って困っている人たちを他人事とは思えませんでした。経験を重ねていくうちに消費者弁護士の狭い世界では名前が知られるようになりました」とホームページに綴っている。
 しかし、原発事故避難者は「被害に遭って困っている人たち」では無かったのだろう。「子ども被災者支援法」を超党派で作ったものの、実効力あるものにしないまま今日に至っている。
 2017年9月には「取り立てに怯えた少女が大臣になった」(海竜社)と題した自著まで出している。「『貧困の子供時代』から『大臣』になるまで、あきらめずに努力し続けた半生をつづった一冊」として、12歳の頃、連帯保証人になった父親に対する取り立てが始まった事などを綴っている。「弁護士は人を助けることができる。それも腕力ではなく、知識で助ける」と法曹界への想いも。米留学を経て金融庁へ入庁。福島県知事選に出馬し落選、そして参議院議員へ。しかしどれだけ読んでも、なぜ安倍晋三首相が適任と判断したのかは分からない。
 参院選の応援に駆け付けた三原じゅん子参院議員(自民党女性局長)は、JR福島駅近くで行った街頭演説で「私は森まさ子先生と大変、生まれた境遇が似ておりました。年齢も同い年。幼少の頃、父親の仕事のトラブルで大変貧しい、そんな家庭の中で育ちました。そしてその時に、トラブルを抱えていた時に森まさ子先生を助けてくれたのは弁護士の先生だったそうです。お互い境遇が似ていて、そういう話を良くするようになって。先輩ですから、本当に私に政治の事を一から細かく教えてくれた。それが森まさ子先生です」と話した。個人演説会場にも顔を出し、森まさ子議員と抱き合って見せた。
 その三原議員も自身のホームページで幼い頃の話に触れている。「借金取取りのおじさん」が取り立てに来ているイラストを添えて。
 森大臣は今回、「被告自身が司法の場で無罪を証明せよ」と世界に向けて発信した。境遇が似ているという三原議員は、国会演説で野党に向かって「恥を知れ」と言い放った。〝アベ友〟ぶりや初心の忘れっぷりも、2人は良く似ているようだ。



(了)
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