記事一覧

【65カ月目の飯舘村はいま】汚染解消されぬ〝癒しの森〟、交流センターに並ぶ1400万円の彫像。避難指示解除まで半年。村民「不幸な現実をハコモノでごまかしている」

「放射能汚染という不幸な現実を、きれいなハコモノでごまかそうとしている」。飯舘村民の言葉は、避難指示解除(帰還困難区域を除く)を来春に控えた村の現状を的確に表していた。8月31日、村民の案内で台風一過の青空が広がる飯舘村を巡った。汚染という〝陰〟を、きらびやかな復興事業が覆い隠しているかのような村。飯舘村に本当に必要なのは、帰還促進や彫像や道の駅なのだろうか。10月の村長選挙で村民は菅野典雄村長を支持するのか。あと半年で避難指示が解除される。


【「MPの数値なんて信じていない」】
 「モニタリングポストの数値なんて信じていないから。調整してるんじゃないの?って思ってる」
 今年3月に再開された村内の入浴施設。避難先の福島市内から働きに来ている女性は、苦笑交じりに語った。施設の駐車場に設置されたモニタリングポスト(MP)の数値は0.270μSv/h。「でもね、少し移動したり、コケの生えてるような場所で測るとそんな数値ではないからね」。女性の自宅があった集落では、除染をしてもMPの数値が下がらないと話題になった。ある日突然、MPに「調整中」と書かれた紙が貼られた。すぐ横に新しいMPが設置された。
 お風呂では、仮設住宅や借り上げ住宅から送迎バスで訪れたお年寄りが汗を流していた。料金は無料。風呂につかり、酒を呑み、友人と談笑して再びバスで仮設住宅などに帰る。避難指示が解除されたら、元の自宅から通うのだろうか。女性は言う。「私の家なんて荒れ放題で解体してもらったわ。ハクビシンの糞尿もすごかったし。避難先も〝住めば都〟で5年もいれば慣れてくるしね。若い人たちは戻らないわよね」。
 入浴施設のある「村民の森あいの沢」は、広さ50ヘクタール。オートキャンプ場やバンガロー、あいの浮き橋、愛の句碑などが並ぶ〝癒しの森〟だった。浮橋のたもとから眺める景色は本当に素晴らしい。ここで何組ものカップルが愛を語り合ったのだろうか。しかし、手元の線量計は0.8~1.0μSv/h。高い所では1.7μSv/hを超えた。原発事故からもうすぐ5年6カ月になるが、残念ながら汚染は解消されていない。哀しいが、これが現実。しかし、菅野典雄村長は現実を直視せずに帰還促進施策を続々と展開している。






村役場も「癒しの一時がもてる公園」とPRしていた「村民の森あいの沢」。俳人の黛まどかさんが選んだ「愛の句」が石碑となって並んでいるが、残念ながら〝癒しの森〟の汚染は解消されていない=福島県相馬郡飯舘村深谷

【「彫刻作品で家族のつながり感じて」】
 村のメインストリートに8月13日にオープンした交流センター「ふれ愛館」。農林水産関係の国の交付金を活用し、総事業費は8億5000万円。旧公民館を解体し、ホールや視聴覚室、研修室やキッチンスタジオ、絵本のスペースを設けた。「村民の帰還に向けてライフラインなどを整備してきましたが、ここもその一つです。新しい村づくりの拠点施設として活用して欲しい」。藤井一彦公民館長は語る。
 センターの入り口にブロンズ像が一体、館内にも木像がいくつも展示されている。これが「女性自身」7月1日号で批判された彫刻家・重岡建治氏の作品群だ。村によると、購入費用は1436万4000円。ご丁寧に、館内には「重岡建治の世界」と題した小冊子まで置いてある。作品群のうち一体は、重岡氏からの寄贈だという。
 「菅野村長が視察などで訪れた公園で撮影した写真に、重岡さんの彫刻が写っていたようです。気に入って調べたら重岡さんの作品だったと。それでセンター建設を機に購入することになりました」と公民館長。村に高額の寄付をした篤志家から「心を病んでいる人が多い。村民の心のために使ってもらえないか」という要望があったことも購入を後押ししたという。
 「御批判はあると思いますが、芸術作品は生きる喜びを表すものです。原発事故でバラバラになってしまった家族のつながりや大切さを感じて欲しいですね」とも。「子どもたちのために使った方が良いのでは」と問うと、公民館長は「子どもたちに対しては精一杯やらせてもらっています」と答えた。2階に設けられた「絵本のかくれ家」も、その一つだそうだ。子どもたちが寝転がりながら、全国から寄贈された絵本を自由に読める。それは素晴らしい取り組みだ。汚染地でなければ。
 きれいなホールの窓から、高く積み上げられたフレコンバッグの山が見えた。最近、奈良県の子どもたちが村を訪れた際、ここで歌を披露したという。子どもたちを村へ戻し、他県の子どもたちも招く。そこにはきれいなハコモノと彫刻作品群。それが飯舘村の考える「復興」だった。線源から子どもたちを離すという発想は、残念ながら村役場には無いようだ。






(上)交流センターに展示されている重岡氏の彫刻。計1400万円余で購入した
(中)除染作業が行われている飯舘中学校。村は2018年4月に村内での授業を再開する計画を示している。
(下)蕨平地区に設置された仮設焼却炉は5月から稼働停止中。環境省によると10月にも除染廃棄物の焼却を再開するという

【村内授業再開へ除染中】
 菅野典雄村長は当初、2017年3月末の避難指示解除と同時に村内授業を再開させる目論見だったが、保護者らの反対を受け撤回。しかし延ばしたのは、わずか1年だけ。2018年4月には再開させる計画で、現在、飯舘中学校の除染作業が進められている。認定こども園と小中学校を飯舘中学校に集約する。学校敷地内はアスファルトをはがすことも含めて徹底的に除染する、というのが村議会での教育長の説明だ。しかし、仮に学校施設内の放射線量が下がったとしても、村内には放射線量の高い個所が多くある。また、子どもたちには避難先の学校で新たに友達をつくっている。その意味でも村内授業の強行には保護者の抵抗感は根強い。
 村への帰還を願う村民も確かにいる。進む住宅の新改築。村内を巡れば、足場の組まれた住宅を目にすることも少なくない。「狭い仮設住宅での生活はもう限界だよ」という声も耳にした。深谷地区では太陽光発電のためのパネルが設置され、復興拠点とするのだという。道の駅「までい館」の建設工事も始まる。それらの復興事業が、村の〝陰〟の部分を覆い隠そうとしているようにも見える。
 除染で生じた可燃性廃棄物を燃やすために蕨平地区の設置された仮設焼却炉は、5月から稼働が止まっている。環境省によると10月にも焼却を再開させる予定だという。その10月には村長選挙が行われる。2012年は無投票だったため、原発事故後、初めて村民の村政への審判が下される。現在、立候補を表明しているのは現職を含めて3人。村民は帰還促進村政を支持するのか。放射線防護の充実を選ぶのか。黒いフレコンバッグは、台風による大雨で水に浸かっていた。


(了)
スポンサーサイト

プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)

大手メディアが無視する「汚染」、「被曝」、「避難」を追い続けています。

福島取材にはコストがかかります。
往復の交通費と宿泊費だけで約2万円です。
よろしければ、ご支援をこちらまでお願い致します。

【ゆうちょ銀行 普通 店番098 口座番号0537346 鈴木博喜】

【じぶん銀行あいいろ支店 普通2460943 鈴木博喜
(銀行コード0039 支店番号106)】

https://www.facebook.com/taminokoe/

最新記事

最新コメント

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ニュース
34位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
時事
15位
アクセスランキングを見る>>

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ニュース
34位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
時事
15位
アクセスランキングを見る>>