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徹底した〝秘密主義〟のベールに包まれる聖火リレー。「ふくしま実行委」の議事録ほぼ全面黒塗り。背景に組織委の意向

〝復興五輪〟の名の下、福島県内26の市町村で3月26日から行われる聖火リレー。TOKIOなど著名人も走って震災や津波、原発事故からの〝復興〟をPRするが、ルートやランナー選定など議論の過程は徹底した〝秘密主義〟のベールに包まれている。本紙は福島県に実行委の議事録の開示を求めたが、福島県は「組織委から『お願い』されている」として、各委員の発言をほぼ全て黒塗りにして開示した。議事録には、委員にメモや資料の持ち帰りも禁じているくだりもある。将来の全開示も組織委の意向次第。果たして誰のための、何のための聖火リレーなのか。
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【「率直な意見交換損なう」】
 ほぼ黒塗りで開示されたのは、「東京2020オリンピック聖火リレーふくしま実行委員会」(以下、実行委)の第1回会議(2018年8月24日開催)から第8回会議(2020年1月23日開催)までの各回の議事録。
 A4判で83枚の文書が開示されたが、「審議内容のうち、東京2020オリンピック聖火リレーでの県内ルート案(ルート詳細を含む)、セレブレーション会場候補地、聖火ランナーの選定等に関する検討の経過および非公表の事項を類推できる内容」は「開示しない部分」として黒塗りにされた。
 そのため、どの回の議事録も、取材陣が退出を命じられるまでの冒頭部分(いわゆる〝頭撮り〟まで)の発言は開示されているものの、メディアを退出させた後の議論の中での各委員の発言はほとんどが黒塗り。誰がどんな発言をしたのか、聖火リレーのルートが最終決定されるまでにどのような候補が挙げられていたのか、聖火ランナーは他にどのような人やグループが候補となっていたのかなど、核心部分は全く分からない。
 別紙で示された「開示しない理由」は次の2点。
 ①「東京2020オリンピック聖火リレーの県内実施詳細等の審議、検討又は協議に関する情報であって、検討段階の情報を開示することにより、率直な意見交換若しくは意思決定の中立性が損なわれるおそれ、又は、不当に県民等に誤解や混乱を与えるおそれがあるため」
 ②「県の機関、国及び他の地方公共団体等が行う事務又は事業に関する情報であって、当該事務又は事業の性質上、開示することにより、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため」
 第1回会議では実行委の規約案も事務局から提示されている。しかし、規約第9条に「議事の内容及び資料は、非公開とする」と明記されているにもかかわらず、それに対する質問も異論も全く出ずに承認された。2018年11月16日に開かれた第2回会議以降は、会議終了後に配布資料を回収する事(会議次第や出席者名簿、座席票の持ち帰りは可)に加え、「情報管理の観点からメモ等もご遠慮くださいますよう、よろしくお願いいたします」と事務局が毎回注意している。

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これまで8回開かれ、聖火リレーのルートやランナー選考について話し合ってきた「東京2020オリンピック聖火リレーふくしま実行委員会」。しかし、具体的な議論の中身はベールに包まれたままだ=2020年1月23日、福島県庁で撮影

【行政文書も管理する組織委】
 実行委は、内堀雅雄知事を委員長に、福島県市長会や福島県町村会、福島県警本部、福島市消防本部、福島県体育協会、福島県教育委員会から1人ずつが出席して構成。福島県文化スポーツ局が事務局の業務を担っている。
 県文化スポーツ局オリンピックパラリンピック推進室(以下、オリパラ推進室)の佐藤隆広室長は、取材に対し「『公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会』(以下、組織委)が、全国の都道府県に対して、議論の過程は公表しないよう『お願い』していると聞いています。その『お願い』にどこまでの強制力があるかについては各都道府県の受け止め方にもよると思うが、全国統一で組織委がそのような『お願い』をしている以上、それに沿った対応をしようという事です。文書は特にいただいておりません。こちらから組織委に確認した結果です」と答えた。
 今後、各委員の具体的な発言など議論の中身が公表される可能性については、「大会が終わって、どのタイミングで全国的にオープンに出来るのか。そこも組織委に伺いたい。そこはきちんと確認しないといけないと思います。各都道府県バラバラに対応するのはいかがなものかと考えていますので」と話し、あくまで組織委の意向に今後も従う考えを示した。
 何から何まで、福島県は「組織委にお伺いを立てる」方針だが、実行委の開催費用は県が負担し、議事録などは行政文書に該当するとオリパラ推進室も認めている。行政文書であるならば、開示するか否かの決定が公益財団法人の意向に左右されるのはおかしい。その点について、佐藤室長は「各都道府県が実行委を設置している以上、対応は一律であるべきだと考えます」と答えるにとどまった。

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議事録の部分開示にあたり、福島県は黒塗りの理由を別紙で提示した。一方で、県の担当者は「議論の過程は公表しないよう組織委に『お願い』されている」と話し、組織委の意向が大きく影響している事を認めている

【「誰がどんな理由で決めたのか?」】
 内堀知事は第1回会議の冒頭、聖火リレーについて「参加」と「発信」をキーワードとして挙げ、「復興が着実に前進している姿、依然として様々な課題が山積している姿、こうした福島県の現状を正確に発信していく機会にしていきたい」と委員たちに語りかけている。
 しかし、昨年12月17日に公表された福島県内聖火リレーの順番や詳細なルートは、「復興が着実に前進している姿」を国内外にアピールする事ばかりに力点が置かれていた。当然、県民からは戸惑いの声もあがった。
 例えば浪江町は「福島ロボットテストフィールド・福島滑走路」を出発し、「福島水素エネルギー研究フィールド」でゴールする約600メートルが採用された。浪江駅や町役場など町の中心部からはほど遠く、震災後に「イノベーションコースト構想」の中で整備した区域だから生活感も無い。町民たちが異口同音に「あんな所を走ったって原発事故で壊された町並みや課題、町民の苦悩など伝わらない」と話すのも無理も無い。ある町民は「誰が、どこで、どんな理由で決めたのか」と疑問を口にしたが、誰も答えられない。
 田村市は都路地区がルートに選ばれた。「都路大橋」から「古道体育館」までの約1200メートルを走る。しかし、市教委の担当者は「県からルートが示されて初めて知った。詳しい事は県に問い合わせて欲しい」と繰り返すばかりで口が重い。県から市に事前に意向確認されたのか、市から複数のルート案を提示したのかなどについては語らない。
 3月4日に避難指示が部分解除される双葉町は、第8回の実行委で聖火リレーへの追加が決まった。まだ組織委の正式決定は経ていないが、JR常磐線の双葉駅周辺をリレーするとの見方が有力だ。この決定過程についても、伊澤史朗町長は「われわれは決定機関では無いし、報告を待つだけ。『まな板の上の鯉』ですよ」と話すにとどまっている。
 内堀知事は実行委のたびに「多くの県民の皆さんに御参加いただきたい」と述べている。
 実際には議論は密室の中で進められ、議事録も公開されず、結果だけが県民に示される。今回、黒塗りされた箇所が公開されるかどうかも分からない。公表されるか否かは組織委の意向次第。多額のコストをかけて行われる〝復興五輪〟がそんな状態で良いはずが無い。
 なお、組織委への取材を試みているが電話での取材対応窓口が公開されておらず、まずメールでのプレス登録が必要。しかし、組織委戦略広報課は「セキュリティの観点から新聞社や雑誌社の企業アドレスでないと受けられない」、「具体的にどちらの報道媒体(放送/新聞/雑誌/媒体資料などのあるweb媒体等)にてどういった記事・企画を検討しているのか」などとして取材に至っていない。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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