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【浪江原発訴訟】孫想う女性原告、国や東電に怒りぶつける意見陳述「大事な孫を被曝させられた。悔やんでも悔やみきれぬ」~福島地裁で第4回口頭弁論

福島県双葉郡浪江町の町民が申し立てた集団ADRでの和解案(慰謝料一律増額)を東京電力が6回にわたって拒否し続けた問題で、浪江町民が国や東電を相手取って起こした「浪江原発訴訟」の第4回口頭弁論が2月12日午後、福島地裁203号法廷(遠藤東路裁判長)で行われた。女性原告が意見陳述し「国や東電は大事な情報を隠した。孫にも被曝させてしまった。悔やんでも悔やみきれない」などと怒りをぶつけた。この日までに第5次提訴を済ませており、原告団は265世帯631人に増えたが、国も東電も全面的に争う構えを貫いている。次回期日は5月27日14時15分。
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【津島で放射能雨に濡れた孫】
 「今日は私たち家族の想いを聴いていただきたいと思います」
 静まり返った法廷で、根本洋子さん(77)=福島県相馬市に避難中=は語り始めた。
 31歳の時、福島市から浪江町に嫁いだ。「『原発がある場所によく行くね』と友人から言われた事もありましたが、原発は安心安全と言われていましたし、浪江町自体には立地していないので、当時はあまり気にせず国や東電を信じていました」。
 夫とともに詩をつくり、浪江町の自然や人々の生活を詠んだ。かわいい孫には人一倍、愛情を注いだ。
 「孫は3歳の時に父親を交通事故で亡くしており、娘が育てていました。その娘が原発事故の1年半前に水難事故で亡くなったのです。私たちはひとりぼっちになってしまった小学校1年生の孫とシーズー犬を引き取りました」
 町立苅野小学校に転入した孫は友達も増えて、新しい環境に少しずつ馴染んでいる様子だった。未曽有の大地震が起き、原発が爆発したのは、その矢先の事だった。
 余震が続く2011年3月12日。行政区長が「原発が危ないから津島に逃げて欲しい」と伝えに来た。午前7時の事だった。まさか避難生活が9年間も続くなど想像もしなかった。着の身着のまま、2台の車で津島地区の保育園に向かった。夫は愛犬とともに車中泊をした。
 「ただちに影響ない」という言葉を何度、耳にしたことだろう。津島地区に集まった浪江町民たちも、どこか安心感に包まれていた。根本さん自身「原発から20km以上も離れているから大丈夫。そのうち自宅に帰れるだろうと思っていました」と振り返る。孫は避難所が息苦しいのか屋外で遊んでいた。雨が降れば喜んで外に出て浴びた。被曝への危機感など無かった。

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意見陳述で「原発事故が起きても国や東電は大事な情報を隠してごまかしました。私たちは被曝しました。孫にも被曝させてしまいました。悔やんでも悔やみきれません」と怒りをぶつけた根本洋子さん

【「国も東電も情報隠した」】
 呑気だったから危機感が無かったのでは無い。知らなかったのだ。知らされなかったのだ。根本さんがその事に気付いたのは、実家のある福島市に移動した4月だった。避難して孫が遊んでいた津島地区こそ、実は高濃度に汚染されていたのだった。現在も帰還困難区域に指定されているほど汚染されているなど、誰も教えてはくれなかった。きちんと教えてくれていれば、孫を屋外で遊ばせなかった。
 「原発が安心安全だという事は嘘でした。事故が起きても国や東電は大事な情報を隠してごまかしました。私たちは被曝しました。孫にも被曝させてしまいました。悔やんでも悔やみきれません。被曝によって健康に問題が生じるのではないかと心配しています」
 根本さんも夫も、原発事故前と比べて血圧が上がったという。そして何より、孫の身体を心配している。放射性セシウムの雨に濡れながら無邪気に遊んでいた孫。「避難中、鼻血を出していました。相馬市に転居してからは鼻血を出す頻度が上がりました。野球の試合中に鼻血を出し、ベンチで横になった事もありました」。
 孫を診察した医師に「放射能のせいですか?」と尋ねた。医師は「違うでしょう」と否定したが不安は拭えない。甲状腺検査も続けているが何度、検査を受けさせても不安が無くなる事は無い。高校2年生になった孫に健康影響が生じないよう、常に願っている。
 「将来、孫が子どもを授かった時、生まれてくる子どもに何か異常が現れてしまうのではないか。そもそも結婚したり、子どもを授かったりする事自体をちゅうちょしてしまうのではないか。その事も、私たちの心配の種です」
 国も東電もなぜ、被曝を避けるための情報を住民に与えてくれなかったのか。
 「私は国や東電の無責任さを許す事は出来ません」
 ささやかな幸せを奪われた根本さんは、そう言って陳述を終えた。

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第5次提訴を済ませ、原告は631人に増えた。原発事故から9年を経てもなお、被害の実態に見合った賠償を求めて闘っている人たちがいる=福島地方裁判所

【「被曝不安は合理的」】
 「定年退職後、福島第一原発の『ふくいちモニター』に応募しました。一番最初に『津波対策はどうなのでしょうか?』と尋ねた事があります。そうしたら『6メートル以上の津波は来た事が無いから大丈夫だ』って担当者はおっしゃったんですけど、実際にはそれ以上の津波が来ました」
 閉廷後の集会で、根本さんはそう語った。
 「浪江町の地形を見ると分かりますが、昔はずいぶん内陸部に海があったんです。400年前の津波は請戸川を逆流して室原川も遡って、津島の『塩浸』(しおびて)という所にまで達したんです。そういう地名が、浪江町や双葉町にはたくさん残っているんです。私が避難している相馬市にも、昔、津波が到達したという小字名が残っているんです。東電は、調べればそういう事が分かったはずなんです。調べないで津波対策を怠っていた。津波対策をきちんとしていれば、私たちは被曝する事は無かった。国も東電も私たちの訴えをきちんと受け止めて欲しいです」
 根本さんは「みうらひろこ」のペンネームで詩集を出版している。
 この日の口頭弁論では原告代理人弁護士も陳述。町民が浪江町内外で被曝を強いられた事、健康不安を抱くのは合理的である事などについて述べた。「精神的平穏や、平穏な生活を侵害されない権利を侵奪されている事は明らか」として、裁判所に対し「原告らの不安が法的に保護されるべき性質のものである事を正面から認めるよう強く求める」と訴えた。
 この日までに第5次提訴(14歳から94歳までの37世帯86人)を済ませており、原告は計265世帯631人になった。原告の1人は「やはり裁判となると時間がかかる。お年寄りは『そこまで生きられるかな』、『もう良いかな』という考えになっているのも事実。少ない年金で生活している人は訴訟費用をねん出するのも難しいが、何とか仲間に加わって欲しい」と話す。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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