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【復興五輪と聖火リレー】原発避難者たちが〝もう1つの聖火リレー〟を発表。「福島の現実はオリンピックどころじゃない!」。今月末、Jヴィレッジ周辺で実施

原発避難者たちが今月末、Jヴィレッジ周辺で〝もう1つの聖火リレー〟を行う。13日午後、福島県庁内の記者クラブで発表した。「原発事故に伴う福島県の『影』の部分もきちんと発信するべきだ」、と企画された抗議行動の一環で、野球やソフトボールの試合が行われる県営あづま球場(福島市)でも横断幕やプラカードを掲げる。福島県の内堀雅雄知事を先頭に〝復興五輪〟に向け被曝リスクや避難者の存在などマイナス(影)の部分が切り捨てられていく事に危機感を抱いた当事者たちが、「聖火リレー出発の地」で怒りの声をあげる。
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【「『影』の部分にも目を」】
 「前回の東京五輪の時、私は大学3年生でしたが、『東洋の魔女』などに感動しました。もちろん、私たちも一緒に今回のオリンピックを楽しみたいです。でも、現実を見るとそれどころではありません。原発事故そのものが全く収束していませんし、被害者や避難者に対する施策も全くなされていません。住宅提供の打ち切り問題では、どうやって生きていくのかが突きつけられています。帰還困難区域からの避難者に対する住宅提供まで打ち切られるのです。そういう『影』の部分について全く触れられない。片側の面だけが強調されているのはおかしいと思います」
 「福島原発事故被害者団体連絡会」(ひだんれん)の幹事で、福島原発かながわ訴訟原告団長を務める村田弘さん(南相馬市小高区から神奈川県横浜市に避難継続中)は、記者会見でそう訴えた。
 「いよいよオリンピックという事で盛り上がろうとしているのは良く分かるのですが、私たち避難している者だけでは無く、果たして福島県内に暮らしている方々も本当にオリンピックを心から喜んで歓迎する状況にあるのでしょうか。福島の復興が成し遂げられた、という事をテーマにしたオリンピックというのは、あまりにも現実とかけ離れているじゃないかという意思表示をしなければならないという結論に達し、今回の企画を考えました」
 福島県の内堀雅雄知事は「〝復興五輪〟で福島の『光』と『影』の両方を正確に発信したい」が口癖だ。だが、それを口にする回数に反比例するように、聖火リレーや〝復興五輪〟で国内外に発信されるのは「前に進むふくしま」。つまり「光」の部分に偏っている。華やかな五輪で〝復興〟がアピールされる陰で、いまだ続く原発事故被害は覆い隠される。被害者の切り捨ては進む。果たしてそれは、誰のための〝復興五輪〟なのか。村田さんは会見で、こう強調した。
 「事実を隠した祭典をやるより、『影』の部分に目を向ける事が大事なんじゃないか。『影』を隠しちゃいかんのです」

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記者会見で「オリンピックどころでは無い」と訴えた佐藤和良さん、村田弘さん、今野寿美雄さん(左から)。今月29日には、Jヴィレッジ周辺で抗議の〝もう1つの聖火リレー〟を行う=福島県庁

【「五輪の政治利用だ」】
 「福島はオリンピックどごでねぇアクション」と銘打たれた今回の行動は、今月29日と3月1日の2日間行われる。
 初日は午前11時から約90分間、聖火リレーの出発地である「Jヴィレッジ」(双葉郡楢葉町)周辺を、横断幕や多言語プラカードを掲げながら歩く。
 2日目は、野球とソフトボールの試合が行われる「県営あづま球場」(福島市)に場所を移し、午前9時半から約30分間、やはり横断幕や多言語プラカード(日本語、英語、フランス語、ポルトガル語、韓国語、ドイツ語、ロシア語、中国語)を手に抗議行動を行う。参加者は午後2時から鹿島公会堂(いわき市)で行われる市民集会「これでいいの?!原発事故と復興五輪」に合流。それぞれの想いを語る。市民集会では、元駐スイス大使・村田光平さんが「世界が危惧する原発事故下の五輪」と題して講演する。
 記者会見では、いわき市議の佐藤和良さんが「何が『アンダーコントロール』ですか。原子力緊急事態宣言は解除されていないじゃないですか。今の状況で五輪を強行するのは、政府として間違った対応だと思います。原発事故の現状を直視するべきです。多額の予算は、五輪のためでは無く、復興に充てられるべきなのです」と訴えた。
 「五輪憲章では『政治利用』が禁じられています(「オリンピックの用地、競技会場、またはその他の区域では、いかなる種類のデモンストレーションも、 あるいは政治的、 宗教的、 人種的プロパガンダも許可されない」)。にもかかわらず、日本政府は政治利用しているのではないか。それは被害者救済とは方向が違います。そこが問題なのです」
 武藤類子さんも「オリンピックというものが利用されて、避難指示解除や住民の帰還、汚染水処理などの問題を一気に終わりにさせてしまおうという意図が感じられます」と述べた。

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福島県中通りから関西へ母子避難した大学生のメッセージも記者会見で配られた。「本当に『福島の状況はコントロールされている』のでしょうか?」と疑問を投げかけている

【韓国の風刺ポスターに理解】
 韓国では、民間団体「VANK」が防護服を着た聖火ランナーを描いた3種類のポスターを掲示している。
 これを受け、自由民主党福島県支部連合会は12日、橋本聖子五輪担当大臣や田中和徳復興大臣を訪問。「原発事故に伴う風評被害を意図的に助長させている」、「平和の祭典に原子力発電所の事故を持ち出し、我が国での開催が危険であるかのような印象操作を行う行為は、日本国民を愚弄し、当県の復興に水を差すものであり、強い憤りを禁じ得ません」、「国際社会に対し、当県の復興における正確な情報発信を積極的に行うよう強く求めます」などとする要望書を提出した。
 「子ども脱被ばく裁判」原告団長の今野寿美雄さん(双葉郡浪江町から福島市に避難継続中)は記者会見で、「国際基準で見れば、現在の福島の土壌汚染を考えると放射線管理区域(1平方メートルあたり4万ベクレル、3カ月で1・3ミリシーベルト)の中を走るようなものです。放射線管理区域に匹敵する土壌汚染があちらこちらにあるのですから、それを風刺されても違うとは言えないですよね。韓国の団体は現実を分かっていて発信していると思います」と語った。
 村田さんも「年20mSvという基準は日本国内ではなんとなく通用してしまっているけれども、放射線管理区域の4倍ですからね。そういう中で聖火リレーをやるというのは、国際的に見れば当然、そういう反応になるでしょうね」と韓国での動きに理解を示した。
 実際の聖火リレーは3月26日から3日間にわたって福島県内26の市町村で行われる。地元紙の福島民報は聖火リレーの初日には安倍晋三首相が出発地のJヴィレッジを訪れると報じた。そして7月22、23の両日は女子ソフトボール(計6試合)が、同月29日には野球(1試合)が福島市で行われる。



(了)
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