【新型コロナウイルス】「念のための検査も駄目なのか…」千葉の女性教諭が宿泊した福島県内の施設。「症状出ていない」と保健所がスタッフの検査を拒否
- 2020/02/26
- 06:47
千葉市立中学校に勤務する60代の女性教諭が新型コロナウイルスに感染し肺炎を発症した問題で、発症前に女性教諭が生徒とともに利用した福島県南地域の宿泊施設が、管轄の保健所に「念のためにスタッフの検査をお願い出来ないか」と申し出たところ、発熱などの症状が出ていない事を理由に拒否されていた事が判明した。福島県の担当者も「千葉県や千葉市から正式な調査依頼が無い」などと消毒や検査には消極的で、知事与党系県議からも「予防原則で動く事が県民を守る。これでは原発事故対応と同じだ」と批判の声があがっている。

【「出来る限り消毒した」】
福島県などによると、女性教諭が勤務する中学校の2年生がスキーなどを楽しむ「自然教室」として福島県南地域の宿泊施設を訪れたのは、発症前の今月6日から8日の3日間。
その後、女性教諭は12日になって吐き気を催したため医療機関を受診。当初は風邪と診断されたが、21日になって陽性と判明した。千葉県疾病対策課によると、女性教諭の容体は悪化していないが、今も入院中という。
宿泊施設には、女性教諭の感染が確認された翌々日の23日に電話連絡があったという。「トイレやドアノブなど、出来る範囲で消毒をした」と責任者。施設ではスタッフのほか食堂、清掃、ボイラーなど約40人が交代で働いているが、今のところ朝礼で確認している限り体調を崩している人はいないという。
女性教諭が施設を訪れたのが発症する前だが、責任者は「スタッフを守るために一応、念のため」と所在地域を管轄する保健所に検査を受けられないか問い合わせた。しかし、保健所は「発熱などの症状が出ていない以上、検査は行えない」と拒んだという。
「もはやどの地域にいても感染のリスクはあるが、念のために職員には検査を受けさせたかった」と責任者。検査を拒んだとされる保健所は取材に対し「帰国者・接触者相談センターに寄せられた相談内容にかかわる事なので、そのような問い合わせが施設からあったかどうかも含めて答えられない」との回答を寄せた。

福島県のホームページに掲載されている対応フロー。今回のように県外居住者が発症前に訪れていたようなケースでは、居住自治体から文書で正式に依頼が無いと福島県は動かないという
【「発症前の感染リスク低い」】
福島県地域医療課の担当者は「千葉市教委に電話で確認しており、当該教諭が県南地域の施設に宿泊した事は把握している」としている。一方で、施設で働く人々の健康観察や施設の消毒に関しては「あくまで非公式に電話で確認しているというだけで、『感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律』に基づく正式な依頼文書が千葉県や千葉市から届いているわけでは無い。文書での依頼が無い以上、何もしない。あとは千葉県や千葉市に尋ねて欲しい」と消極的だ。女性教諭が宿泊した事実も公表していない。
万が一、施設スタッフへの感染が後に分かったとしても「ルールだから仕方が無い」としている。県民から電話による問い合わせは寄せられているという。
千葉県疾病対策課の担当者は「発症前の接触者については、まだ国から具体的な対応方法が示されていないが、まだ咳などの症状が出ていない時点で接触した人への感染リスクは低いと聞いている。今のところ、福島県に対して施設スタッフに対する健康観察など調査を依頼するつもりは無い」と話している。千葉市健康企画課の担当者も「発症日以前に接触した人は感染している可能性は低いのではないか」と話した。
福島県は「千葉市に尋ねて欲しい」と言い、千葉市は「女性教諭の勤務する学校は千葉市立だが、住まいは市外なので千葉県に尋ねて欲しい」と言った。そして、千葉県の回答は「感染リスクは低い」。果たして、住民を守り不安を解消するのは誰なのか。

宿泊施設の責任者は、「あくまで念のため」とスタッフの検査を希望したが保健所に拒まれた。日々の朝礼などで体調不良が起きていないか確認しているという
【「原発事故対応と同じ」】
福島県の対応に、知事与党会派に属する県議会議員の1人は「宿泊施設の責任者からすれば、働いているスタッフの健康を心配するのは当たり前。検査を受けさせたいと考えるだろう」と話す。「法の立て付けは確かにそうなのかもしれないが、行政は予防原則で動くべきだ。結局、9年前の原発事故対応と何ら変わっていないじゃないか。なぜ柔軟な対応が出来ないのか」。
別の県議も「型通りの事しかやらないというのは問題。公務員は法律で動くものだが、一方で現場や県民の不安を解消するのも大事な仕事だろう」と県の対応を批判した。日本共産党福島県議会議員団の宮本しづえ議員は26日に予定されている代表質問で、「県民へ正確な情報発信をするべき」などと、新型コロナウイルス感染症に対する県の対応を質す。
発症した女性教諭の住まいや勤務先のある自治体が文書で正式に依頼しない以上、福島県は何も動かない。女性教諭が宿泊した事実も県民に公表されない。既にネット上では宿泊施設の固有名詞を挙げて感染を不安視する書き込みもある。行政は動かなければ、真偽不明の〝噂〟だけがネット上に漂うばかりだ。
宿泊施設の責任者によると、既に電話での問い合わせや予約キャンセルがあるという。責任者は「確かにキャンセルはあるが、今回の件が直接の理由なのかは分からない」と話している。
(了)

【「出来る限り消毒した」】
福島県などによると、女性教諭が勤務する中学校の2年生がスキーなどを楽しむ「自然教室」として福島県南地域の宿泊施設を訪れたのは、発症前の今月6日から8日の3日間。
その後、女性教諭は12日になって吐き気を催したため医療機関を受診。当初は風邪と診断されたが、21日になって陽性と判明した。千葉県疾病対策課によると、女性教諭の容体は悪化していないが、今も入院中という。
宿泊施設には、女性教諭の感染が確認された翌々日の23日に電話連絡があったという。「トイレやドアノブなど、出来る範囲で消毒をした」と責任者。施設ではスタッフのほか食堂、清掃、ボイラーなど約40人が交代で働いているが、今のところ朝礼で確認している限り体調を崩している人はいないという。
女性教諭が施設を訪れたのが発症する前だが、責任者は「スタッフを守るために一応、念のため」と所在地域を管轄する保健所に検査を受けられないか問い合わせた。しかし、保健所は「発熱などの症状が出ていない以上、検査は行えない」と拒んだという。
「もはやどの地域にいても感染のリスクはあるが、念のために職員には検査を受けさせたかった」と責任者。検査を拒んだとされる保健所は取材に対し「帰国者・接触者相談センターに寄せられた相談内容にかかわる事なので、そのような問い合わせが施設からあったかどうかも含めて答えられない」との回答を寄せた。

福島県のホームページに掲載されている対応フロー。今回のように県外居住者が発症前に訪れていたようなケースでは、居住自治体から文書で正式に依頼が無いと福島県は動かないという
【「発症前の感染リスク低い」】
福島県地域医療課の担当者は「千葉市教委に電話で確認しており、当該教諭が県南地域の施設に宿泊した事は把握している」としている。一方で、施設で働く人々の健康観察や施設の消毒に関しては「あくまで非公式に電話で確認しているというだけで、『感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律』に基づく正式な依頼文書が千葉県や千葉市から届いているわけでは無い。文書での依頼が無い以上、何もしない。あとは千葉県や千葉市に尋ねて欲しい」と消極的だ。女性教諭が宿泊した事実も公表していない。
万が一、施設スタッフへの感染が後に分かったとしても「ルールだから仕方が無い」としている。県民から電話による問い合わせは寄せられているという。
千葉県疾病対策課の担当者は「発症前の接触者については、まだ国から具体的な対応方法が示されていないが、まだ咳などの症状が出ていない時点で接触した人への感染リスクは低いと聞いている。今のところ、福島県に対して施設スタッフに対する健康観察など調査を依頼するつもりは無い」と話している。千葉市健康企画課の担当者も「発症日以前に接触した人は感染している可能性は低いのではないか」と話した。
福島県は「千葉市に尋ねて欲しい」と言い、千葉市は「女性教諭の勤務する学校は千葉市立だが、住まいは市外なので千葉県に尋ねて欲しい」と言った。そして、千葉県の回答は「感染リスクは低い」。果たして、住民を守り不安を解消するのは誰なのか。

宿泊施設の責任者は、「あくまで念のため」とスタッフの検査を希望したが保健所に拒まれた。日々の朝礼などで体調不良が起きていないか確認しているという
【「原発事故対応と同じ」】
福島県の対応に、知事与党会派に属する県議会議員の1人は「宿泊施設の責任者からすれば、働いているスタッフの健康を心配するのは当たり前。検査を受けさせたいと考えるだろう」と話す。「法の立て付けは確かにそうなのかもしれないが、行政は予防原則で動くべきだ。結局、9年前の原発事故対応と何ら変わっていないじゃないか。なぜ柔軟な対応が出来ないのか」。
別の県議も「型通りの事しかやらないというのは問題。公務員は法律で動くものだが、一方で現場や県民の不安を解消するのも大事な仕事だろう」と県の対応を批判した。日本共産党福島県議会議員団の宮本しづえ議員は26日に予定されている代表質問で、「県民へ正確な情報発信をするべき」などと、新型コロナウイルス感染症に対する県の対応を質す。
発症した女性教諭の住まいや勤務先のある自治体が文書で正式に依頼しない以上、福島県は何も動かない。女性教諭が宿泊した事実も県民に公表されない。既にネット上では宿泊施設の固有名詞を挙げて感染を不安視する書き込みもある。行政は動かなければ、真偽不明の〝噂〟だけがネット上に漂うばかりだ。
宿泊施設の責任者によると、既に電話での問い合わせや予約キャンセルがあるという。責任者は「確かにキャンセルはあるが、今回の件が直接の理由なのかは分からない」と話している。
(了)
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