【新型コロナウイルス】16人感染の福島県。不安募る中、小学校で入学式~立ち上がった高校生。休校延長求めるネット署名、賛同者1000人超す
- 2020/04/06
- 22:10
新型コロナウイルスの感染者が16人に達した福島県で6日、公立学校の入学式が行われた。福島市内の小学校では、マスク姿で入学式に臨んだわが子を見守りながら、保護者が感染への不安を口にした。一方、福島県いわき市の高校生が休校延長を求める署名運動をインターネット上で展開。賛同者は1000人を超えた。会津若松市の女子高生もこの動きに呼応して賛同者を募るなど学校再開に反対する輪が広がっている。だが、福島県教委は方針を変えていない。教育長は「危にこそ機あり」などと呑気なメッセージを発する始末で、改めて子どもを守る姿勢が問われている。

【マスクと消毒液頼み】
6日午前、福島市内の市立小学校で行われた入学式。映画「となりのトトロ」の「さんぽ」に合わせて新入生が体育館に入場した。ほとんどの子どもがマスクをしている。拍手で迎える保護者もマスク姿。子どもたちがクラスごとにパイプ椅子に座る。国は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため〝3密〟(密閉、密集、密接)を避けるよう求めているが、子どもたちも保護者も間隔は開いていなかった。
男性教諭によると、入学式に先立ち始業式と着任式が行われたが「体育館では行わず、校内放送にしました」。
入学式には例年、在校生も出席してお祝いの言葉を述べるが、それも見送られた。「お祝いごとなので中止や延期にせず、最低限の形で行う事にしました」と教諭。来賓は1人だけ。式の時間も短縮。式の途中では、換気のため体育館の扉が開けられた。各教室の入り口には、アルコール消毒液が用意された。7日から1週間は「慎重を期して午前授業とし、給食後下校」(福島市長、福島市教育長連名の「学校の再開にあたって」より)とする措置がとられる。
わが子の晴れ姿を見守った母親は「ここに来て感染者数が増えているので延期しても良かったですよね」と複雑な想いを口にした。保護者の誰もが不安を口にしながら、マスクと消毒液頼みの新学期は始まった。



6日午前に福島市内の小学校で行われた入学式では、多くの新入生がマスク姿で出席。教室の入り口には消毒液が置かれた。式の途中では、換気のために体育館の扉が開けられた
【「〝右にならえ〟になってしまう」】
福島県教育委員会の鈴木淳一教育長は3日に発表した「児童生徒、保護者、教職員の皆さんへ~学校再開に当たっての福島県教育長メッセージ~」の中で、最後に次のように綴っている。
「通常通りの新学期ではなく、感染を予防するための工夫を行いながらの再開となります。一方で、危にこそ機あり。ピンチの中だからこそ、疑問やジレンマが新たな創意工夫につながったり、普段とは異なる深い考えが浮かんだり、新しい目標が見つかり、意欲がわいてくることもあると思います」
しかし、実際に子どもを学校に通わせる保護者たちは、そんな呑気に構えていない。
「入学式をやらないのが正しいのかもしれませんね」
入学式後に取材に応じた父親は、そう話した。「感染者数が増えるのがもう少し早ければ、入学式は出来なかったでしょう。私も含めて、少しのんびり構えているのかもしれませんが」とも。
別の父親も「延期してもおかしくない状況ですよね。不安はあります。本当はマスクなんかしないで、気持ち良く入学式に来たかったですよ」と語った。
「どこに感染リスクがあるか分からない以上、子どもを通わせないという判断も〝あり〟だと思います。子どもを守れるのは親しかいないですからね。皆が学校に来るからどうしても通わせてしまうけれど、中には休ませる家庭もあるようですよ。でも、首都圏との温度差もあるのかな。〝右へならえ〟の県民性もあるのか、なかなか声があがらないですよね」

福島県いわき市の高校2年生、伊東拓哉さんが始めた休校延長を求めるネット署名。6日21時の段階で賛同者は1000人を超えた
【女子高生「家族にうつしたくない」】
福島県教委が当初の予定通りに学校をさせた事を受け、福島県いわき市の高校生がインターネット上で休校延長を求める署名運動を始めた。
ネット署名運動を始めたのは、東日本国際大学附属昌平高校2年生の伊東拓哉さん(16)。
「感染者が何百人と出る前に感染拡大を食い止めたいというのが、ネット署名を始めた一番の想いです。福島は高齢者が多いので、感染が拡大すれば他の県よりも死者は多く出ると思ったのもあります」
友人たちの間では、休校延長を求める声が多いという。「再開に賛成している人は1割程度ではないでしょうか。学校には昇降口や保健室くらいにしかアルコール消毒液が無いです。先生も生徒もマスクをしない人がいるので心配です」と伊東さん。賛同者は1000人を超えた。「数千人に達したら県教委に届けたい」と話している。
伊東さんの動きに呼応したのが会津若松市の高校3年生。彼女はツイッターを利用して賛同者を募っている。
「感染者も毎日増えていますし、郡山に電車通学している人が身近にいます。郡山駅では、東京方面から新幹線で来た人と接触する可能性があるから怖いなと思います。会津若松市ではまだ感染者は出ていませんが、時間の問題ではないでしょうか。休校前よりも危険な状況なのに学校再開は間違っていると思いました。もし私が感染したら、同居している祖母や弟にも感染させてしまう可能性があります。だから休校を求めているのです」
しかし、現時点では県教委は方針を変えていない。休校延長を求める声をあげているのが高校生であるという事を、大人たちは重く受け止める必要があるのではないだろうか。
(了)

【マスクと消毒液頼み】
6日午前、福島市内の市立小学校で行われた入学式。映画「となりのトトロ」の「さんぽ」に合わせて新入生が体育館に入場した。ほとんどの子どもがマスクをしている。拍手で迎える保護者もマスク姿。子どもたちがクラスごとにパイプ椅子に座る。国は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため〝3密〟(密閉、密集、密接)を避けるよう求めているが、子どもたちも保護者も間隔は開いていなかった。
男性教諭によると、入学式に先立ち始業式と着任式が行われたが「体育館では行わず、校内放送にしました」。
入学式には例年、在校生も出席してお祝いの言葉を述べるが、それも見送られた。「お祝いごとなので中止や延期にせず、最低限の形で行う事にしました」と教諭。来賓は1人だけ。式の時間も短縮。式の途中では、換気のため体育館の扉が開けられた。各教室の入り口には、アルコール消毒液が用意された。7日から1週間は「慎重を期して午前授業とし、給食後下校」(福島市長、福島市教育長連名の「学校の再開にあたって」より)とする措置がとられる。
わが子の晴れ姿を見守った母親は「ここに来て感染者数が増えているので延期しても良かったですよね」と複雑な想いを口にした。保護者の誰もが不安を口にしながら、マスクと消毒液頼みの新学期は始まった。



6日午前に福島市内の小学校で行われた入学式では、多くの新入生がマスク姿で出席。教室の入り口には消毒液が置かれた。式の途中では、換気のために体育館の扉が開けられた
【「〝右にならえ〟になってしまう」】
福島県教育委員会の鈴木淳一教育長は3日に発表した「児童生徒、保護者、教職員の皆さんへ~学校再開に当たっての福島県教育長メッセージ~」の中で、最後に次のように綴っている。
「通常通りの新学期ではなく、感染を予防するための工夫を行いながらの再開となります。一方で、危にこそ機あり。ピンチの中だからこそ、疑問やジレンマが新たな創意工夫につながったり、普段とは異なる深い考えが浮かんだり、新しい目標が見つかり、意欲がわいてくることもあると思います」
しかし、実際に子どもを学校に通わせる保護者たちは、そんな呑気に構えていない。
「入学式をやらないのが正しいのかもしれませんね」
入学式後に取材に応じた父親は、そう話した。「感染者数が増えるのがもう少し早ければ、入学式は出来なかったでしょう。私も含めて、少しのんびり構えているのかもしれませんが」とも。
別の父親も「延期してもおかしくない状況ですよね。不安はあります。本当はマスクなんかしないで、気持ち良く入学式に来たかったですよ」と語った。
「どこに感染リスクがあるか分からない以上、子どもを通わせないという判断も〝あり〟だと思います。子どもを守れるのは親しかいないですからね。皆が学校に来るからどうしても通わせてしまうけれど、中には休ませる家庭もあるようですよ。でも、首都圏との温度差もあるのかな。〝右へならえ〟の県民性もあるのか、なかなか声があがらないですよね」

福島県いわき市の高校2年生、伊東拓哉さんが始めた休校延長を求めるネット署名。6日21時の段階で賛同者は1000人を超えた
【女子高生「家族にうつしたくない」】
福島県教委が当初の予定通りに学校をさせた事を受け、福島県いわき市の高校生がインターネット上で休校延長を求める署名運動を始めた。
ネット署名運動を始めたのは、東日本国際大学附属昌平高校2年生の伊東拓哉さん(16)。
「感染者が何百人と出る前に感染拡大を食い止めたいというのが、ネット署名を始めた一番の想いです。福島は高齢者が多いので、感染が拡大すれば他の県よりも死者は多く出ると思ったのもあります」
友人たちの間では、休校延長を求める声が多いという。「再開に賛成している人は1割程度ではないでしょうか。学校には昇降口や保健室くらいにしかアルコール消毒液が無いです。先生も生徒もマスクをしない人がいるので心配です」と伊東さん。賛同者は1000人を超えた。「数千人に達したら県教委に届けたい」と話している。
伊東さんの動きに呼応したのが会津若松市の高校3年生。彼女はツイッターを利用して賛同者を募っている。
「感染者も毎日増えていますし、郡山に電車通学している人が身近にいます。郡山駅では、東京方面から新幹線で来た人と接触する可能性があるから怖いなと思います。会津若松市ではまだ感染者は出ていませんが、時間の問題ではないでしょうか。休校前よりも危険な状況なのに学校再開は間違っていると思いました。もし私が感染したら、同居している祖母や弟にも感染させてしまう可能性があります。だから休校を求めているのです」
しかし、現時点では県教委は方針を変えていない。休校延長を求める声をあげているのが高校生であるという事を、大人たちは重く受け止める必要があるのではないだろうか。
(了)
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