【新型コロナウイルス】高校休校求める署名「知らない」。不安拾わず現場も見ずに「感染症アドバイザー」が務まるのか? 〝ガン無視〟の陰で署名始めた高校生に誹謗中傷の矢
- 2020/04/17
- 07:54
福島県の感染症対策アドバイザーは、現役高校生が始めた休校を求める署名運動の存在も知らず、中核市が開いた会見も集団感染の現場となった郵便局も見ていなかった─。緊急事態宣言の適用が全国に拡大された事に呼応するように、福島県では16日、これまでで最も多い9人の感染者が新たに確認された。県内の感染者は計49人に上るが、感染の不安から休校を求める高校生や保護者の想いは全く拾われていなかった。子どもをリスクから積極的に守らない姿勢は原発事故後と全く同じ。改めて「アドバイザー」の資質を問いたい。

【感染の現場「行けてない」】
「ごめんなさい。その事も存じ上げませんでした」
16日夜に福島県庁で開かれた福島県新型コロナウイルス感染症対策本部の記者会見。予想していたとはいえ、明確な否定にはがっかりした。福島県立医科大学の金光敬二教授(感染制御学)は、現役高校生がインターネット上で始めた署名運動の存在すら知らずに、県の「感染症対策アドバイザー」を務めていたのだった。
山形や宮城など隣接県が軒並み、県立学校の休校を続けている中で、福島県は授業や部活動を継続。14日付で公表された「新型コロナウイルス感染症 県立学校対応マニュアル」でも、生徒や教職員が感染した場合に当該学校を休校させる手順は書かれているものの、予防措置としての休校には触れられていない。
だからこそ、学生や保護者から切実な声があがっているのに、それを把握せずにこれまでの記者会見で「学校もいつまでも休校にしておくわけにもいきません」など、高校休校に後ろ向きな発言を続け、ついには「お答えする立場では無い」とノーコメントに転じていた。では、何のための「アドバイザー」なのか。しかも、過去の会見では、中核市(福島、郡山、いわき)が開いた記者会見の内容を「知らない」と発言したり、集団感染が起こってしまった二本松郵便局についても「現場を見ていない」として一般論を語るなど、資質に疑問の声もあがっている。筆者はその点についても質したが、答えは同じだった。
「なかなか現場にですね…。二本松郵便局には足を運びましたけれども、その時はクローズしていましたので、閉鎖してるんだなという状況しか分からなかったんですけれども、その他も、なかなか行けてないというのが実情であります」
福島市では、無症状ながら保育園児の感染も確認されたが、当該保育園にも足を運んでいないという。冒頭の発言で金光教授が「その事も」と言ったのは、そういう理由からだった。

誹謗中傷を浴びながら現役高校生がネット上で続けている署名運動。しかし、福島県の感染症対策アドバイザーを務める県立医科大学の金光敬二教授は、この存在すら知らなかった
【「コロナに専念出来ず」】
「私もこれだけにですね…言い訳はしたくないんですけれども、これだけに専念しているという状況にはございませんので、なるべく自分の出来る限りの範囲においては、アドバイスをしたいというふうに考えておりますが、なかなか全ての現場に立ち入るとかそういう事は出来ないという事も現実としてあろうかと思います」
金光教授はそう〝釈明〟した後、最後にこう加えた。
「今のご意見をですね、真摯に受け止めて、出来る限り足を運んで現場を見て、実際に動ければなと思います」
真摯に受け止めてくれるのは良いが、今日も高校生たちの中には電車で登校する子どももいる。この夜、発表された9人の感染者のうち、感染源がある程度確認出来ているのは4人。5人については感染源が分かっていない。だからこそ、感染への不安が高まるのは当然だが、会見後、金光教授に改めて確認すると、やはり答えは「時間が割けていない」だった。
「私も病院の方もありますし、あるいは教育もあるので、なかなかこれ(新型コロナウイルス問題)に時間を割けていないというのが現状です。コメントできないですよ。後で言われるんですよ。県の組織というのはご存知のように縦割りになっていて、県立高校の事は県教委が所管しています。調整もせずに勝手な事を言うと叱られるというのもあります。実際、学校を休みにしろとかですね、教育関係でアドバイスをしているわけでは無いんです」
「人の領域に口出すな」と迫る県教委には、もはや言葉が無い。積極的に子どもを守らないという点では、原発事故後と全く同じだ。

福島県環境創造センター(三春町)本館に勤務する女性職員が感染した事を受け、16日夜に臨時記者会見を開いた内堀雅雄知事。子どもを守らないという点では、原発事故後と同じだ=福島県庁
【「高校生の声を聞いて」】
日本共産党福島県委員会や福島県医療労働組合連合会、福島県立高等学校教職員組合などで構成する「みんなで新しい県政をつくる会」は16日、福島県に対して2回目の申し入れを行った。
関係者によると。高校に関しては「休校を求める高校生が署名に取り組んでいるが、周囲の県は休校になっている。不安だからこその当然の行動であって、当事者である高校生自身や保護者の声を丁寧に聞いてほしい。市町村を超えて通学する高校生のリスクは高い。民青同盟が行ったアンケートでは、高校生の切実な声が多く寄せられている。県独自にアンケートを行うとか、インターネット上で意見を聞く、署名に取り組んだ高校生の話を聞くなど方法はいくらでもあったはず。そういう立場で判断してほしい」と申し入れたという。
切実な声を聞いてもらえないばかりか、ネット署名の存在すら認識されない。しかも、ネット署名を始めた男子高校生は今、矢玉のように浴びせられる誹謗中傷に苦しめられているという。実名や自身が通う高校名を公開して取材に応じた事がきっかけだった。男子高校生は言う。
「実名や学校名をSNS上に書き込まれたり、『何も考えられない餓鬼がイキってんな』などのメッセージが多数届いているんです」
県教委や感染症アドバイザーが〝無視〟している陰で、なぜ切実な想いを行動に移した高校生が叩かれなければならないのか。福島県がモタモタしている間に、緊急事態宣言が全国に拡大された。高校生の声には耳を傾けない福島県は、国の意向には素直に従うのだろうか。
(了)

【感染の現場「行けてない」】
「ごめんなさい。その事も存じ上げませんでした」
16日夜に福島県庁で開かれた福島県新型コロナウイルス感染症対策本部の記者会見。予想していたとはいえ、明確な否定にはがっかりした。福島県立医科大学の金光敬二教授(感染制御学)は、現役高校生がインターネット上で始めた署名運動の存在すら知らずに、県の「感染症対策アドバイザー」を務めていたのだった。
山形や宮城など隣接県が軒並み、県立学校の休校を続けている中で、福島県は授業や部活動を継続。14日付で公表された「新型コロナウイルス感染症 県立学校対応マニュアル」でも、生徒や教職員が感染した場合に当該学校を休校させる手順は書かれているものの、予防措置としての休校には触れられていない。
だからこそ、学生や保護者から切実な声があがっているのに、それを把握せずにこれまでの記者会見で「学校もいつまでも休校にしておくわけにもいきません」など、高校休校に後ろ向きな発言を続け、ついには「お答えする立場では無い」とノーコメントに転じていた。では、何のための「アドバイザー」なのか。しかも、過去の会見では、中核市(福島、郡山、いわき)が開いた記者会見の内容を「知らない」と発言したり、集団感染が起こってしまった二本松郵便局についても「現場を見ていない」として一般論を語るなど、資質に疑問の声もあがっている。筆者はその点についても質したが、答えは同じだった。
「なかなか現場にですね…。二本松郵便局には足を運びましたけれども、その時はクローズしていましたので、閉鎖してるんだなという状況しか分からなかったんですけれども、その他も、なかなか行けてないというのが実情であります」
福島市では、無症状ながら保育園児の感染も確認されたが、当該保育園にも足を運んでいないという。冒頭の発言で金光教授が「その事も」と言ったのは、そういう理由からだった。

誹謗中傷を浴びながら現役高校生がネット上で続けている署名運動。しかし、福島県の感染症対策アドバイザーを務める県立医科大学の金光敬二教授は、この存在すら知らなかった
【「コロナに専念出来ず」】
「私もこれだけにですね…言い訳はしたくないんですけれども、これだけに専念しているという状況にはございませんので、なるべく自分の出来る限りの範囲においては、アドバイスをしたいというふうに考えておりますが、なかなか全ての現場に立ち入るとかそういう事は出来ないという事も現実としてあろうかと思います」
金光教授はそう〝釈明〟した後、最後にこう加えた。
「今のご意見をですね、真摯に受け止めて、出来る限り足を運んで現場を見て、実際に動ければなと思います」
真摯に受け止めてくれるのは良いが、今日も高校生たちの中には電車で登校する子どももいる。この夜、発表された9人の感染者のうち、感染源がある程度確認出来ているのは4人。5人については感染源が分かっていない。だからこそ、感染への不安が高まるのは当然だが、会見後、金光教授に改めて確認すると、やはり答えは「時間が割けていない」だった。
「私も病院の方もありますし、あるいは教育もあるので、なかなかこれ(新型コロナウイルス問題)に時間を割けていないというのが現状です。コメントできないですよ。後で言われるんですよ。県の組織というのはご存知のように縦割りになっていて、県立高校の事は県教委が所管しています。調整もせずに勝手な事を言うと叱られるというのもあります。実際、学校を休みにしろとかですね、教育関係でアドバイスをしているわけでは無いんです」
「人の領域に口出すな」と迫る県教委には、もはや言葉が無い。積極的に子どもを守らないという点では、原発事故後と全く同じだ。

福島県環境創造センター(三春町)本館に勤務する女性職員が感染した事を受け、16日夜に臨時記者会見を開いた内堀雅雄知事。子どもを守らないという点では、原発事故後と同じだ=福島県庁
【「高校生の声を聞いて」】
日本共産党福島県委員会や福島県医療労働組合連合会、福島県立高等学校教職員組合などで構成する「みんなで新しい県政をつくる会」は16日、福島県に対して2回目の申し入れを行った。
関係者によると。高校に関しては「休校を求める高校生が署名に取り組んでいるが、周囲の県は休校になっている。不安だからこその当然の行動であって、当事者である高校生自身や保護者の声を丁寧に聞いてほしい。市町村を超えて通学する高校生のリスクは高い。民青同盟が行ったアンケートでは、高校生の切実な声が多く寄せられている。県独自にアンケートを行うとか、インターネット上で意見を聞く、署名に取り組んだ高校生の話を聞くなど方法はいくらでもあったはず。そういう立場で判断してほしい」と申し入れたという。
切実な声を聞いてもらえないばかりか、ネット署名の存在すら認識されない。しかも、ネット署名を始めた男子高校生は今、矢玉のように浴びせられる誹謗中傷に苦しめられているという。実名や自身が通う高校名を公開して取材に応じた事がきっかけだった。男子高校生は言う。
「実名や学校名をSNS上に書き込まれたり、『何も考えられない餓鬼がイキってんな』などのメッセージが多数届いているんです」
県教委や感染症アドバイザーが〝無視〟している陰で、なぜ切実な想いを行動に移した高校生が叩かれなければならないのか。福島県がモタモタしている間に、緊急事態宣言が全国に拡大された。高校生の声には耳を傾けない福島県は、国の意向には素直に従うのだろうか。
(了)
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