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【新型コロナウイルス】「福島県内29例目」は浪江町で放射線量測定に従事。国、県、町の三者協議で現場名など隠蔽か。浪江町議「町民守るため公表を」と全員協議会開催へ

福島県が今月8日に「県内29例目の感染者」として発表した「南相馬市の30代男性」は、浪江町内の環境省直轄除染工区で放射線測定業務に従事していた。だが、環境省も福島県も浪江町も、この作業員が事実を把握しながら伏せている。詳細な行動歴も住民に知らせていない。自身の活動報告でこの問題を告発した浪江町議会の馬場績町議は「感染拡大防止のためにも、隠蔽せず詳細を公表するべきだ」と憤る。感染の拡がりを心配した町民から既に問い合わせの電話も入っており、馬場町議の求めに応じた浪江町議会は、全員協議会の開催準備に着手した。
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【「注意喚起して欲しい」】
 「『浪江その2工区』から新型コロナウイルスの感染者が出たようだ」
 浪江町議会の馬場績議員に建設業者から電話が入ったのは、今月15日の夕方。福島県や南相馬市が男性の陽性判定を公表してから1週間が経っていた。この業者は自身の現場に向かう途中で津島地区など浪江町内の除染現場が休工になっている事に疑問を抱き、環境省福島地方環境事務所の浜通り北支所(南相馬市原町区)に電話で問い合わせた。その際、対応した職員は次のように答えたという。
 「『浪江その2工区』で働く作業員が新型コロナウイルスに感染したため作業を中止している」
 業者は「作業員は町内で買い物をしたり金融機関に立ち寄ったりしているはずなので、町民に注意喚起して欲しい」と馬場町議に知らせたのだった。これを受けて、馬場町議は翌16日朝に改めて浜通り北支所に電話で問い合わせたが、「その件は福島地方環境事務所(福島市)で対応している」と答えるばかり。「箝口令が敷かれたのだろう」。すぐに福島地方環境事務所を電話をすると、環境再生課長が対応。「浪江その2工区」の作業員が感染した事実を認めた上で、次のように答えたという。
 「作業員が所属しているのは安藤ハザマの下請け業者」
 「作業現場の具体名などは、環境省と福島県、浪江町の三者で話し合って公表しない事に決めた」
 驚いた馬場町議は支持者向けに定期的に発行している活動報告「かけある記」(4月18日号)にこれらの経緯を掲載。「作業現場から感染が拡大するのではないか」など、読んで心配になった浪江町民から問い合わせの電話が寄せられているという。

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新型コロナウイルスに感染した作業員が働いていたのは浪江町内の現場だった。しかし、環境省も福島県も浪江町もこの事実を把握しながら公表していない(馬場績町議の活動報告より)

【「感染拡大防ぎたい」】
 「もちろん、作業員が新型コロナウイルスに感染した事そのものは責められるものではありません。今や誰だって感染する可能性があるわけですから。私だって、症状が現れていないだけで感染しているかもしれません。問題はそこでは無く、作業員の行動歴を詳細に公表して、これ以上の感染拡大を防ぐ事なんです。町では町民や役場職員が生活しているし、作業員やドライバーなど不特定多数の人が出入りするわけですから」
 馬場町議はそう語る。感染してしまった作業員を責める意図など全く無い。だが、残念ながら町内の現場で感染者が出てしまった以上、馬場町議に知らせてきた建設業者も「皆の命が危ねえべ」と心配しているという。町内では避難指示が部分解除された後にスーパー「イオン浪江店」やコンビニエンスストア、郵便局などが営業しており、利用する町民や役場職員の不安が高まるのは当然だ。
 浪江町役場は今月13日以降、浪江町役場本庁舎や二本松事務所、福島市などにある出張所などに訪れた人に対して検温への協力を求めている。町役場本庁舎の窓口には飛沫感染を防止するためのパーテーションを設置しているが、今のところ作業員の現場名や行動歴についてホームページなどでの注意喚起は行っていない。環境省や福島県も同様だ。
 男性作業員が働いていた現場名や非公表が水面下で決められた経緯などについて、環境省福島地方環境事務所を呼んで町議会全員協議会を開くよう、馬場町議は文書で求めたという。「こういう状況だから、〝3密〟を避ける意味でも全員協議会という形になるかどうかは分からないが、開催請求をしました」と馬場町議。佐々木恵寿議長も開催に前向きで、日程や開催方式について検討が始まっているという。

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「感染拡大から町民を守るためにも、作業員の現場名や行動歴を公表するべきだ」と怒る馬場績町議。隠蔽の経緯などについて明らかにするため、環境省福島地方環境事務所の担当者などを呼んで全員協議会を開くよう、議長に求めたという

【環境省「担当者が不在」】
 「福島県内29例目の感染者」について福島県と南相馬市は8日、それぞれ記者会見を開き、「南相馬市在住の30代男性」がPCR検査で陽性と判明した事について記者発表。環境省発注事業の作業員で放射線量を測定する業務に携わっている事などを明かしている。一方で、測定業務を行っていた具体的な場所については「調査中。環境省と確認を進めている」と答えるにとどまっていた。
 同じ日、安藤ハザマも自社のホームページ上に「新型コロナウイルス感染者の発生について」を掲載。「4月8日、当社の従業員1名が新型コロナウイルスに感染していることが判明いたしました」と公表したが、これは都内に勤務する従業員の事例だという。
 電話取材に応じた同社コーポレート・コミュニケーション部の担当者は「『福島県内29例目』として公表された男性が浪江町の現場で働いていた事実は把握している。現在も入院中だが、この男性以外には発症したり感染が確認されたりした作業員はいない。男性は1次下請け会社に雇用されており、下請け会社の作業員については他社も公表していない。個人情報の問題もあるので、弊社から公表すべき事では無いと考えている」と答えた。
 現場は休工していたが、2週間が経過したとして21日から作業を再開させる方針。この男性とは別に、双葉町の現場で2日間だけ働いた後、埼玉県の自宅に戻った後に陽性と判明した作業員もいたという。
 この問題について、環境省福島地方環境事務所に20日午前、取材を申し込んだものの、午後になり広報担当者から「今日から午前と午後の2シフト勤務が始まり、担当課長は退社してしまって確認が取れない」との電話連絡があった。また、浪江町健康保険課の担当者は電話取材に対し、「町内の現場で働く作業員が新型コロナウイルスに感染した事実は町としては把握していない」と答えた。


(了)
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鈴木博喜

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